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“α-Synodos”  vol.263(2019/05/15)
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“α-Synodos”  vol.263(2019/05/15)

2019-05-15 14:28
    〇はじめに

    とても気持ちのよい季節になりましたが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。シノドスの芹沢一也です。「αシノドス」vol.263をお届けします。

    最初の記事は「学びなおしの5冊」。今月は武井彩佳さんに、「ホロコーストを学びなおすための5冊」をお選びいただきました。「ホロコーストとホロコースト後の世界」という、時間的にも空間的にも巨大な領域を踏査するための確たる指針は存在しません。そうしたなか、ひとつの指針として、武井さん自らが研究の過程で目印としてきたという書籍をあげていただきました。

    ついで、「知の巨人たち」。児玉聡さんにピーター・シンガーをご紹介いただきました。かつて『タイム』誌で、世界でもっとも影響力のある100人の1人にも選ばれた、現代の哲学者の中でも1、2を争う有名な思想家ですが、日本ではそれほどメジャーではないように思います。この記事では、援助義務をめぐる議論からシンガーの思想にせまります。ぜひ、この文章をきっかけに、シンガーの著作を手に取っていただけると幸いです。

    つぎの記事は、穂鷹知美さんによる、異文化コミュニケーションをめぐるエッセイです。今年3月に、ドイツで『訊くのをやめろ。わたしはここの者だ』というタイトルの本が出版され、ドイツとスイスで大きな話題になっているとのことです。「どこから来たのですか?」。この質問が孕みうる軋轢から、今後、移民の増加が確実な日本もまた、学ぶことがたくさんあるはずです。

    ついで、岩永理恵さんへのインタビュー。「生活保護と貧困」についてうかがいました。生活保護や貧困をめぐっては、しばしばツイッターで炎上しますし、またマスメディアでのネガティブ・キャンペーンも記憶に新しいところです。生活保護は国民の権利としてある制度なのですが、なぜこれほどまでに紛糾するのでしょうか? 岩永さんが日々、経験するコミュニケーションでの苦労から、この問題にせまりました。

    「今月のポジだし」は迫田さやかさんにお願いしました。ご提案いただいたのは「あいさつすること」です。日本でも貧困や格差が問題になって久しいですし、もはや階級という言葉で形容したほうがよいのではないかという状況も観察されるようになっています。そうした問題と格闘する迫田さんですが、経済学者しての政策的な処方箋ではなく、社会で生活する一市民として、日々できることをご提案いただきました。

    ピエール瀧さんの逮捕によって、作品回収や配信停止がなされましたが、みなさんご存知のように、それに対する反対論が噴出しました。山口浩さんは、このような動向の背後には、頭ごなしに上から目線でルールや考え方を押し付ける人々への反発という、より大きな問題があると述べます。いわば「正義」が相対化された時代にあって、対立しあう人々のコミュニケーションはどうあるべきなのか? 山口さんが考察します。

    最後は、鈴木崇弘さんの連載「自民党シンクタンク史」の第7回目です。いよいよ立ち上げられた自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」が、ときの政治にどのように働きかけたのかが具体的に語られます。この回顧録を読むことで、大きな話題となった「上げ潮」政策の背景にあった自民党シンクタンクの活動と、当時の国際的潮流がとてもよく理解できまます。ぜひ当時を思い出しながらお読みください。

    次号は6月15日配信予定です。お楽しみに!
     
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