無職転生 二次創作 単話 ナナホシの挑戦「ヌードル何杯食べる?」※誕生日プレゼント返し←?
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無職転生 二次創作 単話 ナナホシの挑戦「ヌードル何杯食べる?」※誕生日プレゼント返し←?

2019-11-09 05:54



    ※これは無職転生の二次創作小説です。

    ※注意。原作最終話まで読んでない方には超ネタバレがあります。

    ※蛇足編「ナナホシのグルメ」のオマージュです。

    ※原作には出てこない二次創作キャラ描写があります。

    ※二次創作が苦手な方は回れ右でお願いします。

    それでは、どうぞ。

    ==========================================






    私の名前は七星。
    七星静香。

    甲龍王ペルギウスの居城ケイオス・ブレイカーに居候する元JKだ。
    違う、そうじゃない。             トリッパー
    日本から異世界転移してしまった元JKの、いわゆる異世界転移者だ。
    元の世界に戻るために、毎日を寝て過ごす引きこもりのような生活を続けている。

    ……。

    ラノア魔法大学に在籍していた頃もそうだったけど。
    仕方がない。そう、仕方がないのだ。
    あの頃は早く元の世界に戻る為に研究していたんだし。
    今だって、寝ていないといつ体調を崩すか知れたものではないからだ。
    誰だってそーなる。私だってそーなる。

    仕方がない。そう、仕方がないのだ。大事なことだから二回言います。

    ……。

    はぁ。
    私は一体、誰に言い訳してるんだろうか。

    ――それはそれとして。

    最近の私はとても真面目で勤勉だと思う。
    日々(というか目覚める度)の運動を日課としているからだ。

    ――食っちゃね生活で太ってきたとは思いたくない。思いたくはないのだ。


    ……。


    ん、んんッ!(咳払い)


    えっと――。

    まず、運動メニューは城の外周を駆け巡る。
    ……巡ります。

    この城はやたら広いので、一周するだけでもそれなりの運動になる。
    それを三周。大体一時間くらい。もちろん、休み休みだけどね?

    暫しの休憩の後、ペルギウスの秘書シルヴァリルから戦闘訓練を受ける。
    健康的かつ波乱万丈なスケジュールだと思う――元JKにしてはね?
    ジョギングはともかく、戦闘訓練はどうなんだろう。
    私はただ、痩せたいだけなんだけど。ケンカが強くなっても……ねぇ?

    ……。

    ひとしきりバトった後は、整理運動と若干の筋トレが待っている。
    腕立てに始まり、腹筋にスクワット。
    ――と言っても、1セット五回とかですけどね。

    別に、何かを目指してるわけでもないですし。そこそこ回数をこなせればいいんですよ。
    以前は体育の時間だって、言い訳作ってサボッてたりしてましたし。
    は?不真面目とかじゃないですから。一般的な女子高校生の日常ですから。

    ……。

    それでも最近はそこそこ腹筋も引き締まってきた気がする。腕のぷにぷだって。
    何気にぐっと力こぶを作ったりして、一人満悦の笑みを浮かべたりする。
    よしよし。効果あり。うふふん。こうなると楽しくなってくるよね。

    ……いや、うーん。
    そういう趣味はなかったはずなんだけどなぁ。ぐぬぬ。

    ――うん、まぁ。
    筋トレが終われば、その日の運動は終了となる。お疲れさまでした。
    汗で濡れた肌着を脱ぎ散らかし、さっさと水浴びをする。

    ……。

    冷たい。物凄く。
    元日本人としては、熱い湯船に浸かって「うあ゛~」とか言いたいよ。
    でも、ここは甲龍王のお城。ワガママは言えない。

    あー、お風呂に入りたい。身体を湯船で伸ばしたい。
    お風呂で思い浮かぶのは、ルーデウスの家のお風呂。
    あそこは良い。広いし、温かいし、気が休まる。たまに首筋に水滴が落ちてくるけど。
    そうだ、今度借りに行こう。そうしよう。うむ。
    などと益体もないことを思いつつ、手桶に汲んだ水を被る。う~、冷たい……。

    なんやかやと午前中のメニューを終え、自分に与えられた部屋に戻る。
    ……ん?なにか違和感を覚えるぞい?
    いぶかしさに眉間に皺が寄るのが自分でもわかった。

    「お、お疲れさん」

    部屋には一人の男性がいた。
    彼の名はルーデウス・グレイラット。
    私と故郷を同じくし、かつ、この世界の人間として生まれ直した異世界転生者だ。
    出会った頃は少年だった彼も、今ではすっかりおじいさんになっていた。

    「あ、うん、お疲れ様」

    挨拶を返しつつも、私の意識は別のことに囚われていた。
    それは、部屋に入ってからの違和感の正体を探ること。

    何かがいつもと違う。
    いつもあったハズのものが無い。
    なんだこれは。一体なんなんだ。
    私は一ミリ秒の間に考えを巡らせ、漸くそこに突き当たった。
    そうか、匂いだ。美味しい匂いがしないのだ。

    私が起きる。
    運動する。
    部屋に戻る。
    するとルーデウスがいる。
    部屋には美味しそうな匂いが充満している。

    はい、これが毎日のローテーション。あって当たり前の日常。
    だというのにだ。今日に限って、いい匂いがしないんデス。

    私は視線だけで部屋を探る。
    テーブル、いくつかのイス、調度品、ルーデウス(爺)。

    ……ふむ。

    テーブルの上には卓上コンロ。
    その上には手鍋が置かれ、そこから湯気が噴いていた。
    お湯が沸いているのだから、当然湯気の匂いはする。
    でも、一番重要なお料理の匂いがしない。絶望的なまでにしなかった。

    そんな馬鹿な。
    この生活になって、毎日の楽しみが部屋に入った時のあの匂いだっていうのに。
    空虚だ。虚無だ。人生の剥奪だ。

    何なの?生殺しなの?遠まわしな嫌がらせなの?殴ってやろうかしらこいつ。
    シルヴァリル直伝のピーカブー・スタイルになりかけて、私は咄嗟に思いとどまる。
    まだだ。まだ、こいつを殺ったら、食事にありつけない。ここは我慢の一手だ。
    震える右腕をやっとの思いで抑える。くっ……。

    「ねぇ、今日はなんなの?死ぬの?お腹ぺこぺこなんだけどブン殴るぞ?」

    私は空腹を抑えきれずにそう言った。あと、本音も抑えきれなかった。
    テーブルの上には簡易コンロと、湯を沸かしているであろう手鍋。そして丼と箸。
    彼がいて、料理の支度は一応整ってはいるので、何かしら食べさせてくれるのだろう。
    でもお湯しか沸いてない。それ以外は何もない。馬鹿にしているのか?

    私の視線に殺意が籠められているのを察したのか、ルーデウスの顔が一瞬引き攣る。
    シルヴァリルから何度も言われた殺意とやらが、ついに私にも備わったようだ。
    フハーハハ。見ろ、ルーデウスがゴミのようだ。

    「ちゃ、ちゃんと用意してあるよ!?だ、大丈夫だから。ハウス、ハウスよナナホシ……」

    Oh……。失策だったかも。
    ルーデウスが物凄く怯えてしまっている。チワワのようにぶるぶる震えているではないか。
    あと、私は犬じゃないし。歯は食いしばっているけど。
    ルーデウスが傍らにある鞄をごそごそ探りだした。きっと良い物が出てくるのだろう。
    私は席についてそれを待つことにした。気分は四次元アイテムを待つの〇太くんだ。

    「ま、ま、取り合えず、これを飲んでくれ」

    取り出したのは金属で出来た水筒。飾りっけは無い。
    中身をトクトクとカップに注ぐ。なんだか白い。

    「絞りたての新鮮ミルクだ。運動した後は、やっぱり蛋白質だからな」

    へー、なるほどね。運動で消耗したアミノ酸を牛乳で補給しろってか。
    そんなことより食事を、と言いかけるも、ふんわり香る甘い香りに喉が鳴ってしまう。
    カップを手に取り、口をつける。……ん~~ッッ甘ぁ~いッ!説明不要ッッ!!

    「どう?どうどうどう!?冷えてて美味しいだろ!?だろだろだろぉ~!?」

    畳み掛けとイキり変顔がとてもうざい。
    とはいえ、確かにこの牛乳、すっごく冷えてて美味しい!
    水浴びはしたけど、身体の芯はまだ熱を持っている。だからか余計に美味しく感じられた。

    「俺の魔術で冷やしてあるからな。いつでもどこでもキンキンだぜ!」

    彼の掌から冷気が漏れている。さすがに練達の魔術師。
    私はゴクゴクと牛乳を飲み干す。思ったより喉が渇いていたみたい。
    それにこれ、すっごく濃厚でとっても甘いのに全然癖が無い。
    まったりとしていて、それでいてスッキリ。シャッキリポンと舌の上で踊るわぁッ!!

    彼曰く、解毒魔術による殺菌処理をしているので、高温加熱法による殺菌に比べて風味が損なわれていないんだとか。
    ということは、この味わいこそが、純粋に新鮮な牛乳の味なんだろう。
    あ、でもちょっと待って。牛乳をこんな一気飲みしたらお腹がゴロゴロしそうなんだけど。

    「大丈夫。こいつはアスラ牛とミリス牛を掛け合わせた特別性なんだ」

    私が眉根を寄せていたら、ルーデウスが勝手に説明しだした。
    楽チンだし、どうでもいいから喋らせておく。カップを揺らしておかわりを催促。

    「うちのアイシャが選別して生産している、お腹がゴロゴロしないやつなんだぜ」

    私のカップに牛乳をこぽこぽ注ぎながらルーデウスが説明する。
    どうやら彼の下の妹であるアイシャ氏監督の元、生み出されたのがこれらしい。
    たしか、牛乳に含まれる乳糖とかいうのが、消化し難い成分なんだっけ。
    アイシャ氏はそこを見極めて、牛の交配を進めて作り出したのがこの牛乳。
    お腹ゴロゴロ成分を極力無くした美味しい牛乳。誰もが望んでいた奇跡のミルク。
    科学知識の無いこの異世界でどういうことなの。あの子、何者なの?
    まぁ、稲作とか植物の掛け合わせとかも昔の人たちがやってたわけだし。
    努力と経験と直感で何かを作り出す職人ってスゲーとは思う。うん。

    「いわば『ルードミルク』!!これこそ新時代のプロテインなのだよ!!」

    私が一人納得しているところに、またしてもイキリ変顔が。
    私はそれを無視してぐいぐい牛乳を飲み続ける。
    細けぇこたぁどうでもいいんだけど、うん。これ、普通に美味しい。

    ぷはぁっ。
    なんだかんだと二杯目を飲み干しちゃった。まんぞく。

    ……でもさぁ。

    私がじっとりとした目で見ていると、ルーデウスは頷く

    「任せろ。今日はとっときを持ってきた」

    そういって鞄からまた何かを取り出す。
    大き目のお弁当箱みたいな物と、四角い紙包みだ。

    お弁当箱の蓋を開けると、中身は色とりどりの食材。
    茶色に黄色に緑色。白もある。
    調理されたお肉に野菜。なんだか、トッピングみたいな?
    なんか、不思議と既視感。
    私がちらりとルーデウスに視線を向けると、彼もにやりとした。

    「ふふ~ん」

    ニヤつけるルーデウスは、続けてパサパサと四角い紙包みを解いていく。
    出てきたのは、細くてやや黄色くて、紐を丸めて固めたかのような細長い何かの塊。
    どこかで見たような、見慣れた四角い塊。いや、ちょっと、それは。

    驚愕に目を丸くする私をよそに、ルーデウスは塊を丼に入れ、湯を注いだ。

    「フフ美味しい、フフフ美味し~♪」

    楽しげに、なんだか耳慣れたフレーズを彼は口ずさむ。
    丼にお盆を乗せて、しばし待つこと二~三分(個人差はあります)。

    「……そろそろ、いいかな」

    そう言って、お盆を除ける。
    ふんわりと湯気を煙らせつつ現れたのは、懐かしくも香しいアレ。

    「……これって!?」

    涎を堪えつつ、私はそう聞き返した。
    目の前に現れたのは、白い丼にたゆたう茶色いスープ。そして黄色く細い紐状の――麺。
    ほかほかと湯気を立てる器を私の前に差し出し、ルーデウスが両手を広げた。

    「さぁ、お好みのトッピングを盛り付けて食したま――ぶほぉッ!?」

    私は歓喜のあまり、思わずルーデウスに右ストレートを叩き込んでいた。
    吹き飛ぶルーデウス。しかし私の眼はテーブルの上の器にくぎ付けだった。

    だってだって、これって。


    「……ラーメンじゃん!」



    --------



    「はふっはふっ……ズルズル~……ふぉっふぉっ……むっちゃむっちゃ……」


    熱々の麺を啜る。


    熱々のスープが一緒に口の中に飛び込んでくる。


    味は醤油味。うっすらと鶏ガラっぽい旨味。


    ……欲を言えば、もっと濃い旨味が欲しいかな。


    でも、それは贅沢というものだろう。

    こっちの世界では調味料もなにもかも、元の世界とは違うのだから。

    若干の不満を感じつつも、私は夢中でスープを啜って、噛んで、それを飲み込んだ。


    繰り返し、繰り返し。


    何度も何度もその行為を繰り返す。ただただ、無心の反復運動。


    麺は生の麺ではない。小麦粉で作られた乾麺。
    カチカチの乾麺は熱いスープで戻され、頼りない柔らかさに変貌している。
    だが、それがいい。その頼りなさ、柔らかさがいい。コシなど偉い人の言うことです。

    麺を頬張り、歯で噛む。あるか無きかの抵抗感の後、ウニャリと切れる感触。
    懐かしくも程よい噛み応えに、私の舌が、歯が、口内が、脳が、喜びに震えている。


    「~~~~~~~ッッッ!!」


    言葉にならない。
    そういうのって、本当にあるんだなぁ。
    食べることに夢中な頭のどこかで、しみじみとそう思う。


    「~~ッぷはー!!」


    食べた。

    食べちゃった。

    自分でも驚くくらいあっさりと一杯目を食べ終えてしまった。


    トッピング?あ、そんなのもありましたっけ。
    ラーメン。それは日本人の大好物、心の故郷、懐かしのソウルフード。
    そんなものを前にした私に、トッピングを乗せる余裕はなかったぜ。
    丼をひっつかむやいなや、箸を即座につっこんで一口目を啜ってしまったのだ。

    うおォン!!喉の奥から野獣のような唸りがほとばしる。

    そこからの私はまるで人間ジェットコースターのように勢いが止まらなかった。
    結果は、目の前のカラッポの器が示している。

    「ほぁ~、凄いな」

    ルーデウスが殴られた顎をさすりつつ目を丸くしている。
    ……なんか、じっくりと見られていたのを考えると、若干の羞恥心が。

    「――んっ」

    私は照れ隠しで空になった丼を彼の前に差し出す。

    「お、へへっ、おかわりか?」

    嬉しそうに丼を受け取るルーデウス。
    なんだかんだ、ルーデウスは人がいい。もてなすのが好きなのだろうか。

    まぁ、彼がなんだろうと、今の私は空腹を満たせればそれでいい。
    私の腕が、胸が、太腿が、五体すべてが、栄養を欲しているのだ。
    ……この即席ラーメンにどれほどの栄養があるかは、推して知るべしだけど。

    ルーデウスが丼を置き、そこに乾麺がひとつ入れられる。
    手鍋にルーデウスの手から生み出された魔法水が注がれ、それはコンロの熱でお湯になる。
    そのお湯を注いで少し待てば、即席ラーメンの出来上がりだ。
    次こそトッピングを乗せよう。ぜひ乗せよう。
    何を乗せよう。どれを乗せよう。焼き豚、コーン、メンマ、法蓮草、煮卵……。


    「随分と興味深いものを作っているではないか――ルーデウス・グレイラットよ」


    浮き浮きとする私の心の間隙に、その声は降ってきた――天井から。
    仰ぎ見れば、天井に背中をへばりつけたペルギウスとシルヴァリルがいた。
    いや、普通に怖いんですけど!?

    「ハッハァー!!」

    ドン引きの私をよそに、ペルギウス+シルヴァリルは颯爽と一回転して降り立った。
    そして優雅に歩み、私の対面に傲然と座る(シルヴァリルが椅子を引いた)。

    「ふんふん……フッ」

    卓上にあるものを値踏みし、それから彼は鼻で笑った。

    「今日はまたぞろ、雑多なものばかりを揃えてきたものだな。幼子のままごとか?」

    雑多……。うん、まぁ、確かに。
    普段のペルギウスの食事は、彼一人分にしては豪勢なものだ。
    各国の宮廷料理の数々が、次から次へと運ばれてくる。
    私もこんな身体になる前は、時々ご相伴にあずかってたけど、味も素材も素晴らしかった。
    それに比べれば、卵だの、茹でた法蓮草だの、果てはメンマなんて、彼からすれば子供のままごとに使う雑草やら泥水に浸った木片かなにかに見えたのかもしれない。

    でも、そういう言い方は無いと思う。
    私は、私たち日本人は、これを長い間親しんできたのだから。
    よその文化を蔑視するのは、むしろそっちの方が野蛮だと思う。
    そもそもこれは私の昼食なんだから。あ、だんだんイライラしてきたぞい(怒)。

    「貶すだけなら食べなくてもいいんですよ?デレの無いツンに食わせる麺はありません」

    故郷の懐かしい食べ物を小馬鹿にされ、プッツンした私。
    概念ですら殺せそうな視線を送りつつ、ペルギウスに冷たく言い放った。
    ペルギウスは絶句して、彫像のように凍り付いた。シルヴァリルも、ルーデウスまでもだ。
    冷静になって考えれば、物凄く危険な事をしたと思う。相手は竜より強い龍王さま。
    思うけど、仕方がない。こっちは腹ペコなのじゃ。

    「ルーデウス、おかわり。はやく」

    私は固まるペルギウスの存在を無視して、ルーデウスをせっついた。
    凍り付いていた彼も、我に返って丼にお湯を注ぎ、盆で蓋をする。
    このまま二分ほど待てば出来上がる。その間に、乗せたいトッピングをチョイスする。

    「湯を注いだだけ……ではないか?」

    硬直から復活したペルギウスが、訝しそうにそう言った。
    手をかけてこそ料理――それがペルギウスの持論。
    かなり前に、彼がルーデウスと料理でケンカしてたのを思い出した。
    その時はルーデウスがTKGを持ってきたり、刺身を持ってきたりして。
    最終的に美味しさを認めたがらないペルギウスに憤って場が滅茶苦茶になったんだっけ。

    でも、今回は料理勝負なんかじゃない。
    大事な大事な、私のための昼食なのだ。暇人に邪魔はさせない。

    「ほい、お待ちどうさま」

    ルーデウスがほかほか湯気を上げる丼をこちらに差し出す。
    ペルギウスは油断なく丼の中身を覗き込み、落胆したような顔を浮かべる。

    「……なんだそれは。素っ気ない麺だけではないか」
          ひと
    いったい、他人の昼食に何を期待していたんだろうか、このオジサン。
    まぁ、いい。無視しよう。

    私は素知らぬ顔をして、トングを使ってトッピングを乗せていく。
    コーン、メンマ、茹で法蓮草に茹でもやし、煮卵、焼き豚、焼き海苔……。
    最後に刻みネギをちらして、豪華特盛一人前の完成!テッテレー!


    「ふぁー!いっただっきまーす!!」


    ことさらに声を上げて両手を合わせる。
    まずスープをレンゲで啜る。
    それから麺。ズルズル~。
    またスープ。そして麺と共にメンマやもやしを口中に投じていく。

    フーフー、ずるずる、もちゅもちゅ、ごくん。
    今度は慌てず、急がず、ゆっくりと味わっていく。

    焼き豚はしっかり焼いてあって、旨味がぎゅっと凝縮されている。
    メンマも柔らかいのに歯ごたえがあるし、もやしとコーンもいいアクセントだ。
    刻みネギと茹で法蓮草が口の中をさっぱりさせてくれるし、煮卵なんてトロトロ~!
    焼き海苔うめぇー!元の世界のと若干風味は違うけど、やっぱり海苔は美味しいなー!


    「はふはふっ!ずずー!もきゅもきゅ、ごくん!フッフー、ずるる~!」


    再び繰り返される、人間ジェットコースター。味覚のロケッティア。
    黙々と箸を進める。つーか、ラーメン食べてる時に何が言えるのかと!
    それに、即席ラーメンの割にトッピングはなにげ手がかかっていた。
    こんなに工夫されているんだったら、私が文句を言う筋合いじゃないし。

    次から次へと具材を口中に放り込んでいく。噛み締め飲み込む。ゴックン。
    旨い。焼肉や旬の魚の塩焼きを食べた時に比べるまでもないけど、十分に美味しい。
    久方ぶりに食べる故郷の食べ物とは、これほどのものかって。うーん。


    …………。


    ……おや?


    横目で見れば、ペルギウスは一人取り残されたかのような寂しげな顔をしていた。
    いつもなら、あれやこれやと腐したり蘊蓄を披露するのに。
    私の食べ方が鬼気迫っていたので、それに飲まれてしまったのだろうか。


    「……ッッぱぁーー!!ご馳走様でしたー!!」


    ふー、二杯目も完食。大・満・足。
    即席ラーメン自体には栄養もなにも無いと思うけど、トッピングで補完する感じ。
    なにより、懐かしい味わいが私の魂を満たしてくれた。これ以上なにをかいわんや。

    しかし、満足気な私をよそに、ペルギウスは座りが悪そうだった。
    何か言うわけでもないけど、居心地悪そうにしている。
    さっき、私が意地悪したからスネているのだろうか。

    彼の視線は空になった丼、トッピングの皿を行き来している。明らかに食べたそう。
    でも彼も彼で、ままごとだの雑多だの貶してくれたし、今日の私は"おこ"なのだ。

    ちらりとペルギウスと視線が合うも、素知らぬ顔で牛乳をカップに注いで飲む。
    しゅーんとなる甲龍王。やだ、なんか罪悪感。

    そんなペルギウスに、ルーデウスは私のとは別の丼をそっと差し出す。
    そして、おもむろにこう言った。

    「とりあえず、一杯食べてみませんか?」

    何気ない一言に、ペルギウスは虚を突かれたのか言葉に詰まる。
    その間に、ルーデウスは丼に乾麺を入れ、湯を注いでいた。

    「これは、見ようによっては手抜きのままごとに見えるかもしれません」

    言いつつ、盆で蓋をする。

    「でも、これは俺やナナホシにとって、かけがえのない食べ物なんですよ」

    椅子に座り、ゆっくりと両手を組む。

    「これは軽食。駄菓子と同じようなもの。毒にも薬にもならない食べ物です」

    ぽつり、ぽつりと。
    ルーデウスはヌードルについての見解を語っていった。

    ふと小腹が空いた時。
    忙しくて時間が無い時。
    支度が面倒な時。
    食材がなにも無い時。

    年端のいかない幼子でも湯を注げば食べられる。そんなお手軽で身近な存在。
    誰でも買えて、誰でもどこでも、お湯さえあれば簡単に作れる。

    「例えば冒険者。固パンに干し肉。携帯できる保存糧食はバラエティに乏しいでしょう?」

    寒い北方地帯。凍えるような雪の森。氷の洞穴。
    そんな場所でロクに暖も取れず、冷たい糧食を口にする。
    気分は沈み、体力は下がる一方。これでは能力を発揮することは難しい。
    しかし、そこに温かいヌードルがあればどうだろうか。
    身体は温まり、心は落ち着く。胃の腑も安心を覚える。

    「栄養なんて二の次。とにかく腹を満たす。それが最優先……でしょ?」

    ぱかっと。蓋を取る。ふんわりと湯気が立ち上り、鶏ガラと醤油の香り。
    ペルギウスが覗き込み、ごくりと喉を鳴らす。

    「とはいえ、家で食べるなら……少しは豪華に、ね」

    慣れた手つきでトッピングをさくさく乗せていく。
    海苔、焼き豚、刻みネギ、メンマに煮卵。最低限ながらも最高の品ぞろえ。
    出来上がった一人前のラーメンを、ペルギウスに勧めるルーデウス。

    「これが、俺たちの故郷のソウルフード。ラーメンです。いかがです?」

    にっこりと。
    すっかり皺の刻まれた顔に笑顔を浮かべてルーデウスはそう言った。
    この人も、若い頃はペコペコしてばっかりだったけど、最近は如才ない感じがする。
    年の功ってやつかな。

    笑顔のルーデウスに相対するペルギウスは無言。
    じっとラーメンを眺めて、それからそっと、両手で丼を掴んだ。

    「――頂こう」

    厳かに宣言し、彼はフォークにて、麺を啜りだした。

    「……うむ」

    ひとつ頷くと、そのまま無言で啜りだした。

    ずるずる。ふーふー、ズズー。

    流石に何度もルーデウス飯を経験しているだけあって、食べ慣れている。
    フォークで食べるところが、なんだか外人っぽくてウケる。
    まぁ、いつもうるさい人が黙って食べてるんだ。のんびり牛乳を飲んで食休み、食休み。

    「はぁ~。あ、でさ、ナナホシ」

    ――しまった。

    私はルーデウスにゆとりを与えてしまった事に、内心舌打ちをする。

    「ちょっと聞いてもらいたいことがあるんだけど」

    ほらねぇ。

    恒例行事ではあるけどさ。
    こう毎日、重い話を持ってこられるのも面倒ではある。
    とはいえ、美味しいご飯を奢ってもらってる立場上、無下には出来ないし……。

    「……何?」

    社交辞令として返事をしておく。まぁ、長い付き合いだしね。
    そんな私の気の無い返事に救われたような顔のルーデウス。
    あーもう。面倒臭いおじいちゃんだなぁ。
    やれやれと呆れる私をよそに、ルーデウスはポツポツと語り始めだした。

    「実は……アリスが……」

    アリス。
    確か、ルーデウスの孫娘。
    長男のアルスさんと妹のアイシャさんの二人目の子ども。
    何度かここに連れてきた事もあったけど、普通に明るくておしゃまな女の子だったっけ。
    そのアリスちゃんがどうしたっていうのだろうか。

    「こないだ、魔法大学を卒業したんだけどさ、首席で」

    ほーん。なんだ、普通に孫自慢かな。私はほっと胸を撫でおろす。

    「その次の日、書置きを残して家出しちゃったんだよ……」

    ズコー。はい、普通に重い相談でしたー。この人の家、呪われてるの?
    う、うん。咳払いをして、気持ちを切り替える。

    「……その書置きにはなんて書いてあったの?」

    書置きがあるなら、まだマシなんじゃないかしら。少なくとも本人の意思は判明する。
    何も言わずに家出しちゃったアイシャとアルスの時とはそこが違う。

    「うん……。冒険者になります、って」

    「……それだけ?」

    「あ~、うん。どこに行くとか、どこで冒険者になるとかは、全然」

    「それだけか~」

    「あ、あと『心配しないでね!』って」

    いや、心配するでしょう普通。
    ちょっと外を歩けば魔獣とか盗賊がいる世界なんだし。

    「う~ん、でも首席ってことは、アリスちゃんも優秀なんでしょ?」

    「そりゃそうさ!全属性魔術はすべて上級!剣術だって剣神流上級なんだ!」

    急に鼻の穴を広げて興奮して語りだす孫自慢。正直メンドイ。
    でも凄いなぁ。女の子で文武両道の実力者なんて、そうはいないんじゃないかしら。
    そんなに強いなら、よほどの事じゃない限り平気そうだけどなぁ。
    私が首を捻っていると、ルーデウスは興奮が冷めたのか、またションボリした。

    「……どんだけ魔術や剣技が得意でも、些細なことで死ぬのなんて普通だからさ」

    そう呟きながら、左腕を無意識に擦っていた。

    ――あ、そっか。

    確か、迷宮で左腕を無くしてるんだっけ。
    そして、ルーデウスはその時にお父さんも亡くされているのを私は思い出した。

    ルーデウスは世界最高の魔術師。そのお父さんも天才的剣士だったという。
    そんな二人でも、迷宮で酷い目に遭った。
    そしたら、可愛い孫娘がどんな目に遭うか心配で堪らないのは人情というものだ。

    「心配……だよ、ね」

    「うん……。何があるかわからないからさ、冒険って」

    うーむ。どうしたものか。
    書置きに行先も書いてないんじゃ探しようもないだろうし。
    たとえば探偵を雇うったって、この世界にそんな職業は……。

    「あ」

    「え」

    私はきょとんとするルーデウスに人差し指を突き付けた。

    「ルード傭兵団。世界中に支部があるんでしょ?」

    「お、おう」

    「そしたら、各地の冒険者ギルドにアリスちゃんが顔を出してないか、調べさせれば」

    「アッ――!!」

    その手があったか、と指パッチンするルーデウス。……いや、スカッと空振りしてたけど。

    「いやー、ありがとうナナホシ!さっそくお触れを回してみるわ!」

    凄くいい笑顔で私の手を握りしめ、ブンブン振るわれた。痛い。
    うん、まぁ、食事のお礼になったんだったら、こっちとしても気分は良い。
    彼もハッピー、私もハッピー。ウィンウィンの関係って奴よね。

    「でも、見つかったからって連れ戻そうとしたら、嫌われちゃうかもよ?」

    「あ、うーん。そうかもなぁ」

    「こっそり傭兵団の人に見守ってもらうとか、どうかな」

    「おぉ、それはいいな!俺が仮面を被って一緒のパーティに入るとかは――」

    「あ、それはやめたほうがいいと思う。絶対、確実に」

    「え、そうかな~?変装は得意な方なんだけど」

    「それ絶対カンチガイだから」

    アハハ、ウフフ。
    と、私たち二人がほんわかしているのを、じっと睨みつける視線がひとつ。

    それは、ラーメンを食べ終えたペルギウスだった。

    「話は終わったか?」

    腕を組み、椅子の背もたれに身体を預けている。
    しかしその顔はやや険しい。なんだろう、美味しいものを食べた後って感じじゃない。

    「端的に言おうルーデウスよ……悪くはなかった」

    「あ、そうですか」

    「だが、不満がある」

    「はぁ」

    「貴様の料理は、何故いつも鬼水や豆腐を味付けに使う」

    「え、いや、まぁ、……俺の個人的な好み?」

    「そこだ!」

    ドンッ!と。テーブルを叩く太郎……じゃない、甲龍王。

    「せっかくの料理も、ビヘイリル地方の味だけでは飽きてしまうではないか!」

    物凄く生真面目なんだろう。真面目に、大仰に一喝している。

    「貴様だけの好みではなく、万人に向けた味わいも楽しみたいではないか!」

    そうは思わんか、ナナホシ――。
    私の方を睨んでそう唸るペルギウス。いや同意を求められましても。

    「まぁ、そう言われるとは思っていたんですよね」

    そう言いつつ、ルーデウスは鞄を漁りだす。
    テーブルに、取り出した紙包みを並べた。それぞれ色が違う。

    「この黄色いのはカレー味。赤いのはキムチ味。これはトマトチーズ味。これは……」

    と、それぞれの紙包みの味を説明していく。それを聞いて興奮するペルギウス。
    うんうん。甲龍王にプレゼンしてお墨付きを貰えば、売れる保証まったなしだよね。
    でもさ、そういうのはどっか他でやって欲しいんだけど。ここ、私の部屋だし。

    「……ん」

    「……む」

    私のジト目に気が付いたのか、二人が気まずそうになった。
    えへん、と咳払いをし、ペルギウスは立ち上がる。

    「ルーデウスよ。貴様に見せたいものがある。ついて来るがよい」

    バサリと、マントを翻して去っていくペルギウス。……照れ隠しだろうか?
    ルーデウスは持ってきた物を鞄に戻している。

    「ルーデウス、今日もお食事、ありがとう」

    「おぉ、こんなもんなら、いつでもだ」

    嬉しそうに、皺の寄った顔に微笑みを浮かべる老人。
    私の友人、ルーデウス・グレイラット。

    出会った頃は少年だった彼も、もうお爺さん。
    時々来てくれるザノバもそうだし、彼らの家族も徐々に年を取っていっている。
    私はといえば、まだ高校生の時のままの姿。
    その差に、言い知れない寂寥感を覚えていく。

    いつしか、ルーデウスやザノバに会えなくなる時が来るのだろう。
    それは、もうそんなに先のことではないのかもしれない。

    私が眠り、目を覚ます時は一ヶ月も先の事。
    私にとってはほんの一日。でも、彼らにとっては一ヶ月もの時間が経過しているのだ。

    「また一月後に来るよ。次はなにが食べたい?なんでもいいぜ」

    鞄を担いで立ち上がり、こっちを振り返るルーデウス。
    その姿を見て、私はなんだか無性にお父さんに会いたくなった。

    「……どした?」

    彼が不思議そうな顔をする。
    ……そうだ。まだ、今は私の予定する未来じゃない。
    今はまだ、ルーデウスがいる。
    彼と繋がる大勢の人たちにも会える。
    だから、あとになって悔やむよりも、会える時間を大切にしていこう。
    一期一会……っていうんだっけ。

    「……おにぎりと、ポテチがいい」

    感傷を押し隠し、私はそう伝えた。
    ルーデウスは快諾して、扉から去っていった。



    -------



    一人になると、静かすぎて耳がキーンとなるようだった。
    さっきまで賑わっていた部屋も、誰もいなくなればガランとしてしまうものだ。

    私は寝室に移動して、もそもそとベッドにもぐりこむ。
    それから肌身離さず身に着けているお守り袋を撫でた。
    それから布団をしっかりとかけて、枕に頭を沈める。

    (……あとになって、後悔しないように。いっぱい、いっぱい。思い出を作っておこう)

    次もたぶん、ルーデウスが来てくれるようだ。
    その時に、ほかのご家族や友人も一緒に来てくれるように言ってみよう。
    私の旧知の人たち。つながりのあるすべての人たちと、たくさん触れ合いたい。
    そして、たくさん、たくさん、ありがとうと。伝えていくのだ。


    いつか、この世界と別れるその日まで――。


    「……じゃぁ、お願いします。スケアコートさん」

    「うむ」



    そう思いながら、また私は眠りにつくのだった。







                     ーfinー








    それでは、また。(店`ω´)ノシ






    ※更新が長い間滞っており、大変申し訳ありませんでした。

    ちょっとリハビリに単話などをひとつ、って感じです。
    とはいえ思うところもあり、二次活動はしばらく休止しようか考え中です。
    作品へのご感想をお待ちしております。

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