無職転生・二次創作小説「エリスは流石だった」その9
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無職転生・二次創作小説「エリスは流石だった」その9

2015-04-27 15:07

    「だからこう言ってやったの━━━童貞でしょ!」
    エリスがドヤ顔をする。
    ババーンという集中線を、俺たちは強いられているんだ!

    その下りで、俺は堪えきれずに爆笑した。
    言うに事欠いて、あのヒトガミに「オマエ、童貞だろ」って言うとは。
    きっと、慌てて「ドドドド、童貞ちゃうわっ!!」って否定しただろう。

    エリスは腕を組み、肩幅に足を広げたボレアスポージングで、フフンと鼻息を荒くした。
    出会った頃の、傲岸不遜な少女のままの姿で。


    俺が熱にうなされ、自責の念に苛まれている時、額に冷やりとした手が添えられた。
    ようようと腫れた瞼をこじ開けると、その眼に映ったのは、エリスだった。
    まるで、蛍のような燐光を放ちながら、彼女は立っていた。
    ━━━九歳の時のままの姿で。


    驚愕し、言葉の出ない俺を、エリスは手を伸ばして、優しく撫でてくれた。
    それだけで、俺の熱は嘘のように下がっていった。
    今では随分楽になった。

    落ち着くと、俺はなんでそんな姿なのかと疑問を口にした。
    どうせ夢なのだろうし、この際だ、楽しんでしまえ。
    そんな余裕も生まれていた。夢であっても、嬉しい。

    「━━━さぁ?あの腰抜けの頭を鷲掴みにしたら、この屋敷が見えたから、ルーデウスの様子を覗いてみたのよ」

    エリスはとんでもない事を口にした。
    ヒトガミの頭を鷲掴み。
    アイツの千里眼(なのか?)を逆利用したのか?凄いな。新しい。今度俺もやってみよう。

    それから、エリスは気がついたら白い世界にいた事、ヒトガミが接触してきた事、ヒトガミの嫌味にブチ切れた事を説明してくれた。

    なんていうか、エリスが凄すぎて、二の句が継げない。
    なんだよ魂の剣化って。どこのサーヴァントだよ。そういやアレも赤かったっけ。

    呆れながらも、俺は懐かしいエリスの少女姿を眺めた。
    赤くて豪奢な髪の毛。黒いカチューシャ。お嬢様専用・高級カジュアル。
    なにもかも、出会ったばかりの、あの頃のままだ。
    溢れてくる想いに、胸が詰まる。

    「ところでルーデウス。貴方、泣き過ぎよ」
    愛しさと切なさと心強さに胸が一杯になっているところに、エリス様の容赦のない言葉。
    ━━━なんちゅう事を。なんちゅう事を言うんや。
    人の気も知らないで、彼女はそう言い放つ。
    「泣き虫もいい加減になさいな。フェリスに笑われるわよ」
    また頭を撫でてくれる。いいな、コレ。凄くいい。

    「だってさ。エリス、死んじゃうんだもん。そりゃ泣くだろ」
    俺は拗ねてみた。今はママに甘えたい気分なのだ。
    「んー、それは、…うん、悪かったと思うわよ」
    若干困り顔で、エリスは頭を掻いた。
    「でもさぁ、気がついたら死んでたんだもん。私だってちょっとはショックよ?」
    あんまりショックに見えない。しかもちょっとって。

    「100歳くらいまでは、元気でいるつもりだったし、フェリスに剣を教えるつもりだったしね。せめて、あと20年は生きていたかったわよ?」
    腕を組んで、サラリと言う。そこですか。そこなんですか、ショックなのは。

    「まぁ、私は先に行って待ってるから、ルーデウスはゆっくりでいいわよ」
    少女らしい微笑みを、ボレアスポーズのまま、俺に向けるエリス。
    …内容は、割とキツいけど。

    「俺も、今すぐ飛んで逝きたいところだけど」
    浪漫飛行だ。
    「ダメよ!今来たら、殴ってでも追い返すわ!」
    俺の弱気な発言を、エリスが返す刀でブッた斬る。このエリス、容赦せん!
    「残されるシルフィやロキシーをどうする気?無責任でしょ!」
    「…キミがそれを言うのか?」
    あんまりだ。ぁぁぁあぁんんまりだぁぁぁぁあぁあ!!

    「だって、私はもう死んだもの。仕方ないじゃない」
    そう、もうエリスは死んだのだ。
    元の鞘には、もう戻らない。覆水盆に返らず。

    現実を思い出し、しょげ返る俺。
    エリスはそんな俺の頭を、再度撫でる。
    「━━━ルーデウス。貴方、なにかやりかけなんでしょ?」
    「それを、やりきってから、こっちに来なさい」

    やりかけ?なんだっけ。
    頭のどこかで何かが引っかかった。
    ジークもなんか言ってたな。俺とロキシーが頼んだ魔法陣、とか。

    ━━━あ。アレか。

    「……魔力の結晶化魔法陣のことか」
    我知らず、そんな言葉が口をついて出た。
    エリスはキョトンとしている。
    「なによ、それ」
    「えっと、魔力結晶を人工的に作り出す魔法陣だよ。ここ数年、研究してたんだった」
    俺はなにもかも、思い出した。むしろ、なんで忘れていたのか。

    「オルステッドは魔力を消耗すると、回復に恐ろしく時間がかかる」
    「だから、外側から補給できないか、色々試した」
    「前後龍門召還を魔法陣化してみたり、魔力濃縮ポーションを作ってみたり」
    「どれも上手くいかなかった」

    説明する俺を、エリスはただ見ていた。多分、半分も理解していない。
    次に俺は、クリフの作った魔道具に着目した。
    例のエリナリーゼの持病『魔石病』である。厳密には若干違うのかもしれないが……。

    「アレはよくわからないけど、体内で魔力が溜まり、魔力結晶になる呪いだった」
    「それの仕組みを分析して、結晶の魔力を逆に肉体に還元出来ないか試してみた」
    「分解する事は出来た。だが、迷宮産の魔力結晶では肉体には取り込めなかった」
    「アレルギーのような症状が出てしまう。きっと、なにか質が違うんだ」
    「なら、普通の魔力結晶ではなく、人の魔力から生み出したものなら、馴染むかも知れない」
    「その為の、人の魔力を結晶化させる研究を、ペルギウスとジークに頼んでたんだ」

    魔力結晶の産出をエリナリーゼに頼めれば一番いいのかもしれないが、彼女も人妻であり、なにより親友の奥さんなのだ。気軽に頼めることじゃない。どれほど大量に必要とするかわからないし、彼女の魔力結晶にする過程も過程だし、な……。

    とにかく計画の目処は立った。あとはそれにむけての試行錯誤をするだけだった。
    基礎理論はロキシー。素材である魔力供給は、勿論この俺だ。
    魔法陣といえばペルギウス。
    俺は奴とジークに協力を求め、定期的に空中城塞で実験をした。

    ナナホシの積層魔法陣群に匹敵するほどの、濃密な魔法陣を開発。
    試験を繰り返し、徐々に複雑化、巨大化していく。

    実験の度に、俺の魔力は枯渇寸前まで吸い上げられた。
    一ヶ月ほど休養を取り、回復次第、また実験。

    それを繰り返していく度に、俺の肉体は衰弱していった。
    それと同時に、その頃から、記憶が途切れる感覚があった。

    実験は一時中断、理論を根本から練り直す事にした。

    ……そっか、最近どうにも頭がボヤけると思ったら、そういう事か。
    ……俺自身の実験の後遺症だったのか。
    何事も、ヤリ過ぎは毒。ゲームは一日一時間。no moreテクノブレイク。

    「アホだな、俺は」
    頭をポリポリ掻いた。エリスはキョトンとしっぱなし。
    「━━━でも、それは、家族の為なんでしょう?ヒトガミと戦うための」
    ……家族の為。
    ……ヒトガミと戦うため。
    その言葉に、ボヤけた頭が少し、クリアになった。
    頭の片隅で、何かが閃いた。
    「━━━そうだ。初心に還ればいいのか」
    俺は遅々として進まない実験結果に焦っていた。
    ムキになりすぎて、手段と目的を、履き違えかけていた。

    一度、白紙に戻してみよう。
    違った観点から、目標設定してみよう。
    ボヤけた頭と、潰れそうなくらい苦しかった心が、少しずつ晴れてゆく。

    「━━━エリスは凄いな」
    俺は彼女を見つめて、そう言った。心からの言葉だった。
    エリスはよくわからない顔をした。ただ、嬉しそうに頷いた。
    その動きで、蛍に似た燐光が、彼女の身体から零れていく。

    ━━━エリス姿が、徐々に薄れていく。…ほつれていく。

    俺は急に寂しくなってきた。
    「……エリス、もう、逝くのかい」
    彼女も気がついたのだろう。自分の手や身体を見回した。
    それから、俺を見て、寂しそうに笑う。
    「そうみたいね。段々、意識も薄れてきたわ」
    「そっか…」

    俺は言葉を探した。
    まだ、なにか伝えていない事は無いか。
    むしろ、まだ何も伝えられていない。
    このままだと、また俺は後悔に包まれるだろう。
    焦りはしても、思考はまとまらない。折角頭はスッキリしてきたのに!

    「エリス…エリス…」

    俺はエリスに手を伸ばした。エリスはその手に、指を絡める。
    現実味が、どんどん輪郭を失っていく。
    ポロポロと、光が零れていく。
    エリスが解けていく。
    光の粒になって、消えていく。

    「ねぇ、ルーデウス」
    エリスは呟いた。
    「ひとつだけ、お願いがあるの」
    モジモジしている。なんだか可愛い。

    「……あのね」
    「もし、もしね」
    「もし、私達が生まれ変わって、また出会えるとしたら」

    「━━━私を、またお嫁さん、に、して、くれる?」

    つっかえつっかえ、そう言の葉を紡ぐエリス。
    綺麗な瞳が、俺の年老いた貌を映していた。
    俺はその顔を、できる限り、引き締めた。

    「ああ━━━俺は、何度生まれ変わっても、キミを探しだす」

    エリスの瞳が揺れる。

    「ルーデウス・グレイラットは、エリス・グレイラットを妻にする事を誓う」

    エリスの瞳から、ポロリと一粒、涙が零れた。

    「だから」

    エリスの綺麗な顔が、俺に近づいてくる。

    「俺と」

    俺は、その顔を、魂に刻みこんだ。二度と、忘れないために。


    「━━━結婚してください」


    そして、俺とエリスは、くちづけをした。

    最後の、くちづけ。

    さよならの、くちづけ。

    誓いの、くちづけ。

    ━━━世界一の、くちづけを。









    目を覚ますと、朝になっていた。
    窓の外から、小鳥の囀りが聞こえる。
    俺はボンヤリ天井を眺めていた。

    ━━━アレは夢だったのか。
    ━━━それとも、現実だったのか。

    どちらでも構わない。
    エリスは来てくれた。
    また、俺と出会いたいと、
    ━━━結ばれたいと言ってくれた。
    それだけで、十分だ。

    俺の心は、窓の外に広がる青空と同じくらい、澄み渡っていた。
    勿論、寂寥感も残っている。
    でも、それはいずれ、時間が解決してくれる筈だ。

    まず今の俺がやるべきは、心配してくれてるであろう、シルフィとロキシー。
    それから、家族に謝る事だ。
    それから、エリスをきちんと見送ってやらないとならない。

    熱はすっかり下がっていた。体調も悪くはない。

    「━━━よし」
    俺は呟くと、ベッドから身を起こした。
    ……胸のあたりから、ポロリと何かが落ちる。
    みれば、それはどこかで見た覚えのあるモノだった。

    黒いカチューシャ。
    ━━━エリスのカチューシャ。


    エリスは来てくれたのだ。
    本当に、会いに来てくれていたのだ。
    この世界の常識を覆して……。

    「……ハハッ」
    俺は笑った。
    カチューシャを手に取り、それを眺める。

    そして、心の底から、こう思った。






    ━━━エリスは流石だな。







        ーエピローグにつづきますー



    それでは、また。(店`ω´)ノシ




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