【SS】狂犬の姉と子リスの妹【艦これ】
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【SS】狂犬の姉と子リスの妹【艦これ】

2019-10-15 22:22
    この作品は、うp主が艦これにおいて、
    春雨とケッコンカッコカリしたのをきっかけに生まれたSSです。

    妄想設定&稚拙な文章なのでご了承ください。

    

    月が照らす鎮守府近海、辺りに人の気配はなく、波の穏やかな音だけが耳をくすぐる。ただ2人の艦娘だけが、暗がりの水面に立っていた。


    「夕立姉さん、今日はよろしくお願いします!」


    「春雨、本気でかかってくるっぽい!」


    白露型駆逐艦5番艦春雨は、その姉である白露型駆逐艦4番艦夕立と単艦での夜間演習をしようとしていた。夕立の方から春雨に声をかけたのだ。2人はお揃いの艤装を付けた姿で、向かい合って演習開始の合図を待っていた。


    『夜間演習、開始!!』


    近くのスピーカーから響いたその号令と同時に2人は水面を蹴り出した。互いが互いの砲撃を避けつつ、間合いを測りながら前進していく。夾叉弾により水柱がいくつも上がっていく。


    春雨の動きは型に忠実で、基本に重きを置いたスタイルであった。対して夕立の動きに型は無く、己のセンスと技術を駆使してターゲットに肉薄していくような戦い方であった。デタラメのようでいて無駄のない動きで敵を圧倒する彼女が狂犬と呼ばれる所以でもある。


    その動きはこの夜間演習でもいかんなく発揮されていた。先読みのしづらい動きは春雨の型を徐々に崩していき、その隙を見逃さなかった夕立は春雨に砲を向けた。


    『ズドン!!』


    身体をひねって砲撃を回避した春雨だったが、その顔には戸惑いの色を浮かべていた。


    「姉さん今のは


    演習において使用される弾は、艤装や身体に大きなダメージを与えない演習弾である。だが、たった今夕立が放った一発の砲弾は明らかに音の重さに違いがあり過ぎたそれは明らかに実弾による轟音だった。演習弾の中に実弾を混ぜていたようだ。


    本気でかかってって、言ったっぽい!」


    そう言い放つ彼女の赤い目は闇夜に光っていたそれは深海棲艦を相手にしている時の目と同じであった。


    春雨は姿勢を少し低くしながらとっさに距離を取り、静かに彼女の目を見据える。

    (…姉さんは、本気なんだ)

    少しでも油断すれば致命傷どころじゃ済まない。そう感じた彼女は先程まで戸惑っていたが、ゆっくりと立ち上がり、大きく深呼吸した。


    いきます!」


    そう発した刹那、春雨は速力を一杯まで上げて夕立に向かっていった。夕立もそれを撃ち落とすべく砲撃を放った。

    しかし、それを回避する春雨の動きは先程までの動きとは別人のように違っていた。型は無く、己のセンスと技術を駆使してターゲットに肉薄していく狂犬と呼ばれる姉と同じ動きであった。そして彼女の赤い瞳は姉のように闇夜に光り始めていた。

    春雨は夕立に正面から近付いてそのまま肉薄するかと思いきや右側を通り抜け、すれ違いざまに夕立が左手に持っていた魚雷を、自身が手に持つ主砲の砲身で払い落としていった。


    「!!」


    即座に夕立は振り向いて砲を構えたが、低い姿勢で方向転換して向かってくる春雨に照準が合わず、彼女の接近を許してしまう。春雨は空いてる右手を伸ばして夕立の主砲を持つ右腕を抑えながら押し倒し、交差させる形で自分が左手に持つ主砲を彼女の顔に持っていく。


    春雨は砲の引き金を引かず、仰向けになった夕立に砲身を突きつけた状態で動きを止める。夕立は魚雷を手放した左手で彼女を引き剥がすことも出来たが、抵抗する素振りは見せなかった。

    代わりに満面の笑みを浮かべて


    ふふっ、上出来っぽい!さすが私のいもうと!!」


    と言いながら春雨の頬を両手で包んでもて遊ぶ。


    「ひゃうっ!?な、なにひゅるんれふかぁ!!?」


    緊張の糸を切らした春雨は、姉の無邪気な行動に驚いて力の無い声を出す。姉になすがままにされてる姿はまるで子リスのようであった。

    今の彼女の目は先程までの光り方をしていなかった。

    夕立、というよりも春雨と共に厳しい任務に就いたことのある艦は全員気付いていた。

    春雨は戦いにおいて命の危険や生存本能が強く働いた時、姉である夕立の戦い方に似ていくことを。

    しかし春雨自身にその自覚は無く、本人は普段通りに戦っているつもりらしい。また、その状態での戦闘の記憶は曖昧のようだ。


    夕立は自分の戦い方を春雨に教えたりはしない、それは型の基礎を大事にしているのが春雨の長所だと考えているからだ。だからこそ彼女には自分で自覚出来ていないもう一つのセンスを磨き、より幅広い戦い方を出来るようにしてほしいと願っている。本当に死に直面した時、自分と、自分の大切なものを守れるように。

    彼女を演習に誘い、乱暴にも演習弾に実弾を混ぜたのはそのためだった。



    演習後、2人は共に並びながら宿舎へと歩を進める。夕立は敷地内のコンビニで買った肉まんを頬張りながら春雨に訊く。


    「本当に覚えて無いっぽい?」


    戦っている感覚はもちろんあるんです。でも夢中になっていたから、どんな動きで姉さんを抑えたのかがよく思い出せなくてってぇ!実弾混ぜるなんてひどいですよぉ!」


    「ごめんごめんぽい!あぁでもしないと春雨と真剣勝負出来ないかなと思ったっぽい!」


    しかめっ面の妹に、自分が食べてた肉まんの最後の一口を与える。さっきまでのしかめっ面はどこへやら、はふはふしながら幸せそうに肉まんを食べる妹。


    「あ〜あ〜、あたしももっと強くならなきゃなぁ〜」


    手を頭の後ろに組みながら独りごちる姉。すると春雨は自信を持って強く言う。


    「いえ!夕立姉さんは今でも十分お強いです!敵の戦艦だって、夜戦であっという間に片付けてしまいますし、私なんてまだまだふぇっ!?」


    そのセリフを言い終わる前に、ジト目の夕立が春雨の両頬をつねる。


    「あたしを負かしといて言うセリフっぽい〜?」


    「いたいれふ!いたいれふよぉ〜!!」


    2人の他愛無い会話が、夜の闇に色を付ける。空には雲1つなく、相変わらず月が光を注いでくれていた。

    今宵の月は綺麗で、そして静かに彼女達を見守っていた。

    ー完ー



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