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春日太一の木曜邦画劇場 第609回「テンポもキレも良いコメディ演出。洗練された岡本喜八監督デビュー作」『結婚のすべて』
2024-11-21 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第608回「西田敏行の、野蛮で恐ろしくても奥底に純な心を宿す演技が抜群だ!」『天国の駅』
2024-11-14 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第607回「洋画の設定+下世話・お下劣。これぞ石井輝男ワールドだ!」『網走番外地 北海篇』
2024-11-07 05:00今年は日本の娯楽映画史に偉大な足跡を残した二人の映画監督が、生誕百年を迎えた。
それが石井輝男と岡本喜八。いずれも、ハチャメチャに面白い映画を作り続けたエンターテイナーだ。
この二人に共通点がある。
それは、洋画のテイストをかなり直接的に作風の中に盛り込んでいるところだ。若手時代はノワール調の洋装ギャング映画を多く撮ったのも同じだし、戦争映画を撮れば西部劇の雰囲気を多分に感じさせる作りになっている。ジャズ調のBGMを好む傾向に加え、シャープでテンポの良い演出も重なる。他にも、俳優たちが嬉々として伸び伸びと怪演をしているのも共通している。
ただ、両者には大きく異なる点もある。 -
春日太一の木曜邦画劇場 第606回「妖しさと気品が備わる晴明との間の緊張感は、真田が放つ闇が生んだ!」『陰陽師』
2024-10-31 05:00真田広之はデビュー以来、飽くなき挑戦心をもってさまざまに役柄の幅を広げていった。そして、四十代を迎える二〇〇〇年前後には早くも、その芝居は円熟味すら感じさせるようになっていた。
だがその一方で、日本映画は真田の成長に反比例するように、その質もスケールも、大きく落としていく。そのため一観客、一真田ファンだった身としては当時、「真田広之の表現力に映画の中身が追いついていない」という実感があった。劣化が著しかった日本映画のちっぽけな枠に、もはや真田は収まらないように思えた。出演作を観る度に実力を持て余し気味に映り、もったいない気がしていた。
そうした中でも刺激的だったのが、悪役だ。作品そのものをも凌駕する存在となった真田が悪として立ちはだかれば、それは最強の敵として映し出されることになり、必然的に作品はスリリングに盛り上がる。そう気づかせてくれたのが九九年のテレビドラマ『刑事たちの夏』だ。真田は黒幕の官僚を嫌らしいまでに冷徹に演じ、役所広司や大竹しのぶすら圧倒していた。 -
春日太一の木曜邦画劇場 第605回「ヒーローから喜劇まで演じる真田は嫌みで軽薄な役まで達者に見せた!」『僕らはみんな生きている』
2024-10-24 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第604回「トロくてボンヤリした青年の動きが真田の運動能力で喜劇へ昇華した!」『快盗ルビイ』
2024-10-17 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第603回「若き真田が見せる、チャーミングで美しくて超人的なアクション!」『吼えろ鉄拳』
2024-10-10 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第602回「真田広之、祝・エミー賞受賞。時代劇役者として円熟期の一本!」『助太刀屋助六』
2024-10-03 05:00真田広之がエミー賞を受賞した。プロデューサーでもある真田は、自身が育った京都から時代劇のスタッフを招いている。それだけ真田は京都の時代劇スタッフたちの力を信頼しているし、またスタッフたちも真田に惚れ込んでいるということだ。実際、真田と仕事をしたことのある京都のベテランスタッフたちと話をすると、「ヒロユキはなあ――」と、誰もが目を細めながら嬉しそうに真田との思い出話を語る。両者の絆は強い。
真田は若い頃から京都の現場で名匠、名工、名優たちから時代劇の何たるかを学び、時代劇俳優としての表現力を身につけた。いわば、時代劇百年の蓄積がその肉体には刻み込まれているということだ。つまり今回の受賞は、真田を介して日本の時代劇表現がハリウッドにその力を証明してのけたと言うことができる。 -
春日太一の木曜邦画劇場 第601回「“遺体”に用いたメイク技術とは。ヒット映画の裏に職人あり!」『おくりびと』
2024-09-26 05:00 -
春日太一の木曜邦画劇場 第600回「重苦しくて新作を避けた少年時代。印象を大きく変えた邦画がこれだ」『大誘拐 RAINBOW KIDS』
2024-09-19 05:00おかげさまで、本連載は六百回を迎えることができた。旧作邦画一筋で、これだけ続けられたのは、何より読者の皆様のご愛顧のおかげ。改めて、御礼申し上げたい。
今でこそ、このように邦画を専門にしているが、映画を好きになった頃は苦手だった。一九八〇年代半ばに『グーニーズ』で映画の面白さに目覚めたため、以降は派手な楽しさを求めてハリウッド映画ばかり追っていた。一方、同時期の邦画は重かったり、暗かったり、貧乏臭かったり――という印象があり、小学生の身には取っつきにくかった。中学に上がる前後に名画座などで旧作にはハマっていくが、新作は苦手なままだった。
そうした中で「え、新作邦画もハリウッドみたいに楽しく作れるんだ」と公開時に驚かせてくれたのが、今回取り上げる『大誘拐 RAINBOW KIDS』だ。今年で生誕百年となる岡本喜八監督によるコメディ映画である。
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