• 『コスプレ少女』新装版 東京音楽祭編 365-368頁  ★震える少女の肩をギュッと?

    2019-09-22 23:4417時間前
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。中学生三人組が東京のイベントへ!
    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    彼女達のダンスパフォーマンスが投稿動画で評判に。
    これをきっかけに動画サイトの東京音楽祭に招待されることに!
    東京までやってきたのはいいが、泊まる所がない! 
    ルミたち中学生三人組は、初めて会った男性のマンションに押しかけた、いかに?

    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    *****

    【登場人物紹介】                
                       主人公の本田ル
    この春、中学生になったばっかりの女の子。

    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミ」のコスプレイヤー。   


    イメージイラストは
    はじめとみかん様提供。     
                      
             
                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けたエリカ姫
    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。
    リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。


                           白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナル
    コス
    プレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストはゐてぃ 様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       365-368です。

    ノーコンP自分の胸に顔を埋めて泣き続けるエリカに戸惑った、
    こんな経験は の三十年余の人生では無かったし、
    考えてみれば エリカは今日初めて会った子だ。

    震える少女の肩をギュッと抱きしめてやってもいいのだろうが、
    直ぐ傍では 彼女の連れのルミが メガネの奥から冷たい視線をジッと向けているので
    非常に気まずく、馴れ馴れしくセクハラと勘違いされそうな行動は躊躇われた。

    エリカの息が服の布地を透して胸に伝わってくる、まるで焼石を当てられたように熱い。
    ノーコンPは宙を仰いでエリカの頭を撫でてやることしか出来なかった。

    夜の公園、もどかしい時間が経ち、ようやくエリカの胸から顔をあげた。
    彼女はその瞳を潤わせながら、上目づかいでノーコンPを見つめる。

    本当にもう怒ってな~い?
     喉がかゆくなるような甘ったるい声、聞いていたルミは、心の中で
    ゲロゲロ!っと叫んでしまったほどだ。

    なぜなら、普段のエリカが絶対やらない、媚売りまくりの猫撫で声だったからだ。

    ああ、怒ってない、怒ってないよ
     即答するノーコンPルミは呆れかえる。
    ノーコンPのおっさん、あんたの負けだよ

     女狐エリカに いとも簡単に弄ばれている情けない大人ルミは嘲笑した。

    ルミたち三人はマンションの部屋へ戻ることになった。
    ノーコンPは持ってきた毛布をグルグルと丸めて肩に背負う、ルミらが後に続く。

     ルミエリカに近寄り、耳元にそっと囁く。
    エリカさん、迫真の演技でしたね
     その口調は、多少、皮肉が込められていた。

    ええ~、何の事かしら?
     しらばっくれる女狐エリカ

    彼女がジャージのポケットに突っ込んでいる右手首を ルミは強引に掴んで引き抜いた。
     暴露されたその手には、目薬が握られていた。

     秘密を暴かれても、エリカは平然と答える。
    さすがはルミ、気づいていたのね

    うん、わかってた。だってさあ、いつものエリカさんとキャラが全然、違ってたじゃん

    うふふ、男って本当に女の涙には弱いものなのね。チョロ過ぎ
     シレっと言い放ち、ルミに舌を出すエリカ

    このティアラを冠した少女は、中学三年生ながらウソ泣きで三十半ばの大人を
    手玉にとってみせたのだ。

     マンションのエンタランスへ入る手前まで来ると、エリカが先を行くノーコンP
    体を寄せ、猫がじゃれつくように腕に絡みついた。

     それを見たルミは顔をしかめて。
    何だ、何だあ? ノーコンPのおっさんを連れ戻すという目的は、
    もうとっくに果たせたはずだぞ。なぜ、そんなに引っ付く必要がある? 
    わたしに見せつけたいのか? ギギギ!

    ルミの目には、左腕に女子中学生を絡みつかせたノーコンPがデレているように映った。

    右肩に丸めた毛布を担いでいるは、エリカに絡められたままの左手で
    マンションのオートロックを押しにかかる。

    ふたりして腕を伸ばす様は、まるで披露宴のケーキ入刀、初めての協同作業のようで、
    快調にピッピッっとロックを解除した。エンタランスの扉が開く。

    エリカちゃんたちは、みんなもうシャワー浴びたんだよね

    ええ、勝手に使っちゃってゴメンナサイ

    いやいや、別にちっとも構やしないんだよ。
     俺が部屋に居たらさあ、君らの方が入るに入れないんじゃないかなあと思ってね
     ノーコンPは頭を掻きながら、気遣う。

     脱衣スペースもほとんどない狭い部屋、ルミたちがバスルームへ出入りしたら、
    彼女たちもノーコンPもさぞかし気マズい状況だろう。

     ルミはふと思った、ノーコンPは最初から気を利かせて部屋から出て行ってくれたのかと……考え過ぎかなとも思った。

    三人は部屋のドアの前まで戻って来た。
    目的通り、ノーコンPを連れ戻せた。

    まだ、の腕に絡みついているエリカの態度に、ルミは少々不満が残るも、
    留守番のリンが待ちくたびれていやしないかが気になった。

    ノーコンPがドアノブを引いた。
    するとズゴゴゴゴー、ピーピーピーっと ヘビメタバンド級の

    天地をひっくり返したような凄まじい大音量が耳に飛び込んできた。

    しまったあああ!
     リンちゃんのハイパーなイビキの事をすっかり忘れていたあああ!
     ルミは頭を抱えて仰け反った。

     白銀リンはその小さな体からは、想像出来ないような大イビキをかくのだ。
    しかも、本人には全くその自覚がない。

     見てはいけないものを見た場合、そっと閉じするのが今のトレンドだが、
    血相を変えたエリカがドアに体当たりして強引に閉めた。

    アハハッ、公園のベンチで寝てこようかな

     再び可愛い子ぶりっ子して見せるエリカの瞳は激しく泳いでいて動揺を隠しきれていない。

     ノーコンPは肩に毛布を担いだまま、呆然としているだけであった。

          *****

    誰かが部屋をパタパタと歩きまわる音でルミは目が覚めた。
    眠たい目をこすりながら、部屋の天井がいつもと違うことに気がつく。

    あ、そうだ、東京に来ているんだっけ。
    エリカさんとリンちゃんと三人で、ノーコンPのおっさんのマンションに転がり込んだんだ

    毎度ながら、ルミの覚醒は旧式PCの立ち上がり並みに遅い。 

    夕べは枕も無しで毛布に包まり、マンションの床に直寝したので体の所々が痛い。
     彼女は辺りを手探りでメガネを探す。

    ルミちゃん、いつまで寝てるですゥか! もう起きるですゥよっ

    片手にフライパンを持ったリンにどやされる。
    ふああ、卵の焼けるいい匂いがする。萌っ娘が朝食を作ってくれてるのかな?

    寝ぼけているが嗅覚の目覚めが良いルミ
    うちが今朝、コンビニまでダッシュして、パンと卵を買ってきたですゥよ、自腹で!

    自腹って、萌っ娘は金持ちの家のくせに、セコいこと言うなあ。
     だいたい、あんたの大イビキのせいで夕べはなかなか眠れなかったんだよ。
     安眠妨害の損害賠償を請求するぞ ……

     ようやく見つけたメガネをかけながら、声にならない声でルミはぼやいた。

    夕べはリンのイビキのトーンが収まるまで廊下にずっと立ちっぱで待ち、
    部屋に入ってからも安眠とはいかず、スマホアラーム級の騒音下で寝たのだった。

    お早うルミ、あんたも顔洗いなさいよ
    首にタオルを引っ掛けたジャージ姿のエリカが洗面所から出てきた。

    お早うございます、わたしも顔洗おうっと

     ようやく、まともな視力を回復して立ち上がったルミは、
    部屋の主であるノーコンPがベッドの上で窮屈そうに正座をしているのに気づく。

    その膝の前には小さなテーブルが置かれ、そこには焼き立てのトーストの皿があった。

    ベッドの上で朝食?

    ルミノーコンPと首だけ頭を下げた中途半端な挨拶を交わした。

    リンがやって来て、ノーコンPのお皿のトーストにフライパンからトロトロのオムレツを
    注ぎ載せた。シンプルだけど美味しそうな出来だ。

    メガネをかけ、焦点が定まったルミは、リンの恰好に改めて驚かされた。

    萌っ娘がエプロンをしているよ! 
     なんとそれは新聞紙で作ってあった。

    ご丁寧に肩ヒモ周りもフリフリのフリル付きで器用に紙をひねって作ってある。

    ペーパークラフト技術が半端ない!
     ルミリンの器用さとコスプレ根性とも言うべきその信念に感服した。

    エプロン姿のリンは、オムレツにケチャップでハートマークを描き上げると、
    ケチャップ瓶をマイク代わりに鈴のような可憐な声で歌い出した。

    『♪愛情こめて、ルラララ~

     さあ、ご主人様、召・し・あ・が・れ!』

    メイド喫茶の真似!
    今朝のリンは、昨日とは打って変ってノーコンPに対して愛想がいいなとルミは思った。
    結局、萌っ娘はこれがやりたかったのね……)  

    即席のメイド嬢は 新聞紙で器用に作ったひらひらのエプロンを着け、
    ベッドの上に座ってるノーコンPにオムレツトーストのハートマークデコに続いて
    かいがいしくコーヒーを注いでやっている。

    萌っ娘はノーコンPさんのことを信用していなかったし、
    連れ戻すことにも賛成しなかった。
     公園にも行かなかったから、謝ってもいない。

    何しろ、本人の前でナイフを使った護身術レクチャーをやって、
    人格全否定の発言をしてたから、バツが悪くて謝りづらいんだろう。

    このメイド喫茶の真似事の朝食サービスは、ノーコンPさんへの
    罪ほろぼしのつもりかな? 

    素直じゃないなあ。まあ、ニセの涙で騙す誰かさんよりは可愛い気があるけどね。
     ほらほら、ノーコンPさんが萌っ娘のオムレツトーストを美味しいって誉めてるよ

    ルミリンの振る舞いを微笑ましくも思った。

    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 東京音楽祭編 361-364頁  ★ドキリとするくらい大人びて見えた。

    2019-08-25 23:19
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。中学生三人組が東京のイベントへ!
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    彼女達のダンスパフォーマンスが投稿動画で評判に。
    これをきっかけに動画サイトの『東京音楽祭』に招待されることに!
    東京までやってきたのはいいが、泊まる所がない! 
    ルミたち中学生三人組は、初めて会った男性のマンションに押しかけた、いかに?


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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                         人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミのコスプレイヤー。   

    イメージイラストは ぽよん様提供。     
                      
                              滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた
    エリカ姫」の
    コスプレイヤーで
    中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷が
    コンプレックス。
    リストカットした過去もあるちょっとワケありの美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。



                           白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽がトレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

    イメージイラストはゆりぺっこ 様提供。

     
                            ノーコンP
                         投稿動画でカリスマ的人気を誇る楽曲制作者。
       【画像なし】            30代半ば、独身。
                         ルミたちを東京音楽祭に招待した。
                  


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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       361-364です。

    部屋の主(ノーコンP)は、怒って出て行ってしまった。
    ルミたちはバッグから着替えを引っ張り出してシャワーの用意を始める。

    男の一人住まい、そんな他人ん家のお風呂に入るのは何だか気持ちが悪い、
    バスタブに今からお湯を貯めるのも面倒なので、彼女たちはシャワーだけを
    さっさと浴びることにした。

    バスルームが狭いので一人づつ順番に入る。
    エリカが最初に入り、その間にルミはリンと
    一緒にノーコンPが戻ってこないか
    玄関ドアをじっと見張った。

    ルミの隣で体育座りするリン、まだナイフを抜き身のまま、ペタリペタリと
    手のひらに当てて、もて遊んでいる。

    ねえ、リンちゃん。危ないから、いいかげん、その物騒なモノを仕舞ってよ

    そ、そうですゥねえ
    注意を受けたリンは、素直にナイフをホルダ
    ーに納めると、それを膝頭の間に挟んだ。

     それを見てルミは、ふうと安心のため息をつき、玄関ドアを眺めながら
    今晩のことを考えた。

    ノーコンPのおっさんは、そんな悪い人には見えない。
    第一、ここに押しかけてきたのは、わたしたちの方だ。
    それにリンちゃんも居るし、ナイフを持った
    銀行強盗だって
    秒殺しちゃう萌っ娘なら、おっさんの一人や二人相手でも 全然大丈夫だろう

    ルミの気持ちも徐々に落ち着きを取り戻す。

    辺りが静かなので、エリカがシャワーを浴びる音が部屋に丸聞こえだった。
    音が止み、バリバリとバスルームの安っぽい折り畳みドアを開ける音が聞こえてきた。

    あがったわよ。次はどっちが入んの?

    下ろした長い黒髪をタオルで揉みながら、エリカが 順番待ちしている ふたりに声をかけ、
    バスルームから出て来た。

    湯上りの彼女は裸だった。さすがに下は履いていたが上半身の白い膨らみは無防備。
    それと、背中が丸見えだった。  

    彼女の肩から下には、初めて見る者は思わず息を飲むほどの酷い火傷の痕がある。
    縮れた皮膚はドス黒く、少女の白い背中に大きなの文字をしたケロイド痕。
    これはエリカが小学生の時に受けたイジメ、教室で背中を火炙りにされるという
    壮絶な集団リンチの跡なのだ。

    彼女はこの身体的な大火傷以上に、心にも深い傷を負っていた。

     集団リンチの時、唯一エリカを庇おうとした子が居たのだが、
    その行動が逆に火炙りの点火役を強いられるハメになる。

    その子は火を点けてしまったことをエリカに恨まれていると思い込み、
    飛び降り自殺してしまう。

    エリカ自分が自殺に追い込んでしまったと自責の念にかられリストカット、
    左手首にそんな傷まで持っているのだ。

    ルミエリカの肢体を目で追いつつ想った。

    スラりと伸びた長い脚、フィギュアモデル並みの恵まれた体形、
    高飛車な物言いする我が儘なお姫様キャラに扮する美少女コスプレイヤー。

    だが、そのコス衣装の下は、体も心も深い傷を持つ悲しい女の子なのだと。


    ルミちゃんが先に入ってくださいですゥ

    リンの舌っ足らずな萌えボイスに促され、ルミは 立ち上がると
    ツインテールの結元を解いて髪を下ろす。

    用意していた透明のビニールバッグに入ったシャンプーセットを持ってバスルームに入る。

    壁の白い目地にポツポツと黒いカビが見えた。高所にはシャンプーの泡が残っている、
    エリ
    が相当慌ててシャワーを済ませたことが窺えた、ここに長居したくなかったのだろう。

    ルミはシャワーを肩から流しにかかる、貧相で子供体形だが、
    無垢な肌に大きな傷など一つもない、お湯を浴びながら自問する。

    裸のわたしはコミュ障の女の子でしかない。
    エリカさんと比べるとわたしの抱えてる悩み
    なんて、ちっぽけなもんだ ……

     ルミの次にリンが入り、三人ともシャワーを済ませ、寝間着替わりのジャージに着替える。元々、ネットカフェに泊まるつもりでいたから、パジャマでなくてジャージなのだ。

     寝仕度を整えたが、部屋の主は一向に帰ってくる様子がない。

    部屋の窓から外を見ていたエリカが。
    あれ、ノーコンPさんじゃない?

     ルミリンも窓にへばりついた。
    マンションの前には外灯が建っていて、ベンチで毛布に包まっている人を照らしていた。

    だ、本当に外で寝ている。
    悪い事したかな ……幾分か心苦しさを感じるルミ

    意外と紳士じゃない。まあ、いくら何でも、このままじゃあ、ちょっと気の毒ね
     自己中なエリカも気にかけ始める。

    仕方ないわね。連れ戻しに行きましょう」 
    一晩くらい放っておいても今の季節、死にはしないですゥよ
    異議を唱えるリン、いつになく辛辣だ。

    よく知りもしない男を簡単に信用してはいけないと言うのだ。
    彼女はコスプレイベントで優勝するほどの人気レイヤー、カメラファンも多い。
    熱心で真面目そうに見えるファンでも、人目のない所に誘われ、
    よからぬ事をしようとする輩がいるとのこと。

    萌っ娘の経験談なのね、なるほど。その輩がその後どうなったか気になるけど……
     ルミはその輩の末路を心配した。

    でも、あのままじゃマズいでしょう。
    あの人が公園で職務質問でも受けてごらんなさい、女子中学生に部屋を乗っ取られましたあ、な~んて白状されたら、あたしたちの立場の方が危うくなっちゃうんだから

    ウグゥ、確かにそうなったらマズいですゥ

    やっぱり部屋に戻ってきてもらうのが正解でしょ、リンはお留守番しててよ

    エリカはそう言うと、下ろしたままの髪に律義にティアラだけは着けて外に出る支度をする。

    ティアラはゲームキャラ『エリカ姫』のコスプレアイテム、ジャージ姿でも
    譲れないエリカの拘りなのだ。

     ルミも一緒に行くことになり、ふたり連れ立ってエレベーターに乗り込む。
    一階で降りてエンタランスまで来るとセンサーが感知してガラスの自動ドアが開いた。

    ルミ、あんたはここで待ってなさいよ。オートロックだから二人とも出ちゃったら、
    外から開けられ、なっ!

    エリカが言い終わらぬ内に、慌てていたルミが 前につんのめり、
    ふたりしてドアの境目を越えてしまう。
    自動ドアがガシャンと冷たい音を立ててふたりの目の前で閉まった。

    あああ…… ごめん
     メガネがズリ落ち、項垂れるルミ

    ドジねえ
     エリカは やれやれといった感じで手のひらを上にあげて首を少しすくねた。

    まあ、いいわ。ノーコンPさんを連れ戻せればいいことなんだし。
    それにいざとなったら、部屋番号のインターホンでリンに開けさせるって手もあるしね

    ルミとエリカはマンションの外へ出た。
    冷んやりとした空気、建物の周りの植え込みで、リーリーとコオロギが鳴いている。

    ノーコンPは公園と言ったが、遊歩道にベンチが置いてある程度で、
    建築規制上の緑地スペースといったところだ。

    外灯がベンチで寝ているノーコンPを寂しく照らしていた。

    は硬そうなスチールベンチにルミたちから背を向けた格好で毛布に包まっていた。

    エリカがベンチへ静かに近づいていく。
    ゴメンナサイ ……
    つぶやくような声で彼女は言った。

    しかし、ノーコンPは黙ったまま、振り向きもせず もぞもぞと少し動いただけだった。

    エリカはベンチの傍らに立ち続ける。
    怒ってる? そうよね、泊めてもらっているのに、失礼な事ばっかり言っちゃって。
    …… 本当にゴメンナサイ

    ルミは我が耳を疑った、エリカがさっきまでの傍若無人な物言いと違い、
    まるで別人のようにしおらしく振る舞っているからだ。

    あのね、あたしたち初めて東京に来て、とても不安だったの。
    それでね。パニックになっちゃって……

    切々と話すエリカ、言葉の最後の方ではヒクヒクと声を震わせている。

    さすがにノーコンPも気になったのか、寝たまま振り向いて、傍らに立つエリカを見上げた。

    ディアラを冠し、下ろした長い髪を夜風になびかせたエリカ
    いつものポニーテールと違い髪を下ろした少女は、ドキリとするくらい大人びて見えた。
    彼女の頬には外灯に照らされた涙の粒が白く光っていた。

     それを見たノーコンPは、慌てて起き上がるとエリカの両肩に手を添えて、

    わかったよ。泣かないでよ。別に怒ってなんかいないからさあ

     そう言って必死になだめにかかった。

     エリカは彼の胸におでこを押し当て、クスンクスンと泣き続ける。

    オロオロするノーコンP、幼い子をなだめるようにエリカの頭を何度も撫でながら、
    はどうすればいいんだというような情けない顔をして、
    傍観しているルミに視線を向けて訴えた。

    だが、ルミは それを冷たく無視するのだった。


    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 東京音楽祭編 357-360頁  ★ド変態に決まってるじゃないですゥか

    2019-08-10 00:03
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    彼女達のダンスパフォーマンスが投稿動画で評判に。
    これをきっかけに動画サイトの『東京音楽祭』に招待されることに!
    中学生のルミたちが東京を目指す、パフォーマンスはいかに?


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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                          人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミのコスプレイヤー。   

    イメージイラストは ぽよん様 提供    
                 

         
                       滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」の

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。
    リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。




                       白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナル
    コス
    プレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは 彩葉 様提供。




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       357-360です。

    ネットカフェに泊まる当てが外れたルミたち三人は、ノーコンPのマンションに
    泊めてもらう事になった。
    東京から電車に乗って船橋という所で降り、駅を出てからも さらに歩かされる。

    ノーコンPの後について エリカルミリンとカルガモの親子のように ぞろぞろと続く。

     ルミは歩きながら 自分たちの今の状況を考え直していた。
    親には内緒で東京に来てるから、予約もなしでホテルへ行っても 家出中学生かと
    怪しまれてしまうし、ホテルの人もきっと保護者に確認を取ろうとするだろう。
     だから、ホテルに泊まるのは無理だ。
    他に何の伝手も無いし、ノーコンPのおっさんに頼るしかない ……

    ノーコンPは直ぐにはOKしなかった、ルミたちが可哀想な捨て猫のような表情で
    懇願しても渋っていた。

    それもそうだろう、未成年者を保護者の承諾なしに泊めたら誘拐犯、社会的に終わる。

    業を煮やしたエリカが強引に説き伏せたのだ。
    あたしたちを東京の音楽祭に呼んだのは、ノーコンPさん、あなたでショ。
    あたしたちが中学生だと知っていたんだし、呼んだ方にも責任というものがあるはずよね。

    このまま路頭で夜明かしするはめになって、警察に職質されたら、
    どう事情説明したらいいわけ? 
    誰のせいでこうなったとか、あたしたち喋っちゃうかも知れないわよ!

    だから、あたしたちを泊めてちょうだい

     エリカノーコンPの眼前に指を突きつけ、責任という言葉をチラつかせながら、
    一方的に捲くし立てた。
    半分脅迫しているようにしか聞こえない。

    さすがにノーコンPも折れるしかなかった。

    引き摺るキャリーバッグを持つ手が痺れてきた、ルミは泊まる先のことを考えた。
    今日会ったばかりの男の人の所へ泊まりに行く ……
    ノーコンPさんは三十半ばのおっさんだ。
    ゲームオタクでコミュ障のわたしが言うのも何だけど、
    投稿動画にハマってるような人だし、今さらだけどヤバくないか?

    リンちゃん、あの人のこと、どう思う?
     ルミ彼女の後ろに続くリンに話しかけた。

    どうって、あのオゲレツな『愛を子宮に届けてよ』な~んて歌詞を作った人ですゥよ。
    ド変態に決まってるじゃないですゥか
    リンノーコンP本人に聞こえるくらいの大きな声で罵るように答えた。

    ルミリンの存在に安心を覚えた。

    何しろ、白銀(しろがね)リンは、近接格闘技エスクリマの使い手で、
    ナイフを持った銀行強盗を瞬殺したこともある頼もしい子だ。

    前を行くエリカが いきなりノーコンPの顔写真をスマホでパシャパシャ撮り出す。

    いいこと。もし、あたしたちに変なことしたら、顔写真が残ってること忘れないでよ! ノーコンPにそう警告した。

     それを聞いてルミは呆れて苦笑い。
    エリカさんの考えた襲われた時の対策?
    でも 襲われてからでは遅いだろう

    ノーコンPは引率する少女達から、そんな仕打ちを受け、不機嫌な顔をして黙々と歩く。
    電車を降りてから随分と経ったが、まだ目的地には着かない、
    商店街を抜け、信号のある大きな道路からも離れ、住宅街に入ってきた。

     乾いたアスファルトの道に キャリーバッグを引き摺る
    車輪のゴオゴオという音が響きわたる。

    まだ着かないんですゥかあ、うちはもう …… 眠いですゥ
     最後尾を歩くリンが弱音を吐いている。
     見れば、いつもお洒落に被っているベレー帽はズレ落ち、足元はフラフラだ。

     この様子に動揺するルミ
    ど、どうしちゃったんだ萌っ娘!
    これから、初対面の人の家へ泊まりに行こうとしているのに、
    頼りにしているわたしらのボディーガードが電池切れになっちゃってるよ。

    『狂犬サキ』の通り名まで持つ喧嘩猛者のリンちゃんは、わたしよりずっと体力があるはず。秋葉原観光でハシャぎ廻り、昼のお寿司屋さんで大喰いしてたし、
    その後の居酒屋さんでもバカ喰いして歌いまくってたからなあ ……

    リンの疲労の原因、心当たりが多過ぎた。

    右へ左へと蛇行しながらキャリーバッグを引き摺り、時々居眠っては道から反れて、
    路肩に突っ込んで行きそうになってしまう。

    その度に、ルミが慌てて彼女の首根っこを掴まえて
    連れ戻しに行かなくてはならなかった。


    ようやく、ルミたちは住宅街の奥まった所にあるノーコンPのマンションに辿り着いた。

    五階建て、そう大きくはないが割りと新しそうなマンション、
    ノーコンPが玄関のオートロックを慣れた手つきでピッピッと打ち込むと、

    エンタランスの自動ドアが開いた。

     小さなエレベーターに乗り込む、キャリーバッグを持っているので
    四人も乗れば 満員電車並みに狭っ苦しい。

     ノーコンPルミの頭の上から腕を伸ばして、五階のボタンを押す。

     到着階でエレベーターから吐き出されるようにして降りた。
     502号室、スチール扉横のネームプレートには何も書かれていない。

    怪しく思いながらも、ノーコンPが扉を開けるや否や、
    少女達はキャリーバッグともども部屋に雪崩込んだ。

    ルミは初めて入る男の人の部屋に、ドキドキしながらも興味津々と観察する。

    ワンルームって聞いてたけど、思ってたほど狭くない。
    ベッドが置かれているが、それでも卓球台くらいのスペースがまだある。

    デスクにはパソコン、キーボード(電子ピアノ)、よく知らないけど音響機材。
     わたしの部屋みたいに散らかっていない。

    想像していたような、美少女アニメのポスターや抱き枕は見当たらない。

    本棚にはジャズやレゲエ、洋楽中心のタイトル、それとコンピューター関係の雑誌。

    唯一、オタクっぽいのは、ボーカルソフトの美少女フィギュアが一つだけ飾ってある。

    だけど、そいつはエロっちいやつじゃないから許してあげよう

    取りあえず、部屋の隅に荷物と一緒にペタリと座り込む。

    この一室で中学生の女の子三人が、今日会ったばかりの男性と一緒に寝るのだ。

    このヤバそうな状況に、リンがポシェットから御護り(軍用ナイフ)を取り出し、
    エリカに護身のレクチャーをやり始めた。

    エリカさん、大丈夫ですゥよ。リンの『御護り』は、NATO軍御用達の品ですからね、
    レプリカだけど

    真顔で聞き入るエリカ

    ふたりにルミは即座に突っ込みを入れる。
    リンちゃん、全然大丈夫じゃないよ、
    ナイフを使うような事態が、既に超ヤバいんだって!

    これは、ただのナイフじゃないんですゥよ
     リンルミに向き直って答えた。

    ええっ!ただのナイフじゃない? 何か特別な仕掛けでもあるの?

    リンはギラりと光るナイフの抜き身を見せながら、ドヤ顔で解説する。

    このナイフはレプリカだけどオリジナル同様にモリブデンが入っていて、
    なんと! 金属だって切れるんですゥよ

    いやいやいや~っ、そんな切れ味の問題じゃないでしょうよ!」 
     リンはナイフの切っ先を今だ玄関で靴の整理をしているノーコンPに向けて宣言する。

    いいですゥか! エリカお姉様にちょっとでも変なことをしたら、
    うちがメッタ刺しにしてくれるですゥよ

    あ~ハイハイ

     狂犬の異名を持つリンが凄んでみても、彼女の素性を知らないノーコンPは、
    舌っ足らずなアニメボイスの女の子が中二くさい台詞を吐いてるくらいにしか思っておらず、おざなりな返事をして軽く聞き流している。

    ふん、まあいいですゥ

     無反応なノーコンPリンは少々不満気だが、再びエリカの方に向き直る。

    ま、まずですゥね、太腿をブスりと刺してですゥねえ、
    相手の動きを奪うのが近接戦のセオリーなのですゥよ

    ジェスチャーを交え、物騒な軍事教練をやりだすリン

    キャー萌っ娘! ノーコンPさん本人の前で、そんなレクチャーやめたげて~」

     ルミは気が気ではない。ノーコンPの方を窺うと、温厚だった彼も、さすがに怒り出した。


    おまえら、いいかげんにしろよ! 
    せっかく親切で泊めてやってるのに、
    まるで
    人を犯罪者扱いしやがって!


     怒ってルミたちを追い出すのかと思いきや。

    俺は、公園で寝てくる!

    はそう吐き捨て、ベッドにあった毛布を丸めて抱ると、部屋から出て行ってしまった。

    この突然の行動に、リンは握り締めていたナイフを振って、バイバイと見送った。

    どうするエリカさん?出ていっちゃったよ

    どうもしないわ、好都合よ。今のうちにシャワーを浴びてしまいましょう

     そう言って、ドアの内側からロックをかけた。
    エリカさん、あんたって鬼だな……

    部屋の主を追い出しておきながら、シャワータイムを優先させる、
    自己中なポニーテールの少女は、少しも悪びていないのだった。

    (つづく)
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