- 「熱さに耐えられなくなったら、台所を出ろ?」
- 「心の奥に宿っていたもの」
- 「故郷を追われた人々の声に耳を澄ませて」
東京メトロでの出来事。
土曜日の夜22時を過ぎた地下鉄の車内。
平日のこの時間帯なら、帰宅途中の乗客で立っている人が多いが、
土曜日のこの時間だと、皆座れるほどの乗客数。
一列に7人の乗客が座っている。
その乗客の一人40代の男が、居眠りを始めた。
段々眠りが深くなり、隣の20代の女性に寄りかかり始める。
女性は、身体を男と逆方向に傾けるが、男は寝たまま。
男の傾きは、あるポイントを過ぎると、
ハッと目を覚まし、元の姿勢に戻るが、
また深い眠りに入り、女性に寄りかかる。
女性は、身体を傾けたり、前方向に身体を倒したりして、
居眠りしている男の体重を避け様としている。
女性が余りにも困っているように見えたので、
斜め前に座っていた私は、女性に、
「席を替わりましょうか?」
と、声を掛ける積もりでいたら、
地下鉄は駅に止まり、女性の目の前の席が空いた。
これで、女性は向かいの席に移動すると確信したが、
女性は席を移らなかったのである。
終点に近づくにつれ、席は空き、
目の前に空席が目立つようになっても、
女性は席を替えようとはしなかった。
女性と居眠りの男が、カップルや夫婦ではないことは、
女性の嫌がり方から、はっきりしている。
私には、この女性の行動が、
非常に不思議な光景に映った。
英語の言い回しに、
「If you can’t stand the heat, get out of the kitchen.」
直訳すると、
熱さに耐えられなくなったら、台所を出ろ!
このイディオムは、
問題対処でプレッシャーが強くなり過ぎたら、
その問題から離れろと言っている。
目の前の問題を対処するのが精一杯で、
物事を客観的に見ることが出来なくなる。
問題から遠ざかる事は、
必ずしも、問題逃避、諦めることではなく、
視点を変えて、問題解決に繋がることになる。
地下鉄の女性は、
居眠りする男の体重をどうかわすか悩むより、
席を替われば簡単に解決したであろうと思われる。
しかし、女性は席を替わらず、
その男の無意識な迷惑行為に、
終点まで、耐え続けたのである。
If you can’t stand the heat, get out of the kitchen!
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