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プロに入ってからの人生は、決して思いどおりにはいかなかった。それでもただ、がむしゃらに戦い続けてきた。そしておとずれたサイドバックへの転向とガンバ大阪での日々。「自分で選んだことで違ったなと思ったことはない」青黒の右サイドを司る“頑張る、米倉恒貴”の人生を描く。

[Jリーグサッカーキング9月号掲載]

高校は千葉県立八千代高に進学しましたが、プロを目指すにあたりユースという選択肢はなかったのでしょうか?

米倉 ありました。全国3位になったし、そういう話もありましたけど、選手権に出たかったのと、小学校からずっと指導してきてくれた人が八千代高のトレーナーをやっていたんですよ。八千代高が1997年以降、選手権に出ていなくて、その人から「力を入れているからみんなで入学して頑張ってくれ」って、今、アルビレックス新潟にいる山崎(亮平)と半強制的に言われて(笑)。本当に中学の時のチームが強くて自信にみち溢れていたので、「俺らが変えてやる!」ってちょっと調子に乗った感じで入りました。「いけるっしょ! 選手権!」みたいな感じだったのに、1回しか出られなかったですけどね。

1回でも出たのはすごいですよ。そこからジェフユナイテッド千葉に入り、プロとしてのキャリアをスタートさせています。

米倉 進路はだいぶ焦りました。千葉には(高3の)4月くらいに練習に参加して。それ以外にも練習参加の話があったんですけど、選手権前に腰をケガしたので行けなくて。本当に選手権が始まる前まで千葉からオファーがあったことを知らなかったですからね(苦笑)。地元だし、その時の監督はオシムさんだったので、決まって良かったなって思いました。とってくれて感謝しています。プロになれていなかったら大崩れした可能性もあるので。

そうならなくて良かったです。そう言えば、サッカーを始めたきっかけはお兄さんでしたけど、もともとお父さんもサッカーをやっていたんですよね?

米倉 やっていました。だからサッカーに関しての見る目はすごくあります。今でも帰ったら言われますもん。自分でも結構「そのとおりだな」って思うことを言われるから腹が立つんですよ(笑)。「確かに」って思うけど、親の言うことだから素直に「はい」って言えないし(苦笑)。あと、お父さんは俺になった気でいて、すごい上を目指してる。「あれが良ければ日本代表だな」って(笑)。一番上を目指しています。

上を目指すお父さんに言われたアドバイスで印象に残っている言葉はありますか?

米倉 役に立ったとかではないんですけど、「焦らず、おごらず、淡々と」っていう口癖があるんですよ。めっちゃ言うから頭に残っています。

その言葉、なんだか遠藤(保仁)選手を表しているみたいじゃないですか?

米倉 そういう究極のことを言っていたとしたらすごいと思いますけど、そんな感じじゃなかった(笑)。《焦らず》とは思いますけど、《おごる》っていう感覚が分からなかったから。おごるって過信する、思いあがるってことですよね。そういう位置にいったことがないので。俺はまだ過信するレベルにいないから、その言葉を使いこなすにはまだ、早いかなって思います。

代表に選ばれたら、そういう位置にいったことになるのでは?

米倉 代表にいったとしても過信することはないと思います。このチームに来て特に思うんですけど、周りにすごい人がいっぱいいるし、能力が全然違う。上には上がいますから。

身近なところでは同じサイドバックの藤春(廣輝)選手が代表デビューしました。

米倉 すごいと思います。あいつ、見たことのないような緊張した顔をしていたから、すごいプレッシャーがあるんだろうなって。それを経験できているのはうらやましいです。

「いつかは俺も」という思いはありますか?

米倉 そうですね。サッカーをやっている限りはやっぱり日本代表は一番目指すものだし、そこを意識しないとうまくならないと思う。それに選ばれないのは何か自分に足りないものがあるんだなって思っているので。これまで各年代でもナショナルトレセンに1回とU─20しかないので、本当に代表に縁がないんですよ(苦笑)。

現状で足りていないと感じている部分は?

米倉 結構ありますよ。だって攻撃の部分でも満足のいった結果を出してないし。J2の時は自分が直接ゴールに叩き込むっていうのがあったんですけど、J1はそう簡単にはいかなくて。でも、まずは守備を徹底してやらなきゃいけないし、どちらかといったら個人的にも今は守備を必死で頑張っているので。それでも、もっと攻撃で結果を出さないといけないですけどね。現代サッカーでは、サイドバックの攻撃が重要だと思うのでもっともっと絡まないといけないし、追求しなきゃいけない。やっぱり結果を出さないと代表にはいっちゃいけないと思う。だから、また攻撃もどんどんチャレンジしていきたいですね。まだまだ成長できると思うので。

そうして追求し続けることで代表に呼ばれるかもしれないですしね。縁がないと言っていましたけど、まだ分からないですよ。

米倉 そうですね。丹羽ちゃんみたいに29歳になって覚醒する人だっているし(笑)。丹羽ちゃんには常に夢と希望を与えられています。最終ラインで俺が右で丹羽ちゃんがその隣。一番近いところで刺激をもらっていますから(笑)。