VS#02台本
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VS#02台本

2013-12-30 02:55
    #01からだーいぶ間が空いてしまいました。
    年内に(つっても残り2日切ってるけど)#03~04も上げたいところ。



    ◇  ◇  ◇

    ヴェローナ・ストライプスのちょっとした大冒険 #02
    『Encounter And Encounter』

     ウエスターバーグ、工業エリアの風景。
     重要遺跡のひとつ「ナパイアの洞窟」を警備しているハンキチとアルトゥール。

    ハンキチ:退屈だなぁ… 退屈だ… あ~退屈だ。
    アルトゥール:いちいち言葉にしないでください。余計にそう感じてしまうでしょう。
    ハンキチ:って事はお前も退屈だと思ってるんじゃないか。
    アルトゥール:自分は少なくとも言葉にはしていません。
    ハンキチ:そんなに違うもんかねぇ… なぁ~、ケルベロス。おぉよしよし。

     傍らにいた犬・ケルベロスとじゃれ始めるハンキチ。

    アルトゥール:ハンキチさん、さすがにペットを職場に連れてくるのは…
    ハンキチ:こいつは別にわしのペットじゃないぞ。
      飼い主は別にいるっぽいし、なんだかミョ~にわしに懐いてるだけだ。
      あとここ(遺跡)を職場って呼ぶのもヘンだろ。
      わしらはただ立たされてるだけなんだし。
    アルトゥール:やるべき仕事があればそこは職場です。
      余計なものを持ち込むべきではない。
      我々は今、警備担当なんですよ? この遺跡に侵入者が現れないための。
      「ただ立たされている」だけではない。
      「立っている事に意味がある」んです!
    ハンキチ:退屈だって思ってるくせに…
    アルトゥール:ですから、自分は少なくとも言葉にはしていませんから。
    ハンキチ:四角四面のつまんない奴だよ。なぁ~、ケルベロス。
      本当は現場に戻りたいくせに。なぁ~、ケルベロス。
    アルトゥール:動物に語りかけるフリして当てこすらないでください。
    ハンキチ:でも実際、そうなんだろ?
    アルトゥール:…まあ否定はしません。戻れるものなら現場に戻りたいですよ。
      ただ、今のウエスターバーグではそれも難しい。
    ハンキチ:(ケルベロスを抱き上げながら)まぁなー…
      力関係考えると仕方ないけどな。
      刑事を辞めさせられなかっただけでも良かったじゃないか。
    アルトゥール:確かに、そこは不幸中の幸いです。
    ハンキチ:だからって変な気は起こすもんじゃねぇぞ、アルトゥール。
      「長いものには巻かれろ」って言葉もある。
      「なるようにしかならねぇ」って言葉もな…
    アルトゥール:…。
    ハンキチ:(ケルベロスを下ろしながら)よし、飽きた。
    アルトゥール:えっ?
    ハンキチ:警備、飽きた。わしちょっと休憩してくる。
    アルトゥール:ちょっちょっと待ってくださいハンキチさん。
      あと2時間で交代なんですよ?もう少しくらい待てませんか。
    ハンキチ:だって飽きちゃったんだもん。わし、コーヒー飲みたい。
    アルトゥール:ははぁ…そういう事ですか。
    ハンキチ:うん?どういう事かな?
    アルトゥール:また例のカフェでしょう? そろそろ開店時間だ。
    ハンキチ:ほほう、さっすが敏腕刑事。
    アルトゥール:刑事じゃなくても分かりますよ。
    ハンキチ:「敏腕」の部分は否定しないのか…
    アルトゥール:お目当ての子がいるんでしたよね。サトミさんでしたっけ?
    ハンキチ:よーし行くぞケルベロス!(歩き出す)
    アルトゥール:ちょっだからちょっと!
    ハンキチ:だ~いじょうぶ。コーヒー1杯だけだから。
      小一時間もすりゃ戻って来るって。小一時間小一時間。わはははは。

     ハンキチとケルベロス、どんどん遠のいていく。

    アルトゥール:あなた、そういうふうに言って戻って来たことないでしょう…

     場面はリッジウェイズカフェへ。カウベルの音。
     アルバイト採用を受けた直後のヴェローナとチェルシィ。
     そして店長のリュウ。

    リュウ:そんなわけで、ここが店内ね。
      ここにレジがあるでしょ? で、あっちがキッチン。僕の主戦場になる。
      2人は注文を取って、出来た料理を運んでもらう。それだけ。簡単でしょ?
      あっ、だからって誰でも良かったワケじゃないよ?
      ちゃんとこう、第一印象というか、持ってるオーラというか、
      ビビッときたから採用させてもらったワケで。
    チェルシィ:あんの~、ワダす、すんげぇ訛ってるんだども大丈夫でしょうかー?
    ヴェローナ:(あっ、自覚はしてるんだ…)
    リュウ:だーいじょうぶ大丈夫! 注文さえ聞き取れれば問題ないさ!
      見ての通り、テーブルはこの店内と、外にもいくつかあるから、
      常に両方を意識しといてね。
    ヴェローナ:あっちの奥とか、階段の上とかはどうなってるんですか?
    リュウ:ナイスな質問だ!そこは一言必要だったよ。

     3人、そちらへ向かう。

    リュウ:この奥には見ての通り、大きなテーブルと間仕切りを置いている。
      人数の多いグループやVIPをご案内するための席だね。
      めったに使うことはないけど覚えておいてほしい。
      階段の上にはお手洗いと、ちょっとした待機スペースがある。
      特にお手洗いのほうは小まめにチェックに入って清潔を保ってほしい。
      それはそれは綺麗な女神様がいると言われているからね。
    チェルシィ:あ~、ワダすもばあちゃんにそんなふうに言い聞かされてたことあるですー。
    リュウ:ね、言うよね!
    ヴェローナ:店長、キッチンの中の階段は?
    リュウ:ああ、あっちは休憩室 兼 更衣室になっている。
      ヴェローナ君、またまたナイスだ!
      そろそろ仕事着に着替えなくちゃって話が必要だった。
    ヴェローナ:あ、そっか。普段着のままじゃ難ですもんね。
    リュウ:それじゃあさっそく上がってみようか。

     更衣室に上がる3人。
     TV、ソファー、タンス、姿見、ベッドなど、割と充実している。

    リュウ:こんな感じで、最低限はくつろげるスペースになってるワケさ。
      ベッドもあるから仮眠をとる事もできる。
      仕事着はそこのタンスに何種類か入ってるから、適当なものを選んで。
    ヴェローナ:制服とかがあるわけじゃないんですね。
    リュウ:オーナーがそういうの好きじゃないみたいでね。
      主従関係がハッキリしすぎるのが嫌なんだって言ってた。
      あくまで「店を盛り上げる仲間」。
      そういう意識で働けるのが一番だって。
      僕も同じように考えてる。店長って立場も、一番偉いとは思っていない。
      みんなに給料を払う事と、店に何かあったらちゃんと責任を負う事。
      その2つの義務があるだけさ。
    ヴェローナ:仕事すら始まってないのに、ちょっと早すぎる気がしないでもないけど、
      「この店を選んで良かったかも」って、この時、なんとなく思った。

     いつの間にか着替えを済ませていたチェルシィ。

    チェルシィ:て~んちょ~。さっそく着替えてみたんども、どうだすかぁ?
    リュウ:おお! いいじゃないか!
    ヴェローナ:えっ、いま着替えたの!? 男の人いるのに!
    チェルシィ:見えてねがっだら問題ないずー。
      ていうか実家に男兄弟いっぺぇいたからなぁ。
      べーつに見られても何ともねぇだー。
    ヴェローナ:いやいやいやいや、そこは気をつけましょーよ!
      アタシもこれから着替えるんで、店長ちょっと降りててもらっていいですか?
    リュウ:オーケーオーケー。ははは。

     ややあって、着替えを済ませたヴェローナが降りてくる。

    ヴェローナ:とゆーワケで、悩んだ結果、エプロンだけお借りすることにしました。
    リュウ:うんうん。落ち着いてていいね。
    ヴェローナ:タンスの中、全体的になんていうか、
      ああいう感じ(チェルシィが着ているような)のばかりだったんですけど…
      まさか店長の私物じゃないですよね?
    リュウ:いやいや、違うよ。ほとんどは元従業員の子たちが置いていったものさ。
    ヴェローナ:そうなんだ。
    リュウ:そのエプロンも、ちょうど先日辞めていった子の物だね。
    ヴェローナ:へぇ。その人はどうして辞めちゃったんですか?
    リュウ:今年で大学4年生になるから、就職活動に専念したいらしくて。
      よく働いてくれる子だったから、抜けた穴は大きかったな…
      キミたち2人にも期待しているよ。頑張ってほしい。
    ヴェローナ:はい。頑張ってみます。
      これも一つの縁だ。始めたものは続けてみよう。やれるところまで…

     リュウが店内BGMを流し始め、それに合わせてタイトルバック。
     店の外のチェス台に老人が座っているのを見つけるチェルシィ。

    チェルシィ:おー。第一お客様発見だぁ。
    リュウ:あのおじいちゃんは常連さんだね。
      週に1~2度、早い時間にやって来ては、一日じゅうチェスをして過ごすんだ。
      他のお客様とも仲良く接してくれるし、小まめに注文もしてくれるから、
      ありがたい存在さ。2人はチェスは打てるのかい?
    チェルシィ:ワダすはサッパリだぁー。
    ヴェローナ:アタシちょっと自信あるかもです。
    リュウ:彼、相手してあげると喜ぶんだよ。
      ヴェローナ君ちょっと行ってみてもらえるかな?
    ヴェローナ:わっかりました。

     外に出るヴェローナ。

    ヴェローナ:いらっしゃいませ。
    老人:おや、初めて見る顔だね。新人さんかい?
    ヴェローナ:はい。今日からなんです。よろしくお願いします。何かお持ちしましょうか?
    老人:とりあえずコーヒーをもらおうか。店長には「いつもの」で通じるよ。
      それから、後で一局おねがいできるかな?
    ヴェローナ:分かりました。いいですよ。

     ヴェローナ店内へ戻る。

    ヴェローナ:店長、「いつもの」だそうです。
    リュウ:オーケー、すぐにお出ししよう。

     店外の老人、笑みを浮かべながら。

    老人:クク… なかなかの逸材が現れたようじゃな…

     コーヒーを持ってきて、チェスを打ち始めるヴェローナ。

    ヴェローナ:(あれ…なんかおかしいな…)
      (ちょっとっていうか結構自信あったんだけど…)
      (このおじいちゃんも相当なもんだぞ…)
    老人:儂が客だからといって、手加減する必要は無いんじゃよ?
    ヴェローナ:えっ?
    老人:伊達に長くは生きとらんからの。本気でかかってきなさい。
    ヴェローナ:…いいんですか?
    老人:少し打てば、相手が本気か、手を抜いてるかぐらい分かる。
      儂は手を抜かれるのは好きじゃない。
      特に、実力がある人間にそれをされるのはな…
    ヴェローナ:…分かりました。それじゃちょっとだけ、マジになっちゃいますよ?
    老人:ククク…そうでなくてはな!

     ざわ…ざわ…し始める。店内にもそのオーラは届く。

    チェルシィ:店長ぉー。なんか急に空気重たくなった気しねがー?
    リュウ:えっ?そうかなぁ?

     カウベルの音。ハンキチ(とケルベロス)が来店してくる。

    リュウ:いらっしゃいませ。やぁやぁハンキチさん、おはようございます。
    ハンキチ:よう店長さん。今日はいつもと顔ぶれが違うな。
    リュウ:サトミちゃんだったら辞めましたよ。
    ハンキチ:えっ…
    リュウ:就職活動に専念するらしくて。
    ハンキチ:そうなのか…そいつは残念だな。いや残念だ…本当に残念だ。
    リュウ:ものすごく落胆してるな…
    チェルシィ:お気に入りだったんすかねぇ、そのサトミさんって人。
    リュウ:みたいだよ。

     チェルシィ、落ち込むハンキチに近付いて行く。

    チェルシィ:あんの~、確かに残念ではあるかもしんねぇけど、
      ヒトには事情ってもんがあっがらなぁ。
      ここはひとつワダすでガマンしてくんねがなぁ?
    ハンキチ:いや… そういうのはそっちから申し出るものじゃないと思うぞ。
      それとパンツ見えてるからな。
    チェルシィ:いっけね。
    ハンキチ:まぁでも確かに居ないもんは仕方ないな…
      店長、何か適当にモーニングセット的なものを頼む。
    リュウ:分かりました。
    チェルシィ:店長ぉー、モーニングセット入るだすー。
    リュウ:いやその、直接聞いたから大丈夫だよ…?

     ややあって、モーニングセット的なものを食すハンキチ。
     ケルベロスは隣で大人しくしている。

    チェルシィ:かーわいらしいワンコロだなぁ。お客さんの飼い犬かぁ?
    ハンキチ:いや、わしのじゃない。でもなーんか懐かれてるんだよ。
      どこからともなくやって来て、しばらく遊んだらどこかへ帰ってく。
      ま、飼い犬っつーか、友達みたいなもんだな。
    チェルシィ:そがぁー。(ケルベロスに)どっから来てんだぁーなーお前ー。

     店内にヴェローナが戻ってくる。

    リュウ:おかえりヴェローナ君。どうだった?
    ヴェローナ:いやー、全く歯が立ちませんでした。
    リュウ:そっかそっか。強そうだもんねあの人。
      一日じゅういろんな人と打ってるし。
    ヴェローナ:ていうか、そういうレベルも超えちゃってるかも。
      ヘタしたら世界チャンピオンクラスとか…
    リュウ:ハハハ。負けたショックで大きく見えすぎてるんじゃないのかな?
      大丈夫。この店にとっては「いいお客さん」の一人だから。
    ヴェローナ:確かに負けたけど、別にショックだったワケじゃない。
      むしろ逆だ。こんな街の片隅にも凄い人がいるんだなって、
      世界は自分が思ってるよりもずっと広いんだなって。
      すごくワクワクしていた。

     ちょうどその頃、シーガルがウエスターバーグに到着。
     前回の回想。

    タリア:「負けた」のよ… 少し前に。もちろん真剣勝負でね…
    シーガル:…一体、誰に負けたんだ?
    タリア:未来ある若者…
    シーガル:そいつは今… 何処に居る?
    タリア:ウエスターバーグという街…
    シーガル:名前は…?
    タリア:…そこまで教えてしまったら、彼女の目的を邪魔する事になるわ…
      あとは自分で探すのね…

     回想おわり。

    シーガル:タリアはそいつを「彼女」と呼んだ…
      という事は、相手は「女」…
      確かウエスターバーグには大学があったはずだ…
      大学生… 未来ある若者… 一番濃厚な線だ。
      他に手掛かりがあるわけでもない。さっそく向かってみるか…

     場面はふたたびカフェへ。客足はぽつぽつ程度。
     そこに「虎の団」の3人が現れ、店長がそれに気付く。

    リュウ:おやおや、今日はうまい具合に定番客が重なる日だな。
      (ヴェローナとチェルシィに)2人とも、少し忙しくなるかもしれないよ。
    2人:あっ、はい。

     店外、チェス台に座っているエドモンを一瞥するトマス。

    サリー:どうかしたかい?トマス。
    トマス:…いや、何でもないよサリー。入ろうか。
    フー:入りますフー。おなか空きましたフー。

     虎の団、店内へ。

    店員一同:いらっしゃいませー。
    サリー:奥、使わせてもらうわよ。
    リュウ:ええ、どうぞどうぞ。
    ヴェローナ:あれ? 奥の席ってもっと大人数用ですよね?
    リュウ:うん。大人数だよ。注文を取りに行けば分かるさ。

     フー、他の客が食事しているのを見て、腹を鳴らす。

    ヴェローナ:なるほど、そゆことか。

     ヴェローナ、虎の団の席へ。

    ヴェローナ:ご注文はお決まりですか?
    フー:寿司と点心とグリルドチーズ、それと酸辣湯もお願いするフー。
      食後はフルーツパイも持ってきて欲しいフー。
    サリー:フー、欲張り過ぎよ。
      食べたらすぐパトロールなんだから、デザートは控えなさい。
    フー:わかりましたフー。
    ヴェローナ:(やっぱそういうキャラなのね…)お次のお客様は?
    トマス:ピーナツバターとジャムのサンドイッチ。
      それからラタトゥーユとマカロニチーズも。
    ヴェローナ:(えっ…)
    サリー:秋のサラダ。トーフドッグ。グーピーカルボナーラ。カルボナーラはつゆだくね。
    ヴェローナ:(こっちの2人も相当だった!)か、かしこまりましたあっ。
      店長ぉー!えっとですね…

     ヴェローナ、キッチンへ急いで戻って注文を通す。

    サリー:予想通り、新しい従業員を補充してたわね。
    トマス:この辺りは学生が多い。春になれば自然と入れ替わりがあるからな。
    サリー:あなたの見立てではどうかしら?
    トマス:犬と遊んでるほう(チェルシィ)は論外だ。知性と品格が足りない。
    サリー:注文を取りに来たほう(ヴェローナ)は?
    トマス:あっちはなかなかいい。聡明さが垣間見える。
      身体も程よく締まっているな。
      おそらく近親者にスポーツの知識を持つ者がいる。
    サリー:「本人が」じゃなく、近親者なの?
    トマス:さっきの小走りに若干、筋力の偏りが見えた。
      ジム通いならトレーナーにバランス良く鍛えられるはずだ。
      トレーニング法は教わったがそのいくつかを忘れた。
      あるいはまだ教わっていない。
      そういった「緩さ」が出るのは、相手が近親者だからさ。
    サリー:なるほどね。

     フー、腹を鳴らす。一方キッチンでは。

    ヴェローナ:あの人たち、何者なんですか?
      単なる大食いサーカス団ってワケじゃなさそうですけど。
    リュウ:一文字だけ合ってるね。彼らは「虎の団」だよ。
    ヴェローナ:虎の団?
    リュウ:んーと、僕もこっちでの暮らしが長いほうじゃないから、
      そこまで詳しくはないんだけど… リーダーの女性、サリーさんは、
      ウエスターバーグに古くからある名家「シャガン家」のご令嬢らしい。
      シャガン家は亡国の騎士の末裔で、
      この土地にやって来て、最初に街を築いたと言われてる。
      それ以来ずっと支配者のような立場だったらしいんだけど、
      少し独裁的すぎたというか、厳しいしきたりから転じた圧政で、
      住民を苦しめてたらしいんだ。
    ハンキチ:そんな時、どこからともなく現れたのが「ケールシュタイン家」さ。
      もとが戦争屋のシャガン家とは違って、民を統べる力を備えた内政屋…
      町の機能を土地によって振り分け、
      より暮らしやすくするための仕組みをどんどん確立していった。
      住民たちからすれば理想的なリーダーの登場だ。
      それによって、シャガン家の権威は、みるみるうちに廃れていった…
    ヴェローナ:そのあたりの話、アタシも文献で読んだ事あります。
      現代にもいたんですね、その血筋の人たち…
    リュウ:サリーさんはシャガン家の権威を取り戻そうとしている。
      もちろん、元の圧政状態に戻すんじゃなく、きちんと住民を導いていく立場でね。
      手始めにああやって、自警団のようなものを結成し、
      街をパトロールしながら仲間探ししてるんだ。
    ヴェローナ:「苛政は虎よりも猛し」って事かぁ…
      でも、ケールシュタイン家が充分に支持されてるんなら、
      それに取って代わるのは難しいだろうし、
      そもそもあまり意味が無いんじゃないですか?
    ハンキチ:ここからはあんまり口にするべきじゃないんだが…
      一見優れたリーダーに思えるケールシュタイン家にも、
      よからぬ噂がいくつかあってな…
    ヴェローナ:よからぬ噂…?
    ハンキチ:ウエスターバーグを「国」として、
      独立させようと目論んでるらしいんだ。
      街の環境を住みやすすぎるぐらいに整えているのは、どれもその下準備だって話さ。
    ヴェローナ:なんでまたそんな事を?
    ハンキチ:そいつは分からん。あくまで噂だしな。
      ただ、ずっとこの街に住んでいる身としては、あまり心地のいい話じゃないな…
      いきなり自分の国籍が変わっちまうなんてイヤだろ。
    ヴェローナ:あー、なんか分かります。
      (虎の団…目的はどうあれ、今の話と照らし合わせたら、無視はできない存在かも…)
      それで、「いくつか」って事は、他にも噂が?

     チーン、とレンジの音。

    リュウ:よーし、料理上がったよ。
    ヴェローナ:早っ!相当な数だったのに!
    リュウ:あの3人が何を注文するかはだいたい分かってるからね。
      「備えあればうれしいな」さ。
    ヴェローナ:(なんか違わないかな、それ…)
    リュウ:さ、とはいえ運ぶ手は必要だ。チェルシィ君、手伝ってくれるかな?
    チェルシィ:いいともだすー。

     ややあって、料理を運び終える。

    ヴェローナ:とゆーわけで、お待たせしました。
    フー:いただきまフー。
    サリー:あなた、学生さん?
    ヴェローナ:いえ、フリーターみたいなもんですけど。
    サリー:そう… 単刀直入に言うわ。「虎の団」に入らない?
    ヴェローナ:(直球で来たな…)え~…と、いきなり言われても何の事だか…
    トマス:しらばっくれても無駄だ。彼女はとても耳がいい。
      キッチンでの会話は全て聴こえていたよ。
    ヴェローナ:えっ、そうなんですか?
    サリー:我々は大食いサーカス団じゃないからね。
    ヴェローナ:(うわ… マジだコレ)
    サリー:あの繋がりマユゲが言う通り、ケールシュタイン家はよからぬ事を企んでいる。
      民衆が完全に飼い馴らされてしまう前に、シャガン家の権威を取り戻すのよ。
      そのために力を貸してほしいの。
    ヴェローナ:うーん、事情は分からなくもないですけど、
      アタシもこの街に来たばかりですし、
      他にまだまだやりたい事もあるので、ちょっと難しいかな~と。
      ていうかまず、なんでアタシなのかなっていう。
    トマス:耳がいい彼女に対して、俺は目がいいのが売りでね。
     キミを一目見た時に、きっといい仲間になれると思ったのさ。
    ヴェローナ:はぁ… そですか。
    サリー:あえて聞くわ。あなたのやりたい事って、何なの?
    ヴェローナ:えっ…えっと、何て言ったらいいんだろ。
      ちょっとした探検みたいなものかなぁ。
    トマス:…もしかして、街の遺跡の発掘か?
    ヴェローナ:あ、ですです。
    サリー:それならことさら話が早いじゃない。虎の団も近々それに着手するのよ?
    ヴェローナ:あれっ、そうなんですか?
    トマス:まだ「条件」は揃っていないがね… いずれ、必ずな…
    サリー:…返事は今日でなくても構わないわ。
      同じ目的を持つ者として、協力しあう立場になるか。競い合う立場になるか。
      じっくり考えて選ぶのね… さあ、お喋りはここまで。
      そろそろ私たちも食事を始めないと、フーに全部横取りされてしまうわ。
    トマス:しまった!
    フー:おいしいでフー!
    ヴェローナ:(シリアス枠かコメディー枠か分かんない人たちだなぁ…)
      そんなこんなで、ランチタイムは終了。

     洗い物を終わらせるチェルシィ。

    チェルシィ:やぁっと洗い物おわったずー。
    リュウ:お疲れ様。
    チェルシィ:虎の穴だか何だか知んねぇけど、
      あーら3人と思わねぇほうがいいなぁ。その4倍だぁ。14人だ14人。
    ハンキチ:わはは、何言ってるんだ。3人の4倍は16人だぞ。
    ヴェローナ:12人だと思います。
    リュウ:2人とも、そろそろ休憩に入っていいよ。
    ヴェローナ:えっ、2人ともで大丈夫なんですか?
    リュウ:今からディナータイムまで、キッチンのほうは締めるから、
      あとは僕一人でものんびり回せるんだ。
      休憩室でゆっくりしててもいいし、夕方までに戻ってこれるなら外出もオッケー!
      店の裏には外出用の自転車も置いてある。
      以前働いてた子たちも、大学生なんかはあれを使って、
      午後の講義を受けに行ったりしてたね。
    ハンキチ:大学生、か…(落ち込む)
    チェルシィ:つーかハンキチさん、なんでまだいるんだぁ?
    ヴェローナ:へぇ、長めに休憩貰えるんだ…

     ウエスターバーグの地図を頭に浮かべるヴェローナ。

    ヴェローナ:確かこのカフェが居住エリアのここにあって、
      大学エリアがここだから… なるほど。
      ちょっと講義を受けに行くにはいい距離だね。
      それじゃ店長、自転車お借りしますね。
    リュウ:ああ。いいよいいよ。
    ヴェローナ:でもって、今日はちゃんとアポ取っとこ。

     電話をかけるヴェローナ。研究室のジゴワット。

    ジゴワット:ほう、あのカフェで働く事になったのかね。
      私ならお伝えした通りにいつでも大丈夫だよ。
      おっと、そういえば、昨日きみにお出しした時点で、コーヒーを切らしていたんだ。
      ついでに豆を配達してくれると有難いかな。
    ヴェローナ:(通話を終え)だそうです。
    リュウ:ナイスな営業手腕だヴェローナ君!それじゃあ配達もお願いしよう。
    ヴェローナ:了解です。ではでは行ってきまーす。(営業…なのかな?これって…)

     場面はダイゴの仮住まいへ。
     ダイゴの目の前にスマイルの5人がテレポートして現れる。

    スマイル:始めまして、ダイゴ・キタノさん。
    ダイゴ:何モンだ。何しに来た。
    スマイル:アタシ達は「笑顔(スマイル)」…
      あなたの同業者ってトコロ。
      今日はとりあえずのご挨拶に伺ったの。まずは釈放おめでとう。
    ダイゴ:群れるのは好かねェ。今すぐ出て行け。
    スマイル:つれないこと言わないで。
      お互い同じスポンサーがついてるんだから、顔ぐらいは覚えて欲しいかな、って。
    ダイゴ:同じスポンサー?
    スマイル:もうすぐ起こる「嵐」に関わるって立場は一緒よ。
      役割は違うかもしれないケド。
      …それから、あなたの敵とあたしたちの敵が、手を組んじゃったみたいなのよね。
      だったら、こっちもコンタクトのひとつぐらいはあってもいいんじゃないかって。
    ダイゴ:言ったぞ、「群れるのは好かねェ」と。
    スマイル:言ったわよ、「顔を覚えるだけでいい」って。
      それぞれの役割に干渉する必要は無い。
      ただ、我々が繋がった。まずはその事実があれば充分。

     暗転。場面はジゴワットの研究室へ。

    ジゴワット:そうか…シャガン家のご令嬢も遺跡の発掘にね…
    ヴェローナ:たぶんですけど、
      「ニュンペーの恩寵」が再興に役立つって考えじゃないかと。
    ジゴワット:言い伝えほどのものが手に入るのであれば、そうなのかもしれないな。
      しかし難しそうだな。その「虎の団」とやらには。
    ヴェローナ:何かあるんですか?
    ジゴワット:発掘調査特別委員会は、主にウエスターバーグ大学の研究機関と、
      ケールシュタイン家が雇った専門家チームで構成されている。
      私は前者に所属しているわけだ。発掘調査に入るためには、
      この2つの機関が共同で発行する「資格」を得なければならない。
    ヴェローナ:それが例の、手続きとかテストとかなんですね。
    ジゴワット:その通り。ケールシュタイン家はシャガン家の人間を警戒しているからね。
      この条件を満たすのはかなり厳しいだろう。
    ヴェローナ:だよなぁ… って思う一方で、カフェで見た、虎の団の人たちの表情。
      どこか「勝算」があるようにも見えたんだ。どこにかは分からないけど…
      ちなみに資格って、どんなのがあるんですか?
    ジゴワット:資格は全部で「5つ」必要になる。
    ヴェローナ:シムリア文明にとって重要な数字… ですね。
    ジゴワット:まさにそれだな。まず1つ目は「リーダー資格」。
      これは委員会がその調査能力を認めた者に与えている。
      審査するのは古代文明に関する知識や、他の遺跡の調査実績などだな。
    ヴェローナ:それなりのキャリアが必要ってことかぁ。
    ジゴワット:ヴェローナ君の場合は「論文」の件があるからね。
      実績の部分は免除されるだろうし、私からも推薦するつもりだから、
      この資格を得るのはさほど難しくないはずだ。
    ヴェローナ:ホントですか!? なんだかシード選手って感じで恐縮ですね。
    ジゴワット:2つ目は「ストレングス資格」。運動能力を量るものだ。
      遺跡にはどのような罠が仕掛けられているか分からないからね。
      取得するにはスポーツテストを行うわけだが、
      基本的には平均レベルの能力でも大丈夫だ。
      メンバー全員がある程度の走る、跳ぶをできれば、とりあえずは問題ない。
    ヴェローナ:ふむふむ。
    ジゴワット:ただし、冒険家の中には私のような高齢者もいてね。
      調査能力の高いベテランを、簡単なスポーツテストで脱落させるのは勿体無い。
      そこでこの資格にはひとつ特例を設けている。
    ヴェローナ:特例… ですか?
    ジゴワット:ある水準以上の… 例えるならスポーツ選手並みの運動能力を持つ者には、
      「ハイ・ストレングス資格」を与えている。
      この資格を持つ者がメンバー内にいれば、他の者のストレングス資格は免除になる。
    ヴェローナ:おおっ、それは便利ですね。
    ジゴワット:3つ目は「メディック資格」。
      医療従事者、もしくはそれに相当する免許や医療知識を持つ者に与えられる。
      万が一負傷者が出た時、応急処置を施せる人間が必要だからね。
    ヴェローナ:確かに少人数体制では重要な存在ですね。
    ジゴワット:4つ目は「レジスター資格」。これは「記録者」という意味だな。
      発掘調査の記録を正当に行えるかどうかを証明する資格で、
      遺物の横領や捏造など、不正行為を防ぐためのものだ。
    ヴェローナ:これまた大事な資格ですね…
    ジゴワット:委員会が定めた規格通りに記録する必要があるので、
      テストと言うよりも、それを学ぶための「講義」を受けてもらう必要がある。
      私の午後の時間はこの講義に使われる事もある。ごく稀にだがね。
    ヴェローナ:憶えときます。…そして次が最後の資格ですか。
    ジゴワット:うむ。最後は「ID資格」。つまり身分の証明だ。
      これにはテストなどは無い。個人の能力も問われない。
      代わりに委員会の方で身辺調査をさせてもらう。
      その事に「同意する」というサインを、必要な書類に書き込むだけだ。
      あとは調査後、こちらの判断となる。
      レジスター資格と併せて不正を防止するためでもあるが、
      万が一の事が起きた時に、然るべき場所へ連絡を入れるためにも必要なものだ。
    ヴェローナ:然るべき場所、というのは…
    ジゴワット:つまりは家族や知人、友人だな。
    ヴェローナ:そっか… そういう事が起こらないとは限りませんもんね…
    ジゴワット:これら5つの資格が揃っていれば、メンバーは5人に満たなくてもいい。
      例えば「リーダー」が「メディック」や「レジスター」を兼任してもいいわけだ。
    ヴェローナ:えっ、そうなんですか?
    ジゴワット:寧ろ私はそちらを推奨しているぐらいだ。
      遺跡に進入できる余裕が1人分でもあれば、救助にも入りやすいからね。
      人命は何よりも最優先されるべきだと思う。
    ヴェローナ:ですね…その通りだと思います。
      てことは、本当の意味でのベストは4人体制か…
      どんな仲間を集めるべきなんだろう…
    ジゴワット:もう少し補足を加えようか。
      リーダー資格を持つ者に限り、委員会が用意した人材を派遣する事も可能だ。
      メンバーが集まらなければそうやってチームを組んでもいい。
      これには別途「人件費」が必要になるが、
      アルバイトではなかなか支払いの難しい額でね。
      この場合こそ私に持たせてもらいたいのだが。
    ヴェローナ:そうですね… もしもの時は、お願いするかもです。
      まぁでもやっぱりそれは最終手段で、
      まだしばらくは、仲間探しも兼ねて、普通に生活してみます。
    ジゴワット:…うむ。きみならそう言うだろうと思っていた。

     ヴェローナのケータイが鳴る。

    ヴェローナ:おっと、すみません…
    ジゴワット:どうぞどうぞ、構わんよ。
    ヴェローナ:(出て)はいはいもしもし。

     相手はリュウ。

    リュウ:あ、ヴェローナ君?
      そろそろお店に戻ってきてもらえると嬉しいんだけど…
    ヴェローナ:あれ、ひょっとして、今って…

     外は真っ暗。

    リュウ:うん。実はもうディナータイム始まっちゃってるんだ。
    ヴェローナ:うわぁあーごめんなさーいすぐ戻りまぁーす!(通話を切る)
      てワケで教授!失礼しますっ!
    ジゴワット:いやいや、こちらこそ長々と付き合わせてすまなかった。
      お仕事、頑張りたまえ。
    ヴェローナ:はいっ!
      大至急、自転車を飛ばして、店に戻った。
      店長はああいう人だから、全然怒ったりはしなかったけど、
      チェルシィさんの訛り接客が、色んなお客さんを困らせてたみたいで…
      そのフォローに回るのがなかなか、スリリングな体験だった。
      そんなこんなで、初日の仕事を終えて帰宅。
      兄貴とミカさんに採用の報告を済ませて、一日の汗を洗い流しにひとっ風呂浴びて、
      寝る前に一曲、ブルー・ベリーとセッションして…
      おや…?

     ヴェローナの部屋の外、小さな公園にシーガルがいる。

    シーガル:ククク… ウエスターバーグか…
      全く… 広い街だな… 完全に迷子になっちまったぜ…
    ヴェローナ:あの人、あんな所で何してんだろ。
      まあいいや。明日も一日、頑張ろっ。

     おわり。


    <各回リンク>
    #01『Greetings To You』
    #02『Encounter And Encounter』(この記事)
    #03『To Be Or Not To Be』
    #04『Flux Of Time』
    #05『Calm Before The Storm』
    #06『Run Verona Run』
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