無職転生・二次創作小説「エリスは流石だった」その2
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無職転生・二次創作小説「エリスは流石だった」その2

2015-04-22 00:03
  • 2

俺はまんじりともせず、次の日の朝を迎えた。
窓の外はうっすらと陽が差し、小鳥が囀っている。
気分は晴れない。晴れるはずもない。

卒業試験。

これが終わってしまえば、ロキシーとはお別れ…なのだろうか。
それとも、合格しなければ、ロキシーは俺に失望するのだろうか。
どちらにせよ、俺にとっては岐路となる日だろう。
実際そうだった。

「ルディ、起きていますか?」
扉をノックする音がして、ロキシーの抑えた声が聞こえた。
ルディ。ルーデウス・グレイラット。
そう、他の誰でもない、俺のことだ。
「…はい、起きています」
「着替えて、準備が出来次第、試験を執り行います」
いつものロキシーの声。
落ち着いた、冷静な声。
普段なら、耳に心地良いその声が、今は妙に冷たく感じる。

それから俺は、モソモソと着替えたり、顔を洗ったりした後に、階下に降りていった。
玄関には、ローブ姿のロキシーが待っていた。
「…では、行きましょうか」
扉を開く。
光が溢れ、ロキシーに陰を落とした。
その表情は、硬かったように思う。

庭から見える街道脇には、パウロの愛馬であるカラヴァッジョが待機していた。
耳を立てて、俺をじっと見ている。
「これから、村はずれまで向かいます。パウロ様から、馬をお借りしましたので、それに乗って行こうと思います」
「村はずれ…ですか?」
ロキシーは淡々と説明し、俺はそれを聞き返した。
聞こえなかった訳ではない。
『外』に行くのが、確定事項になってしまったのが、恐ろしかったのだ。
ロシキーは顔を傾げた。不思議そうな顔だった。

「…先生、その試験は、庭じゃダメなんでしょうか」
消え入りそうな、懇願の入り混じった声。
我ながら、情けのない声だったと思う。
…正直、座り込みたかった。
「ダメです。これから使う魔術は聖級魔術。村に多大な被害を及ぼしてしまいます」
真正面から俺を見る、ロキシーの目。
俺はその目を直視出来なかった。俯き、何か巧い言い訳を探していた気がする。
するとロキシーがクスリと笑った。
「ははぁ、もしかして、ルディは馬が怖いのですか?」
「え?」
考えもしなかった言葉をかけられ、頭が真っ白になる俺。

そして、奇跡が起きた。

「フフフ、ルディにも、子どもらしいところがあるんですね」
そう笑いながら、ロキシーは俺を抱え上げた。
「ヨイショッ!」
プニプニした見た目からは想像も出来ない力だった。
「え、ちょっ!」
俺を肩に担ぎ上げたまま、ロキシーはズンズン門へと向かっていく。

俺はパニックになった。
外に出る。世界が消える。ロキシーがいなくなる。全部消えてなくなる。ボッチに戻る。
目をギュッと瞑り、体を強張らせる。
(~~~~~ッ!!)
「行きますよ~、よいしょっと!!」
掛け声と共に、俺の体は宙に浮き、何かの上に乗せられた。
…馬だ。親父の愛馬、カラヴァッジョだ。
「……え?」
視界は高く、初めての風景を映していた。
五年間、ただの一度も見たことの無い風景。
「それでは、出発進行~」
いつしか、俺の後ろにロキシーがいた。
俺を抱え込むように手綱を握っている。
カラヴァッジョはブルンと嘶き、ゆっくりと歩を進める。
それにつれて、風景も動いていく。
「…え?」
柔らかい春の風が、頬を撫でていく。
草や花の匂い。自然の香りが、鼻腔に広がる。

見たことのない風景。
感じたことの無い空気。
生まれて初めての世界。

━━━広がっていく、俺の世界。

「ね?怖くはないでしょう?」
俺の頭は真っ白だった。ただ、ロキシーの声が、耳に心地良い。
「カラヴァッジョも、ルディを乗せる事が出来て、嬉しいみたいですよ」
目の前には、馬のたてがみ。両脇から見える長い耳が、俺を伺うように動いている。

「今日が試験日で、良かったです」
ロキシーは言う。
「風も太陽も、貴方を祝福してくれているみたいですね」
俺は後ろを振り返った。
朝日に照らされたロキシーの顔。
俺を見るその目は、慈愛に満ちていた。
ロキシーは俺の頭をさらりと撫で、顔を傾げて言った。
「もう、怖くは無いですよね?」
俺は、真っ白な心のままで、答えた

「はい、もう、怖くは無いです」

━━━神が奇跡を起こした日だった。

ピュンッ!

耳朶を打つ風切り音で、意識が呼び戻される。
随分昔の事を思い出していたようだ。

俺が、この世界に足を踏み出す勇気を与えてくれたロキシー。
俺が、もう一度、生まれ直すキッカケを与えてくれた、神。
余人は知らず、俺が彼女を崇拝するのに、こんなわかりやすい理由も無いだろう。
そんなロキシーも、俺の妻となってくれて、子どもを二人産んでくれた。
こんなに嬉しいことはない。
我が生涯に、一片の悔い無し。
空に向けて、ありったけの魔力をぶっ放してもいいくらいの幸運だ。

ピュンッ!

小気味よい素振りの音は続いている。
三人目の妻、エリスが愛用の長剣を振るっているのだ。
彼女と出会ったのは…そう、俺が七歳の頃だ。

親父であるパウロの策略(教育方針?)によって、俺は住んでいたフィットア領のブエナ村から、遠く離れたロアと呼ばれる城塞都市に住むことになった。
理由は、フィットア領主の孫娘の家庭教師に就くため、だ。
俺は前世の記憶を持っていたので、魔法の他にも算術が出来た。
良い子を演じてもいたので、礼儀正しいと見られていた。
そして、領主の孫娘と年齢が近い。
それが故の職業斡旋だった。

(…たかが、女の子一人の家庭教師なら、楽なもんだぜ)
そう思っていた時期が、俺にもありました。

領主の孫娘。
それが、後の俺の三人目の妻、エリス・ボレアス・グレイラットだった。

ところがぎっちょん。
当時のエリスは、貴族の子女なんてもんじゃなかった。
神と会ったら神を殴り、仏と会ったら仏を蹴り飛ばす勢いの餓狼の如き野獣だった。
初対面だった俺も、ご多分に漏れず、殴り飛ばされた。
「年下の癖に、私の家庭教師だなんて、生意気だからよ!」
それが理由だった。

彼女は2歳年上の9歳。
見た目は美少女。真っ赤な髪の持ち主で、気の強そうな目つきをしていた。
身体も同年代より大きく、動きは猫のように敏捷そのもの。
性格は攻撃的で、気に入らないことがあると、すぐに拳が唸りを上げた。

そんな彼女には、俺以外にも二人、師がいた。
淑女のマナーを教える中年女性と、剣術を教える獣族の美女。

剣術教授の方は、パウロと旧知の人物だった。
剣神流の剣王、ギレーヌ・デドルディア。
獣族と呼ばれる部族出身で、見た目は人間の女性だが、狼のような耳があり、尻には尻尾も生えていた。2メートル近い、鍛え抜かれた体躯の持ち主で、見た目通り恐ろしく強かった。
パウロとは俺が生まれる前に、冒険者としてパーティを組んでいたらしい。
彼女はそれについては、殆ど教えてくれなかった。どうも、パウロに含むところがあるようで、俺もそれ以上はつっこめなかった。

剣の腕はパウロ以上。
パウロは剣神流の上級で、ギレーヌは王級。当然ちゃ当然なんだが。
パウロにすら歯が立たなかった俺としちゃ、王級なんてモンの強さは想像も出来ない。

エリスはそのギレーヌに剣を習っていた。
ギレーヌ曰く、エリスは剣の才能があるようで、このまま教え続ければあるいは聖級にまで達するかもしれないとの事。
…今ですら手がつけられない凶暴性なのに、これが聖級になるのか?
俺はゾッとしたね。
ただ、なんとか我慢出来たのは、エリスが美少女だった事に他ならない。
これが、ゴリアーデさんみたいな奴だったら、とっとと逃げ出していたと思う。

しかし、というか、当然のように、最初は手を焼いた。
どうにか授業を受けて貰うよう、あらゆる手練手管を使った。
一年もすると、流石の野獣にも落ち着きが見られ、エリスの10歳の誕生パーティでは来賓の貴族たちの前でダンスも踊れるようになった。
…あの時のエリス、可愛かったな。

それから、俺が10歳になるまでの三年間。毎日彼女につきっきりだった訳だが。
徐々に、俺に対するエリスの態度が、変化していった。
それほど殴られなくなった。
素直になった。
妙に、俺に対する尊敬の念というか、我が事のように俺を自慢するようになった。
なんだかくすぐったいくらいだったが。
そうなってくると、俺も憎からず思うようになる。
危うく、致しそうになった事もある。無論、殴り飛ばされて事なきを得たが。
とにかく、その頃は毎日が楽しかった。
毎日、こんな日が続けばいいと、思っていた。

…好事魔多し。

そうして、あの、大事件が起こった。

━━━フィットア領・大消失転移事件である。



        ーその3に続きますー

それでは、また。(店`ω´)ノシ

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こんなに嬉しいことはない。ってくると毎回ガンダム思い出すんですよねぇw 我が生涯に〜は北斗の拳でかくていあですがw それはそれとして、ホント無職転生の二次創作が読めるなんて、こんなに嬉しいことはない。
32ヶ月前
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>>リョウ様

(店`ω´)閲覧、ありがとうございます。無職転生の二次創作、特に小説は少ないですから、えぇ。
自分が孫の手先生のこの作品を気に入った理由のひとつに、テンポのいい2ちゃんネタというか、そういうのが挿入されるところなんですよね。これのお陰で、真面目になりすぎない、いい意味で読み手に合わせた作風になっていたと思います。
なので、自分もこの作品の二次創作するにあたって、そこらへんのネタをさりげなく入れるようにしてます。こういうの入れよう!って用意するんじゃなくて、書いててさらりと流れで思いついたネタを入れる感じですね。ガンダムは元から大好きですので、普通に湧いてきました。
32ヶ月前
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