• ジャズピアノのボイシングについて①

    2019-07-22 21:23
    前回に引き続き理論解説です!
    今回は私が普段ジャズピアノの演奏で使っている、実践的なボイシングを紹介していこうと思います


    2音のボイシング

    まずは2音だけのボイシングです。主に左手で使うボイシングです

    ・3rd+7th
    コードトーンの3度と7度だけを弾きます。積み方は3度が上でも7度が上でも構いません。
    ピアノ単独というよりも、ベースがルートを弾いている場合によく使います。ベースがルートを弾いている場合、ピアノは最低音のルートを弾く必要はありません。むしろ省略してしまった方がサウンドとしてはすっきりすると思います。





    メジャーコードでメロディーがルートの場合M7を弾くと濁ってしまうので、7thの代わりに6thを使うこともあります。リードシートにC6と書いてある場合はM7は避けた方がいいと思います。M7と書かずにCとだけ書いてある場合も、6thの方が好ましい場合が多いと思います。メロディーの音をちゃんと確認して音を選びましょう。


    ・シェルボイシング
    今度はピアノでルートを弾くボイシングです。ルート+3度、もしくはルート+7度です。ベースがいない時によく使うほか、ベースがいる時でも場合によってはルートをガツンと弾くこともあります。
    バド・パウエルというピアニストが使っていたボイシングで、別名バド・パウエルボイシングとも呼ばれます。下の譜面では3度で書いてありますが、バドパウエルは10度を弾いてるみたいです。私は指届かないので3度で弾いてます。



    3音のボイシング

    これも左手のみで弾く場合に使います。

    ・3rd+7th+テンション(もしくは5度)


    上で紹介した2音ボイシングに、テンションを足します。テンションを最高音に持ってくる形が一番良いと思いますが、3rdと7thの間に持ってきてもダメではないです。
    左手で届く範囲に適切なテンションが無ければ、最高音に5度を足しても良いと思います。

    Dm7に9th、G7に13th、CM7に9thを足した形です


    G7に9thを足しています。Dm7とC6は5thを弾くことにしました。


    4音ボイシング

    この4音ボイシングが一番汎用性がある、よく使う形だと思います。広くボイシングしたり複数のテンションを入れたり、応用が利く形だと思います

    ・クローズドボイシング
    4和音をそのまま密集して重ねた形です。転回することで様々な形を作れると思いますが、基本的にはコード間で動きが少なくなるように配置を決めます(あくまで基本です。実際の演奏では意図的に動きを付けたりもします)。



    このボイシングはルートが含まれていますが、ベースと被る音域で弾かなければ大きな問題にはならないと思います。ただ、実践では後述するテンションを含む形にして、ルートを省略することの方が多いと思います。基本的なボイシングで、ブロックコード等へ応用も効くので、覚えて損はないです。
    M7をクローズにする際、トップでは半音をぶつけない方がいいと思います。具体的には下のような押さえ方です。


    絶対に使ってはいけないというわけではありませんが、注意はした方がいいと思います。

    ・Drop2
    両手でバッキングするときに使う方法です。

    作り方は、まずは普通にクローズの4和音を作ります(少し高めの音域が良いです)。その4和音のうち、2番目に高い音を1オクターブ下げます。画像の赤で示した音です。そうすると、1オクターブよりも広い音域に配置した、いわゆるオープンボイシングになります。
    オープンボイシングを作る方法で一番使い勝手が良いと思います。


    ツーファイブワンをDrop2で広く取った形です。

    ・テンションを入れた形
    上で示した基本の4和音よりも、実際にはテンションを含んだ形をよく使います。
    テンションを足す代わりにコードトーンのうちどれかを省略すると考えます。
    具体的には、9thを足すときはルートを、11thを足すときは3rdを、13thを足すときは5thを省略します。ただ、11thについては3rdは残して5thを省略という場合も多いです。


    Aフォーム


    Bフォーム

    上の譜面は、Dm7に9thを足しルートを省略、G7に9thと13thを足しルートと5thを省略、CM7に9thを足しルートを省略しています。この二つの押さえ方は通称Aフォーム、Bフォームと呼ばれることもあり、非常によく使う押さえ方です。

    これをDrop2してオープンボイシングを作ることもできます。




    まだまだたくさんのボイシングがあるのですが、今回はこの辺までです。
    3rd+7thの2音ボイシング、AフォームBフォームは特によく使うので、12キーのツーファイブワンを瞬時にこれらのボイシングで押さえられるよう練習して損はないと思います

    次回は音域の話、ツーファイブワン以外のボイシングの実際、オルタードテンションを含むボイシングあたりの話をしようかなと思います!
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  • モード技法についての解説

    2019-07-09 22:43
    お久しぶりです。すくろーすです。
    久しぶりに理論解説記事を書きたいと思います。


    今回のテーマはずばり「モーダル」です。
    モード、モーダルって聞いたことはあるし、ぼんやりとしたイメージはあるけど実際何のことなのか良く分からないという方、結構多いと思います。というわけで、一体モーダルとは何ぞや?という所から、モードの概念を用いた実際の技法まで解説していこうと思います。

    ※私は専門家ではないので、間違ったことを書いている可能性も大いにあります。
    もしこれ違うんじゃない?とかありましたら教えてくれると私が喜びます。
    ちゃんと音楽を勉強したいという人はこんなブロマガじゃなくて、信頼できる専門家や適切な教育機関を訪ねて下さい




    (1)まずはコーダルの復習

    モード、モーダルという単語の意味を調べようとすると、高確率で次のような文言に出くわすと思います。


    ”コーダルとは和音・コード進行を重視していることであり、モーダルとは旋律・スケールを重視していることである。”


    これ、決して間違いとは言い切れないのですが、この文言こそモードに対して誤解を生んでいる原因じゃないかと思っています。

    だってモーダルじゃなくても普段からスケールって大事ですよね。この曲はキーがCメジャーだからCメジャースケールとか考えますよね?もっと詳しい人なら、Dm7-G7って進行があったらDドリアン、Gミクソリディアンとか考えるかもしれません。もしかしたら、コードに対してスケールを考えること、スケールに基づいてコードを作ることをモーダルだと勘違いしている人もいるかもしれません。


    まずはモーダルに入る前に、一旦その逆の概念であるコーダルとは何か整理してみましょう。

    結論から言うと、コーダルとは機能和声に従っている状態と考えていいと思います。機能和声はトニック(T)・サブドミナント(SD)・ドミナント(D)みたいなやつですね。たくさんある和音達をこの3種類の機能に分類して、それらを並べて比較的頻繁に変化させることで音楽を作っていきます。

    特に、ドミナントがトニックに解決するドミナントモーションは大切です。コーダルな分脈では、トニック(安定)とドミナント(不安定)の繰り返しによって緊張感を高めたり安心させたりすることで展開を作るわけです。

    更に言うと、ドミナントモーションは曲の調(キー)の提示という大きな役割を持っています。G7-Cと着地することで、この曲のキーはCメジャーだぞ!と明確に言っている訳ですね。逆に、一時的に他のキーのドミナントモーションを持ってきて、着地先を変えることで展開を作ることもできますね。部分転調というやつです。

    音楽理論を勉強した人なら、代理コード、セカンダリードミナント、パッシングディミニッシュ、クリシェ等様々な技法を知ってるかもしれませんが、これらもすべてコーダルの範疇です。流行っている分数aug(Blackadder Chord)も基本的にコーダルな世界の話です。



    ところで、昔むかしこんなことを考えた人がいました。


    「コードが解決すると、その上でメロディを歌っている俺達も一緒に解決せざるを得ない!!!俺達はコードの機能、コードの流れに支配されているんだ!!!ちくしょう!!!!」


    確かに、コードがG7-Cって解決したらどうあがいても安心感を与えてしまいますもんね。その流れにメロディだけ逆らってもむしろ変な感じになるだけです。そこで、こういう考えを持った人たちが、機能を持たない音楽、解決しない音楽に活路を見出したわけです。これがモードの始まりです。


    一度整理しましょう。


    ●コーダルな音楽とは
    ・機能和声に沿った音楽
    ・コードを3種類の機能に分類し、コードチェンジを頻繁に行う
    ・特に、ドミナントモーションが音楽の流れを作るのに重要である。



    さて、いよいよモーダルの解説です。

    (2)モーダルな世界へ

    モーダルはスケールを重視するという話が最初に出てきたので、まずはどんなスケールなのか見てみましょう。


    これら7種類が使用するスケールとなります。作り方は単純で、Cメジャースケール(ドレミファソラシ)のスタート地点を一つずらすとレミファソラシド、もう一つずらすとミファソラシドレ…って具合に7種類作れますね。
    赤色で示した音は「特性音」と呼ばれるものです。後で解説するので、今はそんなものがあるんだなー程度に認識しておいて下さい。

    ところで、単にモードといった場合は和音ではなく上に示したスケール、単旋律の事を指します。しかし、ポップスやジャズの話でモーダルと言った時には、単旋律の事を指すことはあまりなくて、これらモードを用いた和音、ハーモニーを指していると思って差し支えないと思います。モーダルハーモニーと呼んだりもしますね。


    さて、これらモードを使ってハーモニーを実際に作っていきます。7種類のどれでもいいんですけど、今回は2番目のD Dorianを使ってみましょう。

    D Dorianに対して、機能和声でダイアトニックコードを作るみたいに上に重ねて、4和音を作ってみたのがこちらです。


    さて、ここでどれがトニックでどれがドミナントで…とかやったらダメですよ?コーダルに対するモーダルなわけですから、機能和声と逆のことをやらないといけないわけです。

    先にルールを出しちゃいますね。

    ①ドミナントモーション厳禁。トライトーン(減5度を含むコード)は基本使わない。
    ②モードの第一音は、モードの軸を確定させるのに重要
    ③モードの特性音を含む和音を進行に組み込む
    ④コードに機能は無いので、あとはどう動こうが自由!!!


    順番に解説していきます。

    ①ドミナントモーション厳禁
    前述したようにドミナントモーションをするとコーダルに寄ってしまうので、基本的に避けます。この場合G7-CM7とかやってはいけません。もっと言うと、G7を鳴らした時点で次のCM7が想起されてしまうので、〇7や〇m7-5などトライトーンを含む和音は使わない方がいいと思います。G7は、7を取って3和音Gとすればトライトーンを含まないので使用可です(他にはG7sus4にする方法があります)

    ②モードの第一音は、モードの軸を確定させるのに重要
    これはモードの軸になる音が分かるようにしてあげるイメージです。D DorianならDの音ですね。機能和声でいう所のトニック、Iの和音に近いイメージです。CメジャースケールでCの音は大事ですよね?それと同じです。

    ③モードの特性音を含む和音を進行に組み込む
    これを理解するには、一旦コーダルの話に戻りましょう。コーダルな世界ではドミナントモーションによって調(キー)を確定させるんでしたよね?しかしモーダルな世界ではそれが禁じられています。
    ここで重要になってくるのが、さっき赤い音符で示した特性音です。特性音は、簡単に言うとそのモードらしさを出す音の事です。D DorianならBの音を使ってやることでDorianらしさが出てくるわけですね。②と③を合わせてモードの提示と言ったりします。

    ④コードに機能は無いので、あとはどう動こうが自由
    これは機能和声でいう所の「ドミナントからサブドミナントに行くの禁止!」とか「代理和音から元に戻るの禁止!」みたいな縛りは無いということですね。


    これらを踏まえると、Dm7-Em7-Dm7-Em7…とかDm7-G-Dm7-G…みたいな進行が作れます。実際に鳴らしてみると、ドミナントモーションを含まないので平坦な印象を受けるかもしれません。これこそモーダルの特徴です。

    (因みに、モードの提示については常にしなければいけないものではありません。モードが不確定な状態というのも存在します。例えばDm7-FM7という進行だと、特性音であるBが含まれていないため、これはモードが不確定な状態になりますね。これを利用して、モードをどのくらいハッキリと提示するのかをコントロールして展開を作るというのは、モード技法の面白さの一つだと思います。)


    例として、Dorian以外にもいくつかのモードの提示例を書いておきます

    E Phrygian:Em7-FM7
    F Lydian:FM7-G
    G Mixolydian:G-FM7
    A Aeolian:Am7-FM7

    また、今までは2つのコードでモードを提示してきましたが、分数コードを使えば1コードでモードの提示が可能です。

    D Dorian:Em/D
    E Phrygian:F/E
    F Lydian:G/F
    G Mixolydian:F/G


    更に、今回はダイアトニックコードを使いましたが、モードの提示ができればこの重ね方にこだわる必要はありません。コードネームで書けないような重ね方をしてもOKです(4度堆積とか、半音でぶつけて固めるとか、色々考えられますね)
    有名な例としてSo What Voicingという、4度を含む重ね方を示しておきます。(So Whatという曲で使われたためこう呼ばれています)



    さて、ハーモニーの次はメロディーです。とはいっても、これも堅苦しいルールはありません。D Dorianならそのモードに含まれる音を使えます。機能和声ではないので、アヴォイドノートとかは考えなくていいです。
    ただ、特性音を旋律にも適度に取り入れることで、より強くモードを提示できます。ハーモニーだけではモードを確定していないが、メロディは特性音をなぞっているため、2つを合わせるとモードが提示できている、というケースも考えられます。

    逆に、G7-Cを分散和音でなぞるような旋律など、ドミナントモーションを彷彿とさせるフレーズはモーダルな雰囲気を薄くしてしまうかもしれません。このあたりは感覚に依る所が大きいので何とも言えませんが…
    メロディーがどうしてもコーダルに寄ってしまう場合の一つのアイデアとして、ペンタトニックの使用をオススメします。ペンタトニックはトライトーンは含まず、半音音程も無いので導音的効果を生みずらいからです。


    モードについても整理してみましょう

    ●モーダルな音楽とは
    ・機能和声に沿わない音楽。特にドミナントモーションを避ける。
    ・単一のモードの上で、解決することなく進行する
    ・モードを適切に提示することが重要である。
    ・上二つが守れていれば、他の制約は基本的にない



    モード技法の実用例
    さて、ここで実際の曲でモード技法が使われている例を見ていきましょう!私はアイマスPなので、題材はアイマス曲です!

    メルヘンデビュー! Aメロ (歌うのOK ダンスもOK~)
    Bb→Ab/BbでBb Mixolydianが提示されています。

    Love∞Destiny イントロ
    始めに歪んだギターがDm7、次いでカッティングのギターはGを奏で、D Dorianが提示されています。

    Tulip Cメロ (恋はココからだし~)
    C,F,Bb,Eb→D,G,C,Fという4度堆積がC Dorianっぽいですが、特性音が提示されていないので実はモードが不確定です。



    (3)モード技法の更なる発展

    ※ここからちょっと高度になります

    さて、モーダルな世界では一つのモードを軸にハーモニーやメロディを作るんでしたよね。しかし、単一モードだけでは7種類の音しか使えず、すぐに限界がきて飽きてしまうのは目に見えていました。それを打破するために色々なアイデアが考案されました。

    ①モードチェンジ
    一つの曲の中で使うモードをまるっとチェンジして、色彩を変化させます。例えば、So Whatという曲は始めの16小節がD Dorian、その後の8小節がEb Dorianと変化します。あまり頻繁にチェンジするというよりは、ある程度長いスパンで変化させることが多いです。モードの提示には時間を要するからですね。(とはいえ、目まぐるしくモードが変化する曲もあります。Inner UrgeとかHumpty Dumptyとか…)

    ②スケールアウト
    厳格なモード技法の上ではそのモードの音しか使うことができず、機能和声とは違う意味でメロディーの幅が限られてきます。そこで、主に即興演奏を行うジャズプレイヤーの間で、モードから一時的に外れた音を演奏して緊張感を生み出すということが行われています。
    機能和声ではドミナント(緊張)→トニック(解決)の繰り返しで展開を作ると書きました。これをスケールアウト(緊張)→スケールに沿う(解決)で同じことをやっているわけです。


    ③ポリモード
    上の②をもっと過激にするとこれに行き付きます。二つ(もしくはそれ以上?)のモードを同時に鳴らし、大きな緊張感を生み出します。


    ④コーダルな分脈でモードっぽさを取り入れる
    モード技法は確かに革新的でしたが、やはり展開の力強さや推進力という面では機能和声に敵いません。そこで、コーダルな分脈にモーダルな要素をうまく取り込んで良い所取りしようと考えた人がいました。

    これは具体例を見てみましょう。元にするのはDm7-G7-CM7という、いわゆるツーファイブワンです。ドミナントモーションがあるため、もろコーダルであると言えますね。

    ここで何をするかというと、コード一つ一つにモードを当てはめていきます。とりあえずDm7にはD Dorian、CM7にはC Lydianを当ててみましょう。
    ここで、先ほど上で示した、ワンコードでモードを提示する方法を適用します。すると、Dm7→Em/D、CM7→D/Cとなりますね。
    ドミナントについては、トライトーンを無くして機能感をぼかします。具体的にはsus4にしたり、アッパーストラクチャートライアドにしたりですね。G7の場合、F/G、E/Gなど色々考えられると思います。今回はsusにしてみましょう(つまりG Mixolydian)

    ある程度知識のある人は、これはアヴェイラブルノートスケールと何が違うんだ?と思うかもしれません。決定的な差としては、アヴェイラブルノートスケールを考える場合はアヴォイドノートを定めてそれを避けますが、今回はモードなので積極的に使っていきます(ドリアンとかフリジアンとか、アヴォイド=特性音であることが多い)今回は解説していませんが、上に乗せるフレーズなどで更にモード感を出すことも可能です。


    完成したものを聞いてみると、元の進行の機能感は残しつつ、モード特有のサウンドが上手く融合している感じを受けませんか?この手法はビルエヴァンス、チックコリアなどのジャズピアニストがよく使っています。


    以上で解説終わります!モードには難しいイメージ、もしくは漠然としたイメージでとっつきにくいという方も多いかも知れません。しかし機能和声とは全く異なるアプローチなので、音楽に新しい発想をもたらしてくれるかもしれません。研究してみる価値はあると思います!!

  • 青空リレーション -Contemporary Bigband Jazz Rearrange-の解説

    2019-05-03 22:56



    れご氏(メガネ男子P)主催の企画、「大乱闘ニコマスアレンジャーズ 灯火のンジ」に参加させていただきました。そのアレンジについて解説していきたいと思います。


    先月東京で行われたアイマスRemixリアルライブイベント「んじます! vol2」にて開催が発表された企画、「大乱闘ニコマスアレンジャーズ 灯火のンジ」ですが、私が参加をオファーされたのは昨年12月中頃までさかのぼります。

    今回はいくつか条件があり、

    ①長さは4分以内
    ②自分の得意ジャンルで作る
    ③選曲も得意ジャンルを念頭に決定

    これを踏まえてアレンジ候補曲を3曲出し、セトリや他参加者とのバランスも考えながら運営がその中から決定するというものでした。

    私の得意ジャンルといえば、それはもう「ジャズ」だろうと思い、候補として私色ギフト、青空リレーション、夕映えプレゼントを選択。その後運営により、選曲は青空リレーションに決定となりました。


    選曲確定後、さっそく制作に取り掛かります。企画書に、「アイマスRemixを対外的にアピール」といった趣旨の記述があったため、今回はわかりやすく、デレンジ3弾の時のゴキパ見たいな感じのビッグバンドを作ろうと考えました。

    いつも通りコード進行を決め、4ビートのドラムを打ち込み、ベースはウォーキングさせ、ボーカルに対して管の合いの手を入れ…





    アレンジ自体はほぼ完成し、管の録音も半分以上が終わり掛けたところで、私の頭の中に一つの考えがよぎるようになりました






    本当にこれでいいのか?

    私の得意ジャンルは本当にただのジャズなのか?

    デレンジ界隈における私の立ち位置って本当にこれか?




    結局すべてを白紙に戻し、一から構想を練り直すことになりました。自分がアイマスRemix活動を通じて身に着けてきたもの、それを全部盛り込もう、普遍的なものじゃなくて今現在の私の色を出そう、今までの集大成にしよう、そう考えて出来上がったのがこのアレンジです。


    アレンジのイメージ

    青空リレーションの原曲は、私が思うに明くて暖かい青空、水色っぽいイメージでした。藍子ちゃんのゆるふわなイメージにもピッタリなのですが、せっかくアレンジを作るなら敢えてゆるふわではない方向に舵を切りたくなりました。
    そこで私がイメージしたのは、もっと黒みがかかった、深い青色です。




    決して暗い空というわけではありません。ただ、深くてずっと見ていると空の奥に吸い込まれてしまう気がするような、そんな空を表現しようとしました。
    暖かい青空の下で小躍りしてる藍子ちゃんというよりは、もっと深い青空の下で、神秘的な雰囲気の藍子ちゃんというイメージです。



    編成

    一般的な5-4-4のビッグバンドですが、サックスセクションに持ち替えが含まれる形になります。

    1stアルトサックス
    2ndアルトサックス(クラリネット持ち替え)
    1stテナーサックス
    2ndテナーサックス(クラリネット持ち替え)
    バリトンサックス(フルート持ち替え)

    1st~4thトランペット
    1st~3rdトロンボーン
    バストロンボーン

    ピアノ
    ギター
    ベース
    ドラムス


    管楽器すべてとピアノ、ギターは生録です。ドラムはBFD3の打ち込みです。
    ベースは普段は生録してますが、今回はLowDbの音が必要で、私の持っている4弦ベースではどうにもならなかったので打ち込みにしました。



    各部解説

    イントロ

    DbM7(9) Fm7/Eb Fm7(9)

    初見では絶対に拍子やテンポ感をつかみきれないような、トリッキーなピアノのリズムから始まります。

    続いてピアノの低音によるモチーフが入ってきます。このモチーフはこのアレンジ通して最後まで使われます

    このアレンジはずっと4拍子なのですが、ドラムのカップチャイムによるアクセントによって9/8+7/8拍子に聴こえるような細工をしてあります。

    管楽器のクラスターによるクレッシェンドで次の展開へ移ります。

    0:17~
    DbM7(9) EbM7(9) Fm7(9,11)

    先ほどのモチーフがサックス、ピアノ、ギターのユニゾンで演奏され、トランペットも一部絡んできます。おおよそ管楽器で演奏するには適さないフレーズで、何度も練習した部分です。
    その裏でうっすらと鳴るフルートとクラリネットのモチーフは、原曲の間奏部分のトロンボーンのフレーズを引用しています。

    0:34~
    GbM7 Fm7 EM7 Ebm7

    フルート・クラリネットによるフレーズです。昨年作ったDreaming of youのアレンジからボイシングのアイデアを引っ張ってきています。

    0:36
    DM7(#11) EM7/D Dm7(9,11)

    ベースがD音をペダルし、その上で和音が変化します。
    EM7/Dは複調となりますが、全然抵抗なく使えるようになりました。去年作ったHotel Moonsideアレンジでの研究の成果です。


    Aメロ

    DbM7(9) AbM7(9)/C BM7(9,13) EM7(9,#11,13) Ebm6(9) Ab7(b9,13)
    DbM7(9) AbM7(9)/C BM7(9,13) AbM7(#9,13)/Bb

    原曲はI始まりですが、IVから始めてます。BM7で早速転調しますがこのアレンジ通してかなり頻繁な転調を繰り返すため、あまり転調という感じがしないと思います。
    AbM7(#9,13)/Bbも複調です。もともとAbM7/Bbでしたが、ほんの少しだけ濁りを足したくなり、管を一本だけB音に変えたためこうなっています。

    0:58~
    AM7(9,#11,13) AaugM7(9) DM7(9,#11,13) DaugM7(9)

    AメロとBメロの間に付け足した部分です。鮮やかで綺麗なだけではない、青空のスケールの大きさや、そこに感じる畏怖みたいなものを表現しようとしてます。
    B/A C/Aという書き方のほうが分かりやすいかもしれません。augM7はもともと個性的なサウンドですが、より新しいサウンドを求めて更にテンションを足したりしてます。

    Bメロ

    DbM7(9) AbM7(9)/C Bbm7(9) AbM7(9)
    GbM7(#11) Fm7(9) F7(b9)

    管がフルに入っているところから急激に落ち着けます。同じメロディに対して一回目がIVM7なのに対し、2回目でVIIbM7なのがミソです。

    1:17~

    Bbm7 Cm7 GbM7(#11) FbM7(#11)
    Bbm7 Cm7 GbM7(9,#11) BaugM7(9) BmM7(b9)/E Db/Eb GaugM7(#9)/Eb

    細かいメロディに合わせて、ベースとドラムを少しラテンフィールにしてます。普通ならBbm7 Cm7 DbM7 ってやりたくなるところをあえて避けてGbM7にしてます。
    サックスのラインをよく聴くと、Aメロのフレーズを再利用したりしてます。


    サビ

    AbM7(9) Cm7(11)/G Gb6(9) Fsus4 Bm7/F7#5
    Bbm7(9)addM7 GM7/Db/Eb AbM7 AM7(9)/Ab BM7/A A7(b9,#11,13)
    AbM7(9,#11) Cm7(11)/G Gb6(9) Fsus4 F7(b9,#11,b13)
    Bbm7(9)addM7 DbM7(#11)/Eb AbaugM7(9,11)/Eb

    曲調的には明るい感じで、リズムもわかりやすいためポップに聞こえますが、実はコードでえぐいことやってます。
    Bm7/F7#5は、コードにコードを重ねるという、いわゆるアッパーストラクチャーです。全体のコードはF7#5ですが、トランペットセクションがBm7を演奏しています。

    Bbm7(9)addM7は、m7とM7が共存している和音です。コードネームで書こうとするとかなり無理があり、こうでも書かないとうまく表せません。ピアノ、ギターがBbm7なのに対し、トランペット、トロンボーンでDbaugの響きをぶつけています。

    GM7/Db/Ebは3段のアッパーストラクチャーです。ベースがEb、コード楽器とトロンボーンがDb、トランペットがGM7となっています。全部で8音鳴っていることになるので、これも複調です。

    AbaugM7(9,11)/Ebは、おそらくEb7が原型だと思うのですが、Eb7とEb7sus4の中間の響きを狙った結果このような和音になりました。

    間奏
    1:58~

    Db6 Eb6 Fm7(9) Ab6 ×7
    Db6 Eb6 AbM7 Gbm7(9,13)

    間奏です。バストロンボーンを前面に押し出してみました。
    途中から入る木管はアルトサックス、テナーサックス、フルート各1本とクラリネット2本です。サビ後に持ち替えるイメージです。

    2番
    2:30~

    DbM7(9) Cm7(9) BM7(9,13) EM7(9,#11,13) Ebm7(9) Ab7(b9,13)
    DbM7(9) Cm7(9) BM7(9,#11,13) BM7(9,11,13)/A#

    コードは1番とほぼ同じですが、リズムアプローチを変えています。裏でギターが弾いてるフレーズはイントロで出てきたモチーフです。
    トランペットはカップミュートを用いて音色を変化させています。

    サックスソロ
    2:44~

    ALydian  AbLydian  GLydian  F#Lydian

    ここからはモードの世界です。リディアンモードが半音ずつ下降していきます。

    3:00~
    AbM7sus4/ALydian  BM7/Asus4/ALydian  AbLydian

    しかし、ただのモードジャズかと思いきや、ハーモニーの大きな揺らぎが発生します。
    あまりに複雑で綺麗な表記ができず、こうやって書くしかないのですが、根底にAリディアンがあり、そこにAbM7sus4やBM7などモードから外れた音を意図的にぶつけてやり、Aリディアンに揺さぶりを掛ける感じです。

    3:08~

    GLydian+[B/C C/F C/Bb AbaugM7]  F#M7(b9,9,#11,13)  F#augM7(9)(/D#)

    Gリディアンの部分は、根底にはやはりモードがあるものの、それとは無関係な[]内のコード進行をぶつけています。コーダルな分脈とモーダルな分脈が並行的に存在する感じです。
    F#M7(b9,9,#11,13)はb9が浮いて見えますが、これも少し濁りやアクを足したくて意図的に加えたものです。
    F#augM7(9)(/D#)は低音管楽器でわずかにD#を鳴らすことで、F#augM7をわずかに下から浮かせてやるイメージです。

    3:16~

    AM7(9,#11,13) F#M7(9,#11,13) GM7(9,#11,13) EM7(9,#11,13) FM7(9,#11,13) DM7(9,11,#11,13)
    AM7(9,#11,13) Bbdim7/AM7(9,#11,13) Bbm7/AM7(9,#11,13) DM7(b9,9,#11,b13,13)

    前半はInnner Urgeというジャズスタンダードのコード進行を流用しています。
    後半に行くにしたがってどんどん濁りを増していき、空の隙間に意識が吸い込まれていくようなイメージです。


    ピアノソロ

    4:22~
    DLydian  BLydian  ELydian  ALydian

    ピアノのインプロですが、前半はわざとリズムらしいリズムを排除しています。空の持つ、広い空間のイメージをここで表現したかったです。

    4:38~

    DLydian  BLydian+[Ebsus4 Fsus4 Gsus4 Asus4 Bbsus4(b9,b13) Fm7(b9,9,11,13) Eb6 E(9)/G# Bbsus4/Db Asus4/F#]
    EM7(9,11,#11,13)  AM7(b9,9,11,#11,13)

    ソロの後半は再びリズムを刻みだし、管のバッキングも絡んできます。
    []内は、Bリディアンの上でフルート、クラリネット、バストロンボーンで奏される和音です。これも単なるモードに大きく揺さぶりをかけるためにやっています。
    4:46あたりのピアノは、右手と左手で同じフレーズを半音ずらしで弾くということをやっています。
    4:48では、トロンボーンのグリッサンドを使ってます。

    4:54~
    DM7(9,#11,13)  D7(9,#9,11,13)  FM7(9,#11,13)  F7(9,#9,11,13)

    このアレンジで一番の盛り上がりです。青空のスケールの大きさだったり、また私の個人的な想いだったり、全部この部分のアレンジに、演奏に、ぶつけたつもりです。
    コードは複雑ですが、それでも解放感を演出できるよう、細部までこだわりました。8和音まで使っても決しておどろおどろしくならず、ここまで開放的な表現だって出来るんだぞ!!!!!!って感じです。

    その後のドラムソロは、実は5連符とか使ってたりします。リズム面で柔軟な発想ができるようになったのも、アイマスRemixと通じて成長した事の一つかなと思います。


    5:04~

    DbM7(9,#11) DbaugM7(#9) Cm7(9,11) Fm7(11) EM7(9,#11,13) DbM7/Eb AbM7/C EaugM7/F#

    いったん落ち着けて、ピアノによる伴奏です。DbaugM7(#9)の部分は、9音のシンメトリックオーギュメントスケールを想定してたりします。


    5:20~
    DbM7(9,#11) Eb(9)/Db Cm7(9,11) F7(b9,11)
    Bbm7 Cm7 DbM7 Cm7 Bbm7 Cm7 DbM7 Ddim Eb7(b9) GaugM7(#9)/Eb

    ラスサビ前のここだけはシンプルな音使いにしてます。どんなに複雑なアレンジでも、原曲に寄り添った部分、藍子ちゃんのゆるふわな感じをイメージした部分は必要だと思ったからです。


    アウトロ
    6:08~
    イントロのモチーフの再現です。途中からトランペットでもこのモチーフをユニゾンしますが、フレーズが跳躍しすぎて普通には演奏できません。そこで、4本のトランペットを2本ずつに分け、低音と高音で細切れに分担して、結果的に一つのフレーズに聞こえるようにしています。


    最後に

    このアレンジを作り始めた当初から、自分の表現したいものは絶対4分には収まりきらないだろうと思って、先にフルで作ってから後で縮めようと思ってました。ですが、いざ縮めようとすると、どうやっても4分に収まりません。結果的に4秒オーバーとなったことをここで懺悔しておきます(他にもっとタイムオーバーした人もいるし許して)


    灯火のンジ当日、反響やコメントをたくさん頂けて、本当にうれしかったです!
    運営の皆さんから”罪”の称号までいただきました。ありがとうございます。
    音楽的にかなり攻め入ったことやってるのに、それでも受け入れて下さるデレンジ界隈の暖かさが本当に大好きです。

    2年半にわたってアイマスRemixを作ってきて、思い返せば私はこのアイマスRemixという土壌にたくさん育てられてきたなと思います。たくさんの人から刺激を受けて、たくさんの人が私のアレンジに感想をくれて、この2年半の音楽活動が人生で一番楽しかったというのは間違いないです。自信をもって言えます。

    そして何よりも、デレンジの皆さんは「音楽って楽しいんだよ、アイマスって楽しいんだよ」ということを私に教えてくれました。アイマスRemixを通して私の人生が変わったと言っても過言ではないです。それくらい思い入れが強くて、灯火のンジのラストの演出はもう涙が止まりませんでした。


    これからはオリジナルの制作にも力を入れたいと思っていて、アイマスRemixを作る頻度は少し減るかもしれません。でもアイマスRemixは絶対作り続けます。そして、私が教えられてきた音楽の楽しさ、アイマスの楽しさを、ほんの少しでも誰かに伝えられたなら嬉しく思います。


    運営の皆さん、いつも仲良くしてくれる界隈の皆さん、アレンジを聴いてくださる皆さん、そしてアイドルマスターに、担当アイドルの智絵里に、感謝を述べてこの記事を締めくくりたいと思います。

    りがとうございました!!!!!!!!!!!!!