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“α-Synodos”
vol.267(2019/09/15)
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〇はじめに
東京は突然、秋になった感じがありますが、いかがおすごしでしょうか? シノドスの芹沢一也です。αシノドスvol.267をお送りいたします。
本号最初の記事は、堅田香緒里さんへのインタビューです。堅田さんはフェミニズムの立場からベーシック・インカムを研究している論客です。今回は「フェミニズムとベーシック・インカム」の関係についてお聞きしました。ベーシック・インカムというと無差別に人々にお金を配ろうというものなので、ジェンダーとは関係のない中立的な制度のように思われますが、じつはベーシック・インカムの背後にある「思想」こそが重要であって、フェミニズムの視点は不可欠なのだと堅田さんは強調します。
ついで今月の「学び直しの5冊」。今回は有馬斉さんに「安楽死と尊厳死」をテーマに5冊の本を推薦いただきました。超高齢化社会に突入しつつある日本にあって、「死」の問題が切実な問題になってきました。そうしたなかで、生命維持医療を見送る尊厳死や、知試薬を処方、あるいは投与する安楽死をめぐって、きわめて複雑な議論がなされています。まずは前提となる視座を確保するために、有馬さんのブックリストをご活用ください。
最近しばしば耳にする「日米地位協定」。みなさんは、これがどのような協定かご存知でしょうか? 先日、中公新書から『日米地位協定 在日米軍と「同盟」の70年』を出版した山本章子さんにご解説いただきました。とても端的かつクリアにご解説いただいたので、「日米協定」の基本はこの記事でおさえられると思います。ぼくもいくつか誤解があったので、大変勉強になりました。
そして「今月のポジだし」。今回は桜井啓太さんに、「こうすれば日本の貧困対策はよくなる――貧困を測定して公表する」をご提案いただきました。どんな問題であっても、国が対策を行うためにはその前提となる統計データが必要となります。しかし、日本では長い間、貧困の正確な把握がなされることがなく、そのため貧困はなかったものとされてきました。ようやく、「子どもの貧困」の全国調査が行われますが、これを契機に、きちんと貧困を測定してほしいですね。
「知の巨人たち」、今月は福原正人さんにウォルツァーを取り上げていただきました。「現代の研究者の著名度を訳書の冊数ではかるとすれば、ウォルツァー(Michael Walzer)は間違いなくトップ10に食い込む」とのことですが、たとえばロールズやサンデルなどと比較して、話題に上ることが少ないような気がします。しかし、ウォルツァーはとても重要な思想家です。彼の政治理論の根幹にある価値多元論を中心にご解説いただきました。
最後は鈴木崇弘さんの連載「自民党シンクタンク史」、今回が最終回となります。鈴木さんが本連載で一貫して主張してきたのは、日本を本当の意味で民主主義社会にするにはどうすればよいのか、ということでした。こうした観点から日本の政治をみたとき、やはり最大の問題は官僚以外に政策形成をするためのリソースがないということに尽きると思います。そのためには、民間に官僚と対抗しうる政策形成のリソースをつくることが大事であって、先の政権交代における民主党の失敗をみてもそれは明らかなのですが、なかなかそうした機運は高まらない。ではどうすればよいのか? 鈴木さんの連載から、みなさん一人ひとりにお考えいただければと思います。
次号は10月15日に配信です。どうぞお楽しみに!
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