• 『コスプレ少女』ROUTE161  421-424頁  ★中学生の女の子はカレン族なんて知らないか

    2020-09-13 01:35
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
    【 今までのあらすじ】

    コミュ障で友達が出来なかった京都に住む中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    リンに誘われ、サバゲ―イベントの昼食作りを手伝うバイトをすることに。
    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                         人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミのコスプレイヤー。   

     イメージイラストは
     ぽよん様提供。     

                                           白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナル
    コス
    プレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

    イメージイラストは なみぞう 様提供。






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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       421-424です。

     サバイバルゲームの合同イベント、その会場は山を切り拓いて出来た野っ原に
    ドラム缶が 数個置かれただけの自然の起伏やブッシュがメインの野戦フィールドだ。

    取材にきた雑誌社の記者たちが、スポンサーメーカーの新製品を紹介するための
    撮影場所を物色していた。

     あまりにも殺風景な屋外フィールドなので、カメラマンは思案の果て、
    撮影背景として適当な木立にカモフラージュネットを張り、
    それらしい雰囲気を出すことにした。
    メーカーの人も手伝わせて設営に取り掛かる。

    撮影モデルを務めるのは、白銀(しろがね)リンである。

    何しろ、むさ苦しいミリオタの集まりの中で、美少女レイヤーである彼女の存在は、
    戦場に舞い降りた天使のごとく際立っていた。

     雑誌社にとっては格好の人材だ、おまけに金銭的には無報酬で、
    ちょっとしたノベルティグ
    ッズが提供されただけだ。

    もっとも、セレブな天使は、そんな小物には関心なぞなく、チームの内輪にみな配っていた。彼女にとっては、お金よりも商業誌の紙面にモデルとして載ることこそが魅力なのだ。


     一方の本田ルミは、お昼にカレーの配膳をするまで、何もすることが無い。

     次々とやってくるサバゲ―マー達、迷彩ジャケットに弾倉をいっぱい詰め込んだ
    タクティカ
    ルベストを纏う者やハーネスに何丁もガンを吊るしている者、
    全身黒づくめで鎧武者のような
    フェイスゴーグルを装着したSWAT隊員などなど、
    完全武装した集まりの中で、ルミひとり
    だけが着古したジャージの上下に
    普通の運動靴
    と、まるで運動会の学外参加者のような浮いた格好をしていた、
    さらにツインテールに赤いメ
    ガネが悪目立ちしていた。

    歩き回るのも憚れたので、リンが撮影される様子でも見物して時間をつぶすことにした。
    撮影場所から少し離れた場所に、ちょうど転がっていた丸太を見つけ、
    ベンチ代わりに腰かけた。

    ルミの視線の先では、新製品のモデルガンを構えたリンが、
    カメラマンから顔の向きや腕の位置をアレコレと指示されていた。

    ロリコスのイメージが強い萌っ娘だけど、戦闘服姿もカッコよくて似合ってるなあ
    感想を漏らすルミ

    以前、族との乱闘でリンの戦闘服姿を見ていたが、マジな殴り合いの時と違って、
    今回はミリタリックながらも、よりファッショナブルに見えた。

     サファリジャケット風で襟の大きな迷彩服にエンブレムの入ったミリタリーベレー、
    もちろんエンブレムはリンのトレードマークである矢で射抜かれたハートマークと
    天使のウイングがあしらわれたオリジナルデザインで、コーデセンスに隙はない。

     白い頬にウエーブした髪が軽くかかり、吸い込まれそうな鳶色の瞳、
    凛々しいその顔立ちは、
    ファンタジックなネトゲーのヒロインみたいだ。

    本当に萌っ娘は、いくつも顔を持ってるなあ
     ルミリンのモデルっぷりを眺めながら。

    フィギュアケースに飾っておきたいぐらい可愛いレイヤーさん ……
    小数点の計算が苦手なクセに、料理とか、お裁縫は、やたら上手くて女子力が高い、
    おまけに大邸宅にお住いのセレブなお嬢様ときている。
    そんでもって、族を相手に鉄パイプを振り回す裏の顔もあるし ……

     そんな思いにふけっていると、聞き覚えのあるしわがれ声が。
    「隣に座っても、いいかね?」声の主は黒田だった。

    あっ、ああ ……
     不意に声をかけられたルミは、言葉がうまく返せず、丸太ベンチの端に
    慌ててお尻をずらす
    と、せわしい手ぶりで横の席を勧めた。

    「やあ、すまないね」
    黒田はルミの横にゆっくりと腰を降ろした。

    ルミは本日のバイトの雇い主でもある黒田の顔をあらためて間近で見た。
     アーミーベレーに大きく色の濃いサングラスをかけ、映画で観た米軍将校みたいだ。 

    もみあげから連なるワイルドな顎髭には、所々白いものが混じっていて、
    老練な風格が感じられた。

     凝視されているのに気付いたのか、黒田がルミの方を向いて話しかけてきた。
    「君もあの子と同じようにコスプレをやっているんだってね?」

    あっ、ハイ ……リンちゃんほど可愛くないですけど、そのう……自己満足の世界で …

    「その赤いメガネも、ゲームキャラの真似ですね、良く似合っていますよ」

    あ、ありがとうございます

     ルミには分かった、黒田が年齢のかけ離れた自分に話を合わせようと
    気を使っていることに。

    「ところで、あの子は平和にやってるのかね?」

    はあ?

     突然の質問にルミは戸惑った、聞き間違いかと一瞬思ったが、
    確かに『平和に』と訊かれた。
    この人はリンちゃんについて、一体どこまで知っているんだろう?
     族相手に暴れてたこととかも知ってるのかな?
    そう疑問に思いつつルミは答えた。

    ちょっと平和じゃない時もあったりしましたけど、今は大丈夫みたいです

    「ふむ、あの子が無茶をせんように、これからも仲良くしてやってくれ」

     まるでリンの保護者のような黒田の口ぶり、髭をたくわえたそのワイルドな風貌から、
    怖そうに見えたが、その紳士的で優しい話し方にルミの思っていた印象が変わった。

    も、もちろん、わたしの方が仲良くしてもらってる方なんです。
     わたし…人と話すのが苦手で……って言うか会話するのが下手で ……
    直ぐに嫌われてしまうんじゃないかと思って怖くなるんです。

     今でも学校ではボッチで、同じ学校じゃないけど
    初めて友達になってくれたのがリンちゃんなんです

     ルミ自分のコミュ障ぶりを初対面の黒田に吐露した。
    黒田が医者だと聞いたせいもあって、どこか安心感があったからだ。

    「あの子も、君みたいな同年代の友達が居ないと、心のバランスが保てない、
    おふたりは良い関係にあると思いますよ」

    黒田さんはお医者さんだそうですが、精神科医なんですか?

    「いや、私は外科です。心じゃなくって、体の方を切ったり縫ったりする方ね。
     若い頃は、実銃撃ちたさに医者の身分を利用して海外の紛争地へ行ったりもしていました」

    紛争地って、戦争してる所へ?

    「ああ、医者なのに不純な動機でしょ。
     もちろん、救命活動もしていましたよ、
    銃創治療じゃ銃弾よりも砲弾片の摘出の方が多かったですねえ。

     東南アジアのカレン族 ……って言っても、中学生の女の子は カレン族なんて知らないか。
    自分達の国を作ろうと政府軍と戦っていた民族がいたのですよ。
    その紛争地域で中立的なボランティアとして参加していてね、
    非政府側へも医療活動をしていたのです。

    そこで仲良くなった兵士に頼んで、銃を撃たさせてもらってました。
    西側の銃だけでなく、共産圏のものや、大戦時に使われた骨董品級のものまで
    色んな銃があって実に貴重な体験でしたよ」

    そんな危ない外国まで行って、凄いガンマニアなんですね

    「そうですね、この歳になっても、トイガン持って遊んでいるんですからね」
     そう言って黒田は破顔する。

     ルミは黒田が結構、話好きだと思い、リンとの関係をもっと深く
    訊き出せるのではと考えた。

    リンちゃんとも、良く話をされるんですか?

    「あー、あの子は少し変わった子だからねえ」
     やや言い方を選んでいる様子の黒田。

    ウサギを捕って食べたりしてるし。
     わたし、目の前で生きてるウサギを首ギッチョンするのを見せられたことがあるんです。
    ナイフでスパっと、血がぼたぼたーって

    「ハハハ。あの子はナイフを使うのが上手だからねえ」

    リンちゃんは御守りとして、いつも本物のナイフを持ち歩いているんですけど、
    なぜだと思いますか?

    「君の目は、その理由を知っているようだね」

     返された言葉にルミは息を止められた。
    この人、喋りながらもわたしのことを探ってた! 
    わたしもこの人のことを探ってたんだからお相子か ……

     黒田は一呼吸おいてから、視線をモデル撮影しているリンの方に向けて。

    「母親を刺し殺されたトラウマ、君もそう考えているんじゃないのかね?」

    ハイ……

    「犯人は十九歳の少年で犯行に使っていたのは、アーミーナイフだったと聞いてます」

    犯人は十九歳の少年! 知らなかった情報だ。
     この人はわたしよりリンちゃんの過去に詳しいのかも知れない

    「犯人の少年は、いつか少年刑務所から出てくるでしょう。
    あの子は心の奥底で、それに怯えてるんじゃないかと思います」

    今のリンちゃんだったら、返り討ちにしそうですね

    「それはそれで怖いことです……」
     そう言うと黒田は、お尻を手でパンパンと払いながら丸太から腰をあげた。


    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』ROUTE161  417-420頁  ★銃砲刀法にバリバリ引っかかってくるやつ

    2020-08-15 22:52
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
    【 今までのあらすじ】

    コミュ障で友達が出来なかった京都に住む中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    リンに誘われ、サバゲ―イベントの昼食作りを手伝うバイトをすることに。
    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                         人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミのコスプレイヤー。   

     イメージイラストは
     ぽよん様提供。     
                                  
                         白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナル
    コス
    プレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

    イメージイラストは こんぺいとう 様の
    イラスト―メーカーより。




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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       417-420です。

    白銀(しろがね)リンと元自衛官の武田とのCQC(近接格闘)模擬戦を
    間近で見ていたルミは、驚きも半分、果然の思いも半分であった。

    萌っ娘の圧勝じゃん ……
     ナイフを使ったCQC(近接戦闘)って言うから、派手なバトルを期待しちゃったけど、
    瞬きしてたら見逃すくらいあっけなかったな。
     …… まあ、よくよく考えたら、いくらレンジャー出身だって、
    あの子の異能者レベルのスピードに、ついてこれる人は、そうはいないか ……

    お鍋の灰汁取りも忘れ、感心するルミ


    勝負に負けた武田は、平然と自分の胸に背を預けて寄りかかっているリン
    少し憎らし気に頭から見下ろす。

    「また、やられたな。俺の腕を弾いて体ごと飛び込んでくるなんて、
    ちょっとでも外したら大怪我してたぞ」

    きゃははは!

    リンは武田の胸に後頭部をくっつけたまま、顔を上げ反らして高笑いする。
    そして、一呼吸おいてから静かに一言。

    …… うちが外すとでも?
     その言葉には絶対的な自信と凄みが籠っていた。

    でもでも、中尉さん。うちのことを心配してくれてたんですゥね、優し~い
    今度は甘い萌えボイスで猫のように頭を摺りつけ、大きな瞳で武田の顔を仰ぎ見る。

    いい大人の武田も、美少女のあざとい仕草に情けなく翻弄されてドギマギしている。
    照れ隠しなのか、武田は突如、勝者の肩と膝裏に手を伸ばして抱え上げた、
    お姫様抱っこの状態で、小さい子をあやす様に振り回す。

     強く握れば折れてしまいそうな華奢な体躯、まだ幼女体でお尻も小さく驚くほど軽い。

     抱き上げられたリンは、わざとらしく「きゃっ」と叫ぶも、
    武田の太い首に腕を絡めて振り回されるのを楽しんでいる。

     三十過ぎの男と十二歳の女の子、ふたりの歳の差から親子の戯れのように見える。

    うちも中尉さんのこと心配してるですゥよ、ハンデがあってよかったあ~っ

     リンの言葉を耳にしてハッとするルミ彼女の顔から血の気が引いた。

    ハンデとは体当たり禁止のルールのことだ。
    リンにとって不利な体格差を埋めるためのものだと思われたが、ルミは気づいてしまった。

    ハンデはあの子の安全のためにあるんじゃない! 
    もし、ハンデがなかったら …… 死闘になりかねない、
    あの子が本気を出したら、マジで相手の身がヤバい!
    武田さんはそのことに気づいていない ……

    ルミがそう思ったのは、今までリンがナイフを持った銀行強盗を退治したり、
    大勢の族を相手に乱闘したのを見てきたからだ。
    白銀リンは無邪気そうに振る舞いつつも、その言葉に喧嘩猛者の箔を垣間見せてくる。

    ルミがそう感じていた時、誰かが呼んでいる声が聞こえてきた。

    「武田さ~ん、武田ちゅうい―」
    農家の間口から丸川が手を振って武田を呼んでいる、どうやら炊飯の交換時間のようだ。

    「おう! 今行く!」

     武田は抱えていたリンをそっと地面に立たせてると。

    「それじゃあ、白銀、また後でな」

    いってらっしゃいですゥ~
     リンは小さく手を振ってバイバイで見送る。

     武田は脇を締めたランニングスタイルで駆け戻っていく。
    自衛隊を辞めても叩きこまれた行動様式は抜けないらしい。

    ******

     カレーの仕込みは続く、灰汁取りを終えた寸胴に市販のカレールーを砕いて放り込む、
    よく混ぜて一煮立ちさせたら、留め具付きの蓋を閉める、パッキンが付いているので
    輸送中でも零れない仕組みだ。

    ルミちゃん、うちらのお仕事は、お昼の時まで一旦終わりなのですゥ。
     熱々の重たい鍋は、中尉さんらが運んでくれるですゥ。
    量が多いから冷めないし、そのままで具にじっくりと味が染み込んでいくですゥよ

    ふ~ん、そうなんだあ

    フィールドまで、うちらは先に行くですゥよ

    あれ? 鍋は置いていくの?

    後で炊飯と一緒に取りに戻るそうですゥ

     ふたりは再びピックアップトラックの荷台に乗り込み、農家を出発した。

     国道に出て暫く走り、未舗装の脇道に入った、乾いた野っ原をゴンゴン進んでいくと、
    運動会で見るような白い集会用テントが見えてきた。
     そこがサバゲ―イベントの開催本部で、既にたくさんの人が集まっていた。

    皆、様々なミリタリックコスだ、この辺鄙な開催地へは車で来たであろうから、
    恐らく道中もまんまの恰好だったに違いない。

    車はテントの近くで停車した。ルミリンは荷台から降りる。

    うわー、すごいいっぱい

     周りは大人だらけに見えた、女性も居たが小中学生は見当たらない、
    中学生で、しかもジャージ姿なのはルミだけだった。

     ルミリンは、チームの代表である黒田に連れられ開催本部の天幕の裏に入った。

     中にはパイプ椅子と長テーブルが置かれていて、ここがふたりの待機所になるとのこと。

     ルミ達が椅子に座って一息つく間もなく、ドヤドヤとサバゲ―雑誌の編集者が
    カメラマンとモデルガンメーカーの社員を従えてやってきた。

    「おはようございます、白銀(しろがね)さん。
    早速ですがスポンサー分の撮りをお願いしたいのですが?」

    開口一番、アーミーシャツ姿の編集者が撮影の依頼をする。

    いいですゥよ。確かニューモデルはステアーAUGでしたっけ?
     編集者の申し出を快諾するリン。事前に撮影内容も知らされているようだった。

     これを聞いて気を良くしたメーカーの社員が揉み手をしながらリンに話しかける。

    「そうです、そうです、よくご存じで。
    3.4kgとリアルな重量感、弾数も八十発とゲームでの実用性も高い新製品なんですよ」
    大きなパッケージを開けてモデルガンを取り出し、そのスペックを喋りながら
    マガジンや電源装備を喜々として組み立てていく。

    ルミはその様子を見て思った。
    まるで小学生が心躍らせてプラモを作るように、この人、楽しそうに仕事をしているなあ

     自慢の新製品を構えるメーカーの社員。
    「見てください、トリガーの引き切りが軽いんですよ」
     そのまま商品のプレゼンが始まりそうな勢いだったが、
    一眼レフを首からぶら提げたカメラマンが 彼の肩をトントンと叩いてそれを制した。

    「メーカーさん、続きは後でお願いしますよ。
    外で背景のセッティングをしてますんで、皆
    さん、よろしくお願いします」

    サバゲ―雑誌の関係者らは、天幕の外へ出ていった。

    リンちゃんは、どんな銃を使ってるの?

    うちは、トイガンは持ってないですゥよ

    ええっ、サバゲ―チームに入ってるのに?

    うちはチームのマスコットガールなのですゥ。
    それとルミちゃんにも教えておきましょう。
    サバゲ―で使うトイガンには、条例という県ごとの法律で
    発射する弾の威力が強いモデルは有害玩具として規制がかかるのですゥよ。
    今日のイベントで使われるトイガンは、みな十八歳以上でないと使っては
    いけないやつなのですゥ

    そうか、それでここへ来てる人たちって、大人の人ばっかりだったのか

    中学生は買えないし、借りて撃ってもダメなのですゥよ。
    だから、うちはゲームには参加出来ないのですゥよ

    でも、銃持っての撮影はOKなの?

    多分、OKなのですゥ、撃ってないから

    多分 …… なの?

    グレイゾーンらしいのですゥ

    グレイなのかよっ!

    あっ忘れてた! それとっ
    急にリンルミの首に腕をまわすと強引に引き寄せ、頬どうしをくっ付けた。

     突然のことにルミは驚いた、マシュマロのように軟らかなリンの頬の感触を感じながら、
    視線を彼女に向けたが、頬をくっつけた体勢なので、長いまつ毛しか見えない。

     リンは小声で。
    いいですかルミちゃん、うちがサバイバルナイフを持ってることは、
    他の人には喋っちゃダメですゥよ

    えっ、何で?

    うちのチームの人には黙認してもらってますけど、他の人には絶対内緒なのですゥ。
    うちのナイフは有害玩具どころか、銃砲刀法にバリバリ引っかかってくるやつなので、
    持ってるだけでも逮捕されちゃうのですゥ

    違法の認識はあったのね。んじゃ、何で持ってくんのよう

    御守りですゥ きっぱりと言い放つリン

    うそー、御守りでジャガイモ切ってたじゃん

    調理器具として使っていい御守りなのですゥ

    強引やな

    とにかく、内緒ですからね

    わ、わかりました 返答を聞いて、リンは首から腕を解いた。

    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』ROUTE161 413-416頁     ★彼女の小さな手に武骨なナイフは

    2020-07-19 19:45
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
    【 今までのあらすじ】

    コミュ障で友達が出来なかった京都に住む中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    リンに誘われ、サバゲ―イベントの昼食作りを手伝うバイトをすることに。
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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                         人公の本田ルミ

    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミのコスプレイヤー。   

     イメージイラストは
     ぽよん様 提供。     
                      

                           白銀(しろがね)リン

    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナル
    コス
    プレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

    イメージイラストは ゆりぺっこ 様提供。



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       413-416です。

     ルミは ピーラーでジャガイモの皮を剥きにかかる、濡れたイモは滑りやすく持ちにくく、
    見るも危なっかしい手つきでイモの表面を削る。  

    削っても削ってもバケツのイモはなかなか減っていかない、
    指がイモの灰汁で薄黒く染まるわ、おまけにまだ次の人参が控えている。

    ところでリンちゃん、今日のカレーは何人前を作る気なの?

    百人前くらいですゥ、参加者は五十人ほどですゥけど、みなさんお替りするでしょうし、
    倍は容易しておかないといけないのですゥ~
     舌っ足らずなアニメ声でシレっと答えるリン

     百人前と聞いて、ルミは ふうと深い息をつく。
    まあ、それだから、自分にバイトの声がかかったんだと思う……

     外皮を剥き終わった玉ねぎの方は、リンがクシ切りの作業に取り掛かっていた。
    彼女は玉ねぎが放つ催涙ガス対策にサバゲ―用のゴーグルをちゃっかりと着用している。

    フォー、これは意外といいかもですゥ

    そして、包丁ではなく、例のサバイバルナイフを使って、玉ねぎの頭とお尻を切り捨て、
    二つ割りにし、クシ切りにしていく。
    彼女の小さな手に武骨なナイフは持て余されるように思えたが、器用に使いこなしている。

    ルミリンに訊いたところ、ナイフを使いこなす訓練の一環だそうだ。
    何故、リンがそんな訓練まで必要と考えているのか? 
    ルミには さっぱり理解出来なかった。

    以前、リンの大邸宅の庭でキャンプをした時も彼女の変な拘りをみせられた。
    このお嬢様は大がかりなキャンプセットであろうとネットで豪快にお取り寄せする、
    そんな性分の子なのだ。

     下ごしらえをしている彼女たちの後ろでは、武田と丸川が、
    カマドの設営準備をしているところだった。

    肩に小型のプロパンガスボンベを担いで運び込むふたり、迷彩服を着た男が
    灰色のガスボンベを担いでいる様は、まるで爆弾を運んでいるように見えた。

     ふたりはコンクリートブロックが置いてある場所にガスボンベを降ろすと、
    次は錆びた鋳物のコンロにガスゴム栓を繋ぎにかかる。

    ブロックを組んだカマドが出来上がった、続いて、寸胴と呼ばれる給食でスープを
    運ぶような縦長の大きな鍋が運ばれてきた。

    リンがカットした玉ねぎをそこへ放り込んでいく。

     ルミが剥いたジャガイモや人参も、リンがたちどころにカットして放り込んでいき、
    時間がかかったが寸胴三つ分を何とか切り終えた。

    水を加えて火にかける、リンがお玉を持って、ルミに仕込みの説明をする。

    あとは時々、こうして鍋の表面に浮いてくる灰汁をすくってやるのですゥよ
     そう言ってリンは、沸々と表面に細かい泡となって塊る灰汁を
    お玉で丁寧にすくってみせる。

     少ない食数ならば、野菜は炒めたりともっと手間をかけるらしいのだが、
    さすがに量が多いと無理なので、今回は直接煮ているとのこと。

    中尉さんらは農家さんの大きなお釜を借りて百人前のご飯を炊きにかかっているのですゥ。大きなお釜でも百人分となると、三回炊かなきゃならないので、メチャ大仕事なのですゥ。
    でも、うちらは灰汁取りの番だけだから、一息つけるですゥよ

    ルミは今、教えてもらった灰汁取り作業をおぼつかない手つきで真似をする。

    日頃、親の手伝いなど一切していないルミは、皮剥き作業だけでヘトヘトなので、
    灰汁取りも直ぐにリンに任せて地べたに座りこんでしまう。

    嗚呼、しんど~い、リンちゃんこんなお手伝い何回もやってるの?

    いや、二回目ですゥよ、前は二十人足らずでBBQでしたから、
    チョロっと野菜の下ごしらえくらい。
    でも、今日は合同イベントで雑誌の取材も来るのですゥ

    えっ、そうなの?

     リンは かけていたゴーグルを額の上にあげ、ルミとのお喋りに本腰になる。

    ルミちゃんも一緒に撮ってもらいたいですゥか?

    ダメえ、わたし、顔出しNGだから
     ルミは 顔を左右にブルブルと震わせて断る。

     話し込んでいるふたりの前に、武田がふらりとやってきた。

    おふたりともご苦労さん

    あら、中尉さん、炊飯サボってて、いいんですゥか?

    丸川君に火の番をさせるから大丈夫だよ。炊きあがって、交換する時が忙しいんだよ

    はは~ん、ひょっとして、ルミちゃんを見に来たですゥか? 
    中尉の趣味はメガネっ娘?

     口の端をあげて、目上の男性をからかうリン

     ルミは 体育座りになり、下を向いて赤面する。

    違う違う! 白銀(しろがね)が友達連れて来たっていうから、
    どんな子なのか気になって。
     見たところ普通の子っぽいけど?

    そうですゥよ。ルミちゃんは普通……って言うか、ネトゲーマーで、
    ただ今、コミュ障のリハビリ中なのですゥ

    コミュ障? 丸川君みたいなもんか? 
    あいつは引籠りだったのを黒田さんが親に頼まれて、何とか外に出られるようにまで
    面倒見てきたからな。十九歳でプーだけど、社会復帰出来そうだし

     じっと聞いていたルミは、丸川というあの若い人もそうなんだあと妙に共感を覚えた。

    白銀の友達っていうから、俺はまたCQC(近接格闘)の達人でも連れてきたのかと
    想像してたんだよ。
    なにせ、白銀は模擬戦と言えども、レンジャー徽章を持つ俺を負かす恐ろしい子だからな

     聞き耳を立てていたルミは、思わず顔をあげて声を出してしまう。

    マジっすか!

    おおっ、この子、今の話に喰いついてきたぞ

    ルミちゃんは、ネトゲーマーさんですから、シューティングゲームで
    毎晩、派手に撃ち殺しまくってるみたいなのですゥよ

    リ、リンちゃん、人前でそんなデタラメ言わないでよ! 
    撃ち殺しまくったりしてないよ。
     それより、自衛官相手にCQCで勝っちゃうの?

    キャハハハ、ラバーナイフを使った模擬戦で体当たりなしのハンデ付きなのですゥ

    でも、相手はプロじゃん

     ルミ武田の容姿をマジマジと見直す。

     身長は百七十センチほど、決して大男ではないが、首回りも太く、
    袖捲りした腕も逞しい、格闘向きの体格だ。

    ちょっと、お見せしますですゥかあ

    えっ、今ここで?

     リンはお玉をルミに手渡すと、武田に目で合図を送った。

     ふたりはカマドから離れて互いに距離をとって向き合う。

     武田はホルダーからナイフを取り出し、アーミーベストをその場に脱ぎ捨てた。
     ナイフのブレードを指で曲げて見せる、模擬専用のラバーナイフだ。

     腰を落とした騎馬立ちの構え、おそらく、リンが素早い動きで重心を崩しにかかることを
    承知しているのだろう、体重差から言えば、子供相手に負けるわけがないはずだ。

    一方のリンは、何も持たず、構えもとらずにふらりと半身に立つ。

    リンちゃんはどうやって闘うつもりなんだろう? 
    てっきり同じナイフかエスクリマの棒でも持つのかなと思ったんだけど……

    ルミはそう疑問に思った。
    リンの近接戦スタイルはフィリピンの古武道であるエスクリマだからだ。

    両者は距離をとったまま動かない。

     素人のルミから見ても、大人である武田の表情の方が真剣だ。
    ギラギラとした眼光、射抜くような視線で対戦相手を見ている。

     リンはその大きな鳶色の瞳を妖しく輝かせている、
    うっすらと浮げる笑みとともに、好物を前にしたヤンチャな子供のような……
    否、どちらかたと言えば狂人に近い、端整な美少女だけにホラーチックな
    恐ろしさを感じる表情だ。

    武田が間合いは詰めずに、ナイフを前後にフェイントっぽい動きをするも、
    完全に読まれているのかリンは微々とも動じない。

    くそお、こちらから出たら、前みたいにやられる!

     すると、リンの方が静かに歩を進めて来た。

     武田は相手の動きを読み切れずにいた。

    横っ飛びか? カウンタ―狙いか?

     リンは構わずゆっくりと間合いを詰めてくる。

    武田の考えは、歩を進める相手の足が地面から離れようする瞬間が、
    地面を蹴るタイミングに最も不利、そこを突く。

    右手でナイフを突き出すので、相手は避けるとすれば さらに右側に動くのが定石だ、
    相手が右側に飛んだ場合も想定していた。

    リンの左足が浮き上がろうとした瞬間、ヒュっと甲高い呼吸音とともに、
    武田の突き出した右ひじが、下方向から弾き上げられた。

    リンがひじで突きあげたのだ。
    気が付けば、武田の胸にリンが背中をくっ付けるような体勢で居た。

    は、速い ……」 あまりの速さに武田は硬直。

    リンは下から 武田の喉を細い人差し指でなぞってみせる、ナイフで切り裂いたという意味だ。

    うふふ、中尉さん。今回、うちはワザとゆっくりと歩いてタイミングを誘ったのですゥよ。大きな呼吸音で反射的に動いたでしょ

    なんと、最初からリンは計算づくだったと言うのだ、元自衛官の武田は絶句した。

    (つづく)

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