無職転生・二次小説 突発性閑話「とある魔法少女の聖夜祭」
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

無職転生・二次小説 突発性閑話「とある魔法少女の聖夜祭」

2017-07-17 06:02

    ※注意。今回、とある人物を悪者にしちゃいましたが、あくまでも僕の個人的妄想設定です。原作にはそんな設定ありません。
    孫の手先生、該当キャラのファンの方、どうかご容赦下さい。 ちょっぷ

    あと色々ネタバレがありますので、原作最後まで未読の方はご注意ください。



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











    「 『ククク……フハハハ……フハーッハッハッハッハッハッ』……ゲホッゲホッ」







    黒い仮面をかぶり、黒いマントを羽織った謎の人物が高笑いをし、そしてし慣れない高笑いのせいでむせていた。声は明らかに男性のもの。威厳はあまり、ない。
    その怪しい男の前に、三人の女性が戦いの構えをとっていた。

    一人は白髪の少女。小さい魔杖を持ち、顔にはサングラスをかけている。
    深緑色のマントを羽織り、男子生徒用の制服を着用していた。
    明らかに女子であるにも関わらず、その着こなしは非常にさまになっている。男装の麗人とはまさにこのことだろう。

    もう一人は青髪の少女。非常に小柄で、背丈よりも長大な魔杖を構えている。
    不思議なのがその装備。女生徒用の制服の上着を着ているが、なぜかその下は日本の旧式デザインのスクール水着。恥ずかしいのか、もじもじと内股をすり合わせるようにしていた。

    最後の一人は赤髪の女性。他二人よりも大柄で逞しい。
    優美な反りを持つ片刃の長剣を腰に佩き、腕を組んでの仁王立ち。ムスッとしているが、その顔は真っ赤であり、ただ単に照れているのかもしれない。
    緩やかなウェーブのかかった長いツインテールが目を引くが、服装は他の二人と違って、上は革製のへそ出しベストに、下はショートパンツ、オーバーニーソックスという際どい装備だ。おそらくは作者の趣味に違いない。

    「え、えっと、『こ、ここまでよ、魔王ルード・ロヌマー』!(……で、いいんだっけ?)

    白髪の少女が一歩前に進み、そう叫んだ。しかしほとんど棒読みであり、最後の部分で青髪の少女を振り返り、小声で囁いた。青髪の少女はうんうんと小さく頷く。

    「 『ハーッハッハッハッハッ!よくぞ我が正体を見破ったな美少女よ!』 」

    魔王と呼ばれた黒衣の男が仰々しい身振り手振りでそう応じる。ハッキリいって、下手くそな歌舞伎もどきにしか見えなかった。
    それに対して、青髪の少女は魔杖を突きつけるように構えて叫ぶ。

    「 『貴方はこの辺りで一番の悪党!その名を知らぬ者などいません!』 」

    赤髪の女性も腰の剣をすっぱ抜いて「 『そうよ!ブッた斬ってやるわ!』 」と叫んだ。

    「 『フッ……フッフッフ……そうかそうか……愚かな少女たちだ……』 」

    カラフルな少女たちの言葉を鷹揚に受け、魔王は両手を広げた。
    すると魔王の足元から濃密な魔力風が吹き荒れ、黒衣を激しくはためかせる。
    先ほどまでは頭の残念な中年にしか見えなかった男が、ほんの一瞬で変貌する。
    そこにいたのはまさにこの辺り一番の悪党、魔王ルード・ロヌマーその人だった。
    三人の少女は固唾を飲み込み、それぞれが携える武器を構えた。

    「 『私たちは負けない!このシャリーアの平和を守るために、絶対に勝つ!』 」

    三人の中央にいた青髪の少女がそう宣言する。

    「 『ククク……なるほど。では美少女たちよ、汝らの名前を聞いておこう』 」

    魔王がそう言うと、白髪の少女が魔杖をクルクルと回しつつ、ビシッとポーズを決めた。

    「 『し、白き光は~聖なる~こころ~、シ、シルフィ・ホワイトぉ~』(動揺」

    しかし声は震えており、顔は耳まで真っ赤だった。
    その横から赤髪の女性が前に出て、手に持つ長剣を一閃する。

    「 『深紅の炎は正義に燃ゆる!クリムゾン・エリス、ここに参上!!』 」

    顔は赤いが名乗りは堂に入っていた。
    最後に中央のリーダー格の青髪の少女が高らかに叫ぶ。

    「 『天空よりも蒼く!海よりも青し!優しい音色は永遠の調べ!ロキシーブルー!』 」

    そして三人はヨロヨロとした足取りで中央に寄り集まり、ポーズを決めた。



    「「「爆誕!魔法少女戦隊カラフルラジカルジェットストリーム!!」」」



    魔王はそれを見て、感慨深げに何度も頷き、にちゃっとした不気味なポーズをとる。



                            かいな
    「 『そうか、それならば受けてたとう。さあ、我が腕の中で息絶えるがいい……』 」















    -------








    ――――という夢だったのさ!











    あ、ウソウソ、冗談じゃないよ(どっちだ?)。言ってみたかっただけ。



    オホン――やぁみんな。ルーデウスお兄さんだよ。
    こっちの季節は冬、日本で言えばそろそろ師走だなって頃合。
    寒い時期の割合が多い北国ラノアだけど、まさに厳寒。雪に閉ざされる季節さ。

    今、俺はとある場所に来ているんだ。ヤボ用でな。
    場所ってのは我が母校にして、俺の可愛い娘(マイスイートドーター)のルーシーが通うラノア魔法大学。

    うぅむ、ルーシーが魔法大学に入学して、もう何ヶ月になるだろうか。
    うちの長女は成績優秀で、先生たちからの覚えも良い。まぁフィッツ以来の天才児ってことで、ラノア王国以外の北方二カ国からも注目を浴びてるみたいだから、パパは鼻が高いよ!すごいよこのルーシー!さすが僕の娘さんだよ~!絶好調である!

    で、だ。さっきも言ったが、元日本人の感覚で言えば十二月。
    十二月といえば、いわゆるクリスマスだ。真っ赤なお鼻がビンビンのルドルフなのだ。

    いや、この世界にクリスマスという概念は無い。無いのだが、元日本人の俺としては冬といえばクリスマスであり、その次はお正月。うむ、これぞジャパニーズソウル。
    そしてクリスマスといえばサンタ。その栄えある赤き衣を纏う為、俺は毎年争っている。
    誰と?言わずもがな。その時だけは下克上。俺が……俺だけがサンタだ!

    それはそれとして。大学は二学期修了という事で、もうすぐ厳冬期休みに入る。
    その修了式の二次会として、イベントをやろうって思いついた。思いついてしまったさ!
    俺は自らのアイデアに飛び上がったね!なんせ堂々と、ルーシーのいる大学に潜入できるんだからな!も、もうシルフィにだって睨まれないぞ!(震え声)



    ――という訳で今、俺は大学の校長室にいる。企画書を携えて。



    「――カクカクシカジカ、という訳でですね、催し物をしたいと考えまして」

    何枚もの紙にしたためた企画書を見せて、俺は熱弁をふるう。
    場所はラノア魔法大学の校長室。相手はゲオルグ校長とジーナス教頭の二人。
    企画書の内容は題して『冬休み前催事としてのクリスマス・フェスティバル』。
    出店あり、講堂で音楽イベントあり。いわゆる楽しい学園祭だな。
    まぁ、俺は高校中退だもんで、楽しい学園祭なんてもんは味わってない訳だが。

    「んん~、くりすます?ですか……」

    教頭が首を捻っている。聞きなれない言葉に対して、教師としての記憶と知識を探っているのかもしれない。

    「えぇ、大昔の聖人の生誕祭というかですね」

    「ほほぅ……聖人……」

    確か、キリストの生まれた日のお祝いだったよな……?
    俺がそう言うと、さらに首を捻る教頭。唐突過ぎて理解が追いつかないか?
    まぁこの世界にはミリス教があるから、聖人といったらそっちを思い浮かべてしまうんだろう。ミリス生誕祭もあるにはあるが、クリスマスとは違う感じだったし……。

    ……まだ悩むジーナス教頭をよそにチラリと横目で校長の様子を伺うと、彼は目を閉じていた。話聴いてンのか?呼吸してるのか?っていうかその頭髪、気になる……。物凄く気になる。なんで髭や後頭部とかの髪の毛が白くてストレートなのに、頭頂部は真っ黒モジャモジャなんだよ。おかしいだろ。

    「――――ッ!?」

    俺の視線が頭頂部に集中してるのを気取られたのか、校長は閉じていた目を見開き、俺に無言の威嚇を飛ばしてきた。さすが老いたりとはいえ風王級魔術師、すげえ殺気だ……。

    俺は校長の秘密を暴こうと密かに魔力を練り上げ、校長は校長で俺の狙いに気がついたのか、枯れ木のような指に嵌められた指輪をさりげなく俺に向けてくる。恐らくは魔術の発動体であろう指輪がうっすらと輝く。奴と俺の背景にはゴゴゴゴゴ……という文字が――

    「あぁ――ルーデウスさん?」

    「あ、ハイ」

    校長と無言の戦いを繰り広げていたその時、教頭から名前を呼ばれて我に返る。……っていうか、校長の髪の毛なんてそもそもどうでもよかったんや。校長もシレッと目を瞑って、再び狸寝入りをしていた。なんか、もう少し真面目なイメージだったんだけど……。まぁいい。

    「ここの箇所なんですがねぇ……」

    俺らの暗闘を知ってか知らずか教頭は、企画書の一部分を指差してこう言った――難しいと。

    「え……どこらへん、難しいですかね?騒ぎはダメとか?」

    「いや、騒がしいのは問題無いのですよ。例えば研究棟では沈黙の魔術を起動させればよいのですから。そうでは無くてですね、この講堂でのイベントなんですよ」

    トントンと指で突いたのは、「演劇」の項目についてだ。これの何が引っかかるのか。

    「これですがねぇ……、魔術装置を使った舞台演劇とあるでしょう?内容をざっと見たんですけれど、当大学には無い高価な魔道具や高位の結界が必要のようで……」

    ふむふむ……つまり、資金繰りの問題か?そう思って教頭を見ると、苦笑いして頷いた。

    「ご存知と思いますが、我が大学は学費の他に、北方三国と魔術ギルドの支援によって成り立っておりまして……。報告してある年間行事計画書に無い突発的な出費には、中々厳しいものがありまして……」

    まぁ確かに、学生寮はあるしメニュー豊富な食堂もあるし、制服も揃えてたりと異世界の割に福利厚生?はやたらと整っている。他の国じゃあまりみない至れつくせり具合だ。
    これはナナホシが日本の感覚で導入したお陰でもあるが、そのせいで資金繰りに難があるらしい。技術力があるとはいえ、複数国家のど真ん中で経営支援を受ける一企業として考えると色々あるんだろうなぁ。

    ――いや、問題はそこじゃない。俺は頭を軽く振って雑念を払う。
    今回のクリスマスイベントは、出店もいいんだが、この「演劇」が俺の中でメインなのだ。
    なにしろ、そもそもが可愛い俺のルーシーを楽しませる為のイベント開催。それの中心たる「演劇」が無くなっては画竜転生……違う、ダルマの目潰しって奴だ(錯乱)。
    やっぱり春休みは劇場版ドラ〇えもんが鉄板みたいなもんだろ!?いや冬休みなんだけども。

    「どうにかなりませんかね、教頭先生……」

    とにかく、俺はルーシーを喜ばせたい一心なのだ。娘とはいつまでもイチャイチャ、ラブラブでいたい。パパってのは、そんな生き物なのだ!お願いしますよ旦那~!

    「うーん、私はその"きりすて"なる聖人の生誕祭というのにちょっと興味がありますので、イベント開催についてはやぶさかでは無いのですが……その……」

    すがりつく俺に対し、教頭は申し訳なさそうな顔をする(っていうか"切り捨て"ってなんだよ、嫌だよそんな聖人)。そして最後にちらりと横目で校長を見た。……なんだ?

    「出費の最終的な権限は、校長にありますので……」

    と苦笑しながら言った。

    あー、そういうこと……。こいつが諸悪の根源か……(悪意)。
    俺は狸寝入りする校長の方に頭を下げて頼み込む。なりふり構ってられるか!

    「ゲオルグ校長……どうでしょうか」

    「………………」

    「これが定着すれば、新入生も増えると思いますし、学生たちのモチベーションも……」

    「………………」

    「あの、校長……?」

    「………………」

    なんだこいつ、なんでこんなに知らばっくれるんだ?
    俺がそう訝しんでいると、背後から俺の襟足の髪をちょいちょいと引っ張られた。何かと思って振り返れば、そこにいたのは娘のララ。グレイラットさん家の次女だった。
    俺が大学に行くと行ったら、一緒についてくると言って聞かなかったのだ。レオは多分、廊下で待たせて自分だけこっそり入ってきたんだろう。まったく、油断も隙も無い……。

    「どうした?おしっこか?それともお腹でも空いたのか?」

    俺がそう小声で言うと、ララは無言で服の袖を引っ張った。
    教頭に断りを入れてから二人で外に出る。廊下にはレオが座って待っており、俺の顔を見ると嬉しそうに尻尾を振った。

    「で、どうしたんだ?パパは今忙しくて――」

    言いかけたところで、ララが俺を招くように手をちょいちょいとする。何か言いたいのだろうか?しゃがんでララに顔を近づけると、彼女はこしょこしょと小声で話しだした。

    「……パパは、お祭りしたいんだよね?」

    ――ん、そりゃ、その為に大学に来てるからな。

    「……あのもじゃもじゃが、それを邪魔してる?」

    ――もじゃもじゃ……あぁ、校長か。そうだな、まぁ邪魔っちゃ、邪魔されてるのかな。こっちも無理言ってる側だけども。

    そこまで言うと、ララは少し離れてからニヤリと笑った。凄く悪そうな顔で……。

    「……協力、してもいい、よ?」

    協力……?なんだって五歳児から協力を申し出られなきゃならんのだ。
    しかし、このふてぶてしい顔……。なにか策があるのか?
    そういえば、この子は時々ハッとするほど鋭い。なにかの足しにでもなれば儲け物かと、俺は思い直してみる。

    「どう、協力してくれるんだい?」

    俺がそう聞き返すと、ララは「……その前に、報酬の話です」と切り返してきた。報酬って、お前なぁ……。仕方ない、乗りかかった船だ。聞くだけ聞いてみよう。

    「……報酬は、パパのたこ焼きと、ソーダ水でいい、かも」

    ひどく子供らしい請求内容だった。まぁ、その程度なら……ってか、かも、って?
    とりあえず商談は成立した。ララは再び俺の耳元でこしょこしょ話を始める。

    「んお……?ふんふん……。な、なんだってー?」



    ララのもたらした情報に、俺は衝撃を受けた。あのハゲ――ッ!!



                     *



    「いやいやいや、お待たせしやしたでゲス。あ、教頭先生、ちょっと――」

    へりくだりつつ校長室に戻った俺は、何食わぬ顔をしつつ教頭を外に連れ出した。
    ララとレオは一緒についてきたかと思えば、そのまま部屋に居残った。

    廊下に出て扉を閉めるや否や、俺は教頭に食ってかかる。壁ドンだ。

    「ちょっと、教頭先生!(カクカクシカジカ)どういうことなんですか!?」

    「な……ルーデウスさん、どこからそれを!?」

    教頭は俺の言葉に衝撃を受けたようだった――貴様!知っているな!?

    「細けぇこたぁいいんだよ!本当かどうか、それが今は問題ナリ!」

    「うぅ~ん……」

    教頭は弱りきっている。俺の話の内容は、相当に機密扱いだったようだ。
    俺がなにを問い詰めたかというと、さっきララよりもたらされた情報――校長の公金横領についての事実だ。

    -------

    『……毛玉を買うのに、お金がいるって』

    先ほど俺は、ララからそう耳打ちされた。
    おい、毛玉がどうとか、なんだそれ?
    初めはなにを言ってるか理解できなかったが、続く言葉にハッとさせられた。

    「……あの頭の毛玉に、学校のお金を使うから、パパのお祭りにお金払いたくないって」

    頭の毛玉……、それはつまり、カツラか?

    ――は?なんだそれは。要するに、大学の支援として払われている公的資金を、あのハゲのカツラの購入代金に充ててるってこと?
    それって、公金横領とかじゃないのか。ダメでしょ、そういうのって。汚職、イクナイ。

    許せない。許せないぜ。そんな下らない見栄の為に、俺の可愛いルーシーを楽しませようというイベントを妨害しようってのか!!



    俺は激怒した!必ず、かの邪智暴虐の校長を除かなければならぬと決意した。



    こうして、義憤に駆られ、もとい私憤を抱いた俺は校長室に舞い戻ったという訳。

    -------

    「――で、どうなんザマスか!?本当なら、メロスも黙っちゃいませんよ!?」

    まるでPTAのザーマスおばさんのような俺の詰問口調に、教頭は折れた。
    ご内密にお願いしますよ?という前置きをしてから、彼は詳しい経緯を話してくれた。

    なんでも校長の頭頂部の件は、スポンサーも了承していることらしく、教員は誰もそれに関して表立って苦情を言えないそうなのだ。毎年、結構な額を使い込んでるのは公然の秘密なのだが、提携しているネリス公国とバシェラント公国の財務大臣だか事務次官だかがゲオルグの親しい友人らしく、悪い意味での忖度をされているとのこと。

    「えぇ~、でもそれって公私混同とか職権乱用じゃないんですか?」

    「んん~我々もそう思うのですが、大臣らと校長は貧困調査仲間らしく……」

    ヒンコンチョウサナカマ?意味がわからないよ!確かに貧困だけれども!毛根が!

    「表向きには、アレを装備する事により、集中力が増し、術の行使や魔術研究が捗るとかで……。校長は世界でも数少ない王級魔術師ですし、達人を保護する名目でも……ですね」

    ~~~達人はッ!!保護ッ!!されているッッッ!!!……世の中、権力を間違った方向にしか使えない奴ばかりだよなぁ。
    一応、あの頭頂部を覆うモジャモジャは魔道具扱いらしく、それなりの額はする物なんだそうな。いやそれにしても……。

    「…………ん?」

    なにやら校長室から騒音が聞こえる。騒音だけじゃなく、奇声も……?

    「ち、ちょっと失礼――どうしたララッ!?大丈夫かッ!?」

    教頭を押しのけるようにして俺はドアノブを引っつかんで扉を開けた。

    ガチャッ、バーン。

    ――扉を開けるとそこには、とんでもない光景が広がっていた。

    「にゃははははははははッ!!」

    「わふんッ!わふんッ!わふふーんッ!!」

    「ぬおおおおおおおッ!!この小娘ッ!!悪ふざけもいい加減にせんかぁッ!!」

    青い髪の少女と、子馬ほどもある大きな白い犬と、頭頂部がとても貧困な老人が部屋中を所狭しと走り回っていたのだ。なんぞこれ。

    「ま、待て、返せ、戻せ……ヒィヒィ……」

    老人は必死の形相で、青い髪の少女を追い掛け回している。
    青い髪の少女の手には、モジャモジャの黒い毛玉。老人に捕まりそうになると、手に持つそれを白い犬にパスする。すると老人は慌てて今度は白い犬を追いかける。

    まぁ、青い髪の少女はララで、白い犬はレオなんだが――あのハゲは、誰?
    そう思っていたら、後ろから教頭が叫んだ。

    「こ、校長――!?」

    あ、校長か。なんか、あのモジャモジャが印象強くて、むしろアレが本体かと思ってた。

    「か、返さんか、この駄犬めぇ……ふひぃ~」

    貧困な老人――校長が、レオを罵りながら飛びかかる。レオは器用にひらりと躱し、口に咥えていた毛玉を放り投げた。毛玉は放物線を描き、校長専用机の横に置かれていたブロンズ像にパサリと引っかかった。それを見て校長の顔が引きつる。

    「……ふひっ」

    それを見て取ったララは、物凄く意地悪そうな顔をして、女性の半裸を象ったブロンズ像の腕に飛びついた。

    「アイエエエエエエエエッ!!よ、よさんか――ッ!!」

    校長の悲鳴が響き渡り――

    ガゴンッ!

    硬い音と共に、ブロンズ像の腕が折れ曲がる。
    おい、あれちょっと高そうだぞ、弁償しないとダメかな?
    そう思ったのも束の間、俺の近くの壁に飾られていた絵画の額縁がパカーンと外れ、その後ろから窪みが現れた。窪みというか、棚だな。
    どうやらあの像の腕がレバーになっていて、隠し戸棚が現れたってことか。ハザードなバイオか?

    「なんだこりゃ」

    棚には何冊かの書物が納められており、それを手にとってペラペラと捲ってみた。何かの数字がびっしりと羅列されている。

    「む……、そ、それをちょっと見せてもらえますか、ルーデウスさん」

    教頭がやや険しい顔で俺の方に手を伸ばしてきた。


    「しゃああああああッ!おいそれ!ノンッ!!」


    凄まじい形相の校長が唾を飛ばしつつ駆け寄ろうとするも、レオがすかさずその足元を長い鼻っつらで掬い上げる。校長は一回転して床に腰をしたたかに打ち付けた。

    「グェッ……」

    痛そうだな~。などと俺がのんびり思っている横で、教頭は書物をペラペラと凄い勢いで読んでいる。

    「ペラッ……こ、これは!!」

    青酸カリでも舐めたような声で教頭は叫んだ。

    「こ、ここここっこっこっ校長!なんですかこれは!!」

    あへぃ……

    鬼のような形相の教頭。床に寝転び、萎れたメンマのようになっている校長。
    プルプル震える教頭に、俺はどうしたのか訊ねた。
    教頭は手に持つ書類を開き、俺に突きつけてこう言った。

    「これは、二重帳簿です。公金横領の――」

    ……はぁ?

    頭の上に「?」を浮かべる俺の耳に、「ふひっ」というララの笑い声が聞こえた気がした。




                      *



    「パパ、あれも食べたい」

    「へいへい」

    俺に肩車されつつ、ララがあれこれと指図してくる。
    指差す先は、フルーツに水飴をかけて氷魔術で凍らせた、氷菓子の出店。
    さっきはたこ焼きにソーダ水、それに焼きそばを食べた癖に、まだ腹に入るのか。
    まぁ約束だから仕方がない。俺は財布から銅貨を取り出し、店員の子に渡す。

    「ほれ。一応言っとくけど、俺の頭の上に垂らすなよ?」

    「いひっ」

    頭上で受け取ったララは、嬉しそうにペロペロと氷菓子を舐めだした。
    まったく、この食いしん坊は誰に似たんだか……。

    -------


    ――校長室でのドッタンバッタン大騒ぎから三週間ほど。

    今日は学園祭の初日。校内は色んな出店が賑わい、見物客も大勢だ。
    みんな、初めての催しに戸惑いつつも、楽しそうにしている。とりあえず、成功かな。

    この学園祭、前後二日を予定している。
    初日は完全にお祭り。近隣の住民も招いてのフェスタ。
    二日目は終業式のあと、講堂にて発表会。俺らの演劇もプログラムに入っている。
    練習は散々やってきた。あとはぶっつけ本番。楽しんでもらえると嬉しい。

    さて、学園祭――クリスマス・イベントを開けてるって事は、学校側とは折り合いがついたって事だ。……なんとかね。

    校長はどうなったか?
    その後の顛末は、言うまでもないだろう。言うけど。

    怒りに震えた教頭が、校長を床に正座させ、すべてを自供させた。
    簡単に言えば、校長はネリス・バシェラント公国の官僚らと組んで、ちまちまと大学への支援金を横領をしていたんだそうな。
    校長はカツラの購入費用の捻出、官僚共は高級キャバクラに通うための小遣い稼ぎと、どちらも人間臭く、物凄くありふれた情けない理由。

    「でも、カツラの購入費用は認められてたんじゃ――」

    「いえ、目を瞑っていただけで、本来は用途違反ですよ、そもそもね」

    優秀な魔術師だったから目こぼしされていただけで、犯罪に手を貸していたのであれば、最早それは断罪すべき事でしょう――教頭は残念そうに溜息を吐いた。

    結局、アホな官僚らは逮捕・収監。まぁ当然だわな。

    校長は魔法大学を罷免させられ、監獄行き――だったんだが、強力な魔術師なのは間違いないし、下手に放出すると他国で再就職しかねない。そしてそれは脅威にもなる。

    なので現在は公国の厳重な監視の元、国営の魔術研究室にて余生を送ることになった。
    王級魔術師としてのほとんどの権利を剥奪された上で、下働きみたいな事をさせられてるらしい。プライドはズタズタだろう。
    己のちっぽけな見栄(ハゲ)を守ろうとして、大きなものを失ったという訳だ。なんだかね。

    まぁそんなこんなで、慌ただしくも話はまとまり、俺は今日の日を迎えられた。
    学生たちも最初は困惑していたが、収穫祭だのなんだのは地元で経験している連中でもあるんで、概念を丁寧に説明したらすぐに乗り気になってくれた。
    あとは生徒会に任せて、俺は演劇の方に集中した。

    演劇の出演者は俺と、あとシルフィにロキシー、エリスの嫁トリオ。
    それから暇そうだったアレクが仲間になりたそうにこっちを見てたので誘ってみた。

    驚いたのは、アイシャが駄猫と駄犬を連れて参加を表明してきた事だった。
    こういうお祭り騒ぎはアイツ、参加したがらないと思ったんだけどね。
    どういう風の吹き回しだろうと思ってたら、「アルス君を楽しませたいから」だそうで。なんのことはない、俺とアイシャは似たもの兄妹だったってことだ。

    「パパ、パパ」

    「――ん?」

    「あい」

    俺が回想に耽っていると、頭上から木の棒を手渡された。氷菓子にぶっ刺してた奴だろう。手近なゴミ箱にポイッと捨てる。ゴミはゴミ箱に。

    「パパ、次はアレ食べたい」

    そう言って、ララがまた別の出店を指差す。まだ食べるのかよ。
    この子が言うには「報酬は一個とは限らない、よ?」だそうで。しっかりしてるよ。

    「わかったわかった。でも、家に帰ったらちゃんと歯、磨くんだぞ?」

    「うぇー」

    そんなこんなで、クリスマス・フェスタ初日は過ぎていった。



    -------



    ――そのあとの事を、ここに記しておこうと思う。

    演劇の方は大成功だった。大成功の筈だ。成功したんじゃないかな?
    まぁとりあえずそういうことにしておいてくれ。

    講堂には、在校生が大勢集まっていた。終業式の直後だったからな。
    プログラムは、滞りなく進んでいった。飲み物や食べ物の売り子も、観客席の間を回っているので、小腹が空いても大丈夫。
    音楽演奏だの、隠し芸だの。結構、学生たちも芸達者で、色んな才能があるんだなと感心。先生方からも好評で来年もやりたいと仰られていた。

    そんでもって、俺たちオルステッド・コーポ・プレゼンツの演劇上演。
    まずは舞台挨拶というか、アナウンスのお姉さんにアイシャが登場。

    「魔法大学のみんなー、元気してるかーい!? ٩( 'ω' )و」 

    から始まり、軽快なトークが始まった。アイツ、本当になんでも出来るんだな。
    ウチとご近所さんの子なんかはアイシャと顔見知りだから「アイシャさーん!」とか声援飛ばしてた。

    なんやかやとアイシャが笑いを取っていると、突然舞台袖から怪しい猫と犬が登場。まずアイシャを人質にした。それから全身タイツの戦闘員の皆さん(ルード傭兵団の若い衆)もあちこちからゾロゾロ現れ、講堂は苦笑いととどよめきに包まれた。

    そこへ満を持して現れたのは、何を隠そうルード・ロヌマー扮するこの俺!(違
    「 『フハハハハッ!!この学園は、我々が占拠した!!』 」と、どこかで聞いた事のある笑い方と声色で宣言。ここ、結構楽しかった。

    俺が『ワッハッハ』と笑うと、リニプルも『ニャッハッハ』『なの』とノリノリ。っていうかリニアはあれ、素だったな。目に付いた生意気そうな連中を片っ端から蹴り飛ばしてたし。プルセナは売り子の生徒から骨付き肉を強奪してたし。最低だな、コイツラ!!

    それからシルフィたちが現れ、冒頭のシーンに繋がるって寸法だ。
    彼女たち三人の登場で、あちこちから黄色い声が上がった。

    「キャーフィッツ様ー!」

    「エリス師傅!!オッスオッス!!」

    「ロキシーせんせー!かわいいー!」

    シンイチ=コナン……じゃない、シルフィ=フィッツって知ってる奴がまだ居たとは思わなかったけど、それくらい男装の麗人だったシルフィは人気あったって事だな。

    エリスの場合は、剣術科の特別講師として時々大学に教えに来てるから、教え子からの声援だろう。でも、エリスはアタイだけのヒーローだからね!

    ロキシーは言わずもがな、大学のアイドル教師だ。当然、ファンも大勢いる。「ちっちゃいから、小馬鹿にされてるだけなのです」と言ってたけど、満更でも無いみたいだった。

    芝居自体は普通に進んだ。
    人質を開放しろとヒロインズが魔王に詰め寄り、魔王は手下に戦わせる。
    実際に戦ったのは、アレク扮する魔人サンダクレス(役名)だけどね。だって、シルフィもエリスもロキシーも普通に強いし。戦闘員の皆さんじゃケガしちゃう。一応ケガしないように、対魔術、対物理結界とか設置してあるけど、念のため。

    アレクとエリスの闘いは見事だった。二人共、かなりガチだったな~アレ。
    でも途中からアレクの顔色が変わった。なんでかっていうと、エリスの奴、本身の剣使ってたんだよ。普通に「凰牙龍剣」を振り回してやがったんだ。

    これが普通の真剣だったら、アレクはなんてことなかったんだろう。不死魔族だし、斬られた端から治っちゃう訳だし。そもそも対物理結界あるし。
    ところがどっこい、エリスの「凰牙龍剣」は特別製で、その隠し機能は「どんな強固な闘気も結界も斬り割いて、相手の本質にダメージを与える」なのだ。その切れ味たるや、オルステッドの龍聖闘気すら斬り割いた事もある。

    一度エリスに片腕を斬り落とされた事のあるアレクは、割とそれがトラウマらしい。「エリス様はどうにも苦手です」と俺にこっそり言ってきた事もあったしな。そういえばゼニスの記憶でも、エリスから逃げるオルステッドの逸話があったっけ。エリスは流石だった。

    さすがに絵ヅラとして、出血はアレだったので、ほどほどのところでアレクには退場してもらった。エリスは不完全燃焼みたいな顔してたけど、あのままだと手足の一本や二本は飛んでた可能性があったしな。

    そのあとは雰囲気を変えて、シルフィとロキシーに、リニプルを退治してもらった。
    ついでにあのコンビの着ていた女幹部服がビリビリに破けるアクシデントが起きたが、男子生徒がハッスルしていたので良しとした(あとでリニプルに特別ボーナス払ったけどな!)。

    そしてなんだかんだと三人の魔法少女は魔王を打ち倒し、魔法大学を開放して大団円。鳴り止まぬ拍手と声援。カーテンコールの時、俺はやりきった絶頂感に包まれていた。

    ……ルーシーの、覚めた顔を見るまでは。

    『……恥ずかしかった。友達からも、クスクス笑われてた気がする』

    あれ以来、俺はルーシーから避けられている。
    おはようの挨拶も素っ気ないし、目は逸らされるし、お風呂も一緒に入ってくれない。
    なんでや!パパは頑張ったのに!娘に喜んでもらいたくて頑張ったんや!!

    って嘆いてたら、ララから言われてしまったよ。

    「……パパは、ズレてるんだよ。普通にすればいいのに」

    って……。

    アルスとジークからは「パパ!凄く面白かった!」と大好評だったんだけど、一体、俺の何がダメだったんだろうか……。
    パウロ……俺も、まだまだ父親としては、未熟者みたいです……。グスン。






    こうして、俺の悲しい聖夜祭は過ぎていったのでした。ホーホケキョ。









    ====================================================

    この物語はフィクションであり、二次創作です。
    無職転生にクリスマスはありません。













    なんちゃって。








                       ~fin~







    ※題名詐欺だぜ!!
    その後、実績のあるジーナス教頭は校長に繰り上がり、ロキシーは教務主任になったとさ。


    それでは、また。(店`ω´)ノシ





    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。