無職転生 二次創作「偽典:無職転生 Fake/the outer mission」後編「破ァァッ!」
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

無職転生 二次創作「偽典:無職転生 Fake/the outer mission」後編「破ァァッ!」

2019-03-14 18:47



                 ~前回までのあらすじ~



    鬼神帝国軍の謎の侵攻停止より数か月。
    暫しの安寧に浸っていたアスラ王国に、再びその侵略の魔の手が伸びようとしていた。
    国境付近にて駐屯していた王国軍が、帝国によって突然殲滅されたのだ。
    迎撃のため出陣したルーデウスとエリス、そしてアスラ王国民3000の決死隊。

    王都より数日の行軍。たどり着いたそこは、広大なるフィットア平原。
    さらに偵察に出た二人が目撃したのは、三万を超える鬼神帝国の大軍勢だった。
    自軍の十倍以上の兵数を前に、しかし怯まないルーデウスとエリス。

    魔法騎士より貸与された装備に身を包み、ルーデウスは決戦に臨む。
    頼りない自軍を背に、彼は帝国軍に向けて魔術を放った。

    それはかつて最も得意とした魔術――『泥沼』であった。





    ====================================================





    「――はぁ」


    男は本日、何十度目かの溜息を吐いた。
    祖国が鬼神帝国より屈辱の併合を強いられてよりはや数年。
    以来、何度吐いたか知れない重い溜息だった。

    男はかつて魔法三大国と呼ばれたうちの一つ、バシェラント公国の武官だった者だ。
    剣も魔術もそこそこ使え、それが故に奴隷兵士となった今も生き残れている。
    それが幸運なのか不運なのか、今も男にはわからないままだったが。


    鬼神帝国は併呑した国の人民を尖兵として徴収し、それらを使い潰してきた。
    奴隷兵士となった彼らは人形のように、唯々諾々と命令に従っていた。
    また、そうするしか出来なかった。出来ない理由があった。
    逆らえば家族を、友を、親類を、自らにつながる尽くが誅されてしまうからだ。

    さらには先祖代々の墓すらも暴き、系図すらも灰にするという徹底ぶりである。
    風の噂で、街一つの住人の尽くを虐殺したとも耳にした。
    そんなふうに、自分一人の命だけならともかく、己の生きていた証すらも消滅させられる恐怖というのは、余人には計り知れないものだろう。

    それだけでなく、板や柱に女子供を括り付け、戦場での肉盾として用いられもした。
    この処置には誰もが心を折られてしまった。
    己が母や姉妹、妻に娘を目の前で嬲り殺されてなお、反骨を貫ける者は皆無であろう。

    いったいどうすればここまで人を憎めるというのだろうか。
    男には理解が出来ない。出来ようが無い。
    ただ、その悪鬼外道のごとき所業に戦慄するのみだった。

    とはいえ、人が鬼神帝国に従うのはなにも恐怖政治の為ばかりではなかった。
    懲罰ばかりでは、人は従わない。当然の理屈である。
    人も動物も、抑え込むばかりでは必ずや不満を持ち、それらは叛意へと成長していく。
    窮鼠猫を噛む。イタチの最後っ屁。窮余の策。苦し紛れの抵抗。
    どうせ先が無いのであれば、諸共に砕け散ろうとするのは生物として自明の理である。
    だがそこは鬼神帝国。そこは周到にして悪辣であった。

    帝国は隷属側の国民を弾圧する一方で、言葉巧みに思考を誘導していった。
    ある意味、鞭に対する飴である。それは、微量の毒入りではあるものの――。

    "忠誠を誓いたくなければ誓わずともよい。その代わり、近隣を互いに監視せよ"

    人間とは弱く、脆いものである。
    たったそれだけの言葉で、国民達は互いを疑心暗鬼の目で見るようになった。
    もし叛意ありと見なされれば、或いはそういった活動をした者は罰を受けるだろう。
    そしてそれを注進した者は、多少なりとも恩賞に預かれる筈――そういった視線だ。

    北方地方の隷属国家群の国民達は、鬼神帝国の国民の下位に位置付けられている。
    帝国民は一等国民であり、忠誠を誓った者は二等国民。
    二等国民は徴兵義務も緩和、生活水準も旧に復すのを許されていた。
    そして三等国民。当然ながら、彼らへの扱いは苛烈であった。

    三等国民の生活は困窮を極めた。食料などは配給制であり、流通は滞ったまま。
    働き盛りの男たちは皆、戦奴として徴収されてしまい、残るは女子供と老人ばかり。
    その女子供すら、戦場へと駆り立てられてしまうのだ。
    真綿で首を絞めるがごとく、じわりじわりと削がれていく気力。
    併合初期こそ、帝国なにするものぞという気概があった者でも、徐々に疲弊していく。
    お互いを監視しあい、誰が出し抜き出し抜かれるのか戦々恐々とする日々。

    また、略奪や暴行こそないものの、人の差別意識というものは恐ろしいもので、大人にそれがあるのであれば子供同士にすら特権意識というものは生まれていく。
    自分よりもあいつらは下だと思えば、どこまでも残虐になるのは人の性。
    つい少し前までは同じであった目線が、まるで天と地ほどにも乖離してしまうのだ。

    最終的に、地域の管理者が住民からの突き上げを喰らい、街ごと服従するようになっていくのは当然の帰結と言えた。

    そうして自らの意思で頭を垂れ、服従を誓った者への帝国側の対応はといえば――。
    一人一人を力強く抱きしめ、涙を浮かべての激励であった。

    『よくぞ、よくぞ決意した。我らはそなたらの苦渋の決断を受け入れよう!』

    これからの我々は同胞であり、志を同じにした家族である――そう言うのだ。
    その場にいた誰しもが嗚咽を漏らし、涙するのも無理からぬ事だろう。
    最底辺から一転、温かな言葉で迎え入れられたのだから。

    これは実のところ、よくある洗脳術の一端である。
    人は弱い。苦しみを吐露した者へ優しい言葉をかけると簡単に堕ちてしまうように。
    帝国は国家ぐるみでそれを施政の手法として用いていたのだ。

    そんな馬鹿なと人は思うかもしれない。
    だがしかし、渇した状態のそこに、天上から甘い蜜が滴ってきたらどうであろうか。
    誰しもがその蜜を舐め、天上へと手を伸ばすに違いないだろう。
    そうして下ったものは、蜜をもたらす者へと盲目的に従うのである。
    この手練手管、まさに邪神の知謀かと噂されることとなるが、それはまた後の話である。

    そうして男の周囲は、いや、故国の民達は帝国の施政にようやく慣れ始めていた。
    人はぬるま湯に浸り続けていると、かえってそこから抜け出せなくなる。
    傷つきつつ抗うよりも、頭を垂れて従う方が楽であると思うように。
    帝国は飴と鞭を上手く使い分け、奴隷兵士を使役してその版図を着々と広げていった。

    それにしても――男はふと思う。何故、己が祖国は併合されたのかと。

    ラノア、ネリス、そしてバシェラントは帝国に飲み込まれた。それは事実である。
    確かに帝国の軍勢は恐るべきものであった。
    しかし、魔法三大国の総戦力は世界有数と謡われていた。
    比肩するのは、全盛期のアスラ王国のみであるとも。
    いざ戦いとなれば、勝てはしなくとも、ただでは負けない自負もあった。

    そう――戦えば、の話だ。

    現実には、三大公国はろくに戦わないうちに降伏勧告を受け入れてしまった。
    そして気が付けば、不平等な条約で帝国の傘下になっていたのだ。

    男は平凡な一武官である。国の中枢の思惑までは知る由もない。
    しかしそれでも、三大公国の併呑はあからさまに速過ぎた。

    (まるで、自らの意思で帝国に頭を垂れたかのような……)

    これでいいのだと、薄気味悪い微笑みを浮かべた政府高官の面々を思い出す。
    あの連中は、まるで洗脳されたか買収されたかのように満足そうだった。

    (――洗脳?いや、しかしそんな機会は無かった筈。……では?)

    男は首を振る。
    自分は所詮は下士官である。国の上層部の思惑などには関係ない。
    そうやって今まで生きてきた。心を殺し、ただ戦うだけの道具として――。

    そしてまた、今日この日、この場に、戦うだけの道具として誘われてきた。
    自分と同様に、虐げられるだけの存在を蹂躙する道具として。

    「はぁ――」

    だが、男は今日も溜息を吐く。
    戦に駆り出されるのは、既に割り切っている筈なのに。
    それでも未だ、胸に澱む何かを吐き出す毎日。

    男は天涯孤独の身の上だ。質に取られるような煩わしい係累は無い。
    だから他の武官のように、立身と身の安寧の為に土下座でもなんでもすればよかった筈。
    しかし男は何故かそれを潔しよしとしなかった。
    とりたてて故国に愛着があるでもなし、知人の視線が気になるでもなし。
    だがしかし、なけなしの矜持というものが邪魔をしていた。
    今の自分というものを培った数十年の年月が、帝国への反骨を支えていた。

    幼いといえば幼い衝動かもしれない。
    他の連中の様に、上手く立ち回れば楽に生きられるかもしれない。
    そうはいっても、気に入らないものは気に入らない。
    かといって、自分には現状を塗り替えられるような素質も才能も無かった。
    能力も足らず、気概も無く、ただ憤懣を腹に溜め込むだけの生ける屍のごときモノ。

    だからこそ、男は今日も溜息を吐く。
    いつ終わるとも知れないこの覇業に加担する者として、少しばかりの嫌悪と罪悪感を込めて。

    「……ん?」

    それは、ほんの少しの違和感。
    いつもと変りない今日であったが、この日ばかりは何かが違った。
    じわりと――。
    足元に、些細な変化を感じたのだ。

    (……まさかな)

    魔術師でもあり、武官である男の感覚からすれば無視できないほどの違和感。
    しかし奴隷兵士としての男からすれば「どうでもいい」変化。
    だから男は「それ」から目を逸らした。

    どうせ何をしても変わらない。
    俺が何をしようが、今日も、明日も、明後日も――。

    ――もし。

    もし、男がもう少し用心深く感覚を広げていれば。
    感知し切れぬ程に、果てしないとさえ言える領域に「それ」を感じただろう。

    「それ」を察知したのは、男の他にどれほどいただろうか。
    いたとしても、恐らくは何も変わらなかっただろう。
    それほどに、「それ」は些細であり、あまりにも速過ぎた。


    そして、男の腰から下はずるりと大地に沈み込んだ――。





    -------





    「――『泥沼』」



    俺は最も慣れ親しんだ魔術を行使した。
    そりゃもう、かるーい気持ちで。

    掌から放たれる魔力は、俺の魔力総量からすれば微々たるもの。
    しかして、眼前に起こった事象をと見れば――世にも稀な大災害といえるものだった。

    ……えー、マジかよ

    その魔術を放った俺自身が目を疑った。
    いま、目の前に広がる光景は、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。
    泥んこパンツレスリングとかそんなチャチなもんじゃぁ 断じてない。

    北方各国から集められた捕虜兵士、総勢およそ二万。あと馬とか荷車とか。
    そのほぼすべてが、俺の放った魔術によって生まれた泥の海で溺れていたのだ。
    二万人でしょ、それらが駐留する場所でしょ。地平の果てまでって感じなのね?
    そんで地平の果てまで泥沼地帯になった訳でさ。やっべえ、環境破壊で訴えられそう。

    いやね?そりゃ、昔から全力で魔術を使ったら凄い事になるとは思ってたさ。
    『溶岩(マグマガッシュ)』で街一つ壊滅させるとかね。
    そういや魔王バーディガーディに撃った『岩砲弾』は割とガチだったっけか。
    でもさぁ、たしか中級魔術だよね、『泥沼』ってばさ。

    「……うわぁ」

    自分でドン引きだよ。どこが中級魔術なのよ。
    え、なに?俺って惑星規模の災厄認定?ディザスター級?
    放送禁止存在じゃんコレ。うーむ……。



    -------



    ちなみに、俺が引き起こしたこの広大な『泥沼』なんだが。
                 バミューダ・オブ・ルード・ロヌマー
    この『泥沼』は後に、「ルード・ロヌマーの大腐海」と命名されることになった
    なにしろ範囲が半端ない。ちょっとした街ひとつが沈む広さだもんね。
    ……いやホント、すいませんでした(汗)。


    ――ちなみに。
    戦後、この一帯にかけられた術式は数十年を経ても解呪されず、ずっと放置された。
    理由は当然、ある。
    アスラ王国からすれば、ここは敵の侵攻を阻む要害の地となる。
    故にわざわざ膨大な労力を使ってまで俺の『泥沼』を上書きする意味は無い。
    敵さんだって、進軍中に自陣の魔術師の魔力を枯渇させてまで解呪したりしないだろう。
    自慢じゃないが、聖級魔術師の二人や三人でどうにかできる範囲じゃないしな。へへっ!


    ……っていうか、それだけじゃなく。
    肥沃な大地が沼地に変わった事で、魔獣や巨蟲の棲家になっちまったんだよな。
    更に言えば、そいつらにくっついていた胞子が発芽し、妙ちくりんな草木が生えたりして、辺りの様相は一変してしまった。クレソンやら生きたザリガニを他の土地に輸送しちゃいけない理由……この目で見たって感じでした。いやマジで腐海だよ、ここ。

    ――敵味方、両陣営からすれば、予期せずして生まれた呪われた魔境。
    その所業、古来より伝え聞く魔王の如し――って事で名付けられた訳で。
    まぁ、まんま俺の名前を付けられるのも面倒なんで、自分で偽名を広めた訳なんだがな。


    ……閑話休題。



    -------



    「凄い……。やっぱり、ルーデウスは凄い……」

    横からそんな呟きが聞こえてきた。エリスだ。
    彼女は茫然と、いや陶然と、目の前の大惨事を眺めていた。
    頬は興奮で上気し、しっとりと濡れている。
    いやエリスさん、大惨事を前に、それはちょっと人として危ないんじゃ。
    俺がそう思いつつソワソワしていると、当のエリスが感慨深そうに頷いた。

    「ギレーヌが言ってたとおりね。離れた位置からなら自分でも勝てないって……」

    へ、へぇ?あの鬼のように強い剣王ギレーヌがそんなこと言ってたのか。

    …………。

    やべぇ、嬉しくてちょっと口元が猿みたいになってるかもしれんね。うぇひひ。

    「こうなったら、私も負けてれないわね!」

    こちらを振り向いたエリスが、決然とした表情でそう言い放つ。
    俺は「お、おう」とだけ答えた。
    ニッと、不敵な微笑みを浮かべたエリス。すごく、格好いいです……。

    「じゃ、行ってくるわ!!」と言い、エリスは石剣を担いで敵陣左翼に爆進していった。
    うわぁ……すっげー勢い。なんか向こうの方で大爆発が起きてるし。
    うぉオン!俺のエリスはまるで人間魚雷だ!!

    「ん~、それじゃ、俺も行くとしますか」

    まずは屈伸、そして伸脚。ラジオ体操第二。ひっひっふー。
    軽くジャンプ。うん、痛い所もきしむ所も無い。若いっていいね(実感)。



    「そんじゃま、行きますか!」



      ブート・オン
    "『起動開始』"――戦闘用動甲冑を起動して、俺は走り出した。


    目指すは敵陣右翼。総数、およそ五千。
    皇国の興廃ここに在り――そんな言葉が脳裏によぎる。



    「う……うぉおおおおぁああああああああっ!!!!」



    全力疾走――全身に万能感が漲る。

    目の前には物々しい装備をし、両目を栄達でギラつかせた兵士の群れ、群れ、群れ。

    そんな飢えたピラニアの群れの中に飛び込むという蛮勇。恐怖と興奮のない混ぜ。
    意味不明な昂ぶりからか、我知らず、喉から雄叫びが迸っていた。

    俺は自分をそこまでバトル脳とは思ってなかった――今、この時までは。

    だが強化装備に身を包み、全能感に酔いしれた今、雑魚を蹂躙するのも面白いかもしれない。
    ……なーんて、思ってしまったのも事実だった。
         ウォーフレイム
    身に纏う戦闘用動甲冑は、装着者の肉体能力を聖級剣士並みに引き上げる。
    13歳くらいの少年の肉体年齢の俺でさえ、今は暴走するシベリア超特急のごとし。

    っていうか、すっげー身体の調子、いいんだが!?
    なんでだ?腰も膝もヌルッヌル動く!これが若さか!!(cv:池田秀一)
    フハーハハ!さすがショタデウスの肉体だよ~!絶好調であるッ!!

    あ、そっか。ずっとジジィだったから、その感覚が染みついてたんだな。
    こっちに召喚されてからというもの、こんな全力で走ったこと無かったし。
    うわー!龍玉で若返った緑色の大魔王の気持ちが、今になって実感できた!!
    はっはっはっは!!!!これだ!このあふれるパワー感だっ!!!
    戻ったぞ!!!若返ったのだー!!!!

    ……などと供述しており。
    いやいや、俺としたことが、ちょっと舞い上がっちまってるみたいだな。
    ま、今はこの高揚感に酔いしれたまま突っ走った方がいいのかもしれない。
    戦いとは酔うものだと、前田慶次も言ってたしな。言ってたっけ?
    ……まぁいい。




    さて――カーニバルを、始めようか!!




    -------





    ボカーン!



    アニメ的にいえば、その絵面はまさにそんな感じだったろう。
    身構えた物々しい軍勢の中に弾丸のように突っ込む。
    ただそれだけで、武装した騎士や戦士たちが木っ端のごとく、まとめて吹っ飛んだんだから。

    無論、俺も動甲冑を身に纏ってたとはいえ、なんの仕込みも無しに突進した訳じゃない。
    風魔術にて、自身の前方にX状の激しい気流を生み出し、それを纏っていたのだ。
    下から上に巻き込むような突風、つまり逆バギク〇ロス。伏字になってない。

    今の俺は時速120㌔のコンバイン。
    ……ごめん、コンバインを操作した事も無いし触った事もないんだ。
    ブルドーザーとかショベルカーとかのが正しかったかもしれんね?

    まぁなんだ、突っ走ってるだけで人が空に吹っ飛ぶ暴走マシーンって思ってくれ。
    後方に『爆風』を噴出して速度を爆進させ、前方のX状の気流によって人を吹き飛ばす。
    さらには俺の周囲に酸素を集約させ、少年の未完成な心肺機能の底上げをする。
    いやぁ、今になって幼少時に練習してた、大気成分の分別法が役に立つとはね。
    完璧だよォこの作戦はァーッ!


    (クックック……フハァーッハッハッハッ!!)


    見ろ!!人がゴミのようだ!!

    鎧に身を包んだ野郎共が、驚愕の表情を浮かべて次々と吹き飛んでいく!!
    ……いやすいません。怪我はするだろうけど、死にはしないと思います。
    でもさー、栄達目当てで参戦してるんだし、ま、多少はね?

    約五千人の兵士達の群れに俺はジグザグに疾走し、手あたり次第刈り取っていく。
    敵陣営の魔術師が魔術を使おうとすれば、『乱魔』でそれを掻き乱し。
    練達の剣士っぽいのが斬りかかってくれば、大ジャンプからの連続土砲弾でぶっ飛ばす。
    騎馬軍団で襲いくれば『土針鼠』を広域展開して、堅牢な陣形を木っ端微塵にしてやった。
    気分は某無双ゲームの関羽か忠勝って感じ。脳内cv:は明夫だ!

    どかーん、ばこーん!今日もどったんばったん大騒ぎ!

    ……なーんて、な。
    このまま体力の続くまで帝国軍をぶっ飛ばせれば楽な仕事、だよなー。
    しかし世の中そうはイカキン。イカの金玉。……イカの金玉ってなんなんだぜ?
    それはまぁ、置いておいて。

    今回の俺の仕事は、実のところ侵攻してくる帝国軍の殲滅では無かったりする。
    魔法騎士から依頼された事はいくつかある。
    そのうちの一つがズバリ、「やり過ぎない事」。
    そして、アスラ王国軍が自力で作戦遂行を成し遂げられるように先導する事。
    先ほどの『泥沼』でもわかるように、俺がちょっと本気を出せば、三万や五万の軍勢なんてあっという間に蹴散らせるだろう。あっという間は言い過ぎかもしれんけど。

    「だが――ね」

    そう、だがしかし、なのだ。
    俺が片付けてしまうのは簡単である。だが、それではダメなんだ。
    召喚された救世主だか勇者がそれやっちまうと、二度とアスラの民は自力で動けなくなる。
    困難を誰かが取り除いてしまうと、それが癖になるからな。うん。

    萎え切ったアスラ王国を奮い立たせ、自らの脚で歩かせる。
    それが今回の迎撃戦の主眼であり、最大の目的。
    だからこそ、俺はやり過ぎてはならないのだ。

    ――ってな訳で。
    俺の役目はズバリ、陽動。
    中央の奴隷軍の足止めをした後、左翼、或いは右翼を撹乱し、この大軍を率いる将軍なり副将軍なりの高級将校を炙り出し、ふん捕まえて人質にする。
    そして、それを以て帝国軍との交渉の材料にする――それが魔法騎士の描いた作戦だった。

    勿論、将校の一人や二人を取引材料にして、帝国と和平が出来るとは彼女も思っていない。
    必要なのは、アスラ王国の民に成功体験をもたらすこと。
    たとえ救世主の助力があったとはいえ、自力で敵軍を打ち破った経験は、負け続きの自国民や兵士たちに大いなる達成感をもたらし、次へと繋がる希望になるのだという。

    なんとなく、奴の言わんとする事は理解できる。
    魔法騎士は多分、目先の勝利は求めていないのかもしれない。
    きっと、これからの人材を育成し、若人たちがいつの日か、自分たちの意思で道を切り拓いていくべきなのだと、そう言いたいんだろう。
    俺がそう合点して言うと、魔法騎士は舌打ちをして顔を歪めた。

    「馬鹿め。今回のような大召喚は、滅多に成功するものではない」

    今回は勇者が助けてくれた。じゃぁ次も強い英雄を召喚して助けてもらおう。
    神風が吹けば、次もその次も、きっと神のご加護がある筈だ――などと。
    そんな甘い考えで生き延びられるほど、今の時代は甘くないと、彼女は吐き捨てた。

    「アタシはただ、今ある手札の中で、より確実な方を選択しているだけだ」

    ならば、救世主殿の大魔術を広範囲に放ってもらえば一番確実ではないのか、と同じ卓についていた士官の一人が提案した。俺がホイホイ山をこさえたり谷を掘ったりしてるのを見ていたら、誰もがそう思うだろう。俺だってそう思う。
    それに対する魔法騎士の答えが「このフヌケにそれが出来れば苦労はしない」でした。
    うーむ、すっかり見抜かれてる。

    そうなんだよなー。いくらなんでも、人間相手に殺傷力の高い魔術を使いたくはない。
    何度生まれ変わっても、俺の根っこは変わらないし、変わったら終わりだと思う。
    俺は「あの老人」のようにはなりたくない。なっちゃいけない。

    -------

    てーことで、俺はとにかく敵軍をひっかき回し、味方の行動をしやすくするのみ。
    幸いにも、戦闘用動甲冑のおかげで身体能力は聖級剣士並み。
    完全な搭乗兵器であった魔道鎧に比べて、自力で動かなくてはならないマイナス点はあるものの、そこは風魔術を運用することでカバーしている。

    見よ!蝶のように舞い、蜂のように刺すがごときこの華麗なるフットワークを!
    俺の場合、攻撃力はカンストしているから、機動力の問題さえクリアすればいいのだ。

    左翼側はエリスが大暴れをしている筈。あっちはあっちで安心して任せられる。
    さぁ、あとは別行動をとっている隊長さんたちが上手くやってくれれば――。

    などと考えていたが、世の中そうは上手くいかないのが常である。
    戦場を突っ走る俺の前に、屈強そうな野武士然としたオッサンが立ちはだかった。
    背丈はそれほどでもないが、ガッチリとした体躯。
    太い腕に短いが逞しい両脚。首などは女の腿ほども太い。
    容貌は一言で言ってワイルド。歯並びは獰猛だし、眉毛も繋がってる。

    「グワーハハハッ!我こそは北神カールマンが直弟子『孔雀剣のオーベール』!

     ……の三番弟子のロドリゲス!!

     ――さんの家の隣に住んでいたこともあるドドリゲス!いざ尋常に勝負!!」

    ……いや、普通に他人だろ、それ。
    なんだか面倒くさそうなオッサンだったので、適当な威力の『土砲弾』を放ってみた。
    こいつは初級の土魔術ではあるが、俺が精製した魔術だ。威力は推して知るべし。
    泥の塊が勢いよくオッサンに向けてカッ飛んでいく――が、

    「ぬぇいッ!!」

    パッカーン!と、俺の『土砲弾』はオッサンの剣によってまっぷたつにされてしまった。
    ぬぅ、このドドリゲス、パチモン臭い割に中々やりおる……!?

    「グワーハッハッハ!小僧!こんなチャチな泥団子で我を倒せると思うてか!!」

    剣を振り上げ、歌舞伎役者のような大見えを切るドドリゲス(オッサン)。
    大仰でアホっぽいが、実力はそれなりにあるようだった。
    刀身に付着した泥をブンッと払うや、オッサンは突進してきた。割と速い。

    「ハッ!フンッ!ホホゥッ!!うりゃうりゃうりゃうりゃ~!!」

    オッサンの攻撃は中々鋭く、また多彩だった。
    剣で斬りつけるかと思えば、足で蹴ってきたり、唾を飛ばしてきたり(キチャナイ)。
    目まぐるしく矢継ぎ早に攻撃を繰り出してくる。
    しかしそれにしてもうるさい。誰かに似ている。イラッ!!

    「グハハハハッ!!幼い割に鍛錬をつんでいるようだが、まだまだ甘い!!」

    オッサンが言うように、俺は龍神流の受け流しを使って防戦一方。
    実際、思ってた以上にこのオッサンは強いと思う。
    三大流派じゃなさそうだけど、上級、あるいは聖級剣士レベルかもしれない。

    「むほぉッ!隙ありーッ!超破裏剣流・百裂羅刹斬ッ!!」

    オッサンはそう叫ぶや「おぁ~たたたたたぁッ!」と凄まじい連撃を仕掛けてきた。
    俺は予見眼で少し先の未来を見る。
    ……おぉう。こいつぁすげぇ。
    視界全体を、オッサンの連続斬撃が埋め尽くしてはる。嫌やわぁ……。

    (――はてさて実際、どうするか)

    このまま受けに回れば、どこかでミスをして、致命的な致命傷を受ける可能性もある。
    あーもう、なんだってこんな半端に強いキャラが出てくるかなー。
    しかも倒したところで何も得られない系。ダースドラゴン的な。

    などと思っていると、予見眼に少し先のビジョンが映る。

    <オッサンが剣を上段に振りかぶり、殺到してくる>

    あー、はいはい。
    それで俺の頭をカチ割る気なのね。いたいけな少年に対して、なんて酷い!!
    俺はそれに合わせてカウンターの『爆風』を放射する。波ッ!!

    「グワッ!?」

    あの構え、つまり両掌から衝撃波が放たれる。
    正面からまともに喰らうオッサン。
    しかしオッサンは踏みとどまり、なおも俺に突進してくる。無駄にタフ過ぎィ!!
    とはいえ、勢いの削がれた大雑把な斬撃を華麗なバックステッポゥによって躱し、俺はいったん距離を取った。

    うーむ、弱めの魔術じゃこのタフガイは止まらないか?
    俺が思案する間にも、オッサンはドドドドッと詰め寄って来る。
    ちっしゃーねーな。ちょっと威力が強いかもだが『電撃』で痺れさすか。

    「『電撃』ッ!!」

    突き出した右手から眩い電光が迸る。
    ジグザグの稲光はドドリゲスに突き刺さるや、激しくスパークする。

    「グワワワワワワワッ!?」

    青白い放電に包まれ、オッサンは苦痛の叫びを上げつつ痙攣した。
    閃光が収まるや、どさりと倒れ伏す。
    おぅ、身体のあちこちからブスブスと煙が吹きあがってて痛々しい。

    「む、ぁ……」

    一瞬、殺っちまったかな?と思ったけど、そんなことは無かったぜ。
    オッサンはむくりと起き上がるや「ブハーッ」と口から煙を吐き出した。

    「ゲーッホゲホゲホッ!!……ぬぅ、やるな小僧。しばらく煙草はいらんなッ!!」

    いやー、どんだけ頑丈なんだよ。
    こ〇亀の両さん並みのタフさだけど、さすがにウンザリしてきた。
    アフロになった頭のまま、襲い掛かってくるオッサン。
    少し先の未来には、相変わらず凄まじい斬撃が映る。

    (……ま、いっか)
                   キーワード
    俺はぺろっと唇を舐め、とある『合言葉』を口にした。





    ドンッ!!





    凄まじい爆音。
    そして次の瞬間、オッサンは俺の前にひれ伏していた。
    あ……ありのまま、今起こったことを話すぜ!

    『オッサンが襲い掛かってきたら、オッサンが倒れていた』

    な……何を言っているかわからねーと思うが、俺も何をしたかわからなかった。
    いや、何をしたかっつーと、なんかしたんだけどな。確信犯だぜ。

    「ゴフッ……お、おのれぇ」

    オッサンが恨みがましく呻いている。いや、知らんがな。
    ゴスンッ!!
    中年戦士の頭を踏みつけてトドメを刺す。いや気絶させただけだけど。
    いや~このオッサン、結構強かった。
    やっぱり、なんだかんだと世の中は広い。油断大敵 屁の用心。
    幼い頃に、パウロにボコられたのがいい教訓になっている。サンキューパウロ。

    「ふぅ~。さてっと……」

    強敵は倒した。それではまた仕事に戻ろうかと思ったその時――。



    「……ぁぁぁぁぁあああああああああははははははははははッ!!!




    甲高い哄笑を放ちつつ、それは遥か上空から降ってきた。
    凄まじい大質量のそれは、俺の目の前数メートル先に着弾した。
    全身が痺れる程の爆音と衝撃。耳をふさいでも無駄な程だった。
    夥しい量の土埃が舞い上がる。
    濛々とした砂煙のその中から、そいつは姿を現した。

    ずしん。
    なんの変哲もない一歩に、そんな擬音がついていた。

    そいつの容貌――。
    まず、デカい。説明不要。
    身の丈は二メートル半ほど。いやそれ以上。
    全身、筋骨隆々。
    後頭部で雑に纏めた、砂色の長い蓬髪に赤銅色の肌。
    額から生える、頑丈そうな一対の角。




    「……みぃ~つけたぁ」




    心底嬉しそうに嗤う口元からは、二本の長い牙が。
    爛々と光る双眸は俺をひたと見据えている。

    あぁ、こいつは――。        フォルム
    いつかどこかで見たことのある圧倒的な形態。
    暴力的で威圧的。怪異にして魁夷な存在感。
    我知らず、俺の口はそいつを形容する言葉を漏らす。



    「き、鬼神――」



    そいつはそれを聞いて、凄絶な笑みを浮かべる。


    「あぁ、そうさ」


    そう呟き、親指で自身を指さす。





    「あてぇが『鬼神』トモエ様だ……ッ!!」












                -後編「急」につづきますー





    それでは、また。(店`ω´)ノシ













    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    えー、作品内で「ん?これ原作であったっけ?」的な内容は、二次小説用に創作したネタですので、そこらへんはよろしくご了承&噛み砕いてくだされば幸いです。
    よろしくお願いいたします。






    ※麿の二次創作とは、あまねくゲ〇のようなものである!!←




    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。