『コスプレ少女』ルミの恋ばな その④ 405-408頁  ★あれが初恋でも悪くないな
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『コスプレ少女』ルミの恋ばな その④ 405-408頁  ★あれが初恋でも悪くないな

2020-06-14 17:21
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
    【 今までのあらすじ】

    コミュ障で友達が出来なかった京都に住む中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    エリカに誘われてダンス動画を作ったのをきっかけに、東京のイベントに出演したりと
    それなりに脱コミュ障しつつある日々を送るっている。

    ある日、ルミの部屋で三人はまったりと過ごしていると、
    ひょうんなことから、話題がルミの幼い時のことに。

    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です

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    *****

    【登場人物紹介】                
                         人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミのコスプレイヤー。   

     イメージイラストは
     ぽよん様提供。     
                      


                        滝沢エリカ                
    ポニーテールにティアラを着けた
    エリカ姫」の
    コスプレイヤーで
    中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷が
    コンプレックス。
    リストカットした過去もあるちょっと
    ワケありの美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。


                           白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナル
    コス
    プレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

    イメージイラストは べこあめ様提供。


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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       405-408です。

     胸の前で祈りを捧げるがごとく両手を組んで、乙女チックに宙を仰ぎ見るルミ
    そう、あれは …… わたしが、いつものようにお兄さんの部屋に行った時 ……
     と、妙に芝居がかった口調で語り始めた。

    お兄さんは居なかった ……

    えっ?
     聞き入っていたエリカが 思わずテーブルに突っ伏しそうになる。

    夕飯の後にも行ってみたけど居なかった ……

    ああん? 何それ? 居なかったって!
    あんた、お兄さんとの絡みからサッさと話を始めなさいよね!
     まさか、お兄さんは、もう下宿を出ていっちゃってたとか いうオチじゃないでしょうね!

     気の短いエリカが眉間にシワ寄せた怖い顔で、ルミの話に文句をつける。

    まあまあ、エリカさん、大人しく聞いててよ。
    お兄さんは、その日は帰って来なかったんだ。

    おばあちゃんに訊いたら、大学に泊まり込んで難しい実験をしているらしいって。
     仕方がないから、勝手に部屋に入ってPC点けて、ゲームして遊んだ

    あんた、それ、立派な不法侵入だから

    子供のしたことですから

    ……

    でもね、直ぐに飽きてきた。ゲームのミスをからかったり、
    クリアを一緒になって喜んでくれるお兄さんが居ないと やっぱりツマんない。

     それでね、狭い畳の部屋を見渡してみると、隅っこに まだ入力作業に手をつけていない
    ノートが どっさりと積んであるのを見つけたんだ。

    よし、これをやっといてあげよう、わたしは勝手にキーボードを叩いて入力作業を始めた。
    次の日もお兄さんは、下宿に帰って来なかった。わたしは独りで入力作業を続けた。

     これを全部片付ければ、お兄さんが帰って来てくれる、また遊んでもらえると、
    なぜかその時のわたしは勝手にそう思い込んでいたんだ。

     その次の日も、またその次の日も、お兄さんは帰って来ず、
    わたしは学校から帰ってくるとランドセルを放り出し、直ぐにお兄さんの部屋に行って、
    キーボードを打った。
     夕食の後も部屋に浸って、打ち続けた。
     次の日も、その次の日も、打ち続けた。

     五日経って、ようやくお兄さんが帰ってきた。
    お兄さんは自分の部屋に一歩入るなり、呆気
    にとられてた。
    まるで家捜しでもされたかのように部屋の中が散らかっていたからね。わたしのせいだけど。

     でもね、データの入力作業もちゃんとやったんだよ。
    わたしは仕事の成果であるプリントアウトした紙を持ってきて、
    喜々としてお兄さんに見せた。

    『入力作業って、どれの?』と、お兄さんが怪訝な顔して訊いてきた。

    わたしは散らかしていた元データのノートを寄せ集めて、
    これ、ぜーんぶやったんだよって、得意気に見せた。

    『全部ってウソだろ? 八千ページを全部か!』
     お兄さんは、今まで見たこともないような顔して驚いてたなあ

     ルミはクスリと笑みを浮かべ、懐かしい思い出に浸っている。

     聞いていたエリカが、額に手を当てて天を仰ぎみる。軽く目まいに襲われたのだ。

    ああ、だいたい想像は、つくわ ……
     昔っからだったのね、あんたの集中力がとんでもない威力を発揮するのって
     半ば呆れ気味な言葉を零す。

     女の子三人、小さな折り畳みテーブルを囲んでのティータイム、
    リンがティーポッドに新しい茶葉の用意を始めた、話がまだまだ長引きそうだと
    察知したようだ。

     ルミはテンション高く話を続ける。
    それでね、わたしはお兄さんに入力作業にかかった時間を説明したんだ。

    一日五時間も! 待てよ、一日五時間として五日間、
    いや、正味四日間だな、二十時間もかけてか? いや、たったの二十時間だ!
    一分で六ページ以上! 本当に、そんなハイペースで打てるのか?』

    お兄さんは、改めてプリントアウトデータの何枚かをノートと見比べていたよ。

    『本当に、やってある…… 』

    でしょっ、でしょっ、全部出来てるでしょ。
    そう言って、わたしはお兄さんに抱きついた。
    そしたら、わたしの頭を優しく撫でながら、
    よくやったと誉めてもらったよ。

    大きくて暖かい手だった、なぜか涙が溢れてきた、その時気付いたんだよ。

    ゲームで遊んでもらいたかっただけじゃない、
    わたしはお兄さんに誉めてもらいたかったんだ、自分を認めてもらいたかったんだよ

     つい、さっきまでハイテンションだったルミが、瞳を潤ませメガネを曇らせている。

     エリカが小さな溜め息をつきながら、
    誰かに認められたい …… コミュ障のあんたが求めてるテーマじゃない。
     あんただけじやなく、これって人の普遍的な承認欲求なんでしょうね

    エリカお姉様、何、難しいこと言ってるんですゥか? 
    これはルミちゃんの初恋っぽいお話ですゥよ!
     大人しくしていたリンエリカに突っ込む。

    初恋っぽい? ぽいって言うところが何だか微妙ね
     突っ込まれたエリカもぼやき気味に返した。

    べ、別に、初恋ってわけじゃあないよ
    ルミはちょっとデレながら、自分の頬を両手で押さえ顔を赤くする。

    でも、そのお兄さんへの『一途な想い』があったからこそ、
    あんたの器用なPCスキルが目覚めたってわけでしょうよ

    恋じゃないけれど、『想い』はあったんだろうなあ、何だかそう思えてきたよ
     ルミはそう言って、テレ隠しにティーカップの残りをグイと飲み干した。

     リンがニヤニヤしながら、語尾をわざとらしく伸ばした口調でルミ質問をする。

    それでえ、その後ゥ、そのロリコンのお兄さんとはぁ、どうなったんですゥかぁ?

    どうもなっていないよ。それに、お兄さんはロリコンじゃないし!
    わたしが四年生になる前に大学院を卒業して、下宿から出て行っちゃったよ。
    それから全然会っていなし、うちも、ここへ引越してきたからね

    かわいそうに、片思いで終わったですゥか
    リンが哀れんだ表情でルミを見る。

    いや、だから、片思いとかじゃないから

    エリカも同じような表情をして追撃する。
    別に隠さなくっても、いいじゃない。
    そういう幼い時の淡い初恋って、誰でも一回や二回は有るもんよ

    お姉様、初恋に二回目はないと思うのですゥ

    恋だか何だか、本人がまるで自覚してないから、二回有ってもいいのよ
    言葉の揚げ足とりしたリンポニーテールの年長者は滅茶苦茶強引な理屈で制す。

    ルミ、愛しのお兄さんが下宿を出ていく時、あんた絶対泣いたでしょう
    エリカルミの方に顔を突き出しながら、断定形で言った。

    ウグッ、悔しいけど、ええ、泣きましたとも、
    お兄さんや周りの大人が困るくらい大泣きましたよ。
    だって、まだ小学校の低学年だったし

    それで、別れ際に告白したの?

    だから、そんなんじゃないって言ってるじゃん!

    お別れのチュウもなしですゥかぁ?
     リンは唇をチロリと舌なめずりして、ニヤりと笑う。

    リンちゃん、完全にわたしをからかってるでしょ

    あら残念、チュウは無かったですゥか

     お人形さんのような長いまつ毛を伏せ、すまし顔で新しい紅茶をカップに注ぎ始める。
     表情をクルクルと変えるリンは、見た目は愛くるしいお嬢様なのだが、
    同い年のルミに対してはからかうのに遠慮がない。

    あるわけナイじゃん ……
     完全否定するルミ

    写真とか何かないの?

    写真? 写真も撮ってないなあ。お兄さんとの思い出って言ったら、これくらいかなあ
    ルミは机の上にある一番古い型のPCを指差した、基本のソフトが古いので、
    ネットには繋げていないものの、今も現役稼働中だ。

    リンが立ち上がってそのPCの傍に寄り、モニターを撫でながら、感心した風に言った。
    へえー、これがお兄さんの形見ですゥかぁ

    いいもの、もらってるじゃない

    形見じゃないよ! 勝手に死んだことにしないでくれる

    中に秘密のフォルダとか残ってなかったの?
     十年後の君へとか、ビデオメッセージ的な

    ありません!

    お姉様、ロリコンの人は、成長してしまった子には興味が薄れるのですゥよ

    あら、そうなの?

    こらこら、お兄さんロリコンじゃないってば!

    ルミは二人にからかわれながら、心中では忘れていたお兄さんへの想いを蘇らせていた。
    お兄さん、今は何処で何してるんだろうなあ。
    ちょっとセンチな気分になってきたよ。
    あれが初恋でも悪くないな

     想いはコミュ障少女の胸の内に仕舞われた。

    (『ルミの恋ばな』終わり) 次回 新章へ

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