凪のあすから第9話「知らないぬくもり」のストーリー解析を行う。漫画未読。→前回 →次回
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■評価
★★★ テクニカル、ストロング
[ニコニコ本編]http://www.nicovideo.jp/watch/1385605537
■総評
第9話は、光がまなかに接するうちに恋心に耐え切れなくなるというストーリー。光とまなかの気持ちの違いがうまく表現されており、光の葛藤が良く分かる。また、構成からみても、陸と海の問題がストーリーにうまく組み込まれており、ストーリーの完成度は高い。特に後半は、ちさきと紡のシーンや、クライマックスのシーンなど、視覚的にも強度が高いシーンが含まれアニメーションとしても中々。
■基本情報
原作 Project-118
監督 篠原俊哉
シリーズ構成 岡田麿里
脚本 和場明子
アニメーション制作 P.A.WORKS
->Wikipedia
■登場人物
[主人公たち]
先島 光(さきしま ひかり) - 花江夏樹
向井戸 まなか(むかいど まなか) - 花澤香菜
比良平 ちさき(ひらだいら ちさき) - 茅野愛衣
伊佐木 要(いさき かなめ) - 逢坂良太
木原 紡(きはら つむぐ) - 石川界人
[潮留家]
潮留 美海(しおどめ みうな) - 小松未可子
先島 あかり(さきしま あかり)- 名塚佳織
[小学生]
久沼 さゆ(ひさぬま さゆ) - 石原夏織
[神社関係者]
うろこ様 - 鳥海浩輔
先島 灯(さきしま ともる)- 天田益男
[木原家]
木原 勇(きはら いさむ)- 清川元夢
■ドライバー分析
第9話のメインドライバーは3つ。
①光がまなかに対する気持ちを抑えられなくなる(L-L-F)
②光たちが“お船引き”の準備をする(L)
③村の人たちが災いにそなえる(G=F)
また、サブドライバーとして、
④まなかが光を応援したり心配したりする(L)
⑤ちさきが紡に本心を確かめられ機嫌が悪くなる(L-F-E)
⑥さゆが要を気にし始める(L)
などがある。
第9話の見どころはなんと言っても、光がまなかに迫られて気持ちの整理がつかなくなっていく様子である(ドライバー①)。まなか自身は、光のことを応援したり、心配したり、恋とは別の気持ちで動いているのだが(ドライバー④)、それは光にとっては耐え難いまぶしさだったことだろう。
テクニカルなポイントは2つあり、1つはこのまなかと光の性質の異なる愛情がラストシーンでぶつかるように設計されている点。もう1つは、まなかが光に対して応援したり心配したりするきっかけを、父親の問題や、村の問題から発生させている点である。
主人公達を取り巻く問題をうまく使って、主人公達の行動を促す手法は、これまでの話でもたびたび登場しており、ストーリーを調和させる優れた手法である。これにより、主人公たちのエモーショナルラインを追うことが、同時に、陸と海の問題の理解することにつながっている。
また、メインストーリーだけでなく、ちさきを巡る状況の変化や、差し迫った災いなども継続して描かれており、次回以降に対する伏線も万全だ。
■残された伏線
①地上に起こる災いとは?
うろこ様の話によると、どうも地上は寒冷化するらしい。しかし、それだけで、地上に行くなというのはやりすぎに見える。また、御霊火の減りが激しいこととの関係もまだ明らかではない。海の村の世界観の中では、災い=海神の怒りと捉えられており、青年会の一人が「原因は分かったのか?」といっていることから、災いには何らかの原因があるのかもしれない。
少なくとも、単なる気象現象ではなく、もっと深刻な事態が待っているのだろう。
[災いは海神さまの怒りなのだろうか]
②まなかはいつ光への気持ちに気がつくか?
ラストシーンで、光に抱きしめられ、思わず拒絶してしまったまなかだが、今後どのように気持ちを整理するのだろうか。今回、まなかは初めて、光が自分のことを異性として好きなことに気がついてしまった。この問題は必ず、逆にまなかが誰のことを好きなのかという問題に到達してしまうだろう。
第9話のタイトル「知らないぬくもり」は、深読みすれば、まなかが光に抱きしめられた時に感じた、家族や友人のそれとは違う、想い人に対するぬくもりを指しているようにみえる。その恋のぬくもりを知ってしまったことで、まなかは今後、光と紡の間で揺れ動くことになるだろう。
[知らないぬくもりに困惑するまなか。アニメで無ければドン引きものである]
③ちさきにとっての“ちゃんと”とは?
今回、ちさきは“ちゃんと”を、ちゃんと変わって光を諦めるという文脈で使っている。しかし、それを紡に指摘され、ちさきは心の中から排除しようとしていた光に“ちゃんと”気持ちを伝えるという、ちさきにとっては辛い選択肢を突きつけられた。
ちさきが、紡に怒ったのは、それが心の深い部分に触れる行為で、かつそれがちさきの本心だからだ。ちさきは、中々光に気持ちを伝えようとはしないが、ストーリーはちさきをそこに向かわせようとしている。
[岩場で話すちさきと紡]
④紡の家庭には何があった?
勇の話では、紡は9歳の時に親元から離れて祖父と暮らしているという。それはなぜだろうか。前回、街に用事があるといっていたので、たまには両親(あるいは片親)には会っているようだが、特別な事情がないと、中々両親が9歳の子供を預けるということは無いだろう。
例えば、母親が亡くなったということはありえるかもしれない。まなかが手渡された割烹着もひょっとすると母親のものかも。
[写真に写る紡と両親。小学生か?]
⑤お船引きの儀式はどうなる?
⑥まなかは紡と光のどっちを選ぶの?
などの伏線が残されている。
■おまけ
今週のベストショットはまなかちゃんが作った美味しそうなお鍋です。
[意外に料理もいけたまなか。第4話でおかゆを焦がしたのは気のせいだった!]
[そして、このうなじに割烹着。いい奥さんになれますね(棒)]
[個人的には、怒ったちさきもかわいいです(by 要と筆者)]
■ストーリー詳細
P 潮留家。地上に降ったヌクミユキを気にする光。
P あかりは寧ろ、海の村の父のことが気になるようだ。
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P 一方、海の村では、うろこ様が集会場を訪れ、ヌクミユキのことについて話を始める。
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P 学校。まなかは光が父親の心配をしていることを知る。
L 光は、おじょし様を直してお船引きを最後までやりたいようだ。
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L 光たちはクラスでお船引きをやろうと持ちかけ、クラスのみんなや先生はそれに賛同する。
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L 紡の祖父が船を貸してくれるというので、生徒たちは紡の家でお船引きの準備を始める。
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P 光は、まなかと自然に接することが出来ているようだ。
P それを見てちさきは、光が頑張っているのだなと感心する。
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P そこに、美海とさゆも加勢に来る。
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P まなかは、食事の買出しにサヤマートに出かけてあかりに会う。
E あかりは光が父親のことが気にならないのか気にしているようだ。
G まなかは、光が父親のことを心配していたことをあかりに教える。
E あかりは、「想いあっていてもうまくいかないもの」だと寂しそうにする。
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P 買出しから戻ったまなかは、玄関のところで自分がかけられた網を見つける。
P 勇はまなかに、紡の両親は街にいて、9歳のときにここに住むようになったと教える。
L まなかは紡のことを、尊敬しているようだ。
P 勇はまなかに割烹着を貸してくれる。
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P 庭でペンキを塗る美海とさゆ。そこに要が声をかける。
L さゆは要に惚れる。
P 光は学校に工具を取りに戻るらしい。
P 一方、要は裏の補強用の材木を取りに行くことに。
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E ぬいぐるみの補修を終えたちさきは、今度はペンキ塗りを手伝おうと立ち上がるが、その場でふらついてしまう。
G それに紡が気がつき、エナを潤すために海岸まで一緒に行く。
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P そのうち要が裏から材木を持って戻ってくる。
EF さゆはペンキが全部ぬれたので要に自慢しようとするが、要はちさきがいないことを気にしているので、残念に思う。
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P 海岸。ちさきはエナに水分を補給し終わる。
P 紡はちさきに「光のことを諦めるのか」と尋ねる。
L ちさきは“ちゃんと”変わっていかなければという。
P しかし、紡はそれが本当に“ちゃんと”なのか問いただす。
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G 要がちさきを心配してやってくる。
E ちさきは気分が良くないので帰るという。
G 要はちさきを送ることにする。
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E 帰り道。2人は海の村の大人たちが総出で待ち受けているという異様な光景に驚く。
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P 夜。学校から戻った光は、まなかの料理の匂いに気がつき台所に様子を見に行く。
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G 台所でまなかは光に、誰かがそばにいる心強さを光に教えてもらったから、もし光が父親のところに行きにくかったら一緒に着いていってあげるという。
L 戸惑う光に、まなかは「お互い想いあっているのを伝えられたらもっと強くなれる、強くなれる」とせまる。
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F まなかに対する恋心に耐え切れなくなった光は、まなかの頭を撫でて出て行く。
P まなかはぽかんとする。
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L 光は頭を抱える。
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E その後、まなかが村に戻ると、両親が迎えにきており、父親は「もう地上に行っては駄目だ」という。
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P 翌日。気持ちを切り替えようとする光。
E しかし、学校には、まなか、ちさき、要たちが来ていない。
G 海の人たちがお船引きを邪魔しようとしていると勘違いした光は、抗議するために急いで海の村に戻る。
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P しかし、海の村はヌクミユキが積もり、閑散としている。
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E 光はようやく青年会のおじさんに出会ったが、おじさんが無理やりうろこ様のところに連れて行こうとするので抵抗する。
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G そこに、涙を流したまなかが駆けつける。
G 光はとっさにおじさんの手を振りほどき、まなかと廃校になった中学校へ向かう。
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P 光はまなかから村の人たちが地上には行かないよう厳戒態勢をしいていることを知る。
G まなかは、そのことを光に伝えなければと必死で家を抜け出してきたらしい。
L 光は、まなかが自分のことを心配してくれているだけで、異性としてみているわけではないことを知りつつも、自分の気持ちを抑えきれず、まなかを抱きしめる。
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F まなかは一瞬戸惑い、光を突き飛ばす。
F 光はいても立ってもいられず、逃げ出す。
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P しかし、入り口のところで、追いかけてきた灯とおじさんに見つかってしまう。
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(つづく)
次回に続く。
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