sabakinotubuteさん のコメント

続きを読むのがこわい
でも、とても優しい文章だと思います
No.3
14ヶ月前
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━━━「フィットア領転移事件」 これは未だに謎とされている大事件だ。 フィットア領土全域が、謎の光に飲み込まれ、住んでいた領民だけでなく、家や家畜など、ありとあらゆるモノが消失した。 後に残ったのは、何も無い荒地だけだったらしい。 領民の総数は五十万とも百万とも聞くが、その殆どが光の彼方に消え失せた。 幸運にも(不幸にも?)ケガも無く別の土地に転移した人間はいる。 俺やエリスがそうだ。ギレーヌもそうだし、パウロやリーリャ、二人の妹達もだ。 ただ、母親であるゼニスは何故かベガリット大陸の迷宮の最深部、それも巨大な魔力結晶の中に転移してしまった。 それについても、何故かは判明していない。 俺はナナホシから、考え得る限りの仮説を聞いてはいるが、それでもただの推測に過ぎない。 多分、俺が生きている間に真相は解明されないだろう。 何しろ、ペルギウスやオルステッドですら、匙を投げているのだから。 この事件は、俺が10歳の誕生日の翌日に起きた。 …エリスと致しかけた、その翌日だ。 聖級魔術が見たい。 そうギレーヌに言われた俺は、エリスと彼女を伴って、ロアの街から数キロ先の丘まで足を運んだ。ロキシーからも、無人地帯で試すよう言われている。 それではと、張り切って披露しようとしたその時、異変は起きた。 ロアの街の上空一帯が怪しい色に変わり、突如として光の柱が周囲を飲み込んだ。 あっという間。 暴力的ともいえる光の奔流に、俺たちも飲み込まれた。 気が付くと、俺とエリスは、魔大陸と呼ばれる場所に転移していた。 それからの三年間。俺はエリスを守りつつ、フィットア領に帰る為の旅を続けた。 そういや、そん時にヒトガミと初対面したんだっけ。 ここんとこずっと妨害も無いが、アイツ、どうしてるかな。 嫌なヤツだったけど、アイツのお陰で、ルイジェルドと仲良くなれたんだったか。 俺の親友でもあり、家族とも呼べる存在。それがルイジェルドだ。 彼は時折シャリーアの我が家に訪れる。 ビヘイリル王国との折衝役でもある彼は、俺やその一党への情報伝達役でもある。 スペルド族とビヘイリル王国は今のところ上手く付き合いを続けており、鬼族と共に、王国の防衛の要にもなっているようだ。 そういった平常の報告をしに来ると共に、自分の娘を連れてやってくる。 どちらかというと、そっちがメインみたいなもんだ。 長命なスペルド族の一員らしく、いつまでも少女の姿のままだ。 眉目秀麗な一族なので、彼女も美貌の持ち主である。 …名前はなんてったっけか。 ダメだ。どうにも頭がボンヤリする。春だからか。俺も歳を食ったな。 ピュンッ! また、エリスの素振りの音で、意識がクリアになっていく。 そう。あの旅で、俺とエリスの仲も、親密になっていったんだっけ。 そりゃ、思春期入りたての男女だもの。仲良くもなるさ。 …コワモテの魔族が間にいたけどな。 三人で、この世界の半分を旅した。 魔大陸からミリス大陸。ミリス大陸から中央大陸。 地球世界だったら、あっという間の距離だったんだろうが、なにせこの世界は飛行機も車も無い。大陸間を移動するなら、ガレー船か帆船で移動するしかない。 まぁ、後に俺は禁断の転移魔術を使うことになる訳だが、それは今はどうでもいい。 本当に色んな所を旅したし、色んな人達と出会った。 善人もいれば、悪人もいた。 ロキシーのお父さんとお母さんにも出会えた。 あ。そういえば。 魔!界!大!帝!もいた。世界に一匹のレアキャラだけどな。 旅の終わりには、衝撃的なオルステッドとの出会いがあった。 出会って、すぐブッ殺されたけど。ナナホシが取りなして、俺は生かされた。 その時に、ルイジェルドもエリスも、完膚なきまでに倒された。 二人共、気落ちしていた。引き換え、俺は割とのんきだったと思う。 蘇生された後、俺はなんとなく興味が沸いて、オルステッドの使っていた「乱魔(ディスタブマジック)」を習得しようとした。 試行錯誤する俺の側に、エリスがピッタリ寄り添っていたっけ。 エリスは何故、そんな事をしてるのかと俺に問うた。俺は次はエリスを抱えて逃げるためと、半分誤魔化して答えた。嘘ではないんだけど、照れ隠しだ。 その時、彼女も「自分も強くならないと」と心に誓ったらしい。 彼女は彼女で、俺を守るために、という理由らしい。 それだけの為に、ここまで強くなったのか。 そう考えるだけでも、乙女心がキュンとしちゃうな。 エリスは、アタイだけのヒーローよ。 「……エリスは、流石だなぁ」 ポツリと、そんな言葉が俺の口から漏れた。 俺自身、少し驚いた。 不意に口をついて出たからだ。 エリスにも聞こえたようで、素振りを止め、キョトンとした顔でこっちを見ている。 「なによ、どうしたのよ急に」 珠のような汗が、額に溢れている。 俺は手招きをする。 それから、近寄ってきた彼女の汗を、袖で拭ってやった。 「フフッありがとう」 素振りのせいか、照れのためか、顔が赤い。綺麗な顔だなぁ。 結婚してから毎日、この顔を見続けてきた。 毎日、惚れ直してきた。 愛する妻のエリス。 俺を愛してくれるエリス。 俺だけの、エリス。 「ねぇ、エリス」 「なに?どうしたのよ、さっきから」 声をかけたものの、俺自身、何が言いたかったのかよくわからなかった。 多分、照れ隠しだったんだと思う。 照れくさいので、なんとなく、いつものセリフを言ってみた。 「おっぱい、触ってもいい?」 そういうと、エリスは目を丸くして口を半開きにした。 それからキュッと口を閉じ、お馴染みのボレアスポーズを取る。 「そういうのは、寝室でだけよ」 そういって、エリスは俺の頬を軽くツネった。 「うぇひひ」 痛みはない。むしろ心地良いくらいだった。 いつ頃からか、彼女は俺のセクハラに対して、得意のボレアスパンチではなく、こういう優しい反撃に出るようになった。 いつからだっただろうか。 息子のアルスが結婚した頃だろうか。 娘のクリスティーナが孫を生んだ頃からか。 俺が足を悪くした頃からだろうか。 本来、彼女は優しい女性なのだ。 ただ、不器用なのだ。 エリスは一見、暴力的な女性に見られる。 だがそれは、自分にとって大事な存在を守るために発揮される本能のようなものだろう。 オルステッドと二度目の殺し合いをした時に、俺を庇って立ち向かった時。 死神ランドルフとの交渉の時。 闘神バーディガーディとの決戦の時。 彼女は俺を守るために、鬼子母神となる。よく知らないけど。 それに、彼女は家族には一切手を上げない。 …俺のセクハラに対しては、照れ隠しのツッコミだと、弁護しておこう。 勿論、彼女は剣術の稽古になると厳しい。 アルスやクリスティーナが幼くして剣神流上級になったのも、後に剣の聖地で頭角を現したのも、彼女の鍛錬の賜物だ。そこに一切の私情は無かったと思う。 「やりたくないなら、やらなくていい。でも、やるんなら、トコトンやりなさい」 「自分なりに、考えて、無心でやり通しなさい」 「昨日より今日。今日より明日、どうすれば強く、疾くなるか、解るまで剣を振りなさい」 「悩んだら、休みなさい。お風呂に入って、ご飯を食べて、ぐっすり眠りなさい」 「朝になったら、また剣を振りなさい。私のように!」 これが、エリスの教え方だ。 子供たちに剣を教えるのは好きだが、強制はしたくなかったようだ。 でも、エリスが剣を振るってると、いつのまにか子供たちは真似をしだした。 エリスは天才肌だが、驚いたことに、人に合わせた教え方も出来た。 それは、決して才能のあった訳ではない妹のノルンに対しての教え方を見てもわかる。 エリスと毎日剣を振るうせいか、みんな健康的に育った。 最近の彼女の目標は、先年生まれたアルスの孫のフェリスに剣を教える事だという。 「早く大きくなりなさい。私と一緒に剣を振るのよ」 揺り篭で眠るアルスの孫娘に語りかけながら、エリスは微笑んでいた。 なんだろうな。シルフィとの子供たちはみんな冒険家になり、ロキシーとの子供は救世主、それに学者となり、エリスとの子供はみんなひとかどの剣士になる。 アイシャは天才だったし、ノルンも小説家として名を成した。パウロの遺伝子は大したもんだ。女の子に生まれれば、ゼニスの遺伝子も大いに発揮される。 しかし、俺の遺伝子はどこに発揮されているというのか。うーん。 ま、それはいい。エリスにも次の目標があって、毎日楽しそうだ。 そんな彼女は、稽古も一段落ついたのか、俺が水魔術で濡らした手拭いで汗を拭いている。 「ふぅ。サッパリしたわ、ありがとう」 「うん、お疲れ様」 エリスに頷き返すと、彼女は俺の頬に軽くキスをした。 「昼食まで、軽く寝てくるわね。あとで起こしてちょうだい」 「おっけ。俺はもう少しここにいるよ」 「暖かくなったとはいえ、風邪なんか引かないでよ」 そういって、エリスは家の中に入っていった。 暫くすると、バタンという音がした。エリスがベッドに飛び込んだ音だろう。 彼女は大人しくなったとはいえ、時折昔の癖で大きな物音を立ててしまう。 一時期は子供が真似をして大変だった。ルーシーが一番真似をしてたっけ。 「フフ…エリスは変わらないな」 ふわりと、柔らかい風が舞った。 俺は椅子に座り直し、目を閉じた。 瞼に陽の暖かさを感じる。 サラサラと頬を撫でる風が優しい。 小鳥が囀り、花の香りが鼻腔に広がった。 やっぱり、もう春なんだな。 ロッキングチェアを軽く揺すりつつ。 いつの間にか。 俺は寝入っていた。 ━━━この時、うっかり寝入ってしまったことを、俺は終生後悔した。                         ーその4に続きますー それでは、また。(店`ω´)ノシ
(店`ω´)@てんちょっぷ 趣味のブロマガ
(店`ω´)こんぬづわ。店長です。

「無職転生」の二次小説ばかり書いています。

趣味は空手、ボクシングなど格闘技、筋トレ。

保育のお仕事時代に培った技術を使っての紙素材工作。朗読。ギター収集。