VS#05台本
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VS#05台本

2016-02-29 18:38
    色々ありましたがようやく続きです。
    今回と次回までが動画でうp済みなので、その次から完全にブロマガでの進行となります。



    ◇  ◇  ◇

    ヴェローナ・ストライプスのちょっとした大冒険 #05
    『Calm Before The Storm』

     ヴェローナのモノローグから始まる。

    ヴェローナ:会見から一夜が明けた。
      ウエスターバーグはいつも通りの朝を迎えた。
      とりあえずのところは、だけど…

     「第二章」の文字。

    ヴェローナ:水面下では、色んなものが、大きく動き始めていた。

     シャーロットチームが集まるロレンス邸。
     ハイラムが二本指を立てて話し出す。

    ハイラム:ふたぁーつ!!納得いかない事がある!!

     しかし誰もハイラムの声に耳を向けていない。

    ハイラム:もとい!!みぃーっつ!!納得いかない事がある!!
      まずなんでお前らは俺の話を聞かないんだっ!!
    パーシー:諦めろハイラム。お前が建設的な話をできるんならとっくに聞いてる。
    ハイラム:なんだとパー公!!遠回しに馬鹿にしやがったな!!
    ロイ:かなり直接的だと思いますけどね。
    ハイラム:ケッ、ガキんちょは黙ってろい!!…ロイだけに!!
    ロイ:(審議拒否)
    ネフェル:それで、納得いかない事って?
    ハイラム:おお!!聞いてくれるかネフェル!!
      おい見ろお前ら!!素直が一番っていういい見本だぞ!!
    ネフェル:話し終えたら静かになると思ったのだけど、どうかしら?
    ロイ:今のがいわゆる「遠回し」というものです。
    ハイラム:ちくしょおう!!揃いも揃ってなんなんだよお!!
      あんまりそういう態度を取られたらなぁ…泣くぞ!!いいのか!?
      俺はなかなか泣き止まないぞお!?
    パーシー:あーはいはい分かったよ、耳は傾けといてやるから、話したいだけ話せ。
    ハイラム:ケッ、最初からそうしとけっつーんだよっ。
    パーシー:(お前が勝手にゴネて広げたんだろ…)それで?何が納得いかない?
    ハイラム:どうして委員会は遺物を全部回収していきやがったんだ?
      問答無用にさ…回収ってか「没収」だろありゃ。
      実際に動いて発掘したのは俺たちじゃんか!!
      まずはチームの物になって、それから等価で取引。これがセオリーってもんだろ?
      このままじゃータダ働きじゃねーか!!

     一同、無反応。

    ハイラム:おいィ?ちゃんと聞いてんのか!?めちゃくちゃ大事なコトだぜ!?
    ロイ:だからあなたの話はスルーしたかったんですよ…
      遺物の扱いに関しては契約書に明記されてましたからね。
      ここウエスターバーグの土地の7割近くは、ケールシュタイン家のものです。
      書類上は4分の3ほどが「私有地」なんですよ。
      そして発掘対象の遺跡もほぼ全てその中にある…
    パーシー:俺やお前が専門にしてるような「地図の隙間の秘境」とは、
      そもそもの条件が違うのさ。
      「他人の家の庭」を、許可を得て掘らせてもらってるんだ。
      そこから出た物を勝手に自分の物にしていい道理は無い。
    ハイラム:ムゥ…これ以上ねぇってぐらいに納得させられた。だが納得いかねぇ。
    パーシー:どっちだよ。
    ハイラム:報酬はどうなるんだ?
      肝心の遺物が手元に残らないんじゃあ、どうしようもねぇだろ。
      やっぱりタダ働きじゃねーか!!
    ロイ:それも契約書に明記されてたんですけどね…
    パーシー:研究班による「解析」が終わった物は、ちゃんと手元に戻ってくる…
      価値が分かった状態でな。
      そのまま引き取りや換金にも応じるそうだ。寧ろ在庫を抱える手間が省ける。
    ハイラム:そっか。じゃあ何も問題ねぇな。いたれりつくせりだ!!
    ロイ:(解析が終わらない限り戻らないという意味でもあるんですが…)
    ハイラム:よっしゃ、スッキリしたところで次に移るか!!
      シャーロット!!お前だよお前!!なんだよ昨日の記者会見は!!
      あんな個人的な話をする場じゃねーだろ!?空気読めよな空気!!
    パーシー:それはお前の方だ。彼女の父親の話、忘れたのか?
    ハイラム:憶えてるワケねーだろ!!俺の記憶力ナメんな!!
    パーシー:じゃあもう一度話してやる。向こうの部屋へ行くぞ。

     パーシー、席を立つ。

    パーシー:…大丈夫か?シャーロット。
    シャーロット:えぇ。私は冷静よ。
    ハイラム:オイなんで部屋変える必要があるんだよ。
    パーシー:いいから。
    ハイラム:んだよ、ヘンな奴。

     パーシーとハイラム、別室へ。

    ネフェル:体温が少し上がってるようね…心拍数も。
    シャーロット:気にしてもらわなくても大丈夫よ、ネフェル。
    ロイ:冒険家という人種はみんなああなのですか?
      調査期間中の生活については、すでに充分な保障を受けているのに…
    シャーロット:ハイラムは退屈が苦手なの。
      誰も足を踏み入れようとしない場所へ、
      堂々と乗り込んで行く事に慣れてしまってるから、
      こうして順番待ちをさせられるのは性に合わないのね。
      ああやって騒いでいないと、体力が有り余って仕方ないんだわ。
    ロイ:あのような人物だと分かっていたら、部屋を貸す許可なんて出しませんでした。
    ネフェル:それもあと少しの我慢…
      私の“筒歩き”の力があれば、すぐに終わる事よ。
    ロイ:そうですね…最初に話を聞いた時は眉唾でしたが、
      昨日の調査で、信じざるを得なくなりました。
    ネフェル:私は若い頃に5回、雷に打たれた事がある…

     ネフェルが雷に打たれた時の映像(1回目)。

    ネフェル:その結果、物質の表面や内部に流れる、
      あらゆるエネルギーを読み取れるようになった。
      何もしなくても、半径4メートルほどの範囲なら、
      物の位置や形状・動き・温度や湿度など、様々な事が解る。
      直接肌で触れれば、エネルギーの流れに干渉することもできるし、
      より広範囲まで感覚を拡げられる。
      昨日の遺跡ほどの広さなら、全構造を把握する事も可能。
      そのために素足で歩いた。
      どういう形で道が繋がっていて、どこにどんな仕掛けがあって、
      どの部屋に何が隠されているか…
      私の肌は、ケーブルが繋がったように、あらゆる情報を正確に読み取る。
    シャーロット:高性能・広範囲の「万能センサー」みたいなものね。
      それで出来た地図を頼りに調査するわけだから、
      最小限のリスク、最短のルートで進むことができた。
    ロイ:規定の12時間のうち、半分も使わずに終了しましたからね。
      それほど便利な能力を持っていながら、
      なぜ一介の植物研究家に収まっているのか…
    ネフェル:答えは簡単よ。「便利すぎる」から。
      あまり多くの人に知られると、悪用するために近付いてくる輩が後を絶たなくなる。
      できることなら私、静かに暮らしていたいの。
    ロイ:だとしても、勿体無いですね。
      世界中に散在するあらゆる謎が、その力ひとつで全て解けるかもしれないのに。
    ネフェル:人類は、一度に知り過ぎたり、進み過ぎたりしても駄目なのよ。
      その度に大きな災いを受けてきた歴史がある…
      私は、プロメテウスにはなりたくないから。
    シャーロット:「パンドラの箱」には希望も詰まっているそうよ?
    ネフェル:そのあたりは、もう少し話し合う必要がありそうね…

     2人が目を合わせたその時、別室から。

    ハイラム:うーわーん!!悲しすぎる話じゃーねぇーかぁー!!
    ロイ:…あっちの話は終わったようですね。
    ハイラム:そんなのあんまりだぁーっ!!
     シャーロットぉー!!俺はお前の味方だからなぁー!!
     お前の無念は必ずはーらーすーぞぉっ!!
    シャーロット:私…ちょっと違う扱いになってない?
    ネフェル:ふふ、なかなか楽しいチームじゃない。
    ハイラム:神様ぁー!!なぜ人間は戦争という同じ過ちを繰り返すのですかぁー!!
    ロイ:泣いてる理由を見失ってる…
    ハイラム:野生動物たちよぉー何処へ行くのかぁー!!どこまでが野生動物かぁー!!

     ハイラムの魂の叫びがフェードアウトしていく。
     再びヴェローナのモノローグ。

    ヴェローナ:一人、また一人と、役者は揃い始めてた。
      「嵐」が来るまで、残り20日。

     タイトルバック。
     街の風景が映し出される。
     スマイルの面々がやけに開けた場所で卓球をやっている。

    ホット:そんで?スマイル姐。
      ダイゴが釈放されましたあ、遺跡の攻略が始まりましたあ、
      あとは何があれば俺ら本格始動なんすか?

     シャッターが切られる。

    ラブ:ホットってマジ早漏よね~。ガマンできない子は嫌われるわよ?

     シャッターが切られる。

    ピース:せやな。ワイ将、こうしてずっと遊び続けても構わんもよう。

     シャッターが切られる。

    ソウル:気楽でいいよなアイツらは。俺がどれだけ神経使ってるか、知りもしないで…

     シャッターが切られる。

    スマイル:そのぶん本番ではしっかり頑張ってもらうからね。
      アナタもその時が来たら思う存分暴れてちょうだい…

     シャッターが切られる。
     近くのビルの屋上から撮影をしていたヤヨイ、クロサワファミリー拠点と通信。
     拠点ではファミリー全員が集合して作戦会議中。

    ヤヨイ:「撮影会」が終わったわ。これから画像を送信する。
      全員、その顔をしっかり憶えておいて。
    ジョンソン:誰がどんな奴かってのも、説明してもらえるんだよな?
    ヤヨイ:勿論…不足しているデータもあるけど。
    ジェンソン:ありがてぇ。顔だけ憶えるってのは苦手なんだよ。
    ヤヨイ:まず一枚目。ロック・パインズ。通称“ホット”。

     モニターにホットの写真。

    ヤヨイ:メイヘム時代は「破壊工作」を担当。
      ジァニスから与えられたのは「着火能力」で、どんな物にでも火をつける事が可能。
    ロバート:ただ火をつけるってだけならガスライターでも済むよな。
      火力のMAXはどのくらいのレベルだ?
    ヤヨイ:私が知る限りでは、証拠隠滅のために家一軒吹き飛ばした事がある。
    ディアマンテ:「歩くダイナマイト」といったところね。
    ロバート:燃料は?ジァニスは能力を使うのに「勝ち星」や「負け星」の概念と、
      自分の「腹具合」を調整する必要があった…
      こいつらの能力にも何かしらの制約があるんだろ?
    ヤヨイ:ご名答。ホットの着火能力は、彼の体内のカロリーを消費して生まれるの。
      空腹の状態では火力が落ちるみたい。それこそ「ガスライター」程度までね。
    ロバート:そいつはいい情報だ。2枚目の女は?
    ヤヨイ:ジェニファー・ヒューイット。通称“ラブ”。

     ラブの写真。

    ヤヨイ:メイヘム時代は「洗脳」担当。
      人の心を喰って、言いなりにしてしまう。聞き覚えのある能力でしょ?
    ロバート:ああ。どれだけ厄介かは、身に染みて分かってる。
    ヤヨイ:ジァニスと違うのは「負け星」をつける必要がない事。
      不特定多数を即座に奴隷に作り変えられる。余計に厄介な部分ね。
      ただしこれにも制約があって、心を喰う時はマウス・トゥー・マウス。
      つまり「キス」をしなくてはならない。
    ディアマンテ:唇を奪われなければとりあえずは安全なのね。
      鼻の下のばしてちゃダメよ、ジョンソン。
    ジョンソン:なんで俺限定の注意なんだよ。
    ロバート:3枚目は?
    ヤヨイ:ジョーダン・ブレイク。通称“ピース”。

     ピースの写真。

    ヤヨイ:「壊れたものを元に戻す」ことができるみたいだけど、
      細かい条件・制約は分からない。彼はメイヘムへの加入が遅かったから、
      能力を使っているところをあまり見られなかった…
    ロバート:だがジャニスに能力を与えられ、少数精鋭の「笑顔」にも選ばれた。
      それなりの駒って事だろ。
    ヤヨイ:そうね。油断できない人物である事に変わりは無い。
      彼については何か分かり次第また。
      まぁ4枚目のこの男にも、同じ事が言えるんだけど。

     モモタスが異常な反応を示し、ショコラに抱きかかえられる。

    ショコラ:おーよしよし、どうしたんだおモモタス。
    ロバート:こいつは?
    ヤヨイ:レオニド・ミスコウスキー。通称“ソウル”。

     ソウルの写真。

    ヤヨイ:メイヘム時代も、現在の「笑顔」でも、情報処理を担当。
      恐らく世界で五本の指に入る腕前のハッカーよ。
      私がスパイをやっていた頃、何度かターゲットとして追いかけた事がある。
      だけど、どんなに手を尽くしても捕まえられなかった。
      危機管理能力がズバ抜けて高いわ。
      その後、まさか同じ組織で働く事になるなんてね…
    ジョンソン:こんな写真撮られておいて、危機管理ってか?
    ヤヨイ:「撮影会」って言ったでしょ?
      これまでは一切の隙も見せなかったのに、今日に限って隙だらけ…
      この写真は、敢えて撮らせてくれてるのよ。
    ジョンソン:んな事して、奴らに何のメリットがあるんだい?
    ヤヨイ:おそらく「牽制」が目的ね。
      私たちの持つ情報をいくら共有しても、まだ、
      彼らにとっての脅威ではないと言いたいのよ。
      必ず何か、隠し球を持っているはず…
    ショコラ:モモタスも同じこと言ってるお。こいつ、ただものじゃないお。
    ロバート:それ以上の事は分からねー感じか。
    ヤヨイ:申し訳ないけど、そうね。
    ロバート:しゃーねぇ。そしてさらに、真打が残ってるわけか。
    ヤヨイ:ええ。エズメラルダ・マローン。通称“スマイル”。
      チームの名前でもあるように、彼女がこの超人集団のリーダー。
      元は単独で行動する詐欺師だったけど、メイヘムに取り入って、
      ジャニスから瞬間移動の能力を勝ち取り、
      「必要なメンバー」を選び終えると、組織が壊滅するよう仕向けた。
    ディアマンテ:十年前のあの事件は、殆ど彼女が描いたシナリオの一部だったってわけね…
    ジョンソン:そしてそのシナリオは今も上演中…つーわけか。とんでもねー悪党だぜ。
    ロバート:奴らの目的はまだ謎のままだが、今度こそ思い通りにはさせねぇさ。
      ダイゴの件も含め、ここでケリをつけねーと…

     ロバートを見つめるコハルの視線。
     ディアマンテのPCから呼び出し音。

    ディアマンテ:レスターからだわ。画面①にモニターするわね。
    ロバート:ヤヨイ、サンキューな。引き続き奴らの監視を続けてくれ。
    ヤヨイ:オーケー、ボス。

     モニター切り替わり、サンセット・バレーにいるレスターと繋がる。
     レスターの背後にはセシル、アルマ、フィオナがいる。
     フィオナはお腹が大きくなっている。

    ディアマンテ:いいわよレスター。話して。
    レスター:やぁみんな。調子はどうだい?
    ロバート:メシだけは美味い。
    レスター:それは何より。
    ロバート:なにか進展が?
    レスター:今、セシル達から話を聞き終えたところだ。
      まぁ「話」というより、許可を得て「記憶」を読ませてもらったワケだが。
      キミの予感は正しかったぞロバート。
      彼らがケールシュタインの屋敷で遭遇したのは、私と同じタイプに属する者だ…
    ロバート:やっぱりか。
    レスター:それどころか、あの冷たいカミソリのようなオーラは…
      個人的に、とても…身に覚えのあるものだったよ。
    ロバート:そいつは良いニュースか?悪いニュースか?
    レスター:非常に悪いニュースだと言わざるを得ない。
      あのオーラの持ち主は、まず間違いなく「ガルデーニャ」だろう。
    ロバート:ガルデーニャ?
    レスター:ガルデーニャ・ジャスミノイデス…私をこんな体質に変えた張本人さ。
      見た目はうら若き乙女。しかしルーツはとても古い。
      正確な記録があるわけではないが、少なくとも5世紀近く生きているはずだ。
      当時ドラゴンバレーで書かれた書物に一文だけ、彼女についての記述がある。
    ジョンソン:そいつはまた。人生の大大大センパイってところだな。
      さぞかし物知りなんだろうねェ。
    レスター:彼女から何かを学べるとは思わないほうがいい。
      私は運良くその手から逃れる事ができたが、あれは確実に「悪」の側の存在だ。
      秩序を嫌い、混沌を好む…自分の楽しみのためならば、進んで物事をかき回す。
    ディアマンテ:今、ウエスターバーグの事を詳しく調べてるんだけど、
      まるで秩序の模範みたいな町だわ。
      その秩序を守る立場にあるケールシュタインと…
    ロバート:秩序を嫌い、混沌を好むガルデーニャ…か。
      水と油もいいところって組み合わせだな。
    レスター:何らかの利害が一致しているか、
      あるいはどちらかが取り込まれてしまっているか…
      ガルデーニャの方が取り込まれているとは考え難いが…
    ロバート:もう少し判断材料が見つかればな。
    レスター:事情が違うとは言え、キミたちについて行かなかったのは正解だった。
      私がその土地に足を踏み入れていたら、すぐにガルデーニャにバレていただろう。
      そうなれば初動に重大な影響が出ていた。
    ジョンソン:なぁなぁ、アンタとそのガルデーニャはどういう関係だったんだい?
    レスター:そこはとても複雑にして繊細な話でね。
      今この時間を使って語るような事じゃない。
      またの機会に、ゆっくり聞かせてあげるよ。
    ジョンソン:楽しみにしときますぜ?
    レスター:そういえば、ロバート。戦力を補強したいと言っていたな。
    ロバート:ああ。どっちかっつーと「数」より「質」でな。
    レスター:適任が見つかったぞ。キミたちよりもその街の事を知っている。
      寄り道などしていなければ、まもなくそちらのドアチャイムが鳴るはずだ。

     ドアチャイムの音。
     場面はヴェローナたちの家の玄関。カールが訪問してきたところ。

    カール:…さすがにこの時間帯は誰もおらんようじゃの。

     室内からミカの声。

    ミカ:カールさん?
    カール:おおミカちゃん、おったんか!

     ミカ、すでに昼を回っているにもかかわらず寝間着姿。

    ミカ:ちょっとだけ待っててもらっていい?いま目が覚めたばかりで…

     中に通されるカール。
     コーヒーと、ヴェローナ作の焦げたワッフルを出される。

    ミカ:最近忙しくって、久々の休日なのに、この時間まで爆睡。ごめんね、残り物でで。
    カール:ええんじゃええんじゃ。
      ちょっと仕事で立ち寄っただけじゃからの。ヴェローナは元気しとるんか?
    ミカ:うん、とりあえずは。今朝もいつもどおりバイト先に向かったみたい。
      でも昨日のあの会見の後だから、ちょっと心配…
    カール:わしも見たわ。まさかあんな事になるとはのう。
      実家のみんなも動揺しとる。誰もシャーロットと連絡が取れん状態じゃ。
    ミカ:私も、何度か電話かけてみたけど、まったくダメだった…
    カール:ここまでこじれるとは考えられんかったんかのう…
    ミカ:昔からお父さんの話になるとああだったからね…
      連絡が取れないといえば、ルーニーさんも、相変わらずなんだけど。
      カールさん何か聞いてない?
    カール:あいつは…まぁ、相変わらずじゃな。
    ミカ:そっか。できたら仕事の話がしたいんだけどなぁ。
    カール:あれを捕まえるのはほとんど運頼みじゃけぇの。すまんのう。
    ミカ:まぁ、それが確認できただけでも良かった。
      そう思って、仕事の件は代案も用意してるし。
    カール:ほんにすまんの。
      ところでこのチョコレート、変わった味じゃな。どこのやつじゃ?
    ミカ:それ、ヴェローナちゃんが作ったのよ。
      バイト先の店長さんに教えてもらったんだって。
    カール:ほー!成長したもんじゃのう!

     場面変わって、リッジウェイズカフェ。
     ちゃんとしたワッフルを前に、ヴェローナ、リュウ、ハンキチ。

    ヴェローナ:う~ん、やっぱり違うんだよなぁ。これぞ「ワッフル」だもん。
    リュウ:分量はちゃんと守ったのかい?◆
    ヴェローナ:はい。教えてもらったレシピの通りに。
    ハンキチ:もう食っていいのか?
    リュウ:ええどうぞどうぞ!

     ハンキチ、ワッフルを食べ始める。

    ヴェローナ:分量もですし、温度の設定も、焼く時間も、
      一応ピッタリ計ってやったんですけど。どうしてだろ…?
    リュウ:時間ピッタリ計ってるあいだ、小まめに焼き加減は見てた?
    ヴェローナ:あ、いえ、時間が来るまでTV見てました。
    リュウ:目を離さないことも大事だよ。
      大切な瞬間は、決まったタイミングで来るとは限らない。
      見逃さないように、ちゃんと見ていてあげなくちゃね。
    ヴェローナ:りょーかいです。覚えときます。
    リュウ:あとは、オーブンの性能差もあるかもしれないな。
      「ガスオーブン」か「電気オーブン」かだけでも、だいぶ焼きあがり方が変わるし、
      メーカーや機種によって加熱方法も違ったりする。
      ものによっては分量を変えたほうがいいかもね。
    ヴェローナ:ふむふむ。
    リュウ:ヴェローナくん家で使ってるオーブンの「型番」なんかが分かれば、
      もっと適したレシピに直してあげられるかも。
    ヴェローナ:じゃあ今度調べときますね。
    ハンキチ:店長!すげー美味いぞこれ!
    リュウ:ありがとうございます!
    ヴェローナ:(そういやハンキチさんっていつ仕事してるんだろ…)

     カウベルの音。

    ヴェ:いらっしゃいま…ってあれ?カールさん?

     来店したのはカール。

    カール:いよぉヴェローナ。元気しとったか?
    ヴェローナ:ぼちぼちじゃ。こっち来てたんだね。
    カール:ちょっと話せるかの?
    ヴェローナ:うん?

     カフェの2F、トイレ前の待機スペースで話す2人。

    カール:ここで働いとる事、ミカちゃんに教えてもろたんじゃ。
      わしも何度か来たことがあるけぇすぐに分かったわ。
    ヴェローナ:そうだったんだ。
    カール:発掘ラッシュが始まってから一時、こっちに滞在しとっての。
      取材とか、記録の仕事をやっとったんじゃ。
    ヴェローナ:ワオ、それは初耳!
    カール:んで、今回も別の仕事があって来たわけじゃが、
      そこに昨日のシャーロットの会見じゃろ?どうにも気にかかってのう…
      お前に会うて、話しておきたかったんじゃ。

     ハンキチが階段を上がってくる。

    ハンキチ:う~い、ちょいとゴメンよ~。

     トイレに入るハンキチ。
     その後を追ってきたケルベロス、ドアの前で待つ。
     変な空気が流れる。
     ハンキチ、用を足し終えて戻って行く。

    ハンキチ:う~いう~い、ジャマしたねぇ。

     降りていくハンキチ。ケルベロスも後に続く。

    ヴェローナ:…で、なんだっけ。
    カール:これからどうするつもりじゃ?シャーロットの挑発に乗るんか?
    ヴェローナ:うん、それはそうしようと思ってる…
      「挑発に乗る」って感覚ではないけどね。
      とにかく早めに、何か行動を起こさなくちゃなーとは…
      あと20日間しか無いワケだし。
    カール:準備は、どのぐらい進んどるんじゃ?
    ヴェローナ:まだ全然…この一週間はこっちの生活に慣れるほうが優先だったし。
      昨日やっと、遺跡の調査に必要な資格を1個だけ受け取ったトコで…
      ちゃんと調査を始めるにはあと3つぐらい必要かな。まずはそれから。
    カール:3つ言うたら、どれと、どれと、どれじゃ?
    ヴェローナ:あれ?カールさん、そのへん分かるの?
    カール:「取材と記録の仕事」言うたじゃろ?
      ストレングス、レジスター、IDならすでに取得済みじゃ。
      重要遺跡のうち2つには実際に入った事もあるわ。
    ヴェローナ:すごーい!経験者だったんだ!
    カール:ほいじゃけ、まだチームが揃ってないようじゃったら、わしにも協力させてくれ。
      分かる事については教えてやるけぇ。
    ヴェローナ:マジで?いいの?大歓迎だよっ!
      あ、でもそうなると20日間って逆に長くない?クリス姉ちゃんの方は大丈夫?
    カール:それなら心配せんでもええ。むしろクリスに命じられた部分も大きいけぇの。

     クリスタラインとの電話の回想。

    クリス:お願い、ヴェローナを助けてあげて…
      実家を離れてから、今が一番大事な時期だと思うから…

    ヴェローナ:お姉ちゃん…
    カール:あいつにはワシの代わりのボディーガード(レスター)もついとるし、
      農園も、ネクタリーの方も、経営は順調じゃ。
      ブリッジポートの有名どころとも提携が決まって、
      ジョシュ伯父さんの会社が事業を請け負うっちゅう話じゃけ、
      かえって余裕ができるじゃろうな。
    ヴェローナ:すごいね。10年前のあの事件から、そこまで広がってくなんてさ。
    カール:あの夫婦の遺族からもえらく感謝されてのう。
      亡くなった2人は戻ってこられんが、
      2人が作ったネクターのレシピは、今や多くの人たちに愛されとる。
      そうやってバトンを手渡していける事こそが、
      どんなものにも勝る人生の価値なんじゃな。
    ヴェローナ:だね…
    カール:シャーロットは、言葉は悪いが、そんなつながりを絶とうとしとるわけじゃ。
      もはや個人間のレベルを超えて、一族全体の問題になっとる。
      何とかして解決せんにゃあならんけぇの。
    ヴェローナ:ホントに、ごめんね。
      元を辿れば、アタシが勝手にあの資料を持ち出したのがいけなかったワケで…
    カール:見つけたキッカケはわしとクリスじゃろ?
      もっと辿っていったらヘンリーのおっさんにも責任があるし、
      もっともっと辿っていったら、フィリップさんにも…のう。
      誰か一人が悪いっちゅう話じゃのうて、
      色んな理由が重なって、歯車がズレてしもうたんじゃ。
      それを戻すには、一人ひとりができる事をやっていくしか無いけぇの…
    ヴェローナ:だよね。ありがとカールさん…
      あっ、そうだ。いまクリス姉ちゃんに電話しても大丈夫かな?
    カール:大丈夫なはずじゃが、なんでじゃ?
    ヴェローナ:うん、ちょっとね…

     階段の下で、2人にコーヒーを持っていくタイミングを窺うリュウの姿。
     場面はそのままフェードアウト。

     所変わって警察署の保護室、シーガルがいる。
     そこにアルトゥールが現れる。

    アルトゥール:おはよう、シーガル・レッドウッド。
      何も無い保護室は退屈だろう。外で食事でもどうだ?
    シーガル:出しちまってもいいのか?俺みたいな不審者を…
    アルトゥール:ま…アンタ次第かな。
    シーガル:俺次第?

     とあるレストランに移動した2人。
     テーブルにシャワルマが出されている。

    アルトゥール:自分は、ここのシャワルマが好きでね。
      肉も野菜も全て自家製の材料。手間ヒマかけて作ってる。
      店主も、ナリはああだが良い人物だ。祖父さんの代からここでやってるそうだ。

     カウンターの中にいる店主、非常にいかつい風体。

    シーガル:…。
    アルトゥール:まぁ、騙されたと思って、食べてみるといい。

     シーガル、シャワルマを食べる。

    シーガル:なるほどな…確かに、こいつは美味い。
    アルトゥール:だろ?特に野菜が良い味出してるんだ。
      ウエスターバーグは、土壌の関係だか何だかで、
      野菜が美味く育つ土地が少ないらしい。
      ここは運よくそんな土地に建てられた店ってワケさ。
      流行ってるかどうかは、また別の話だが…

     店内が映し出される。
     ガラガラ、というか店主と2人以外誰もいない。

    シーガル:だからこそ、隠れて話をするにはもってこい…か?
    アルトゥール:…さすが向こうの世界のチャンピオン。察しがいい。
    シーガル:ククク…
    アルトゥール:アンタの事をざっくりとだが調べさせてもらったよ。
      シーガル・レッドウッド…
      まだ前科らしい前科はついてないが、かなり危うい世界で生きているようだな…
      ギャングやマフィアたちが行っている、チェスの賭け試合。
      アンタはそこで無類の強さを誇り「代打ち」として重宝されている。
      一方で、公式戦への出場記録は一切なし。
      プロの世界でも勝ち抜く実力はあるだろうに。
      そんなに稼げるもんなのか、代打ちってのは。
    シーガル:ククク…そこは、企業秘密って事にしておこうか…
      公式戦に出ないのは、単に興味が無いからさ…
      どこかのトーナメントの決勝戦を見た事があるが、素人のじゃれ合いだった…
      負けても賞金が貰えないだけ…ほかに失うものは無い…
      俺のいる世界じゃ違う。負ければ雇い主が大損をする。
      その代償に、少なくとも腕一本は持っていかれる。
      どいつもこいつもそんな覚悟でやってるから、必然、刺激的な勝負になる…
    アルトゥール:なるほど、刺激…ね。
      それを求めて辿り着いたのが、タリア・ゼメキスってワケか。
    シーガル:ククク…
    アルトゥール:ようやく彼女を見つけ、仕合を申し込んだが、
      「全盛期の実力は無い」と断られ、生涯無敗の記録も敗られていた。
      そして、彼女を敗った人物は、ここウエスターバーグにいる…と。
      これが昨日、話してもらった内容だな。
    シーガル:ああ…その通り。
    アルトゥール:代打ちの経歴と照らし合わせれば合点がいく。非常に面白い話だ。
    シーガル:だがわざわざこんな場所でする話でもない…だろ?
    アルトゥール:それも見抜いてたか…
    シーガル:いいから話してみろよ…あんたの事も。
    アルトゥール:…自分は今、ある事件に深入りしすぎたせいで、署内で孤立してる。
      アンタを職質した時も、そのへんの警官に任せればいい事なのに、自分が向かわされた。
      他にも、警備員まがいの事をやらされたりしてる。
      表面上はおとなしく従ってるがね…
    シーガル:何がマズかった?
    アルトゥール:深入りしすぎたのは、
      この街で4年前に起きた、「オリビア・ナイトロット」失踪事件だ。
      彼女は当時、ウエスターバーグ大学の4年生。
      卒業後はジャーナリストの道を歩むはずだった。
      成績は極めて優秀。友人も多く、多趣味。
      特に…歌が上手くてね。そういうサークルにも参加していたし、
      地元で催されるコンテストには、毎年欠かさず出場していた。
    シーガル:…。
    アルトゥール:唯一の欠点は、信じられないほどの方向音痴だった事だ。
      4年間もこの町で暮らしていたのに…
      誰かと一緒に行動しないとロクに目的地に辿り着けなかった。
      大学へ通う時はいつも友人と一緒。
      交際相手とのデートも、待ち合わせではなく「送迎」が必要でね。
      うっかり一人で行動させると、ありえない場所に足を踏み入れて、
      思わぬモノを見つけて来ることがあった。
    シーガル:この店もそうってワケか…
    アルトゥール:…ふふ。恐ろしい位に鋭いんだな。

     シーガル、立ってカウンターへ向かう。
     アルトゥールは話を続ける。

    アルトゥール:ちょうど冬が終わり、暖かくなり始める時期だった。
      オリビアは"交際相手"に「また面白いものを見つけてきた」と告げた。
      聞けば、ちょっと買い物に行くつもりが、
      いつの間にか西の方角にある「アルセイドの森」に迷い込んでいたらしい。
      よほど興味深いものだったようで、彼女はかなり興奮した様子だった。
      ところがその交際相手ときたら、四角四面な性格でね。
      「何を見てきたか」って話をするよりも先に、
      立入り制限区域に侵入した事を咎めてしまった…
      …彼女が姿を消したのはその翌朝だ。
      まるでいつも通りの一日を始めるかのように、私物は全て、そのままの状態で…
      他に無くなったものは何ひとつ無い。
      ただ、彼女だけが、そこから居なくなってしまった…

     シーガル、店主から買ったタバコで一服しながら。

    シーガル:ケンカが原因で自ら行方をくらました…ってワケじゃないんだな。
    アルトゥール:あれはケンカじゃない。自分が一方的に腹を立てただけだ。
    シーガル:クク…ようやく「自分」だって白状したな…
    アルトゥール:…口が滑った。
    シーガル:単純に考えれば、その、オリビアの失踪は、
      彼女が森の中で見たものに関係してるんだろう…
      だがその単純な事すら、4年経った今でも分かっていない。
      そしてアンタはハブられてる。
      つまり、この件について調べられると都合の悪くなる奴、もしくは「奴ら」がいて、
      そいつらはお巡りの公務を妨害できる程度に、大きな力を持ってるってところか…
    アルトゥール:ざっと言うとな。
    シーガル:それで…なぜ俺なんかに話した?真相の究明を手伝ってもらえるとでも…?
      生憎だが俺は「根無し草」ではあっても「便利屋」じゃあないんだ。
      勝負事以外には興味ないんでね…
    アルトゥール:タリア・ゼメキスを敗った人物に会いたいんだろ?
    シーガル:…。
    アルトゥール:だったら悪い話じゃないはずだ。
      オリビアは多趣味だった。チェスも嗜んでた。
      自分は一度も勝った事がなかったよ。いま思えば当然の話だ。
      ある時、彼女の口からその名前が出た事がある。

     アルトゥールとチェスをしていた時の、オリビアの言葉。

    オリビア:私、あのタリア・ピロウズにも勝った事があるのよ。
      今は結婚して、ゼメキスさんになってるけどね…

    アルトゥール:チェスに疎い自分にとっては、さほど意味のある言葉じゃなかった…
      昨日、アンタから同じ名前を聞くまではね…
    シーガル:…。
    アルトゥール:つまるところ、アンタも、自分も、探してる相手は一緒って事さ。

     おわり。


    <各回リンク>
    #01『Greetings To You』
    #02『Encounter And Encounter』
    #03『To Be Or Not To Be』
    #04『Flux Of Time』
    #05『Calm Before The Storm』(この記事)
    #06『Run Verona Run』
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