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記事 11件
  • 【堂々完結】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【最終回】

    2014-01-25 00:00  


    1章 ここは出会いと別れの酒場よ (第1回へ)
    2章 いったい何を言えばいいの (第2回へ)
    3章 やればできる (第4回へ)
    4章 人の心はダンジョンなのさ (第11回へ)
    5章 震えているのはあなたのせいだ (第15回へ)
    6章 あの木の下まで競争な (第21回へ)
    7章 ここで立ち止まるわけにはいかない (第23回へ)
    8章 あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね (第28回へ)
    9章 ゆうきのだいいっぽ (第32回へ)
    原作となるアプリはこちら(iPhone、Androidに対応しております)http://syupro-dx.jp/apps/index.html?app=dobunezumi

     ドレアさんとこそこそ話をしている間もマオはずっとうつむいており、変な具合に二人っきりにされてしまったせいで、ふわふわした居心地の悪い空気が漂っていた。もう戦闘は終わったとい
  • 【次回最終回】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第32回】

    2014-01-23 00:00  
    1章 ここは出会いと別れの酒場よ (第1回へ)
    2章 いったい何を言えばいいの (第2回へ)
    3章 やればできる (第4回へ)
    4章 人の心はダンジョンなのさ (第11回へ)
    5章 震えているのはあなたのせいだ (第15回へ)
    6章 あの木の下まで競争な (第21回へ)
    7章 ここで立ち止まるわけにはいかない (第23回へ)
    8章 あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね (第28回へ)


    9章 ゆうきのだいいっぽ

     
     あたりが、しんと静まりかえった。
     僕らは二人とも微動だにせず、ただ、その場に立ち尽くしていた。
     風が草木を揺らし、僕らの頬を撫でる。
     日差しがさっきより、まぶしく感じられた。
     言った。
     僕は、言ってしまった。
     終わった、のか?
     何が?
     頭の中はひどく乱れているようでもあり、落ち着いているようでもあった。
     僕たちはおそらく、長い間、同じ思いを
  • 【最終回まであと2話】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第31回】

    2014-01-21 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

     僕がすべてを諦めかけた、そのときだった。
     マオの雰囲気が。変わった。
     
     マオの じゅもん!
    「…………………………」
     
     その呪文は、無言だった。
     しかし僕の今までの経験から、空気が変わったことだけはわかる。
     言葉にしなくても伝わるもの。これが正にそうだ。
     おおかた僕にトドメを刺す、致命的な一言をひねり出そうとしているのだろう。
     そう思った。そう思っていたのだが。
     今にも胸が張り裂けそうな長い沈黙のあと、マオの口から飛び出した呪文は。
     僕の想像と、まったく違っていた。
     
     マオの じゅもん!
    「ずっと ここにいたらいいじゃない」
     
     思ってもみなかった突然の一言に、僕の心の中がかき乱される。
     どういう……意味だ?
     これは。どういう意味なんだ。
     ずっとここにいたらいいって。なんでそんな事を言う。
     さっきまでと言ってる
  • 【最終回まであと3話】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第30回】

    2014-01-18 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】
     他人を負かすことよりも、自分を乗り越えることのほうが、何倍も難しい。
     僕は決死の覚悟で、自らのトラウマと向かい合った!
     
     マオが あらわれた!
     マオは まっすぐに こちらを みつめている!
     
     何を。僕は何を言えばいい。この人に何を言えばいい。
     ジョンスやアダンのように殴りかかるわけにはいかない。
     呪文だ。呪文しかないはずだ。ああ、でも、何を!
     いったい何を言えばいいの!
     
     マオの じゅもん!
    「むかしからぜんぜんかわらないね」
     ゆうしゃに 79のダメージ!
     
     やっと変われたと思っていた僕をいきなり突き放す「全然変わらない」という言葉。
     この人の前では僕の成長なんて、ないも同然なのか!
     
     マオの じゅもん!
    「あなたってよくみると」
     
     背筋がゾクッと冷える感覚。
     迫り来るとてつもない危機を察知し、僕は耳を塞ぎ、
  • 【最終回まであと4話】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第29回】

    2014-01-16 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

    「魔王がよみがえったら、ぼくが倒すんだ」
     十年前のあの時、僕は自分の言葉で、言った。
    「僕の家は勇者の家系だから、父さんが魔王を倒したみたいに、今度は僕が、倒すんだ」
     その言葉を聞いて、やさしい誰かは少し戸惑った表情をした。
     だけどすぐに、にっこり笑った。にっこり笑って、すごいね、と言ってくれた。
     その顔を見て、僕は、とてもうれしかったんだ。
     そして、その人は、そんな僕に言ってくれたんだ。
    「あなたにならできるよ。きっと、できるよ」
    「がんばってね」
     そう。こんな言葉をかけてくれた。
     でも、ここから先があった。問題はここからだったのだ。
     僕がこの記憶を封じ込めていたのは。ここから先の出来事のせいだ。
     僕は「がんばってね」と言われて、照れて笑った。
     そして、家に帰るために立ち上がった。
     その時だった。
     まだ大きな木の下で座り込
  • 【最終回まであと5話】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第28回】

    2014-01-14 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

    8章 あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね

     
     最上階に登った僕は、ぎょっとした。
     あれだけ恐ろしい気配を発していた最後のフロアは、なんと、草原だった。
     青々と草木が生い茂り、柔らかな日差しまで感じられる。もう夜だというのに日差しが感じられるというのもおかしな話だが、今までに通過してきた雪国や砂漠、灼熱のフロアを思い返せば日差しなど大した問題ではないように思えた。
     僕がぎょっとした理由は他にある。「見たことがある場所」だったからだ。
     この草原は。僕の記憶の中の、あの場所とよく似ている。
     特に探そうとしなくても嫌でも目に入る、あの大きな木まである。
     この木までもが、記憶の中の風景とほぼ同じように重なる。
     僕はここに来た事があるのか? そんなはずはない。たった今増築されたばかりのフロアだ。来られるはずがない。不可能だ。不
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第27回】

    2014-01-11 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

     僕は打開策を見つけようと、必死でどうすべきか考えていた。
     呪文か。剣か。水が入ってたボトルでも投げつけてみるか。
     どうする。どうする。どうする。一瞬が数十分にも感じられる密度の濃い時間が流れる。
     僕の頭の中はいっこうにまとまらないまま、ヨコリンが言葉を紡ぐ。
    「オレサマは強いからな、ドレアに頼まれたんだぜ」
     えっ、なっ、何を?
    「オマエを一人前の勇者にするのを手伝って欲しいってな!」
     ……え?
    「オマエ、ゴブリンであるオレサマがどうして酒場でウロチョロしてるのに、ドレアが何も言わなかったと思う? ドレア公認だったからだぜ!」
     確かに、言われてみれば。ヨコリンがいたのは酒場の一階だ。ドレアさんがヨコリンを追い出そうとすればいくらでもできたはずだ。今まで僕は自分のことにいっぱいいっぱいで、そんなところまで考えもしなかった。こいつは自分で「
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第26回】

    2014-01-09 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

     酒場が増築されていくにつれて、答えに窮する問いかけをしてくる人物が増え、僕はひとり勧誘するたびに脳みそをフル回転させていた。酒場の入口で呆然と立ち尽くしていた時には、被害妄想ばかり重ねるこんな脳みそなんて半分になればいいのに、取っちゃいたいと思っていたのだが、あの時半分にならなくて良かった。取れちゃわなくて本当に良かったと心底思う。いや取れませんけどね元々。着脱式の脳みそとか、あるなら見てみたいものです。グロテスクだろうな。ごめんなさい気持ち悪そうだからやっぱりいいです。
     フロアにいる全員を勧誘し終わると今までと同じように階段が現れ、登り、それをくり返す。何人勧誘しただろう。今、一体何階なんだろう。もう完全にわからなくなった。
     そんな時、ふと気づいた。
     あれだけ執拗につきまとっていたヨコリンが、いつの間にかいなくなっている。
     いつからだ?
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第25回】

    2014-01-07 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

     ついに灼熱の溶岩フロアが終わり、次に現れたのは、砂漠だった。
     砂漠。砂漠かー。そうきたか。
     ひん曲がったサボテン、枯れた井戸、申し訳程度の湧き水。
     そういえばしばらく何も飲んでない。暑いフロアばっかりで干からびそうだ。
    「そこの水は飲めないぜ! 飲料水は一階で買わせるつもりなんだろうな」
     湧き水に手を伸ばした僕をヨコリンが制す。お前はまだついてくるのか。一体どこまでついてくるんだ。
     たまに忘れそうになるが、ここはあくまで酒場だ。酒場の一階から階段を登ってきただけなのだ。ドレアさんの設計のセンスもそうだが、こんな破天荒な部屋を恐ろしいペースで増築し続ける施工業者も異常である。どこの誰だか知りませんがいい仕事してますね。工事の音も未だに聞こえるから、最上階まではまだあるらしい。一体いつになったら最上階に着くんだ。もういいや、考え出したらキリ
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第24回】

    2014-01-04 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

     アダンが倒れるのと同時に、リュシカがアダンの名前を呼びながら、アダンのもとに駆け寄っていく。勝ち負けよりも、アダンの無事を心から願っているように見えた。必死でアダンを介抱する姿は、まるで聖母のようだと思った。
     僕は、勝ったのだ。
     やった……
     僕にも、できた。やればできる。できるんだな。
    「よい勝負だった」
     急に話しかけられてビクッと体を震わせる僕。見ると、バルトロが僕の方にゆっくり近づいてきていた。もう力の入らない体で、慌てて銅の剣を構え直そうとする僕をバルトロが落ち着いて制した。
    「大丈夫だ。お前と戦うつもりはない。それがアダンの望みだからな」
     バルトロは、義理と人情を大事にする男らしかった。ここで手負いの僕を倒してもどうしようもない。それどころか、アダンと僕の誇りをかけた一戦を汚す事になってしまう。そんなことはできないし、したくもな