ノクチルの強めの幻覚が見えたので文章にしてみた。
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ノクチルの強めの幻覚が見えたので文章にしてみた。

2020-03-26 00:04

    「ノクチル(noctchilll)」


    浅倉透、樋口円香、福丸小糸、市川雛菜の幼馴染4人ユニット。


    東京から船で10時間、飛行機で1時間。

    観光客がたまに来る程度の離島、波島で育った4人。

    透、円香、小糸の3人は島で産まれ島で育ち、

    島の自然に存分に触れて育ってきた。

    産まれたときからずっと島にいる彼女たちにとって、

    娯楽は自然とのふれあいと、大人たちと一緒に見るテレビ。

    幸い東京都内である波島では地上波の番組も多く見ることができ、

    歌番組を見てその真似をすることも彼女たちの楽しみの一つだった。


    小糸だけ1つ学年が違うものの、

    同年代の子どもは島ではこの3人のみ。

    彼女たちの上の世代の子は4つ以上離れていたことから

    必然的に3人で過ごすことが多かった。


    彼女たちの「いつも通り」が大きく変わったのは、透と円香が4年生、

    小学校高学年になった年の春。

    横浜から、「なみのおと留学生」として、雛菜がやってきてからだ。


    雛菜は良くも悪くも、マイペースだった。

    都会で生活するには、自分というものを強く持ちすぎていたとも言える。

    自分のしたいこと、好きなことばかりを優先し、

    周囲にはなじまず、ひとりで楽しそうにしている。

    本人は一切気にしていなかったが、学校ではハブられていた。

    両親は共働きで雛菜に構うことがあまりできず、

    そんな状況を学校の先生から聞いて、大きく動揺した。

    自分たちは子育てを失敗したのでは、この先この子を上手く育てられるのか。

    そう悩み続けて至った結論が、「なみのおと留学制度」だった。

    波島にいる里親に子どもを預け、自然の中でノビノビと育てる制度。

    試しに雛菜を島に連れて行ったところ、すごく楽しそうに遊んでおり、

    里親とも上手くやれそうだったので、送り出すことにした。

    それが、雛菜がこの島に転校してきた経緯である。


    もともと3人でずっと過ごしてきた中に、

    雛菜は驚くほどすんなりと受け入れられた。

    都会の子どもたちをそれほどよく知らない島の3人には、

    社会に馴染まない雛菜のマイペースさも、ただの個性と受け入れられた。

    3人とも、どちらかというと流される方だったというのもある。

    海遊びは低学年がやることと言われ海から離れ、

    退屈していた3人を、雛菜が見事に引っ張った。


    4人をつないだのは、歌。

    テレビを見て、アイドルが歌う姿を見様見真似で演じる。

    それが、ちょうどそのころの島の3人のブームだった。

    雛菜もまた歌うことが好きで、

    「じゃあ、雛菜たち4人で歌おうよ!」

    と、全員を巻き込んでアイドルもどきの活動を島で始めたのだ。

    観客は保護者、伴奏は小学校の先生。

    学習発表会などで披露される彼女たちの歌は島では評判になった。

    実際、歌唱力という面ではセンスが光る4人だったのだが、

    あいにく、それに気付ける人は島にはいない。

    透と円香が中学3年生になり、受験勉強を始めるまで、

    4人の小さなアイドル活動は続いていった。

    控えめな性格の年長組を、

    マイペースな雛菜が引っ張り、しっかり者の小糸が後ろから押す。

    一見チグハグな4人はそれで上手くいく。

    透と円香も、このころは笑顔が多かった。

    最初は歌うだけだった4人だが、

    透の振りコピを見た雛菜が

    「楽しそう!皆でダンスもやっちゃおう!」

    と、はしゃぎだし、振付までしっかり付けて歌うように。

    休み時間に歌い、踊る。

    そうやって磨かれた彼女たちのアイドルとしての能力は、

    283プロという舞台で見事開花するのだが、それはまだ先のお話。


    ただ、透と円香の中学校卒業で、4人の時間は終わりを迎える。

    島にある学校は小中一貫で、高校はない。

    ここで育った子どもは全員、15歳で島を出るのだ。

    受験勉強があったこともあり、4人で遊ぶ時間は少しずつ減り、

    距離が開いた年長組と年少組。

    それでも、卒業式のときには小糸と雛菜は号泣し、

    「来年には絶対、会いに行くから!」

    そういって、2人を送り出した。


    透と円香は同じ高校へ進学した。

    慣れない1人暮らし、慣れない都会。

    教室に40人いるという授業すら初めて。

    雛菜を除けば、周りにいる子供は産まれたときから友達だったのだ。

    人間関係というものを初めて難しく感じた2人は、

    そつなくこなしつつも、少しずつ疲れていたのは事実だ。

    「「こんなとき、雛菜がいてくれればなぁ」」

    そう想ったことは、一度や二度ではない。

    透も円香も、別にコミュニケーションが苦手なわけではない。

    だけれども、東京の高校生というのは怖いもので

    表に出ないギスギスした雰囲気というのがとても強い。

    高校が始まって2ヶ月経って登校しなくなったクラスメートは、

    どうやら知らないうちにいじめを受けていたらしい。

    そういうものとは無縁だった2人も、息苦しさだけは感じていた。

    天気の悪い日に、崖から飛び込んだ海のよう。

    深く潜ったあと、一気に海面に上がったのに、

    空の明かりも十分に感じられないあの瞬間のような。

    灰色の空ばかり見上げる日々が続いていた。


    その日々を破ったのもまた、雛菜だった。

    円香と一緒に寮に帰ろうとしていた透の前に、

    聴きなれた騒がしい声が響いた。

    「透先輩!円香先輩!雛菜たちも来たよ!」

    小糸と二人で同じ高校に来たのだ。


    その手に一枚のチラシをもって。

    「雛菜、面白いもの見つけちゃった~。」

    そう言って、再会を喜ぶまもなく、透の前にチラシを差し出した。

    「283プロ、アイドル発掘オーディション?」

    透が読み上げた声に雛菜はうなずいた。

    「そう!雛菜たちなら、アイドル、なれるんじゃないかな!みんなでまた歌って踊ろうよ!」

    簡単に言ってのける雛菜は、いつもどおりのマイペースさだ。

    「雛菜ちゃん…流石にこれは無理なんじゃないかなぁ…」

    小糸は冷静に、少し弱気に自分たちを分析する。

    「アイドルって…ガラじゃない。」

    小糸に同意したのは、成り行きを黙ってみていた円香だ。

    自然、3人の視線は透に向けられた。

    透は少しだけ悩んだが、にやりと笑って答えた。

    「うん、やってみないと、わからないんじゃないかな。」

    こういう、突拍子もないことを持ってくるのは雛菜で、

    それを始めてしまうのは、いつも透だった。

    そうなると、この4人は止まらない。

    結局、いつも周りを巻き込んで楽しいことへと突き進む。

    東京に来てから感じていた閉塞感が一気に晴れるのを透は確かに感じた。

    それは、円香も同じ気持ちだった。

    4人なら、きっと。

    空に虹だってかけられると信じて。


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