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荻上チキ責任編集
“α-Synodos”

vol.144(2014/03/15)

3.11を振り返る(後編)

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★今号のトピック

○はじめに

1.寄稿/標葉隆馬
東日本大震災―――改めて見つめたい「これまで」と「これから」

2.寄稿/秦康範
防災教育の最前線――「自ら考える」防災訓練の試み

3.寄稿/山崎栄一
東日本大震災と法

4.鼎談/荒井裕樹×佐藤慧×安田菜津紀
3.11後の「表現すること」の戸惑い

5.連載/岸政彦
もうひとつの沖縄戦後史(3)──子どもたちの受難

○編集後記

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○はじめに

こんにちは、シノドス編集部のカネコです。今回から「はじめに」が復活です。でも編集長は登場しません。編集長ファンの方、ごめんなさい。

今号のテーマは「3.11を振り返る(後編)」。前号の(前編)には原発に関する論考を多く収録しましたが、今回は様々な視点から、東日本大震災、あるいは震災について論考や鼎談を収録しました。

まずご紹介するのは、標葉隆馬さんによるルポルタージュ。震災当時、宮城県石巻市にある石巻高校で校長を務められていた須藤亨先生(現・宮城県仙台南高校校長)と、福島県立医科大学が2012年度より新たに設置した緊急被ばく医療に関わる実習の担当をされている長谷川有史先生へのインタビューを軸に、東日本大震災から3年経った今、「これまで」と「これから」を振り返り、私たちは今、何を問われているのかを考えます。

続く山梨大学地域防災・マネジメント研究センター准教授・秦康範氏による論考。「おはしも(おかしも)」という標語、多くの読者が覚えていると思います。そうした標語の徹底は、本来の目的である「身の安全を守ること」を阻害する危険があるのではないか。新たな「自ら考える」防災訓練の実践とともに、防災教育についてお書きいただきました。

大分大学教育福祉科学部准教授の山崎栄一氏には、災害に関する法制度の中から避難・避難生活・生活再建に関わる法制度の解説と、それらの改正について解説いただきました。災害法制に限らず、難解なイメージのある法律ですが、そこから通して見える災害対策のあり方は非常に示唆に富んでいることがわかります。

写真は、アートは、文学は、「こんな時代」にいったいどのような役割を担えるのか? 3.11以降、この悩みが日に日に大きくなっているという文学研究者の荒井裕樹さん。そして世界中で、被災地でシャッターを切りながら、カメラを撮ることの意味を考えて続けているフォトジャーナリストの佐藤慧さんと安田菜津紀さんの鼎談。「表現すること」の戸惑いと、その可能性を巡る優しさの詰まった鼎談です。

「1960年の夏。那覇市真嘉比で、ちょっとした「異臭騒ぎ」が起きた」。岸政彦さんの大人気連載『もうひとつの沖縄戦後史』の第3回「子どもたちの受難」の書き出しです。「沖縄タイムス」の三面記事から、1960年前後の沖縄で「危険な子どもたち」として「社会」から排除されてきた少年少女たちの姿を描きます。

シノドス編集部の山本さんが書く「編集後記」には、とにかくファンが多い。ぼくが「はじめに」を書くのを渋るくらい多い。今号のラストを飾った岸政彦さんは、αシノドスが発刊されたら、まず編集後記からお読みになるそうです。彼女が出世する前にたくさん恩を売っておきたいと思います。というわけで、今号もよろしくお願いします。