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  • 豚骨系のお店は何故気合の入った店員だらけなのか問題

    2012-09-13 07:3216
    「売れるスキル」には2種類ある。即ちそれは「質のスキル」か、「量のスキル」か。

    それが最もわかりやすいのは、飲食業界の中でもとりわけラーメン。「近所にラーメン屋ばかりできるのは何故か」の説明がしやすい。

    ありていに言って、ラーメンをつくるという作業に特別の調理技術は必要ない。一般的な和食やフレンチ、中華やイタリアンのシェフに必須となるような包丁使いの基礎や、火加減を見極める技術などを身につけている必要はなく、そういう意味での「質のスキル」は求められない。

    しかし、だからといって誰でもできるから簡単か、というとそういうわけでもない。ここに「量のスキル」という壁がある。

    家系の豚骨スープを例にすると、あのスープをつくるには、大量の豚骨を高温で一気に煮出す必要がある。この作業には特別なスキルはあまり必要なくて、決められた作業手順通りにやれば、ある程度のスープができ、そういう意味では「誰でもできる」作業。

    しかし「誰でもできるわけではない」のは、量が半端じゃないから。

    大量の豚骨を運ぶ。10キロ単位当たり前。重い。しんどい。
    下処理する。豚骨を洗う。ハンマーで骨を叩き割って、骨髄が出やすいようする。一本一本手作業で。
    煮こむ。夏場の厨房は気温40度近くになったりする。その環境でウン時間。
    具をつくる。ネギをひたすら刻む。チェーシューをひたすら煮こむ。ゆで卵の殻をひたすらむく。

    どれも単純作業で、「誰でもできる」が、量のために「誰でもできるわけではない」。

    したがって、こういう一見誰でもできそうなラーメン屋は、見た目気合の入った若い人たちがやっていることが多い。しかしその実情は、気合の若い人たちじゃないと勤まらない。質のスキルと違い、量のスキルは体力を要求するので、ある程度の若さが必要だったりする。

    視点を変えると、ステップアップするにはどこで量から質にスキルを転換するかにかかっていて、店舗スタッフの高齢化を血の入れ替えで解決するか、店舗の内容の変化で対応するか。あくまで現状を維持するために、その作業をできる人員をひたすら確保するか、今いる人員ができるような範囲での高級化を狙っていくのか。

    このあたりはどんな職業にも共通するキャリアアップの話と一緒なんですけどね。

    今回はこんなところで。
  • 新人には「何故この作業が必要か」を考えさせよう

    2012-09-03 01:107
    飲食の世界だと、アルバイトなど従業員の入れ替わりが激しく、また、社員はどうしてもすぐ店長などの上司役になってしまうため、上司として部下を如何に育てるかがテーマになりやすい。

    上司の仕事は「教える」ではなく「引き出す」こと
    http://d.hatena.ne.jp/hase0831/20120902

    オーバーコーチングの問題って確かにあって、教えすぎると部下が自分の劣化コピーにしかならず、自分以下の人員しか育たず、実力が自分以下であるから、延々と自分のサポート役にならない。

    自分の助けになるスタッフを育てるには、自分以上の何かを持った人を育てるしかなく、劣化コピーを育ててもあんまり意味がない。

    で、自分がどうしているかというと、基本的には引き出すんだけど、その具体的な方法としては、なるべく考える習慣をつけさす。ある指示を出す場合には、それを何故やらなくてはならないかを考えさせる。ある行動における目的と意図の関係を明確にする。

    例えば飲食店では一般的な作業として、冷蔵庫や冷凍庫の温度チェックという作業がある。ごくごく単純に温度を計測して、記録する。それだけの作業なので、非常に単純。温度計の場所さえ教えれば誰でもできる。誰でもできるから、比較的どこの店舗でも新人の仕事になりやすい。

    こういう仕事をただやらせてはダメというのが俺の考え。何故、こういう単純な作業をやらねばならないかを理解させないと、単なる作業に終わる。

    結論から言うと、この手の仕事は異常の検知にある。毎日同じ時間帯に温度を計測することにより、冷蔵庫や冷凍庫の異常を検知する。冷蔵庫なら概ね5度以下、冷凍庫ならマイナス20度以下。このあたりの温度であれば衛生的に問題ないとされる。保存する食品が劣化せず、食中毒菌が繁殖しにくい。

    逆に言えば、この基準におさまらないようであれば、衛生的にまずいことになっているということ。放っておけない事態になっているということで、解決しないといけない。

    よくあるパターンとしては、庫内の通風口がふさがっている。冷蔵庫にものを詰めすぎるとよく起きる。冷風が出ないので、庫内も冷えない。

    あるいは単純な故障であるかもしれない。その場合はメーカーのサポートに早急に連絡し、修理してもらわなければならないし、チェーン店であれば近隣の店舗に救援を依頼し、物品の移動などをしてもらわないといけない。

    冷蔵庫・冷凍庫の温度チェックは本来ここまでの広がりがある話で、決められた用紙に、ただ温度を記録していけばいいという話じゃあない。そういうレベルだと、異常な温度であったとしても何の対策もせず、庫内のものが腐ったり、劣化したりする。

    「どんな仕事にも、それをしなければならない理由があるんだよ」
    「ただこなすだけではなくて、理由を考えなさい」
    「理由がわかったら、そこから発展させて何が必要かを考えなさい」

    物事をただやらせてはいけない。何故やらされるかを意識させ、考えさせることこそ新人教育に必要ではないか。
  • 大きいチェーン店ほど事故品を使えない

    2012-08-30 23:045
    安いと、どうしてもこういう誤解が生まれやすい。

    ○すき家「200円卵かけご飯」安すぎ! 材料などは安全なの?
    http://biz-journal.jp/2012/08/post_599.html

    ――あの、大変失礼なんですけど、たとえば原料があんまりいいものじゃないとか、そういうことではないんですよね?

    http://biz-journal.jp/2012/08/post_599.html より)

    卵をスーパーで買うと、1パック200円しない。1パック10個だから、卵1個で20円弱。そこにご飯と人件費もろもろと、いろんなものを加えて200円はどうなのか? って議論ならまだわかるんだけど、不当に安いと。安すぎると。安すぎるということは、やばいんじゃないのかと。ちょっとした陰謀論的な。

    似たような話に、ファストフードのハンバーガー業界なんかでよく流布される「実は牛肉じゃなくて、○○の肉」っていう都市伝説がある。食用のねずみの肉使ってるとか、うさぎなんじゃねえのだとか、時にはミミズだとか。

    窺い知れない安さの根拠を、自分が知らない食材に求める。

    「自分が知らない秘密があって、その秘密の何かをやっているから、あんなに安いんだ!」
    「Ω ΩΩ<な、な、な、なんだってー!!!」

    しかしながら、この手の話が都市伝説や与太話にすぎないことは、常識的に考えればわかることであるし、ちょっと原価を計算してみればわかる。

    すき家の話でいえば、我々がスーパーで買う際の小売価格ベースで200円卵かけご飯が成立するのだから、お店でも出せないことはないよねと。少なくても卵が1個100円とか、そういう値段にならない限りは問題なさそう。

    あと、これは意外と顧みられない話なんだけど、「あんまりいいものじゃない」素材を、「あえて」仕入れるということは高く付く。

    というのは、ある程度のチェーン店になると、店舗数があるため、1日あたりの消費量が半端じゃない。

    ○月次推移: 2013年 | IR情報 | ゼンショー ZENSHO
    http://www.zensho.co.jp/jp/ir/finance/monthly/

    すき家を展開するゼンショーのIR情報によると、2012年7月時点での店舗数は1,835店。1店舗あたり1日10杯の卵かけご飯が出るとする。そうなると、すき家全体で1日あたりの卵消費量は18,350個。30日で50万個を超える。

    こういう規模になると、たとえ安くても、見切り品を仕入れることができない。そりゃ時に1,000個とか、2,000個とか、「モノは悪いんだけど、お安くしますよ」みたいなブツが出るかもしれないけども、日々1万個を消費する規模になると、そういう偶然に期待できないし、そういう偶然を前提に商品をつくったり、仕入れを考えたりすることはできない。

    大規模なチェーン店のメニューに載るような商品の素材に必要なことは、それが安定的に均質なレベルの素材が納入されることで、たとえ破格値でも安定的に納入されないものであれば、それを使った商品がメニューに載ることはない。せいぜい季節限定とか、店舗限定だよね。

    それに「あんまりいいものじゃない」素材を安定的に生産する人がいたとしたら、その人こそアレなんじゃねえかという。事故品だからお安くっていう話なんだろうけど、いっつも事故っている生産者を信用できるかと。いやいやいや、そりゃないよねえ。

    事故が怖いとか、衛生管理的に云々という話以前に、ある程度の規模のチェーン店は、その規模のために突発的に発生する事故品が使えないし、生産量が少ないマイナーな食材もまたNG。特にマクドナルドとかになると、本当に一般的な素材じゃないと、扱う量が半端じゃないから、「マクドナルドが使う」というだけで高騰しちゃうリスクがあるし。

    なんせチキンタツタですら安定的に供給できないという理由で販売中止になってしまったわけで。なんで時々思い出したかのように売るかというと、食材の仕入れに目処がたった時だけ売るためで、目処が立たないと売れない。つまりレギュラーメニューとしては出せないということ。あのサイズの鶏の一枚肉を仕入れるのが難しくなってしまったんだな。量の確保が。

    ついでにいうと、チキンナゲットとか、他の鶏肉を使ったメニューが相変わらずあるのはなんでだろうか。チキンタツタと同じく、鶏肉を使った商品なのに、販売中止と継続の境目はなんなのか。ここを考えると規模の大きいお店の大変さがわかるかと思います。一枚肉だと肉を切るときに切り落としが発生するけど、成型肉ならその切り落としですらもミンチにできるとか。大雑把にいうとそういう話。大雑把すぎるな。

    まあ、いろいろ大変なんですよ、飲食店も。

    少なくてもアレな素材を使うことの非合理性に気づいていただければ幸い。