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記事 24件
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第124回 「たとえ偽物でも、そばにいて欲しい」

    2024-08-28 07:00  
     クローン技術で死んだペットを蘇らせる、というビジネスの記事を読んだことがある。あるいは、写真を元に作られた死んだペットそっくりのぬいぐるみが届いて涙を流す飼い主の動画を。最初は隠しようもない嫌悪感を覚えた。根本的にはまるで違うそれらに大好きだった存在を重ね、あの子が帰ってきたと言わんばかりに抱きしめる姿に、そんなのむしろ冒涜だろ、と感じていた。犬を家族に迎えた今、もうあの頃の自分と同じようには考えられない。これは私の愛したあの子じゃない、そう分かっていながらも、その体温や触り心地に縋りついてしまうと分かっているから。『光が死んだ夏』のよしきのこと、非難なんてできない。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第123回「宇宙人だらけの日常で他者と触れ合う」

    2024-06-06 05:00  
     円安由来のインバウンドで、最近はどこに行っても外国人観光客でいっぱいだ。先日訪れた京都もあまりの人の多さ、というより耳に入ってくる外国語の豊かさに思わず面食らったと共に、4年間住んでいたはずのその土地がまるで知らない場所のように見えてちょっとドキッとした。たとえ宇宙人が紛れていたとしても、きっと気づけやしないだろう。いや、もしかしたらもう観光客として遊びに来ているのかもしれない、『COSMOS(コスモス)』で描かれる世界のように。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第122回「キュートな女王が女の問題に向き合う」

    2024-05-23 05:00  
     友達の子どもたちがどんどん大きくなってきた。会う度に次は何をプレゼントしよう、どこに連れて行こうとワクワクしている。そしてそんな大切な私の小さなお姫さまたちがもう少し大きくなったら絶対にプレゼントしようと心に決めているのが『カルバニア物語』だ。性別や容姿、家族への固定観念をぶっ壊し、自分らしくあることへの自信と、多様性という眼差しを私に授けてくれたこの本は、きっとあの子たちのことも助けてくれるに違いないから。
     歴史あるカルバニア王国に初の女王が即位した。父である国王の急逝により若くして女王となったタニアと、その親友である男装の公爵令嬢・エキューを中心に貴族や国民、他国の王族などの生活を追う群像劇となっている。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第121回「応援する側の母親が、サッカー選手に!」

    2024-05-09 05:00  
     3歳からピアノを習い始めた。隣町に引っ越してからも、変わらず母と妹とバスに乗って高校生になるまで通った。剣道、習字、新体操、コーラス、学習塾……そのどれも今はもう続けていない。私は結局ピアニストにも、剣道の達人にも、学者にも歌手にもならなかった。けれど、今でも実家に帰ればピアノを弾くし、酔っぱらえば妹とハモるし、お正月には書初めをする。あの頃大好きだったもののこと、今でも変わらず大好きだ。『MA・MA・Match』を読むと、習い事をしていた人はもちろんのこと、子を習い事に連れて行っていた人も、あの頃を鮮やかに思い出すに違いない。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第120回「老犬と過ごす幸せに満ちた日々」

    2024-04-18 05:00  
     犬は、犬というやつは。共に暮らし始めて数年たつが、自分の何倍もあるでっかい二足歩行の生き物を信頼し、愛し、共に生きようとしてくれるだなんてまるで奇跡みたいだな、と未だに新鮮に感動する。犬と共に歩く世界はひとりの時よりもずっと鮮やかで、きらきらと輝いて見える。あのつぶらな瞳に映る自分のことだけはどうしたって嫌いになれない。しっぽをぶんぶんふって走り寄る姿に毎度強烈な赦しを感じる。生きていていいんだ、と思える。
     だから、『老犬とつづ井』の帯にある「愛犬というのは愛が犬のかたちをしているという意味です。」という一文に赤べこのように頷いた。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第119回「これぞオタク女子の夢の住まい!」

    2024-04-04 05:00  
     付き合いの長い友人たちと飲むたびに、おばあちゃんになったら絶対に同じマンションに住もうな、という誓いを立てあっている。たとえ結婚していようとしていなかろうと、子どもがいようがいまいが、人生の最後は支え合って面白おかしく生きていこう、と。全員一人の空間が必要なタイプだからシェアハウスじゃなくて、一部屋一部屋が独立した同じマンションの方が気兼ねしなくていいかも……なんて希望まで。『同人女アパート建ててみた』はそんな私たちにとってまさに理想の住まい!というか、こんなのいつの世もどの世代の女にとってもロマンそのものでは? 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第118回「最愛の妻が遺したレシピがくれたもの」

    2024-03-21 05:00  
     思い出の味はいつだって、懐かしいあの頃の記憶を連れてきてくれる。祖父の作った甘いすき焼き、先輩の家に行けば必ず出してくれたちゃんぽん麺、友人考案の簡易版ホットチョコレート。たとえもう二度と会うことのできないその人たちの声や顔を思い出すのに、ずいぶん時間がかかるようになったとしても。『米蔵夫婦のレシピ帳』を読んでいるとあまりの羨ましさに胸が張り裂けそうになる。なんで私は、レシピを聞いておかなかったんだろうね。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第117回「社会への怒り×SFの衝撃的な展開!」

    2024-03-07 05:00  
     初めて痴漢されたのはたしか小学生。それから電車に乗るときは常に臨戦態勢だ。耳鼻科検診に来た医者の距離感に違和感を抱いていたら保健室の先生が顔を真っ青にして飛んできたことがあった。未だに男性の医者がちょっと怖い。条件の良い物件が一階で諦めたこともあった。でも男友達はその理由が最後までよく分からないみたいだった。いいよな、気にしないで生きていける性別の人は。その場に女性が自分ひとりだけでビクビクしたことも、大好きな趣味を「どうせ彼氏の影響でしょ?」って鼻で笑われたこともないんだろうなあ。いいなあ……いやちょっと待て、なんで?『ジーンブライド』を読んでいるとなんとなくモヤモヤしたままスルーしていたあれやこれやへの感情が新鮮に蘇ってくる。私たちはもっと怒っていいんだと鼓舞してくれる。これは怒りだ。不平等への、不自由への燃え尽きることのない新鮮な怒り。クソがよ。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第116回「偶然生まれるアートな瞬間との邂逅」

    2024-02-22 05:00  
     平安時代なら引目、鉤鼻、おちょぼ口。18世紀のヨーロッパでは病的なほどの白肌と過剰な付けボクロ。美人の定義は時代によって変わると言われているけれど、「美しい」と感じるものもまた、知らず知らずのうちに自分の中に蓄積された“美しさ”の定義によって、ジャッジしているように思う。そう考えれば、『偶発的ルネッサンス少女』に描かれる偶発的に生まれる構図にときめき、心惹かれてしまうのも当然だ。だって、それが美しいものだとして教育されてきたのだから。
     弛まぬ努力によって得た外見と内面によってモテてモテてしかたのない男子高校生のリクトだったが、どこか満たされない毎日を送っていた。 
  • 宇垣総裁のマンガ党宣言! 宇垣美里 第115回「『日本警察の父』を描く幕末コメディ」

    2024-02-08 05:00  
     あなたの幕末はどこから? 私は司馬遼太郎著『新選組血風録』から。時代の転換点、その混沌というべき大きなうねりの中で己が才能を開花させ、国や未来、あるいは自分や仲間のために命を燃やした人々の群れは、その信念に関わらずどうしたって魅力的だ。『だんドーン』はそんな幕末期の日本を舞台に、後に「日本警察の父」となる川路利良を主人公にした物語。描くのはアニメ化やドラマ化もされた警察マンガ『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』の作者・泰三子。つまりは「ハコヅメ エピソードゼロ」だ。そんなの、おもしろくないわけないじゃないか!