無職転生 二次創作「偽典:無職転生 Fake/the outer mission」後編 「(´・ω・`)きゅう!?」※2020年1/1加筆
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無職転生 二次創作「偽典:無職転生 Fake/the outer mission」後編 「(´・ω・`)きゅう!?」※2020年1/1加筆

2019-12-20 21:37



    ・これは無職転生の二次創作小説です。

    ・原作最終話まで読んでない方には超ネタバレがありますのでご注意。

    ・原作に出ていない二次キャラ描写があります。苦手な方はごめんなさい。

    ・二次創作自体が苦手な方も回れインド人を右にでお願いします。



    ※あらすじ

    74年の生涯を幸せに終えたルーデウス。
    ふと気が付けば、彼は見知らぬ場所に召喚されていた。少年の頃の姿で。
    おまけに20歳頃のエリスも一緒に。
    二人は勃興した鬼神帝国に攻められるアスラ王国を救うべく召喚された存在。
    それから数か月後、ルーデウスとエリスは帝国との合戦の地に赴いた。
    そこに現れたのは、鬼神トモエと名乗る巨体の女鬼族だった――。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






    「鬼神……トモエ?」


    聞き覚えのないその名前と語感に、俺は眉をひそめた。
    鬼神、といえばマルタ。
    俺の中ではそれが一番強烈な印象であり、事実となっている。
    再度、目の前にそびえ立つ巨女をまじまじと見る。


    まるで、夏の青空に立ち上る入道雲のような、圧倒的に巨大な体躯。
    総身、はち切れんばかりに発達し、モリモリと隆起した筋肉。
    まさに、これぞ鬼と言わんばかりの魁偉で怪異なその容貌。


    たーしかに、その圧倒的な存在感は、俺の記憶に残るあの巨漢のそれと相違は無い。
    ただちょっと、胸の辺りが豊満なのと、キツ目の美女顔ってのが違う点ではある。


    しかし、鬼神……トモエだぁ?
    生前では見た事も聞いた事も無い。
    鬼ヶ島には何度か訪問した事もあるが、こんな鬼女はいなかった筈だ。


    ……それにしても、鬼神……鬼神、ねぇ?
    薄らぼんやりとした記憶を思い返す。
                    
                               タフネス     パワー
    ――本気を出せば、七大列強下位にも食い込める程の強靭な耐久力と金剛力。

    ――しかして実際は、戦うのを好まない穏やかで優しい気質。

    ――会話をすれば、厳つい見た目とは裏腹に、理知的で理性的な性格。

    ――徒に弱者を傷つける事を好まず、友誼を結べば命を捨ててでもそれを守ろうとする――。


    それが、俺の知っている鬼神マルタだ。
    目の前に傲然と構える、好戦的かつ狂暴な雰囲気の人物では無い。

    だからこそ、迂闊にも。ついポロッと。

    「……誰?」と、俺は呟いてしまった。

    それが気に食わなかったのか、目の前にそびえたつ筋肉の塊はギリッと歯ぎしりをする。


    「チッ……糞が……!!」


    舌打ちをし、訛りの強い魔神語でそう吐き捨てた。
    相当に気分を害したのだろう。巨体の割に美しく整ったその容貌が醜く歪んだ。



    「あぁそうさ!!」


    「鬼神といえば、あてぇの親父のマルタだ!!」



    「親父は強かった!!」


    「誰よりも!!あてぇよりもな!!」




    巨女は憎々しげに喉を鳴らし、天よ裂けろとばかりの大音声を上げた。                                       かお
    ギリギリと歯ぎしりをする。歯茎を剥きだしにしたその顔は鬼の貌そのもの。
    そして右手で持っていた重そうな金棒を突然地面に叩きつける。ドゴーン。



    「だがッ!!」


    巨女はまたも叫んだ。俺を指さして。



    「鬼神といえばトモエッ!!」


    「これからの時代はそうなるッ!」



    「いずれはあてぇが七大列強にッ!!」




    「いや、地上最強になってやるッ!!!」





    「魔神だ?龍神だァ?」


    「全員、あてぇがブッ殺してやんよッ!!」





    そう叫び、巨女――トモエは持っていた金棒を再び地面に叩きつけた。
    凄まじい衝撃と共に、大地が裂けて弾ける。
    それは恐るべき気迫であり、ある種、幼いとさえ言える行為。
    でも、本人は真面目なんだろうな。眼がマジだったし。すんごい血走ってるよ。

    とはいえ、その揺るぎない決意の固さは大したもんだとは思う。
    強者として生まれたからには、一度は最強を夢見るもんだもんな。うん。


    「う~ん……ん?」


    ふと、俺はこいつの言葉にひっかかりを覚えた。

    ――親父は強かった。
    今さっき、トモエはそう言い放った。それは過去形の言い回し。
    今も鬼神マルタが健在なら、そうは言わないと思うのだ。
    なので、ひっかかった気持ちそのままに、俺は疑問を口にした。


    「ってか、マルタのおっさんはどうしたんだよ」


    何気ない質問。当然と言えば当然の疑問。
    鬼神マルタがいるんなら、この巨女が「鬼神」を名乗るのは変だ。
    この世界線でのあの巨漢は、どうしたのか。

    俺が生きた世界線では、彼の末路は誰よりも知っている。
    龍神ラプラスの産んだ『闘神鎧』を身に纏った魔王バーディガーディに斃された。
    なまじ強く、耐久力に秀でていた為に、俺を逃がす盾となって果てた心優しき赤鬼。

    しかし、この世界では『闘神』と戦う機会も少ないだろう。
    自領の「鬼ヶ島」を脅かす者もいないだろうし、好戦的な人柄でも無いからだ。
    それに俺の知る限り、アスラ王国軍には彼を屠る程の剛の者はいない筈である。

    つまり、普通に考えれば鬼神マルタは存命な筈。どこさ行ったんだ?
    俺のそんな素朴な疑問はしかし、目の前の鬼女によってあっさり回答された。


    「――死んだよ」


    へッ、と。
    憎々しげに片方の口角を上げ、トモエはそう吐き捨てた。
    え、死んだ?どぼちて?おれはこんらんした!
    俺の困惑をよそに、トモエの、先ほどとは違って平坦で感情のこもらない説明が続く。


    「帝国の奴らが言っていた」


    「親父は、銀髪金眼の野郎に素手で斃された、……ってな」


    なん、だと……。
    銀色の髪……金色の眼……素手……うっ、頭が……。

    ん~、ヤレヤレだぜドララー。
    なんていうか、流れを理解できちゃったっていうか……。

    (うおーい社長、アンタなにしてくれちゃってんの!ワンマン過ぎるでしょう!?)

    とりあえず、世界最強のしかめっ面に叱責を浴びせておく。心の中でひっそりと。
    とはいえ、彼の行動の理由はおおよそ予想がつく。

    果てしなく続くループ世界。
    そこに突然現れた「鬼神帝国」というイレギュラー。
    帝国の、その中核であろう鬼神マルタを排除して、歴史がどう推移するかを観察しようとしたんだろう。多分、きっと。

    で、切り込み隊長であるマルタを排除したら、確かに戦争は一時的に停滞した。
    停滞したけど、マルタというピースが抜けたらこの筋肉女が飛び出してきたと。
    お蔭で戦争が再開するや、前以上に攻撃的になってしまったっていう。


    (……オイオイオイオイ、やっぱ、ダメじゃん!)


    うーむ、余計なことをしてくれたもんだ。
    俺としては、マルタが生存していた方がイージーモードだったんだが。
    親父の方が、この脳筋女なんかより、よほど話し合いに向いていたのだから。
    記憶の中にある、世界一不機嫌そうな顔の男に、俺はちょっと不満を抱く。

    あ、でもさ。
    この巨女の目的は、仇であるオルステッドなんだよな?
    俺はやむを得ずこの戦争に関わったけど、基本的には無関係。その筈。かなり確実。
    どうにかして二人を巡り合わせて、潰し合わせられないもんか。
    っていうか社長!アンタが責任取ってよね!ぷんぷん!



    ――とか考えてだけど、トモエの次の言葉に俺の背筋もついシャキっと伸びてしまった。



    「そいつは、おめぇとよく似た拳技を使ってたってなぁ?」



    獰猛な微笑みを浮かべつつ、舌なめずりをする鬼神トモエ。
    ゴキンゴキンと首を鳴らし、見開いた双眸が爛々と輝きだした。

    アイヤー。そうか。俺の拳技は龍神直伝。そりゃ似てるわな。
    ドドリゲスのオッサンとの闘いを、じっくり観察されてたって訳かォィ。
    どーりで一直線に俺んとこに飛んできた訳だ……。


    「探したぜぇ?」


    ずいっと一歩、鬼女が足を踏み出す。
    バキボキと、金棒を握ってない方の手を鳴らしつつ迫ってきた。


    「おめぇは、親父を斃した相手と何か関わりがある筈だ」


    あっ、はい。それについては否定できない。
    脳みそが筋肉の割にこの巨女、やたら察しが良い。


    「おめぇをボコれば、銀髪が出てくるかもしれない」


    察しがいいけど、言う事は短絡的だ。筋肉だからね。仕方ないね。

    ずしん。
    まるで震脚のごとき一歩。
    そうして歩を進めつつ、口から怪気炎を吐く。




    「だから、ボコらせろ」




    Σ( ゚Д゚)ぴやぁー!

    いや、待って待って。
    この世界のオルステッドと俺は接触してないんだってば。
    多分どっかで様子見はしてるだろうけど、出てくる可能性は低い。
    だから、俺はボコられるだけ損であり、キミはボコるだけ無駄、無駄、無駄ァッ!!

    俺の必死な言い訳を総スルーして、トモエはジリジリ近づいてくる。ダメ!来ないで!


    「な~に、死なねぇ程度にブン殴るからよぉ」


    ――嘘だッ!!

    なによ、その金棒!電信柱か?
    片方の手はゴキンゴキン指鳴らしてるし!
    そんなパワーショベルみたいな拳で殴られたら死んでしまいます!
    俺が脳内でそう叫んでいると、トモエも思う所があったのか、ふと歩みを止めた。
    そして一瞬、ほんの一瞬、首をひねって考える素振りを見せる。


    「……あン?うっかり死んじまうってこともあるか?」


    うっかりってなんぞ!?お前ほんとに考えたのか!?
    いやでもそうよね!?うっかり死んじゃうって事もあるんだし!!
    優しくね!?ほら、ボクタチ、お互い(遭うのは)初めてなんだしね!?

    だがしかし。
    こちらの懇願を知ってか知らずかトモエは――。


    「……へっ」


    こちらに視線を戻し、ニタリと不気味な笑みを浮かべた。


    「……まぁ、いいか。メンドクセェ」


    ぎゃーす!!
    ダメだこいつ、やっぱり全然考えてねえー!!


    「元々あてぇは、暴れられれば構わねーし」



    アタシは構います!すっごく!切実に!


    「んじゃ、始めようぜ!」


    鬼女がニッコリ破顔した。こわっ!!
    ちょっ、この人、眼が血走ってる!
    結局南極、暴れられればいいのかよ。


    …………。


    うーん、いやでも、な。
    今までのやり取りで、ちょっと、引っかかってたトコがあんだよな。
    些細と言えばそうだし、この際スルーしてもいい部分だったかもしれない。

    でも、俺にとっては流す事は出来ない部分だった。

    「……なぁ、もうひとつだけ、いいか」

    後ずさりつつ、俺はそう口にした。

    「なんで、アンタが鬼神なんだ?」


    「……あ゛!?」


    苛立ちに、トモエはだみ声で凄んでくる。ヤンキーかな?
    が、ここで引く訳にはいかない。大事なことだ。

    「俺の知ってる鬼神マルタの後釜は、イワベェってオッサンだった筈だ」

    「なんでアンタが鬼神なんだ」

    「そもそも、鬼ヶ島のみんなは、アンタの代替わりに納得してるのか?」

    そう、さっきからずっと気になっていたこと。
    それは、俺の歩んだ人生において、鬼神マルタの後継者は別人だったってことだ。

    昔、ちょいとしたヤボ用で鬼ヶ島にお邪魔しに行った時。
    俺を出迎え、歓待してくれたのは、気のいい鬼人たちだった。
    そして彼らを率いていたのは、マルタの後継者であるイワベェというおっさん。
    それがなんで、こんな粗暴な奴がその位置にいるんだ。それが俺の疑問だった。


    「……カッ!そんなことかよ、くっだらねぇ」


    トモエは吐き捨てるようにそう言い放った。
    だが、次にその口から吐き出されたセリフは、俺にとっては聞き捨てならないものだった。


    「アニキなら殺したよ」


    さも、どうでもいいようなことだとでもいうように。
    道端に唾を吐くように。ハナクソでもほじるように。
    俺に向けて、トモエはそう言い放った。


    「いきなり戦をフケるとか抜かしやがったんでな」


    「親父の遺言だぁ?んなもん知ったこっちゃねぇ」



    「一族の年寄共もだ。ゴチャゴチャうるせぇから皆殺しにした」


    「あてぇは暴れてーんだよ。邪魔するほうが悪いんだ」




    俺が先の言葉の内容を理解しようと反芻してる間、トモエはベラベラとまくし立てた。

    ふーん、ほーん。そっかそっか。なるほどなるほどー

    邪魔だから、コロシタ。あー、そっかそっか。

    耳で受容した言葉を頭で咀嚼して、理解した。

    まぁ、そうだよな。こんな粗暴な奴なら、家族だって屁とも思わないよなぁ。

    わかるー。今までも、これまでも、何度もそういうやつを見てきたからな。


    ……でもな。





         バカンッ!!






    気が付けば、俺は全力のフルスイングでトモエをぶん殴っていた。
    とにかく何も考えずの、頭真っ白になってのぶん殴り。
    ウェイト差、実に150㌔はあるであろう巨女が――自称鬼神が数メートルも後退した。


    「ふーっ、ふーっ……」


    殴った拳を握りしめ、俺は胸に溜まった息を吐く。

    もう、言葉にならない。小田和正。

    いや――うん。

    なんだろうな、この気持ち。
    ダメだ。この女とは、相容れない。


    頭では理解できた。でも――心では納得いかなかった。


    こいつはダメだ。
    ただ自分が暴れたいだけで、それ以外の何かを完全に蔑ろにしている。
    何か――そう、よくわからないけど、大事な何か。
    自分の氏族の為に戦うのであればまだしも。
    このクソ野郎は、ただただ自分の欲求を満たしたいだけで行動している。


    ――いや。


    「――もう、いい。おめーは、もう喋ンな」


    フルスイングで殴った後、拳を渾身の力で握りしめつつ、俺はそう呻いた。
    もう、いい。
    もう、この女の口から何も聞きたくない。
    もう、その行動原理に意味を与えてやりたくもない。
    大切な、一番大事な何かを蔑ろにするような奴からは。

    こいつは臭ぇ。ゲロ以下の臭いがプンプンするぜ。
    そう思ってとりあえず一発、思い切りブチ込んだ。
    今の俺の拳は、鎧のブースト機能も加算され、ダイナマイト級の破壊力を持っているだろう。
    それを遠慮なく放った。たとえ巨岩だろうが城の城壁だろうが砕ける自信がある。

    だというのに、ぶん殴られた当の巨女は……。


    「……いぃ~い拳を持ってる、じゃぁねぇかぁ、オメェ……」


    首をのけ反らせたまま、そう言い放った

    呻くように。

    感触を確かめるように。

    咀嚼し、味わいを楽しんだあとでゆっくりと嚥下するかのように。


    「……」


    俺は油断なく身構える。
    こいつはこの程度じゃ、蚊の刺したほどにも感じない筈だ――そう思って。


    果たして――。
    巨女はのけ反った頭を前に戻し、更にゴキゴキと左右に振ってからそう漏らした。

    「ぎっ……ぎひひ」

    トモエの歪んだ口元から、軋むような音が漏れる。
    あれは――悦楽。
    口角を上げ、歯茎を剥き出しにして笑っているのだ。

    「いいぜ、オメェ。楽しくなってきやがったぜ」

    呟きつつ、トモエは両脚のスタンスを広げ、腰を落とした。
    両腕は自然に腰だめの位置。戦闘態勢だ。

    「あてぇに文句があるってんなら、その拳で語れや」

    ……70年代の少年誌キャラかな?
    なんだか古臭いような、汗臭いセリフを吐いている。
    だが――。

    「拳とか知らねーよ」

    俺も重心を下げ、いつでも動けるような姿勢になる。
    魔力は満タン。鎧のお蔭で動きも軽い。気力も充実している。
    不安要素はあるにはあるが、それも出たとこ勝負だ。

    「とにかく、アンタをブン殴らないと気が収まらない……!」


    「カッ!言うじゃないか。気に入ったよボウヤ……!」


    両眼を欄々と光らせ、舌なめずりをするかのようにトモエは言った。
    それに対し、俺は呻くように返す。



    「俺は……アンタが……気に入らない……!!」






    戦いの火蓋は、いま、切って落とされた――。























    ――その一方で。















    ルーデウスが鬼神トモエと対峙する少し前。













    彼と反対の軍勢に突進していったエリスは――。
















    「ハァッ……ハァッ……ハァッ……」



    エリスはルーデウス手製の石剣を構え、荒く息を吐いていた。
    その全身は血に塗れ、まさに満身創痍の様相だった。



    彼女の前に立つのは、長身痩躯の男。
    薄気味の悪い男で、肌の色はまるで病身のように白、あるいは灰色に見える。
    さらには洗いざらしたザンバラ髪。
    顔は長い前髪に隠れていて容貌もすべては伺い知れない。
    長い剣を弄ぶように振り回し、それはヒョウヒョウと不気味な音を立てていた。


                         お主は
    「クハッ……クカカカ。お姉さん、いいよ。おんしぁ、強い。凄く強いねぇ♪」



    男は薄い唇をパカッと開き、軽薄な口調でそう言った。
    男の言葉は聞き取り難い、魔神語訛りの共通語だった。
    長い舌をべろりと出し、血に濡れた己の刀身をベロリと舐める。

    「……んん~、妙な味。おんしぁ、なんか混じってる、ネ?」

    問いかけとも独り言ともつかない言葉を吐き、男はまた剣を振り回す。
    ヒョウヒョウ、ヒョウヒョウ。
    刃は空を切り、怖気の走るような奇妙な刃音を立てた。

    ――ガリッ!

    エリスはその音を聞きつつ、奥歯を音がするほど噛み締めた。

    「ガァッ!!」

    そして男へと斬りかかる。
    エリスの全力――全身全霊での『光の太刀』。
    それは剣神流において最高の奥義。剣先は音速を超え、光の速さにまで達するという。
    しかし――。

    「おぉっと!……ちゃっちゃっ。たまるか、たまるか~♪」

    男はエリスの『光の太刀』を己が長剣で受け流した。
    なおかつ剣を流され、態勢を崩したエリスの脇腹を蹴り飛ばしたのだ。
    たまらず吹き飛ぶエリス。

    「ぐっ……」

    石剣を構え直し、エリスは男を睨みつける。

    (……気に入らない)

    エリスは歯噛みする。
    先ほどから、どうにも思うようにいかない。
    斬ろうとすれば絶妙に外され。
    斬ったかと思えば、突如として意識の外からの斬撃を受ける。
    相手はまるでダメージを受けず、自分は徐々に疲弊していく。まるでじり貧だった。

    「あんた……一体、なんなのよ」

    思わず、という感じでエリスは唸った。
    強敵ではあった。
    難敵ではあった。
    だが、勝てないとまでは思えなかった。

    鋭さで言えば、ガル・ファリオンを破ったジノ・ブリッツの剣の方が上だった。
    脅威でいえば、『闘神』バーディガーディの拳の方が身の毛もよだつ恐ろしさだった。
    彼らに比べれば、この男にはそれほどの恐怖や実力差を感じなかった。
    なんで、こんな程度の奴に。それがエリスの正直な感想だった。

    しかし、現実に彼女は相手の打倒を果たせていない。
    この男には何かがある。自分の知らない何かが。

    「クッ……クヒッ。クヒッヒヒ……クハハハハッ!」

    果たして、男の口からは引きつるような嗤いが漏れた。
    ナナフシのごとき長い身体を揺すり、いつしか男の嗤いは哄笑となった。

    「クハックハハハ……フヒ……フヒーッ!」

    ひとしきり嗤い、男はやっと一息ついた。
    それからだらりと剣を下げ、首を傾げてエリスの方を向いた。

    「……あれ、知らんか。ワシん名はイーズォ。人からは『殺神』言われちゅーもんじゃ」

    そしてまた剣を振るう。ヒョウ、ヒョウ。

    「なんの因果か、おんしら剣神流を根絶やしにせんとならん。げに厄介な事じゃ」

    心底、困ったと言わんばかりに首を振るう。
    エリスはその様子を見て、しかしなんとも思わない。
    この男の仕草、すべてはブラフであろう――そう見做しているからだった。
    だから、この男の口から吐かれる言葉に真実が含まれていてもどうでもよかった。

    ただひとつ、気になること。それは――。

    「あんたが誰だろうが、なんだろうが、そんなのどうだっていい」

    剣の柄を握る両手に力を籠める。
    大地を踏みしめる両脚に意志を通す。

    彼女がただひとつ、気になること。それは――。



    「あんたはルーデウスの邪魔になる。それだけよ」



    そして、エリスはまた突進し、石剣を振るった――。








               ー後編 「邂逅」に続きますー








    それでは、また。(店`ω´)ノシ





    ※タイトルがもうわけわかめ。前中後で収まらない……。
    短編にするつもりがやっぱり長くなっちゃいました。
    物語自体はラストまで考えてあるんですが、筆力と知能が追い付きませんです。


    ※令和二年、2020年一月一日にラスト部分に加筆しました。


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