もうヒロインはいない(2):バハムートラグーン
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もうヒロインはいない(2):バハムートラグーン

2013-11-13 16:02
    前回、バハラグではヒロインがバハムートであることをお話した。
     この当たりの話、そしてこれから話すことも、しばしば当たり前のように語られてきたことであって、それほど強調する話でもない。核心に迫れるほど考えているわけでもない。だが、ヒロインについての考えを深めるなら、バハラグほど面白い例はそんなにないだろう。

     さて、バハラグをやれば誰でも思うことがある。
     それは、「裏ヒロインの立ち位置にセンダックがいる」ということである。
     これはマジ中のマジなので、確認していきたい。

    ①ヒロイン(ヨヨ)と同じく神竜の力が使える
    ②主人公を好きで居続けるなど、ヒロインへの対抗的ポジション
    ③設定上も詳しい知識を持ち、ヒロインの苦痛を感じることができる重要なポジション
    ④思い出上書き行為をやっている

     ヨヨとの思い出で「ぎゅっとつかまっていい?」のシーンが、このジジイによってまず上書きされる(※1)。もちろん、これはギャグとして処理されるのだが、これは割りと重要な行為であることは間違いない。なぜなら、ヨヨに対する憎悪の1つに、ヒロインとの結びつきを別の人間と上書きする行為が挙げられるからだ(サラマンダーより(ry、幼い頃の恋仲の目の前でわざわざ思い出の教会に入る)。それと逆のパターンをセンダックがやっている以上、「センダックが裏ヒロインですよ~」ということを早々に宣言しているも同然だ。
     実際にセンダックはメインストーリーに絡んできて、ヒロインとの橋渡しもできる可能性があり、何よりヨヨとプレイヤーが対立してしまいがちな展開に対して、最初から最後まで主人公側に立ってくれる、まさに立ち位置としては裏ヒロインと呼ぶにふさわしい存在である。設定としても、元・ファーレンハイト艦長、知恵者でありながら、神竜のちからを操ることが出来るというところで、ヨヨとの対比がうまくいけば、メインヒロインに対抗するという意味でもアリといえばアリ(立ち位置だけは)。
     この考えを進めるなら、センダックという裏ヒロインがうまく機能しなかったことで、ヨヨに対する憎悪が増大したのではないか、と言えなくもない。

     そもそもバハラグのメンバーは常に仲良しではなく、険悪になったり、関係性が変化してく中で、大事なものを見つけよう、ともがく、まさに「明日のみえぬぼくたち」なのであるが、ヨヨについてもこうした変化と苦しみを乗り越えていく途上にあり、「ヨヨの成長物語だ」、という指摘もおそらく当たっている。
     問題なのは、ヨヨだけが「成長」して、ビュウは置いてけぼりを食らっている、というところが問題なのだ。大人になったね、もう昔のままではいられないね、という言葉をかけて、確かに神竜にも負けない精神力と恋人を勝ち得たヒロインに対し、ビュウはそれに付き合わされている、恋人もできない(少なくとも童貞ドラゴンおやじになってバハムートに乗るという未来が示唆されており、どう考えても物語中では失恋したままそれを癒せない状態になっている)のに、最後には昔のような仲良しでいてほしい、という要請が行われる。これってプレイヤーからしてみると、「私は大人になったしあなたとは付き合えないけど、昔のように仲良くしてね」という都合の良い男扱いだと思うんだけど、どうなんでしょうか。

     おそらくそこには、ヨヨの試練(神竜の精神的な圧力に対する苦しみ等)が、あまりこちらに伝わってこないということが関係している。なんとなく遠ざけられて、いつの間にか敵方の将と仲良くなってて、といった風に。確かにヨヨは苦しみを克服するんだけれども、そこには今のビュウがほとんど絡んでない(前回のバハムートに言わせると、今のビュウに対する認識はなく、美しい幼い頃の思い出のビュウが大切にされているとのこと)のである。うーん、ま、自分に向き合ってパラディンになった人もいるし、こういう精神的な「成長」に、仲間がしてやれることなんて無いのかもしれないんだけどさ。
     ここで裏ヒロインたるセンダックは、同じように苦しみ、どうにも出来ずにおろおろするわけなのだが、当初から変態ホモジジイ枠として確立してしまったため、ヨヨを知る入り口として役立たずになってしまっている。つまり、センダックが苦しんでも、ギャグにしかならないのである。選択肢次第では、当初はまともに声をかけていたビュウも、辛辣な言葉をかけるようになる。
     ちょっと想像してほしいのだが、もしセンダックがポンコツ系美少女だったら、「ヨヨ様が苦しんでいる」ことについて自分も影響を受けていると言い出して倒れたりすると、おっ、どうしたどうした、心配だ、となって詳しく話を聞いたりすることもあるかもしれない。
     美少女「ビュウのおしり…まろやか……。」
     うーん、まあ、ぎりぎり許そう!
     何より、ヨヨは本編中の大半を、神竜との精神的なたたかいによって苦しんでいるような状況なのだ。それを共有できるのが美少女であれば、ヨヨとのイベントだってもっと増えて、どうしたら良いのか、というところでもっと別のアイデアが生まれていし、解放軍たちとヨヨの間の溝も埋まったのかもしれない(※2)。弱々しいジジイだったからか、王女と部下だからか、女性と男性だからか、ヨヨの部屋に入りにくい、お互いに気を使って話しにくい、が重なってしまって結果だろうか。

     ビュウとヨヨが強調されすぎてしまうために、そこに介入できずに(だけどモブキャラと違ってメインストーリーに付き合わなければいけないから)孤立する主人公と、勝手に「成長」するヒロインという対峙を意識せざるをえなくなり、それを和らげるキャラがどこにもいないのである。それが出来るセンダックは、当然ながらヒロインになれるはずがない。なぜならセンダックは、「おくびょうジジイ」だからである。
     ヒロインに感情移入出来ない、だから反感しか心に沸かない。そこへの橋渡しが可能だった対抗馬は変態ホモジジイ。こうなると、ドラゴンに萌えるしかないのは当然と言えば当然だった。

    ――次回につづく。

    ※1なお、この「つかまっていい?」は最終決戦前にも、ヨヨによって繰り返される。どう考えてもスタッフが、ヨヨが嫌われるように配置したとしか思えない。
    ※2ヨヨの加入初期はメンバーも心配したりしてたけど、シナリオが進むに連れてなんか「ヨヨ様の考える事は下々にはわかんねぇだ」的な雰囲気が生まれてる感じがする。これは、それでもヨヨに向き合わざるを得ないビュウと、その仲間たち及びサブヒロインたちとの距離もまた広がっていることも意味しているように思う。
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