VS#04台本
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VS#04台本

2013-12-30 16:42
    第一章のシメ回なので可能な限りメインの登場人物を挿し込もうとした結果、
    30分超えになってしまったというアレです。
    (急ぎのせいでちょっと編集が甘い部分があるので後でチマチマ修正しときます)



    ◇  ◇  ◇

    ヴェローナ・ストライプスのちょっとした大冒険 #04
    『Flux Of Time』

     デルタ&ラムダ寮。
     ガールズトークが繰り広げられている。

    キキ:そんなの嘘に決まっているのだわ。
    マリア:いやホントだってば。
      すぐ近くに住んでるんだよ。セシル・ウィルキンソン。
    ローラ:でもあの人ってサンセット・バレーの選手でしょお?
      それがなぜこのウエスターバーグに?
    トリッシュ:たぶんあれは別荘なのかしら。
      お金持ちだったらそのくらい所有してるのかしら。
    ローラ:それで、その別荘に、テリー・ラビットフットもいたってわけぇ?
    キキ:そこがよく分からないのだわ。
    マリア:仲がいいんじゃないの?
    トリッシュ:でも一方は10年以上現役のスタープレイヤーなのかしら。
      もう一方は万年ダメダメ選手なのかしら。
    キキ:ちょっと格差がありすぎるのだわ。
    マリア:トリッシュのセリフって基本紛らわしいよね。
    トリッシュ:ほっといてほしいのかしら。
    キキ:短くてもまぎらわしいのだわ。
    ローラ:ねぇ、ダメダメ選手は取り消してくれない?
      私、彼のファンなのよねぇ。
    マリア:そうだったの?
    キキ:いかにもローラの好きそうなタイプなのだわ。
      いま付き合ってる彼氏も似たような雰囲気なのだわ。
    マリア:へぇーそうなんだ。
    ローラ:でもそろそろ飽きてきちゃったのよねぇ。
    トリッシュ:あら、それはどうしてかしら。
    マリア:(おっ普通)
    ローラ:うーん…ぶっちゃけ、カレ、ヘタクソなのよねぇ。
    一同:あー…
    キキ:それはとっても重要なのだわ。
      あたしのカレはすごく上手だから問題ないのだわ。
    マリア:えっ、自慢?
    トリッシュ:私も満足してるのかしら。
    マリア:(やっぱ紛らわしい…)

     サトミが玄関を開けて入ってくる。

    ローラ:キキの彼氏はテクニックが素晴らしいと思うわぁ。
      トリッシュの彼氏はとにかくパワフルよねぇ。
      私の今カレときたら、ヘタな上にスタミナも無いのよぉ。
    キキ:そういえば、この間ご一緒した時も、朝まで持たなかったのだわ。
    マリア:そりゃちょっと情けないね。
    ローラ:マリアはどうなのぉ?そっち関係。
    マリア:うーんと…ま、今はいわゆる、切り替え期間なんだけどね。
      元カレは一応、上手いほうだったんじゃないかな?
    一同:あー…
    ローラ:なんか、ごめんなさい。つらいことを聞いてしまったわねぇ。
    マリア:いや気にしないで、またすぐに出来るよ、たぶん絶対。

     サトミが割って入って来る。

    サトミ:さっきから上手いとか下手とか、なんの話ですかぁ?
    ローラ:あら、おはようサトミ。
    サトミ:エッチな話とかだったら許さねーですよ!

     間。

    サトミ:あれ?なんですかぁ?この空気。
    トリッシュ:誰がエッチな話だなんて言ったのかしら。
    ローラ:私たち、カラオケの話をしてたんだけどぉ?
    キキ:デルタ&ラムダの数ある活動の中でも、最重要コンテンツなのだわ。
    マリア:そっち方向に考えちゃうサトミさんのほうが、エッチなんじゃない?
    一同:アハハハハ。アハハハハ。
    サトミ:うっうるせーですぅ!!
    ローラ:普段の活動にもっと顔を出せばいいのにねぇ。
    キキ:このまま卒業してしまったら、メンバーになった意味がないのだわ。
    サトミ:仕方ねーですよ。私んち門限が厳しいから、オールとかできねーんですぅ。
    ローラ:デルタ&ラムダの歴史の中で、一度も彼氏ができなかったのはあなたぐらいよぉ。
    サトミ:彼氏が全てじゃねーですから!
      ていうかいま私は、そこんとこ飛び越えて、もっと大変なことになってるんですぅ!
    トリッシュ:何があったのかしら。
    サトミ:それがですねぇ…(ひそひそ)
    一同:お見合いーーー?
    サトミ:なんですよぉ。
    マリア:どーしてまたそんな事に?
    サトミ:イシガミ家の家訓なんですぅ。
      女はできるだけ若いうちに結婚して、早く子供を産めっていう…
    ローラ:彼氏すらできなかった子が、結婚に、子供ねぇ。
    キキ:カメに抜かれたウサギの気分なのだわ。
    トリッシュ:バイトを辞めたのは、それが理由なのかしら。
    サトミ:そうなんですぅ。
      それでもう実際に何人かお会いしたんですけど、みんなパッとしなくて。
      この間なんかですねぇ…

     回想。お見合いなう。
     サトミの前にはニンジャのタマノスケが座っている。ししおどし。

    タマノスケ:はじめまして、ドーモ、サトミ=サン。サイトー・タマノスケです。
    サトミ:あ…イシガミ・サトミといいますぅ。

     間。ししおどし。

    サトミ:あの…えっと、ご職業は。
    タマノスケ:アッハイ、ニンジャです。

     間。ししおどし。

    タマノスケ:サツバツ!
    一同:ニンジャー!?
    マリア:うそくせー、なーんかうそくせー。
    サトミ:ほんとなんですってばぁ!!
    トリッシュ:てゆーかニンジャってそんな場所で名乗っていいのかしら。
    キキ:ウソでもホントでもどっちみち地雷なのだわ。
    ローラ:もちろんお断りしたのよねぇ?
    サトミ:当然ですよぉ!!顔も好みじゃなかったですし。
      私の価値基準はシビアなんですぅ。
    マリア:(彼氏できた事ないのに価値基準とか語れるんだ…)
    ローラ:それじゃあ、どういう顔が好みなのぉ?
    サトミ:そーですねぇ…色白でー、細身でー、鼻がすっと尖っててー、目は切れ長でー、
      あと、髪の毛が銀髪だったら言うことねーですね。
    一同:あー…

     まさにそれに該当する男、シーガルが野宿をしている。
     その前に立っているアルトゥール。

    アルトゥール:ちょっとアンタ、起きてもらえるかな。
    シーガル:うーん?
    アルトゥール:この一週間、ずっとここに寝泊りしてるだろ。
      周辺住民から通報があったんだよ。

     壁一枚隔てて、ヴェローナが目を覚ます。

    アルトゥール:このへんじゃ見ない顔だな。よそから来たのか?
    シーガル:いま何時だ?
    アルトゥール:えっ?
    シーガル:時間は、いま、何時だ?
    アルトゥール:…朝の8時半だ。もし宿が無いならちょっと署まで…
    シーガル:もうすぐだ。
    アルトゥール:えっ?

     ブルー・ベリーに歩み寄るヴェローナ。

    ヴェローナ:おはようブルー・ベリー。今日も朝の一曲いこうか。

     ヴェローナ、演奏を始める。それを耳にする外の2人。

    アルトゥール:これは…
    シーガル:いつもこのぐらいの時間に始まる。
      ここの住人の日課らしい…いい目覚ましになるんだ。
    アルトゥール:改めて聞くが、アンタ、宿は無いのか?
    シーガル:ククク…無いね、そんなもの。
    アルトゥール:いや、笑って言うことかソレ。
      とにかく事情を聞かせてもらうから。署までご同行願う。
    シーガル:いいだろう。朝メシが出るならな。
    アルトゥール:(なんでコイツこんなに偉そうなんだ…)

     連れて行かれるシーガル。演奏を続けるヴェローナ。
     そしてタイトルバック。

    ヴェローナ:さてさて、そんなこんなで、
      あっという間に一週間が経過したワケで。
      兄貴とミカさんは、仕事が忙しくなってきたとかで、
      かなり早い時間に出かけるようになった。
      アタシが起きる頃には2人とも居ないことがほとんどだ。
      ちょっと寂しいけど、それは仕方ない。
      カフェのアルバイトのほうはとりあえず順調。
      チェルシィさんの訛り接客もだいぶ(お客さんのほうが)慣れてきたみたいで、
      平日のホールなら1人体制でもなんとか回せるようになった。
      今はお互いに相談しながらシフトを組み立ててるところだ。
      店でヒマな時間ができたりすると、店長に料理の仕方を教わったりしてる。
      アタシの家族には料理上手が多いからね。
      ひょっとしたらアタシにも才能が?なんて。
      今日は、バイトは休み。
      午後はジゴワット教授のところで講義を受ける予定になってる。
      それまでの時間、何をして過ごすかなんだけど…

     どどん、とSE。
     キッチンで食材を準備しているヴェローナ。

    ヴェローナ:教えてもらったことはすぐに実践!
      ということでワッフル作りに挑戦するのである。
      デリバリーものや、手早い料理ばっかりでも難だしね。

     解説を加えながら調理を進めていくヴェローナ。

    ヴェローナ:まずは薄力粉とベーキングパウダー。
     それに砂糖と塩を合わせてふるっておく。
     そこに牛乳と、卵を、ダマができないように混ぜていって、と…こんなもんかな?
     あとは溶かしたバターを加えて、ワッフルメーカー的なものに入れて焼くだけ、っと。
     うんうん、簡単簡単。

     チーン、とSE。
     真っ黒なものが出来上がる。

    ヴェローナ:…おっと、そろそろ出かける時間だ。

     移動するヴェローナ。

    ヴェローナ:午後の講義は、ジゴワット教授の自宅で行うらしい。
      大学のすぐ近くみたいだから、いったんカフェを経由して、
      自転車を借りていく事にした。

     店内へ挨拶しに行くヴェローナ。

    ヴェローナ:おつかれさまでーす。
    チェルシィ:おつかれだすー。
    リュウ:やあやあヴェローナ君。
    ヴェローナ:店長、先日お伝えした通り、ちょっと自転車借りていきますね。
      閉店時間までには戻りますんで。
    リュウ:オーケーオーケー。頑張っておいで。
    ヴェローナ:ありがとうございます。それじゃいってきまーす。
    チェルシィ:いってらっしゃいだすー。
    ヴェローナ:(ハンキチさん、また来てたな…)

     自転車に乗って街を走るヴェローナ。

    ヴェローナ:お!あれだね、アジサイのたくさん咲いてる家。
      駐輪場的なものは…無さそうだね。ひとまずここに置かせてもらおう。

     大きな木の下に自転車を止め、玄関に向かうヴェローナ。
     そこにサリーがいて驚く。

    ヴェローナ:あれっ。
    サリー:あら。あなた、あのカフェの。
    ヴェローナ:どうもです。
    サリー:レジスター資格の講義?
    ヴェローナ:ということは、サリーさんも?
    サリー:ええ、その通りよ。
    ヴェローナ:(シャガン家の人は資格を得るの難しいって聞いたけど…いいのかな…)

     玄関が開き、ジゴワットが2人を迎え入れる。

    ジゴワット:おお、2人とも着いていたのか。どうぞ入りたまえ。
    ヴェローナ:どもです教授。おじゃましますね。
    ジゴワット:講義は二階の、北側の部屋で行うから、先に上がっててくれ。
    ヴェローナ:分かりました。

     そう告げて一度書斎に向かうジゴワット。
     その背中をなんとなく見送るヴェローナ。

    サリー:さ、行くわよ。
    ヴェローナ:はい。

     二階の指定の部屋に向かう2人。
     二人掛けの小さな机がある。

    サリー:思いっきり、並んで座るカタチねコレ。
    ヴェローナ:そうですね…なんか、小学校思い出す距離感だなぁ。

     並んで座る2人。

    サリー:そういえば、まだちゃんと名前を聞いてなかったわね。
    ヴェローナ:おっと、すみません。ヴェローナ・ストライプスです。
    サリー:サリー・シャガンよ。改めまして。
    ヴェローナ:どーもどーも。
    サリー:あの話、考えてくれた?
    ヴェローナ:「虎の団」に入れって話ですか?
      ちょっとまだそれについては…ごめんなさい。
    サリー:謝ることはないわ。
      悩めば悩むほど、出した答えの価値は大きくなるものよ。
    ヴェローナ:(言うほど悩んでないんだけどなぁ…)

     ドアを開けてジゴワットが入ってくる。

    ジゴワット:お待たせしたね。それでは始めようか。
      講義自体は、発掘調査の記録方法を形式的に覚えてもらうだけだからね。
      1時間もあれば終わるだろう。
    ヴェローナ:なにとぞよろしくお願いします。
    ジゴワット:では、まずは、事前に準備するものから説明していこうか…

     場面はセシルの別荘へ。
     前回に比べ、家の中の家具がごっそり減っている。

    アルマ:あらかた片付いたわね。
    セシル:だな。この街の業者は仕事が早い。
      この別荘とも今夜限りか…ひとつひとつ、手を離れていくんだな。
    アルマ:新しい生活のため、仕方がない事よ。
      メグたちは今日の夕方ごろにはあっちに着く予定。
      二人きりでこんなに長い時間過ごせるのって、何年ぶりかしらね。
    セシル:1件だけヤボ用が残ってるけどな。
    アルマ:スポンサーとのディナー?
    セシル:それも自分トコじゃない。他のチームのスポンサーとだ。
      長年スポーツキャリアにいるが、こんな話は初めてだな。
    アルマ:ケールシュタイン氏だっけ?
      聞けばこの別荘の土地の、元々の所有者だって言うじゃない?
      孫があなたの大ファンだから会いたがってる。
      一晩ディナーに付き合ってくれれば、別荘の売却額を倍にする。
      ありがたい話よね。
    セシル:ありがたすぎて勘繰っちまうけどな。
    アルマ:もう引退は決まってるんだから。
      今さら移籍がどうとか言われても関係ないでしょ。
    セシル:確かにそうなんだがな…

     外を強い風が吹く。ウエスターバーグの風景。
     場面は再びジゴワットの家へ。

    ジゴワット:…というわけで、この講義は以上だ。
    ヴェローナ:ホントにあっというまでしたね。
    ジゴワット:なにせ小人数体制の調査だからね。
      あまり難しくするとかえって負担になる。
      この講義を受ける事、それ自体のほうが大事でね。
      これから委員会のほうに、きみたちの受講が終了した旨を報告する。
      その了解を得て、登録が済んだ時点で、レジスター資格は発行完了だ。
      資格証は後日、早ければ明日にでも、自宅に送付される。
    ヴェローナ:ふむふむ。
    サリー:…。
    ジゴワット:報告が終わるまで、今度は下の階の西側、
      暖炉の部屋で待っててもらえるかな?
      せっかくだからコーヒーでもご馳走しよう。
    ヴェローナ:わぁ、ぜひぜひ!
    ジゴワット:サリー君も、いいかね?
    サリー:…ええ。

     階下に下りて、書斎へ向かう2人。
     飾られている女性の肖像画になんとなく目を奪われるヴェローナ。

    サリー:どうかしたの?
    ヴェローナ:さっきもチラっと見えたんですけど、
      その絵…キレイな人だなぁって。教授の奥さんですかね?
    サリー:教授に聞けば分かるでしょ。
    ヴェローナ:それもそですね。

     ヴェローナとサリー、ソファに座る。
     講義の時に近すぎたせいか、微妙な距離。

    サリー:ヴェローナ。
    ヴェローナ:はいっ。
    サリー:あなた、チームの編成はどうするつもり?
    ヴェローナ:うーん…ぶっちゃけ、まだ何もアテは無い感じです。
    サリー:仲間は?一人もいないの?
    ヴェローナ:まだこっち来て一週間ちょいなんで。
    サリー:呆れた…ノープランにも程があるわね。
    ヴェローナ:なにせ資格が必要って話を聞いたのもつい最近で。
      そちらの、虎の団はどんな感じなんですか?
    サリー:基本のメンバーはカフェで会った時と同じよ。
      あと1人ぐらい居てくれたら嬉しいんだけど。
    ヴェローナ:カフェで会った時というと…3人ですね。
      虎の団から、他にメンバーは?
    サリー:…。
    ヴェローナ:あの…もしかして虎の団って、あれで全員…
    サリー:言わないで。

     間。

    ヴェローナ:色々大変みたいですね。お互いに。

     ジゴワットが来る。

    ジゴワット:2人とも、無事に登録が済んだよ。おめでとう。
    ヴェローナ:おおっ!ありがとうございます!

     しばしコーヒーブレイク。

    ヴェローナ:教授。そこに掛かってる肖像画は、どなたですか?
      もしかして奥さんとか?
    ジゴワット:実はその話を振られるのを少し期待していた。
      この部屋に招いたのはそのためでもある。
    ヴェローナ:なんとっ。
    ジゴワット:きみの言う通り、彼女は私の妻だ。
      ずいぶん前にこの世を去ってしまったが…
      クラリス。それが彼女の名だ。
    ヴェローナ:ずいぶん前、って表現が少し引っかかった。
      そこに描かれていた女性は、教授と同じくらいの歳に見える。
      亡くなったとしてもごく最近のように思えた。
      あるいは、教授よりも年上だったとか?
    ジゴワット:私たちはウエスターバーグ大学の同期生だった。
      2人ともよその街からやってきた身でね。
      入学当時、親しい友人などはまだ居なかった。

     回想。

    ジゴワット:そんな私たちをめぐり合わせたのが、エドモンという男だった。
      彼は地元の人間で、顔も広く、非常に賢い男でね。行動力もずば抜けていた。
      先に言っておこうか。
      彼はのちに、ケールシュタイン家の当主を努める事になる。
    ヴェローナ:ええっ?まさかのネタバレ?
    ジゴワット:ははは。その部分をサプライズにするような話ではないからね。
      エドモンは将来、この街を統べる事が約束されていた身だ。
      だからこそ、そこに胡坐をかかず、人々とより深くつながる手段を模索していた。
      そこで彼はサークルを作った。今でいう出会い系サークルのようなものかな。
      当時ではまだ珍しいほうだ。
      活動内容を限定せず、とにかく人脈を広げるためにイベントやパーティーを主催する、
      そんな集まりだ。
      私も、クラリスも、新天地で新しい友人が欲しかった。
      参加するのはごく自然な流れだった。
      とりわけクラリスの方は、その容姿のおかげもあって、
      サークルに参加するや否や、たちまち人気者になった。
      私もまた、心を奪われた。そしてエドモンも。
      奇しくも私たち3人は、ほとんど同じ講義を取っていてね。
      そのうちに3人でつるむ時間が増えた。これもごく自然な流れだ。
      ある時、エドモンと腹を割って話す機会が訪れた。
      先に切り出したのは彼のほうだ。
    エドモン:ポール。お前、クラリスの事どう思ってるんだ?
    ポール:どーって、そりゃ…一緒にいて楽しいと思ってるよ。
    エドモン:本当にそれだけか?
    ポール:まぁ、正直…好きだよ、すごく。
    エドモン:よく言った。俺も彼女のことが大好きだ。
      サークルの男連中にもかなりの人気だが、
      より彼女と距離が近いのは俺とお前だけ。
      つまり、俺とお前は、ライバルってわけだ。
    ポール:そう…なるのかな。
    エドモン:しかし俺はお前のことも大好きだ。
      いや誤解するなよ。こっちは友情の話だ。
    ポール:ははは、分かってるよ。
    エドモン:そこでだ。ひとつ協定を結ばないか?
    ポール:協定?
    エドモン:クラリスがどちらを選んでも遺恨の無いように、
      約束事を決めておきたい。例えばこういうのはどうだ?
      彼女のハートを射止めた方は、
      それができなかった方の願いを一つだけ叶えてやる。
    ポール:勝者が、敗者に、残念賞を贈るって事か。
    エドモン:ま、そういう事だな。
    ポール:悪くはないな。
      でももし彼女が、僕たちのどちらでもなく、他の誰かを選んだとしたら?
    エドモン:悔しいがそれは、祝福するしか無いだろう。
      それとも一緒に殴りに行こうか?その幸せ者を。
    ポール:ははは、それもありだ。
    ジゴワット:そんな話をしたわずか5日後だ。
      私はクラリスに呼び出され、告白をされることになる。
    クラリス:言おうかどうかすごく悩んだけど、思いきって言うわ。
      ポール。あなたのことが好きよ。
    ヴェローナ:キターーーーーーーーーーー!!
    サリー:黙って聞きなさいよ。
    ヴェローナ:サーセン。それにしても超展開ですね。
    ジゴワット:全くだ。しばらく言葉が出なかったよ… それから、やっとの思いで、
    ポール:どうして私なんだ?
    ジゴワット:そう訊ねることができた。
    クラリス:あなたが近くにいると安心するの。
      胸の奥が温かくなって、その温かさに癒される。
    ポール:僕と居る時は、たいていエドモンも一緒にいるだろう。
      あいつと間違えてるんじゃないのか?
    クラリス:そんな事ないわ。間違いなくあなたよ。
      会話をしていると、あなたの声だけが、すごくはっきりと聞こえるの。
      まぶたを閉じると、あなたの顔だけが、すごくはっきりと浮かんでくるの。
      それでも間違いだって言える?
    ジゴワット:言えるはずが無い。
      隠しておくのも申し訳ないと思い、その日のうちに、エドモンに報告した。
      彼は少しだけ驚いた表情を見せたが、
      すぐに笑って、祝福の言葉を贈ってくれた。
    エドモン:おめでとう、ポール、クラリス。
      俺たちのサークルからは沢山のカップルが生まれているが、
      正直、君たちがくっ付いた事が一番嬉しいよ。
    ジゴワット:我々の関係は、その後も良好に続いた。
    ヴェローナ:青春ですね。フヒヒ。
    サリー:それで?教授。
      わざわざそんな惚気話を聞かせるために、
      私たちをバッティングさせたワケじゃないでしょう?
    ジゴワット:お嬢様はせっかちだな。ちょうどこれから本題に入るというのに。
    ヴェローナ:本題?
    ジゴワット:エドモンと私が結んだ協定は、まだ生きていた。例の残念賞の事だ。
      彼はその話を、ちょうど私が、卒業後どうするか悩み始めた頃に持ってきた。
    エドモン:協定のこと、憶えてるか、ポール。
    ポール:ああ。いつその話が出るかと。
    エドモン:今だ…今こそ、俺の願いをひとつ、叶えてほしい。
    ポール:どんな願いだ?
    エドモン:この大学の教授になってくれ。
    ポール:そいつはまたずいぶんと大きな願いだな。
    エドモン:お前は優秀だ。きっとできる。
      俺は家業を継ぐ事が強制ルートになっててね。
      そうなればそれなりの発言力は得られるだろうが、
      案外そこまで自由ってワケでもない。
      これまでも効率化されてきたとは言え、
      この広い街のすべてを把握するのは骨が折れる。
      特に重要な場所には、信頼できる人間をひとりは置いておきたい。
    ポール:それで、この大学には僕を、って事か。
    エドモン:ああ。より良い街を作るためには、優れた人材を集め、育てる場所が要になる。
      だからお前の手を貸して欲しい。風を土に変えていこう。
    ヴェローナ:風を、土に?
    ジゴワット:ある東洋の古い民族には、ひとつの地域に暮らす人間を、
      「風の民」と「土の民」とに分けて考える習わしがある。
      「風の民」とは、外の世界からやって来る人間の事。
      「土の民」とは、地域に根付いて生きる人間の事だ。
      このふたつは互いに影響を与え合う。
      外側と内側、その双方から形づくられていったものが、
      やがて「風土」と呼ばれるようになる。
      元々は、ケールシュタイン家もシャガン家も、風の民だった。
      それがこのウエスターバーグに留まり、方法は違えども、街の繁栄に力を尽くし、
      やがて世代を重ねるうちに、土の民になっていった。
      エドモンはそのサイクルをさらに推し進めようとしたわけだ。
    サリー:要するにあなたは、あの男の言いなりになって生きてきたって話でしょ。
    ヴェローナ:ちょっとサリーさん、そんな言い方…
    ジゴワット:いいんだ。間違ってはいない。大きくはね。
      確かに私は、エドモンの理想に賛同し、これまで力を貸してきた。
      しかし長い付き合いだからこそ分かる事もある。
      時が流れるにつれ、彼は少しずつ変わっていった。
      ウエスターバーグは確かに住みやすい街になった。
      その一方で感じるんだ。何かが違うと。
      あの頃エドモンが熱心に語っていた理想の街とは、どこか違って見えると。
      その正体がなんなのかを探るには、私は年を取りすぎた。
      だからこそキミたちのような若い世代に託したい。
      古代文明の存在を明らかにした風の民、ヴェローナ君。
      ケールシュタイン家のやり方に異を唱える土の民、サリー君。
      カギを握るのは、君たちだと思っている。
    ヴェローナ:教授…

     夜になり、舞台はケールシュタイン家の屋敷へ。

    白服:どうぞこちらです。
    エドモン:ようこそ、セシル・ウィルキンソン。そしてウィルキンソン夫人。
      儂がエドモン・ケールシュタインじゃ。こっちが孫のアドル。
    タマネギ:こ、こここ、こんばんふぁっ!
    アルマ:今夜はお招きいただいて嬉しく思いますわ…ほら、セシル。
    セシル:どーも。いつも世話んなってます。レッドフォックスはいいチームだ。
    エドモン:世辞など、らしくないのう。
      まぁどうぞ掛けてくれ。すぐに料理を準備する。
      お前たちは下がりなさい。
    白服:はっ。

     料理が運ばれ、少ししてからの会話。

    エドモン:引退後はどうするつもりかね?
    セシル:グリーンラクーンズのコーチか、なれれば監督になろうと思ってます。
    エドモン:思っている、という事は、確定事項ではないワケだ。
    アルマ:今はチームと話し合ってる段階なので。
    エドモン:ごく一部では、タレントか俳優になるという噂もあるが。
    セシル:ただの噂ですよ。微塵も興味はありません。
    エドモン:コーチか、監督か…それを他のチームでやろうとは?
    セシル:考えてないですね。
      俺はあくまで、ふるさとのために力を尽くしていきたいと思ってるんで。
    タマネギ:(カッケぇー!)
    エドモン:うむ。素晴らしい志じゃ… ところで、先日、キミの別荘に、
      ウチのチームのある選手がお邪魔したそうじゃな。テリー君だったかな。
    セシル:ええ。お邪魔というか、俺が呼んだんですけど。
    エドモン:彼も確か、サンセット・バレーの出身じゃったな。
      地元のチームには入れず、他の様々なチームで入団テストを受け、
      ようやく我がレッドフォックスでプロ入りできた。
      が、3年間、得点につながる活躍はできず…
    セシル:戦力外通告を言い渡された、と。
    エドモン:テリー君から、助けてくれとでも頼まれたかの?
    セシル:いえ、アイツはそんな事、一言も。
      俺からは「まだ可能性はある」って言ってやったぐらいです。
    タマネギ:(メチャかっけぇぇぇぇ!)
    エドモン:可能性か。
      現段階では本当に、まじりっけなしのゼロなんじゃがの…
      しかしキミ次第では、それが数%ほど上がるかもしれん。
    セシル:…なんとなくですけどね、今日ここに呼ばれた時から、
      そういう話に持って行かれるんじゃないかって、予想はしてたんですよ。
      確かに、あいつの現状を変えてやるには、それが一番の方法かもしれない。
      それにこの街は、すごくいい街だ。
      過ごしやすい気候に、施設のサービスも充実してる。
      最初に言った、レッドフォックスがいいチームだってのも、
      お世辞なんかじゃない。本心だ。
      そこで同郷のテリーとがっつり組んでやっていけるなら、それも悪くない。
    エドモン:ほほう、よく分かっているではないか。
    セシル:だが断る。

     場の空気が硬直する。

    エドモン:上げて落してきたな。
      では、キミ自身はあくまで自分のやりたい事を優先し、
      テリー君には可能性ゼロの努力を続けさせるという事か。
    セシル:ゼロだゼロだとずいぶん強調してるが、
      そう思ってるのはアンタだけかもしれないぜ。
      努力は絶対に裏切らねぇ。
      求めていた結果が得られなくても、別の形で実ることもある。
    タマネギ:(やっべぇぇぇぇ!忘れないうちに後でメモしとこう!)
    エドモン:ウィルキンソン夫人。
      キミの旦那はなかなか芯の太い男じゃな。家でもこうなのかね?
    アルマ:ええ、まぁ…確かに、ガンコなところは…

     アルマが背筋に邪悪なものを感じる。すぐにそれはセシルにも。

    アルマ:(なに、この感覚…背後に何かいる。なのに振り向けない…金縛り?)
    セシル:(なんなんだコレ…冷たいカミソリで背中をゆっくり切り裂かれるような…)

     背後に3つの影がある。エドモンがそれを断ち切る。

    エドモン:よしなさい。キミらの出る幕ではない。
      ワシは彼らと、いたって普通に会話を楽しんでおる。
      水を差さんでもらえるかな。

     3つの影、去って行く。

    タマネギ:あいつらホント、すぐにシャシャリ出てくるよなぁ。
    エドモン:不快な思いをさせてしまったのう。
      この敷地には少々血の気の多い、いや、ある意味少ないかな?
      そういう者がいてね。
      ごく稀に、無礼を働いた人間を、なんというか…
      片付けてもらっとるんじゃよ。
      いや、安心したまえ。キミらはまったくそういう事ではない。
      申し出が受け入れられなかったのは残念じゃが、
      これからもお互いに、ベストを尽くしていこう。

     ディナーは終了し、夜の街。
     帰宅前にひと息つくセシルとアルマ。

    アルマ:結局あのあと、なにも喉を通らなかったわね。
    セシル:とんだディナーになっちまったな。

     セシルに電話がかかってくる。相手はロバート。

    セシル:もしもし。
    ロバート:しばらくぶりだな、セシル。
    セシル:ロバートか。
      めずらしいな直接かけて来るなんて。10年ぶりぐらいじゃないか?
    ロバート:そんなに前の話だったかな。まぁそれはいいや。
      実はさ、ちょっとワケありで、いまウエスターバーグにいるんだ。
    セシル:ホントか?俺もちょうど試合だなんだで滞在してるんだが。
    ロバート:知ってる。
      いまお前、モニターに映ってんだ。あの時みてーに。だから電話した。
    セシル:相変わらず花屋みてーな事やってんのか。
    ロバート:なんだそりゃ。
    セシル:イヤなんでもねぇ。それで?
    ロバート:さっきお前、デカい屋敷から出てきただろ。
      ナニしてたのか教えてくれるとすげぇ嬉しいんだけどなー。
    セシル:教えないわけにはいかねぇだろjk。
      この街、とんでもなくヤバイものが潜んでるかもしれないぜ。

     場面はリッジウェイズカフェへ。
     自転車を返しに戻ってきたヴェローナ。

    ヴェローナ:ホントに閉店ギリギリになっちゃったなぁ。
      シメ作業くらい手伝ってかえんないとだね。

     店内。

    ヴェローナ:ただいまでーす。
    チェルシィ:おかえりだすー。
    リュウ:おかえりヴェローナ君。
      ついさっき最後のお客さんが帰ったとこだよ。
    ヴェローナ:そかそか、ちょうど良かった。シメ作業手伝いますよ。
    リュウ:おお、それは嬉しいな。

     シメ作業中、ヴェローナに電話がかかってくる。

    ヴェローナ:おっと、なんだろ。教授からじゃん。
      (出て)もしもし教授、さっきぶりですね。
    ジゴワット:ヴェローナ君、もう家には着いたか?
    ヴェローナ:んーと、ちょっと職場に寄ってるんですけど。
    ジゴワット:そこにTVは?
    ヴェローナ:ありますあります。
    ジゴワット:すぐにチャンネルを回してくれ。
    ヴェローナ:どうかしたんですか?
    ジゴワット:重要遺跡のひとつが、調査を終えたらしい。
    ヴェローナ:えっ?
    ジゴワット:ちょうどいま、その調査チームが会見をおこなっている。
    ヴェローナ:店長すみません、ちょっとTV借ります。
    リュウ:ああ、いいよいいよ。

     2階の休憩室に上がるヴェローナ。

    ヴェローナ:それにしてもすごい早かったですね。どこの調査チームですか?
    ジゴワット:それがだね…

     TVをつけるヴェローナ。そこにシャーロットが映し出される。

    シャーロット:…の部分が明らかになったと言えます。
    ヴェローナ:シャーロットさん?
    記者:「ネレイドの岬」には、今後も調査の余地はありそうですか?
    シャーロット:ほとんど無いと思います。
      遺物はすべて回収しましたし、仕掛けられていた装置も残さず解除したため、
      もはや危険もありません。ただし、例の呪いが解けたわけではないので、
      今後も進入の際は、委員会の規定に従い、5人以内のチームでお願いします。
    記者:ラビットフットさん。
      よければ、この放送を見ている冒険家たちに、何かメッセージを。
    シャーロット:冒険家たち…というよりも、ある人物に伝えたいことが。
    記者:結構ですよ、どうぞ。
    シャーロット:…見ているかしら?V.S。
      あなたも今、この街にいるのよね。知ってるわよ。
      最初の一歩は遅れを取ったけど、ようやくその遅れも取り戻せた。

     シャーロットのメッセージに合わせ、
     様々な人物たちがフォーカスされていく。

    シャーロット:邪魔するなとは言わない。
      むしろこれはあなたとの勝負だと思ってる。
      今さら気遣いなんてしないでね、V.S。
      もしあなたがこれから先、なんの成果も残せなかったり、
      この件から手を引いてしまったりしたなら、
      私はあなたに…そしてあなたの家族に、失望するわ。
      その時はラビットフットの名も捨てる。
      そもそも、本当に求めていた形で得たものてはないし、ね。
      そしてよく聞きなさい、V.S。
      私たちのチームはケールシュタインケ直属。
      全員がリーダー資格を所有している。
      考え得る限り世界最高峰の調査能力を持つ、ベストメンバーよ。
      今から20日以内に、残る全ての遺跡に進入する。
      そして今回のように、全ての調査を終えてくるつもりでいるわ。
      私とまだ家族でいたいなら、あとほんの一度でもいい。
      食らいついてきなさい。
      くれぐれも失望だけはさせないで。

    ヴェローナ:シャーロットさんのメッセージは、
      明らかにアタシに向けた「宣戦布告」。
      同時に、この街にいる他の調査チームに対しても、重要な意味を含んでいた。
      20日以内。それはつまり、タイムリミット。
      こんな時こそ黙っちゃいられない性分の人たちが、この街にはたくさんいる。
      ウエスターバーグはきっと荒れることになる。
      たくさんの風が吹き込んで、やがて嵐になるだろう。
      それがどんなに大きく、激しいものになるのか…
      この時はまだ、誰にも想像できなかった。
      …ここまでが、この物語の第一章。
      そして第二章が始まる。

     おわり。


    <各回リンク>
    #01『Greetings To You』
    #02『Encounter And Encounter』
    #03『To Be Or Not To Be』
    #04『Flux Of Time』(この記事)
    #05『Calm Before The Storm』
    #06『Run Verona Run』
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