第17話 幻想郷の一番長い日 6
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第17話 幻想郷の一番長い日 6

2018-01-07 04:14
    あらすじ

    多勢の急襲にもかかわらず、
    人里防衛線は、これといった被害もなく勝利することができた。

    だがこれはあくまで一拠点を守ったというだけ。
    幻想郷で侵攻を受けている拠点はまだまだあるのだ。

    第17話 幻想郷の一番長い日 6

    人里襲撃が始まる少し前、結界崩壊の直後。

    博麗神社でお札の手入れをしていた博麗霊夢のもとに、
    霧雨魔理沙がすごいスピードで飛んできた。


    魔理沙「れれれ霊夢っ!!さっきの見たか!?聞いたか!?」

    霊夢「見たし聞いたわ。……何が起こったか、わかるわよね?」

    魔理沙「正直考えたくないんだけど……」

    霊夢「そう、どうやら察しはついてるようね。残念ながら正解よ」

    魔理沙「おいぃ……まだ心の準備が……」

    霊夢「準備できてなくても来るもんは来るわ。
    ……結界は完全に破壊されてしまったんだから」

    魔理沙「冗談じゃないぜ……」

    霊夢「冗談だったらよかったんだけどね。……生き残るわよ、魔理沙」

    魔理沙「……当たり前だぜ」



    神妙な面持ちの二人。
    先日の八雲藍の話を思い出す。

    裏・博麗大結界……封印されし『伏ろわぬ神々』……幻想郷の崩壊……

    話に聞いていた間は、どこか別の世界の出来事のように感じていた。

    しかし実際にその時が来てみると、
    その逃れられない事実は、大きなプレッシャーとなってのしかかってくる。



    霊夢「……早速か。行くわよ、魔理沙」

    魔理沙「へ……?行くってどこに……?……!!」



    霊夢の視線の先には人里がある。
    そして、その人里からは黒煙が何本も上がっている!!



    魔理沙「オイオイオイ!!なんだこれは!?人里が……火事!?」

    霊夢「流石に動きが早いわね……準備万端ってところかしら」

    魔理沙「あの規模で襲撃されちゃ、人里が壊滅しちまう!助けに行くぜ!」



    慌てる魔理沙と淡々と準備する霊夢。

    ……しかしそこに予期せぬ訪問者が現れた。



    ??「れ、霊夢さんっ!!助けてっ!!」


    魔理沙「!?……何?誰!?」

    霊夢「……あんたは確か……」



    霊夢に助けを求めてやってきたのは、
    妖怪の山に住む鴉天狗、姫街棠はたて(ひめかいどうはたて)だった。

    天狗という種族は、普段はほとんど山から下りてこない。
    しかも彼女はその中でも、あまり外に出ようとしない性格のはずだ。
    一体何があったというのだろうか?



    霊夢「確か、姫街棠はたて、だったわよね?」

    はたて「そう!そうよ!妖怪の山が大変なのよー!」

    魔理沙「妖怪の山はお前ら天狗の管轄だろう!?
    私達は今人里に向かわなきゃいけないんだよ!」


    魔理沙が言うように、本来妖怪の山は天狗たちが治めるナワバリである。
    だから基本的によそ者は立ち入り禁止なのだ。

    異変解決のためということならいざ知らず、
    いきなり天狗に助けを求められても、正味な話どうすることもできない。


    はたて「ちょっ!そんな冷たいこと言わないで!
    本当に私達大変なことになってるの!お願いだから助けてー!!」



    魔理沙に突っぱねられたはたては、半泣きで霊夢に懇願している。



    霊夢「……」

    魔理沙「早く人里まで行こうぜ!霊夢!」

    霊夢「……」

    魔理沙「おい!どうしたんだよ!?」



    霊夢「……いいわ。何が起こってるか話してみなさい」

    はたて「!?……話聞いてくれるの!?」



    魔理沙「……おい霊夢、どういうつもりだ!?
    どう考えても、今襲撃されてる人里に向かうのが先決だろ!?」

    霊夢「落ち着いて聞きなさいよ、魔理沙。
    私の勘だけどね、人里は、何とかなるわ」

    魔理沙「……巫女の勘か」

    霊夢「そう。なんだかあそこからは手遅れになる感じがしない。
    ……そっちよりもむしろ……」

    魔理沙「そいつの言う、妖怪の山の異変の方がマズいってか」

    霊夢「そう。……ほっといたら、幻想郷全体に悪い影響が出る気がするのよ」



    はたて「そうなのよ!もう大変なんだから!」

    霊夢「わかったから、落ち着いて話してみなさい」

    はたて「……わかったわ。
    私もよくわかんないことが多いから、うまく説明できないけど……」

    霊夢「構わないわ。あったこと、順々に話してみなさい」



    はたてはそれを聞くと、たどたどしくも、何が起こったのか話し始めた。

    それを聞いた二人は……


    ・・・・・・


    霊夢「ウソでしょ……?」

    魔理沙「確かにそりゃ、ほっといたら幻想郷全体が大変なことになるぜ……」


    ・・・・・・


    はたての話す内容は、にわかには信じられないものだった。



    妖怪の山という場所は、現在天狗たちが縄張りとしているエリアだ。
    それ以外にも妖怪や神々がいるが、
    基本的には社会性の強い天狗が取り仕切っている。

    そして天狗は社会性が強いだけあって、階級制度をとっている。

    最も権力を持つのが天魔、次に幹部として数名の大天狗。
    そして次に続くのが、報道役の鴉天狗と事務方の鼻高天狗、
    一番立場が弱く、数も多いのが、哨戒役の白狼天狗、印刷担当の山伏天狗。
    立場によって役割が分かれている。

    このように、
    天狗というのは他のどの妖怪よりも上下関係を強く持ち、
    閉ざされた社会の中で生活している。

    妖怪の山に入ろうとするよそ者は天狗に排除され、
    天狗たち自身もよそに出ていくことはない。
    いわばそこは、ほぼ完全な閉鎖空間なのだ。



    ……


    しかしはたての話だと、
    この前提から極端に離れたことが、今現在起こっているようだ。


    ……


    今思えば、しばらく前から天魔様の様子がおかしかった。


    天狗の会合は月一であるのだが、今までは天魔様はあまり発言をしてこなかった。
    それは御自身の発言力の重さを考えての事だろう。
    天魔様の発言があれば、鶴の一声で議題の答えが決まってしまう。

    強き者を妄信して、進歩を忘れた者に残された道は二つしかない。
    時間に取り残されるか、さもなくば死か。

    そのことは、最高権力者の天魔様も、よくご存じだった。

    だからこそ、どうしてもという場合以外の議論は、
    幹部の大天狗や、各天狗の代表に任せていたのだ。


    ……しかし最近の天魔様は、何かが変わってしまわれた。


    会合では頻繁に発言をされるようになり、
    他の天狗は天魔様に同調するだけの飾りとなってきていた。

    さらにその発言の内容もおかしく、

    『天狗というのは最高の妖怪だ』だとか
    『天狗の社会性は他の妖怪の手本になるものだ』だとか

    やけに天狗のことを持ち上げる発言ばかりされるようになった。

    私も最初のうちは、
    天魔様も天狗であることを誇りに思ってるのは嬉しい、
    なんて感じていたのだが、

    何回もそんな言葉が繰り返されると、違和感の方が強くなっていった。

    といっても、大多数の天狗たちは、大天狗様たちを含めて、
    違和感を感じていないようだった。


    これは、あれだろう。
    私が違和感を覚えたのは、
    あんまり外に出ない性格だから、他の天狗との交流も少なく、
    上下関係にあんまり執着がないからだろう。


    ……いけない。自分で言ってて悲しくなってきた……


    ……まぁ、とにかく、天魔様の言葉通り、
    それからの天狗たちは、何というか、血気盛んになっていった。

    いつもの修練でも、天狗のこれからを議論させる奴らが増えてきたのだ。

    天狗はもっと縄張りを広めるべきだ、とか、
    妖怪の山に住む他の妖怪も、天狗と同じ社会体系に組み込もう、だとか。

    傍から聞いてると、「それ本気なの?」って
    つっこみたくなるような話を延々とする奴が増えてきた。


    そんな状態が最近まで続いて、
    なんだか居心地が悪くなってきたところで、
    つい昨日、特別会合が開かれた。


    その会合で話された内容は、こうだ。

    『これからの幻想郷は天狗が治めていくべきだ。
    妖怪の山を出て、縄張りを広げるときが来たのだ』

    こんな荒唐無稽な話が、あろうことか天魔様の口から出てきたのだ。


    私はどうしても納得できなくて、会合を途中で抜け出した。
    だからそれ以降は何が話されたのかはわからない。


    ……そして今日、ついさっき。
    山が爆発して、そこから皆が騒ぎ出した!


    『時が来た!今こそ幻想郷全土を天狗の縄張りにする時だ!』って!


    そこからはもう大変で……

    私達、縄張り拡大反対派と、天魔様肯定派に分かれて争うことになっちゃったんだけど、
    天魔様の方針を支持する天狗が大多数だから、多勢に無勢。

    同じ記者仲間の文(あや)が健闘してるんだけど、
    そんなに持ちそうになくて……



    ・・・・・・



    霊夢「……それであんたが急いでここまで来た、と」

    はたて「そう!そうなの!お願いよ!助けてー!」

    魔理沙「……天狗の軍団、しかも大天狗まで……」



    魔理沙は冷や汗を流している。

    それも当然。

    妖怪の中でも天狗と言えば、かなりチカラの強い部類だ。
    しかもその中でも高位に当たる、大天狗を何体も敵に回さなくてはならない。

    かなりの苦戦を強いられるだろう。
    うまく立ち回らないと、命が危うい。


    霊夢「……事情はわかったわ。行くわよ」

    はたて「ウソ!?本当に!?ありがとうー!!!」

    魔理沙「こりゃあ気を引き締めていかないとな……!!」



    ・・・・・・



    はたてを先頭に、妖怪の山へと向かう二人。

    飛んでいく道中で、
    自分たちが来た方角へ向かう人影が現れる。



    霊夢「あれ?アンタ妖夢じゃない。こんなところで何してるの?」

    妖夢「えっ!?なんで霊夢さんがこんなところに!?」

    魔理沙「なんだなんだ?なんだってこんなところ飛んでるんだ?」

    妖夢「魔理沙さんに、天狗のはたてさんまで……
    一体どこへ向かってるんですか……?」

    はたて「……それなら私が説明するわ」


    少女説明中……


    妖夢「よ、妖怪の山がそんな事態に……!?
    私は幽々子様から人里が大変、と聞いて向かっていたのですが、
    そちらもかなりマズい事態の様ですね……」

    霊夢「そうなのよ。というわけで妖夢も一緒に来なさい」

    妖夢「えぇ!?確かにそちらも心配ですが、人里を放っておくわけにはいきません!」

    魔理沙「人里は多分だけど大丈夫だぜ。霊夢の勘がそういってる」

    妖夢「勘って……もしそれが外れたら人里が大変なことになりますよ。
    そんなことになるのだけは避けないと……」

    霊夢「そっちは大丈夫。というか、妖怪の山の方を何とかしないと、その方がマズいわ。
    今は訳あって紫が動けない以上、
    天狗の強硬派に幻想郷が支配されたら、打つ手がなくなるわよ。
    貴女も天狗の強さ、知ってるでしょう?」

    妖夢「……そう、ですね。確かにそうなってしまえば、手遅れといった気もします。
    わかりました。それでは貴女の勘を信じましょう」

    魔理沙「信じていいぜ。霊夢の勘は的中率100%だからな!」

    妖夢「でも勘っていうのがなぁ……」


    煮え切らない様子の妖夢に対して、はたてが声をかける。


    はたて「はいはい!悩むのはそこまで!急がないと間に合わないわ!」

    妖夢「……そうですね。心機一転。参りましょう」

    魔理沙「よーし、頼もしい仲間も増えたところで、気合い入れて行こうぜ!」



    妖怪の山の異変解決に向け、動き出した4人。

    果たしてどんな状況が待ち構えているのだろうか……



    つづく



    略称一覧

    霊夢…博麗霊夢(はくれいれいむ)。幻想郷を覆う、博麗大結界の管理をしている。通称・博麗の巫女。幻想郷で起こる数々の異変を解決してきた実績があり、各勢力からの信頼は篤い。年齢からは想像できないほど、物事を達観した目で見ている。

    魔理沙…霧雨魔理沙(きりさめまりさ)。魔法の森の辺りで暮らしている魔法使い。霊夢とは昔からの知り合いで、仲が良い。明るく前向きな性格。彼女も霊夢と共に異変解決をしてきた経歴を持つ。ただし罪悪感なしに泥棒をしていくので、一部からはお尋ね者扱いされている。

    はたて…姫街棠はたて(ひめかいどうはたて)。鴉天狗であり、新聞記者でもある。引きこもりがちなのに新聞が書けるのは、念写能力を持つおかげ。今回の異変では縄張り拡大反対派。実は戦闘のポテンシャルが高いうえ、なんだかんだ修業はまじめにやっているため、なかなかに強い。

    妖夢…魂魄妖夢(こんぱくようむ)。白玉楼住まいの庭師にして剣術指南役。とても真面目であるがゆえに、主人の幽々子からは日々からかわれている。従者としての能力も剣術の腕も上々。半霊という人魂のようなオプションがくっついているが、それは彼女がそういう種族だから。

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