無職転生・二次創作小説「エリスは流石だった」その7
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無職転生・二次創作小説「エリスは流石だった」その7

2015-04-26 22:15

    ━━━懐かしいセリフを、聞いた気がした。

    きっと、熱と自責の念が生んだ、幻聴だろう。
    それくらい、今の俺は朦朧としている。

    何時間、自分を責め苛んでいたか。それすらわからない。
    目を開けようにも、熱のためか、泣き腫らしたためか、億劫だ。

    ━━━ハッ、頭がおかしくなって、とうとう幻聴まで聞こえるようになったのか。

    自分で自分を嘲笑う。
    俺はパウロを死なせたあの頃から、ちっとも成長していない。
    自分で自分の悲しみすら、整理する事が出来ない。
    パウロが俺を見たら、嘆くだろうか。
    エリスが俺を見たら、愛想を尽かすだろうか。

    「ハァ?何を馬鹿言ってんのよ」

    …また幻聴か。
    いや、幻聴でもいい。
    エリスの声だ。
    大好きなあの声だ。悪いことではない。

    俺は深く呼吸し、喘ぐように言葉を吐いた。
    「…ごめんな、エリス」

    俺は、君を助けられなかった。
    あんなに、俺を愛してくれたのに。
    俺は君の最後すら、看取ってやれなかった。
    俺はパウロを無駄死にさせた。ゼニスも治せなかった。

    ━━━それだけでなく、エリスまで一人ぼっちで逝かせてしまった。

    その事実が、胸を掻き毟る。俺は無力だ。どうしょうもない。

    また、涙が沸き上がってくる。

    その時━━━額に、ひやりとした手が添えられた。
    …気持ちがいい。熱で脈動する顔が、幾分楽になったきがした。

    「本当に、泣き虫なんだから」

    幻聴…ではない。
    俺は萎えかけた気力を振り絞り、開かない瞼をこじ開けた。

    そこには━━━。









         ---エリス視点---


    「━━━ボクは、ヒトガミだよ」

    目の前にいる、…目の前かどうかわからないが、ソコにいるソイツは、そう言った。
    陽炎の向こうにいるように、ボンヤリとして見える。
    やけに神々しい雰囲気。人を安心させる空気を醸し出している。

    ━━━でも、私の中の何かが、警戒音を発している。
    カチン、カチン、カチン、カチン。
    どこかで聞いた音。無意識に聞いていた音。

    「ん~、随分警戒されてるなぁ。ボクの呪いは効いているハズなんだけど」

    ソイツは大仰に首を傾げた。
    なんだか、段々気に入らなくなってくる。

    「あれ?ボクの事、覚えてないの?ヤダなぁ、長い付き合いだったのになぁ」

    ソイツは馴れ馴れしく近寄ってくる。
    私は間合いを崩さず、ジリジリと弧を描くように移動する。

    カチン、カチン、カチン、カチン。

    …ヒトガミ。誰だっけ。
    自慢じゃないが、私の頭は良いとは言えない。
    あれだけルーデウスに教わった算術や文字も、それほど頭に残っていない。
    だけど、コイツの発した名前には覚えがある。確か、ルーデウスが昔…。

    「そうだよ。ボクはキミの旦那とその家族の命を狙っていた、悪い悪い神様さ」

    ソイツは両手を大きく広げ、ニタァ~と笑った。…笑ったと思う。
    あぁ、思い出した。
    敵だ。
    コイツがルーデウスの敵だ。
    ルーデウスは家族を人質にされ、オルステッドと戦い、両腕を切り落とされた。
    ルイジェルドを騙し、彼の一族を根絶やしにしようとした。
    剣神ガル・ファリオンは、その口車に乗って、私と戦い、命を落とした。
    ギースはコイツにたらし込まれ、結局死ぬことになった。

    覚えているだけでも、これだけある。
    きっとルーデウスは、私の知らないところで、もっと苦しんだだろう。
    ルーデウスに関わりのあった者は、さらに悲惨な目に遭っただろう。
    それだけでも、コイツは斬られる理由がある。

    カチン、カチンと音がする。

    だが、今の私の手には、馴染んだ愛刀は握られていない。
    そして、コイツの気配。妙に人懐こい気配の後ろに、強大な力を感じる。

    ━━━危険。本能が、魂がそう叫んでいた。
    ━━━かつて、龍神オルステッドに感じたように。

    「あんな奴と一緒にしないでよ。ボクは、あんな悪人とは違う」

    抜け抜けとヒトガミは言った。

    「ボクはねぇ、暇つぶしに君たちの世界を覗き見してるだけさ」
    「キミたちは本当に面白い。勝手に生まれて、勝手に争って、勝手に死んでいく」
    「偉そうにしてる貴族や王様を、ちょっとつついてやる」
    「次の日には、疑心暗鬼になり、暗殺者を差し向ける」
    「愛し合う恋人がいて、それに横恋慕する奴がいる」
    「ソイツをけしかけて、恋人の間を引き裂く」
    「面白いゲームだよ。暇つぶしには丁度いいのさ」

    クスクスとソイツは笑う。本当に楽しそうに。
    頭のどこかで、カチン、カチンと鳴っている。

    「勿論、ボクだって鬼じゃない。人助けもするさ」
    「死にそうな奴を助けたり、迷っている奴に助言を与えるんだ」
    「ソイツ等はボクに感謝し、神様と崇めてくれる」
    「とても楽しいよ。いい気分だ」
    「そして、ソイツがボクを信頼しきった時に、ズドーン!奈落の底に突き落とす」
    「こんなドッキリ他にないよね~!!アハハハハ!!」

    腹を抱えて笑いだした。多分、涙も流している。
    カチン、カチン、カチン。警告音が、唸りを上げている。

    ヒトガミは愉快そうに笑っていた。その笑いが、ピタリと止まる。
    腹を抱えた姿勢のまま、ぐりんとこちらに眼を向ける。

    「…だが、キミの旦那だけは、思い通りにならなかった」
    「王様だろうが大貴族だろうが、なんでも思うとおりになった」
    「剣神だって、水神だって、魔王だって、ボクの駒になった」
    「なのに、アイツ一人を殺せなかった」
    「無能な駒のせいで、ボクの未来は真っ黒だ」
    「ボクは生きたい。未来永劫、オモチャで遊んでいたい」
    「それを邪魔する奴は、残らず排除してやる」

    カチン、カチン、カチン、カチン、カチン━━━
    カチン、カチン、カチン、カチン、カチン━━━

    うるさい。少し黙れ。

    「ざまぁみろ」

    ヒトガミは私を凝視しながら、ゆっくりとにじり寄ってくる
    カチン、カチン、カチン、カチン、カチン━━━
    カチン、カチン、カチン、カチン、カチン━━━

    「キミは死んだ。ルーデウス・グレイラットの牙であるエリス・グレイラットは死んだ」
    「これでもう、アイツを守る牙は無い」
    「オルステッドは呪いで本気を出せない」
    「あいつの配下もどうってことはない」
    「悔しいだろ?」
    「キミが死んじゃったせいで、キミの大事な大事な旦那様が死んじゃうんだ」

    無遠慮に近寄ってくる。
    寄るな。気持ち悪い。

    「どうやって殺してやろうかな?いや、先に家族から一人ずつ殺してやろうかな?」
    カチン、カチン、カチン、カチン、カチン━━━
    うるさい。

    「出来るだけ苦しませてあげないとね。ボクも随分イヤな思いをしたんだからさ」
    カチン、カチン、カチン、カチン、カチン━━━
    黙れ。

    「ねえ!ねえねえねえ!悔しい?悔しい?悔しいだろぉ~!悔しいって言え━━━━」

    「うるさいって言ってんのよ!!!」

    叫びながら、私は利き腕を横薙ぎに振るった。
    ヒトガミは、驚愕したようにのけ反り、そのまま固まってしまう。

    「人が大人しく聞いてれば!
    ガタガタガタガタうるさいのよ!!
    少し黙れ!!!」


    落雷のような怒鳴り声を発し、エリスはダンッと一歩前に出る。
    そして、切っ先を竦み上がるヒトガミの喉元に向けた。

    ━━━ん?切っ先?

    ふと見れば、私は剣を握っていた。
    使い慣れた愛刀ではない。でも、このしっくりくる感じ。
    どこか覚えがある。どこかで喪ったこの感じ。

    少し反りのある片刃の直刀。
    薄く緑色に光る刀身。
    練り込められた清涼な魔力。

    ━━━あ。

    それは、かつて闘神戦で喪った、己が相棒。

    「剣神七本剣」がひと振り。

    ━━━「鳳雅龍剣」そのものだった。




         ーその8につづきますー



    それでは、また。(店`ω´)ノシ

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