稚魚、 #ミリオンSSゴウドウボン感想 を書く
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稚魚、 #ミリオンSSゴウドウボン感想 を書く

2018-07-11 23:08

    C94三日目東メ-44a

    ミリオンライブ黒船合同をよろしく!(宣伝)

    特設サイトはこちら!


     現在、編集作業を行っていますが、いやぁ〜合同誌を作るって大変なんですね……。
     自分でやってみると思わぬところで手が足が止まってしまい、発見と反省の毎日です。

     面白いもので、実際に合同誌の主催をやってみると、人様の合同誌を見る目もぐるりと変わってきます。たとえば、あの合同誌とか、あの合同誌とか……あの合同誌とか。


    ******


     今年の6月に開催され大成功に終わったミリオンライブオンリー同人誌イベント、
    IDOL STAR FESTIV@L 05。
    公式サイトはこちら。


     私は仕事でイベントに行くことは叶いませんでしたが、いちミリオン好きマンとしてはやはり気持ちが沸き立つもの。ツイッターに流れてくる行けないイベントの頒布物宣伝をニヤニヤしながら眺めていたのですが……その中でも一際目を引くものが、ひとつ。


     そう。

     ミリオンSSゴウドウボンである。


     さっそくサンプルを読んだところ中身に興味が湧きましたので、いてもたってもいられない私は草の者を放ち買ってきてもらいました。4,000円払いましたよ。わっはっは。

     で、先日読了しました。


    ええやん!


     なかなか良かったですよ!
     今の時代、こんな合同誌はそうそう出せるもんじゃありません。
     完売するのも頷けます。

     にもかかわらず、ツイッターでこの本の感想を検索しても厚さに関するものばかりヒットしてしまい購入された方々が内容に対して何を思ったのかがさっぱりわかりません。

     そんな事情もあり、せっかく4,000円払ってますのでこの本の中で私がイイ! と思った作品について感想を書こうと思います。

     4,000円払ってますから、真剣に書きますよ。ええ。


    ※追記

    https://765ryodan.booth.pm/items/923590
     この本再販すんのかな、と思ってたんですがどうやら電子書籍版が出たようです。
     やったなお前ら! SSが読めるぞ!
     つーか最初から電子版で出してくれよ!
     スペース取るんだよこの本!


    *******


    ●明日へ翔る偶像理論(ソルフェージュ)
    作者:川下欅

    ○あらすじ:
    友人、白石紬が『わたし』に「765プロにスカウトを受けた」と告げる。
    かつて憧れを諦めた自分を重ねた"『わたし』は、迷う紬の背中を押した。
    しかし数週間後、アイドルとして活動を始めた紬から電話が。
    紬をスカウトした事務所にはかつての憧れ――桜守歌織も所属していた。
    『わたし』は歌織さんの夢を受け入れられるのだろうか?

    ○感想:
     白石紬と『わたし』のやりとりを軸に『わたし』と桜守歌織の物語を描きます。
     アイドルは自分の夢のために巣を離れますが、巣に残されたものはどうすればよいのでしょうか。わかってはいるのに、まばゆい夢を直視できない『わたし』の書き方がもどかしい。
     シーンの冒頭に描かれる情景描写くらい、人の仕草も書き込んでいただけたら更に話にのめり込めたように思います。

     同じくISF05にて頒布されていた個人誌『彗星の集う場所/暁を追いかけて』も草の者に買わせたのですが、こちらも同じく非常によい本でした。
     故郷に置いてきた夢が蘇るような作品をありがとうございました。

    ○この一行が好き!:
    「歌織さんの曲は、綺麗だったと思うけどあまりよく覚えていない。結局、一回聴いたきりだったから。」
    ※見たい聴きたいと思っているものが、どうしても直視できないこと、あると思うんですよね。


    *******


    ●大人になりたい女の子
    作者:リカルド・ヘラン

    ○あらすじ:
    大人の女には秘密がある。そしてもちろん、馬場このみにも。
    しかし、いくら百瀬莉緒にせがまれても秘密を話したがらない彼女。

    大人の女には秘密がある。そしてもちろん、馬場このみにも。
    美しくもなければ、笑い話にもならない、
    アイドルになるまでの、馬場このみの秘密――。

    ○感想:
     馬場このみのナマナマしい心理描写が魅力です。
     この話における馬場このみの秘密は言ってしまえば『思い込み』に拠るところも多いと思うので、それを一人称に近い地の文で書くのはピッタリな気がします。
     特に昼食の後、係長に呼び出しを受けたあたりからのくだりは淡々と描写される出来事にこちらも血の気が引いていくようでした。ゲロしたあと化粧を直すの、すごく偉いですよ。
     胃の内容物がこみあげるような作品をありがとうございました。

    ○この一行が好き!:
    「そしてその歯車の大きく力強い動きが何を産むのか、この時はまだわかっていなかった。」※こういう文章に惹かれるのは最近シーラッハを読んだ影響です。


    *******


    ●モモコとリリコ
    作者:与太郎

    ○あらすじ:
    子役あがりの女優、『私』こと倫梨子は冷めた態度で茶番劇を見守る。
    「最低だよ!ここまですることないじゃん」
    クラスメイトの知美とその取り巻きが糾弾するのは、
    女学生、周防桃子……子役時代から因縁の続く、愛しいほどのわが宿敵。
    怒り、寂しさ、優越、嫉妬、焦り、無関心。
    それぞれの未熟な思いはさらに加熱して――。

    ○感想:
     上下巻43本の物語の中で一番好きなのがこのSS。
     とにかくオリジナルキャラの倫梨子が魅力的です。
     子役時代に桃子とよく共演していてライバル視しつつも憧れていた、という設定ですが『愛憎入り交じる』感覚を上手に描写されています。
     実のところ、アイマスのアイドルってやっぱり能力もセンスも普通以上にある人達で、彼女らの挫折ってどこかウソくさいと思っていまして。
     そういうスーパーガールの物語よりも、彼女たちに勝てない人たちの話のほうがよっぽどリアルさを感じられます。そんな話を展開できるのはオリキャラの強みですね。

     倫梨子の年齢に大してちょっと大人すぎる思考も、子役のスレ具合としていい味出してると思います。実際、ミリオンライブの桃子もスレてる部分は出してたわけですし。

     この合同誌の中でも比較的長い話(70Pくらい)で読む前には身構えていたのですが、びっくりするぐらいスルスルと読むことができまして、作家様の技量を感じます。
     高校時代のイガイガを残した作品をありがとうございました。

    ○この一行が好き!:
    「彼女の口角を持ちあげた感情の名前を私は知っている。それは『安心』と、ちょっぴしの『優越』だ。」
    ※この表現! だんだんクセになっていきます。


    *******


    ●都内美術館・ディモナイ・ダレア展
    作者名:モモモト

    ○あらすじ:
    ユニットの親睦を深めるため美術鑑賞にやってきたロコと桃子。
    展示室を飾るのは、謎の画家、ディモナイ・ダレアの作品たち。
    稀代のアーティスト・ロコに導かれ、
    肖像画、風景画、コラージュと目まぐるしく移り変わる作品群を抜けながら、
    桃子は自分なりの『アート』を見出していく。

    ○感想:
    『美術』の話ということで読まずにはいられませんでした。ずるい!
    ロコが桃子に対してアートと人の関係性を説く話ですが、つくづくロコは語り部に向いてます。つらつらとアートに思いを馳せるロコの魅力は、メルヘンアイドル物語を読んだ人なら共感してくれると思っています。共感してくれるよな!?

    まぁツッコミどころがないわけでもなく。
    ダレアの作風を見るに20世紀後半以降の作家だと思うんですが、その次代なら戸籍とかもあるでしょうに、作家の性別もハッキリしないということはあり得るのか? とか思いましたが、『誰でもない』その人に言及すること自体がナンセンスなのかもしれません。
    (ダレアに惹かれた桃子にはヴィヴィアン・マイヤーをオススメしておきましょう)

    いまや、美術を学んでこなかった人間が学校で美術を教える時代が来ています。
    美術作品を『鑑賞する』とはどういう行為か考えてみるのもよいでしょう。
    明日にでも美術館に行きたくなるような作品をありがとうございました。

    ○この一行が好き!:
    「だって間違ったことを言ったら色々なことを言われそうで、なんだか息苦しいし、興味ないことの感想を無理矢理書かされて、感動したことにされるのが嫌だから。」
    ※ダメな絵もゴマンとあるから美術は面白いんです。


    *******


    ●幻のレモンソーダ
    作者:守次 奏

    ○あらすじ:
    誘うように口元に近づいては感覚を残す前に消えてゆく幻のレモンソーダ。
    夢から覚めた田中琴葉は隣に眠る所恵美を見て想う。
    彼女とは、まだキスをしたことがない。
    『いい子』を演じつづけてきた琴葉は、自分の中で撹拌されるわがままに悩む。

    ○感想:
     描写の艶やかさ、丁寧さとその幅は群を抜いています。耽美な文章を多く読まれているのでしょうか。
     いわゆる百合ものですので2人が物理的に距離を縮める描写も出てくるのですが、非常に性的な描写にもかかわらずしっかりと美しさを漂わせている。舌の動きひとつひとつまで想起させるような文章に思わず下の息子も寝返りを打ちました。
     官能的な描写は20Pあまりの容量のうち1P分しかないのですが、その短さでもここまで鮮烈に印象を焼き付けるものかと感動し、SS書きの技術を感じました。
     儚くも艷やかな作品をありがとうございました。

    ○この一行が好き!:
    「地平の果てまで続く、薄ぼんやりとした微睡みの中で、私はレモンソーダの封が切られて、心臓を象ったような赤いグラスの中で、瑞々しく弾けるまでの夢を見る。」
    ※冒頭の一文。こんなキレイな出だしで始まるSS、読んじゃいますよね、ええ。


    *******


    ★合同誌としての感想

    良かったですよ!

     43本中気に入ったのが5本、という打率が高いのか低いのかは知りませんが、そもそも最後まで読めるSSが1本あればそれでいいかな〜と思って読み始めたので、結果的に満足しています。少なくとも上記に挙げた5本のSSは私のミリオン二次創作観の中に根付き続けることでしょう。

    ただ、内容はともかく本の装丁はとても褒められたものではありません。
    私はこのゴウドウボンをお風呂で読んでいたのですが重すぎて何回か浴槽に落としそうになりました。これは特殊な例としても、手持ちの文庫本カバーがかけられないようでは読む場所が限定されてしまう人もいるでしょう。

    『SSを多くの人に読んでほしい』というコンセプトならば、もっと『気軽に読める』ような装丁にしてみる、というアプローチも有効なのではないでしょうか。

    あと、フォントがちょっと読みづらいです。特に英文がギュッと潰れてしまっているのがいただけません。下巻の最終話とかは特に顕著ですね。

    ……ってこれ主催のSSやんけ!


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    ★まとめ

     SSを読むたびに思い出す言葉があります。
     三谷幸喜監督、1997年公開の映画『ラヂオの時間』でのセリフ。

    「たとえば、テレビでSFをやるとしますよね。
    アメリカ映画に負けない映像を作るためには、

    SFXやらコンピューターグラフィックやら、やたらお金がかかるわけです。
    ところがラジオなら、ナレーターが一言、
    「ここは宇宙。」と言うだけで、もう宇宙空間になっちゃうんですから。
    人間に想像する力がある限り、ラジオ・ドラマには無限の可能性がある」

     共作として小説を出して以来、SSの持つ可能性について考えている身としては『アイマスSSを広めたい』という意志がチグハグながらも形として世に残ったのは、実は大きな出来事なんじゃないか? と思っています。主催の方はまだまだやる気があるようですので、次巻がありましたらぜひとも買わせていただくと思います。

     そしてその時はぜひとも、文庫本カバーをかけられるようにしていただきたい。


    ******


     長々と綴ってきましたが、そろそろお開きということで。
     最後は今合同誌におけるシラス.のぶっちぎりのお気に入り、与太郎様の作品『モモコとリリコ』のファンアートで締めくくらせていただきます。

     お読みいただきありがとうございました。



    シラス.




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