無職転生・二次創作小説「お前、いつからそう錯覚していた?」その3
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無職転生・二次創作小説「お前、いつからそう錯覚していた?」その3

2015-05-04 06:32

    「━━━そこに現れたるは、何を隠そう、この我!甲龍王ペルギウスその人なりィ!」

    ババーン!と、効果音と集中線が出そうな勢いで、ペルギウスが叫んだ。
    まるで歌舞伎の決めポーズのような格好でノリノリだった。

    「オォーッ!!」

    それに歓声を上げたのは、我が妻にして夫のエリス・グレイラット。
    顔を上気させ、両手を口元でグッと握り締めている。
    なんか、子どものように、目がキラキラ輝いていらっしゃる。

    ……俺はといえば、先程から、ずっと自分の尻をツネっていた。



    そう、ここは遥か天空の城。
    雲の彼方に見えし、空中城塞ケィオス・ブレイカー。
    そこの、すんげー広い庭園である。

    俺はエリスにせがまれ、フラグ立ての仕事が終わった、とある某日。
    ここ、ペルギウスの居城に二人、連れ立って来たのだ。

    目的は勿論、かねてよりエリスが興味深々だった、龍神ウルペンの事を聞きに、である。
    最初、ペルギウスは迷惑そうであった。

    それもそうだろう。唐突に、剣王装束と魔剣でフル武装したエリスが押しかけ、
    「龍神ウルペンの武勇伝をお聞かせ願いたい!!」
    と例の大声で喚き散らしたのだから。
    まるで、聞かせてくれないなら、今から暴れるぞとでも言わんばかりの剣幕だった。

    すわ戦闘か、とシルヴァリルが色めき立ったが、寛大なる甲龍王はそれを抑えた。
    逆に、何の目的かと問いただした。当然である。……本当にすんません。

    エリスは剣神流の挨拶をしつつ、神妙に答えた。

    「ハッ!私は幼少より、数々の英雄譚を寝物語に聞いて育ちました」
    「その中でも、特に憧れていたのが、魔神殺しの三英雄!」
    「その三英雄が一人、かの高名なる甲龍王ペルギウス様の知遇を得た我が身の幸運!」
    「どれほど興奮し、どれほど天空の神々に感謝したことか!!」
    「然れども、いかほど英雄譚に魅せられど、我が身は未だ、修練の足らぬ未熟者」
    「さればこそ、卑小なりし者なれど、甲龍王の武勇を幾ばくか聞かせて頂ければ無上の喜び」

    ……とかなんとかペラペラとまくし立て、まんまとペルギウスを担ぎ出してしまった。
    もしもしエリスさん?カンペでも用意してたんですか?何よそのセリフ。

    ペルギウスは最初こそ、胡散臭げな顔をして聞いていたが、徐々に気分が乗ってきたようで、終いには腕を組み、大いに頷いていた。
    それから突然ズガーンと玉座より立ち上がり、片手を振るってマントを翻し、

    「シィルヴァリルゥッ!!我は興が乗ってきた!!今すぐ庭園にて茶席を設けよッ!!」
    と喚き散らした。

    俺はシルヴァリルが気分を害していたら謝罪しようかと構えていたが、彼女もエリスの口上を聞いて、えらく上機嫌になっていた。かなりチョロい。
    ……まぁ、自分の崇拝するご主人様を褒めまくられれば、誰でも気分も良くなるだろう。
    こんな雲の上じゃ、毎日が暇だろうしな。


    ━━━んで、もう二時間ほど、ペルギウスの独壇場な訳だ。
    流石に百年余りもウルペンらと一緒に旅をしていれば、ネタは語り尽くせん程あるだろう。
    エリスはずっとご機嫌で聞いてるし、ペの配下の連中も(全員、並んで侍ってやがる)、

    「ヨッ!!甲龍王!!」
    「我らが英雄王!!」
    「中村屋!!」
    「サイゼリヤ!!」
    「Oh!yeah!!」

    などと囃したてていた。

    「ハッハァー!!」

    ペルギウスは椅子の上で、超ドヤ顔でボルト・ポージングを決めている。
    天空の城ナウ・オン・ステージ。ペルギウス一世一代伝説のライヴ。
    茶席は沸きに沸いていた。

    ……俺以外は。




                    *




    ━━━時は少し遡って。

    シャリーア郊外の事務所。
    龍神オルステッド・コーポレイション社屋。
    薄暗い、社長室(兼・会議室)。

    土魔術で作ったテーブルを挟んで。
    俺は、オルステッドと差し向かいあっていた━━━。

    「ビックリしましたよ。てっきり、オルステッド様がSATSUGAIされたものと…」

    俺は持参した紅茶の葉を淹れ、オルステッドに差し出した。
    熱湯とカップなどは、勿論自前の魔術製である。

    「━━━あぁ、すまんにゃ」

    オルステッドは寝起きの声で、カップを受け取った。
    両眼をシパシパしている。
    ……寝ぼけたライオンでも見ているような気分だ。

    「ウルペンの秘伝書を読みつつ、メモに記述しているうちに、寝入ってしまったようだ」

    紅茶を啜りつつ、こめかみを揉んでいる。

    「……中々、旨いな。良い香りだ」
    「あ、ありがとうございます」

    嬉しい。褒めらりた。
    なら、俺も遠慮なく紅茶を飲むことにする。
    シルフィに聞いて、一番人気の茶を買ってきた甲斐があった。

    「……ウルペンの秘伝書を読むのは、随分久しぶりだったからな」
    「へぇ、どれくらいなんですか?」
    「うむ、…かれこれ、一万年以上は経過しているだろう」

    一万年…スケールが壮大過ぎて、イメージが湧かない。
    えーと、恐竜が一億年くらい前。
    エジプトのミイラが五千年くらい前で。
    中国拳法の達人たちが通過したのが四千年くらい前。
    パンツ一丁のガチムチ戦士300人がスパルタしたのが、……2千年前?

    ……ダメだ。俺の知識じゃ、子どもの絵本みたいな世界しか浮かんでこない。
    タイムトラベルを楽しむ女の子が、大好きな絵の中に閉じ込められたイメージだ。

    オルステッドが言うには、200年の時間猶予のタイムループを100回以上繰り返しており。
    体内時間的には、二万年を超えているとの事。
    もう、俺だったら頭がおかしくなって死ぬ。
    そりゃ、呪いでもないのに、怖い顔にもなるよな。口に出せないけど。

    その二万年のループの最初の方で、くだんの秘伝書を発見。
    解読と実践に、十数年かけたらしい。

    ━━━龍神ウルペンの武術。
    ━━━龍神流格闘術・龍神拳。
    ━━━極めれば、黄金の鉄の塊のような闘気を纏う事が出来る。
    ━━━最強奥義を繰り出せば、地形すらも変えられる。
    ━━━海原を自在に疾り、天空を舞う竜すらも一撃で屠る事が可能。
    ━━━恋人が出来、宝くじにも当たり、希望大学にも合格!

    ……最後のは冗談です。フヒヒ、サーセン。

    俺にも、その武術って使えるんですか?と聞いてみた。
    答えは、否だった。
    どうも、種族的な素質に頼る部分が大きいらしい。

    「例えば、戦いの「型」などは、教えられるが」
    その戦い方も、龍族の肉体的な強さを拠り所にしているので、人族には無理なようだ。
    特に龍族以外で難しいのは、その身に纏う「闘気」であるらしい。

    「俺は何故か闘気を纏えませんけど、上級以上の剣士とかなら、纏えてますよね?」
    「あぁ。人族だろうが、他の種族だろうが、それに関しては同じだ」
    「━━━だが、我々、龍族に関しては、話は別なのだ」
    「と、仰いますと?」

    どうにも、オルステッドは回りくどい。二万年もボッチだからか。
    ……うーん、そう考えると、可哀想になってきた。俺だけでも友達でいてあげよう。

    「我々、龍族には『竜心炉』というモノがある」
    「りゅうしんろ?」
    「あぁ。肉体的な器官ではなく、霊的なモノと言えばいいか」

    ふーむ、随分マンガチックになってきたぞい?

    話を要約すると、肉体とは別の、魂のエンジンみたいなもんらしい。
    龍族以外の種族には無いらしいから、本当に彼の一族のみの特徴なのだろう。
    古代龍族は、それを意識的に使えるらしいが、今生き残っている龍族の殆どは、随分血が薄れて、種族的特徴が消えかかっているらしい。
    生き残っている、といっても、何故か殆ど姿を見ないが、な。
    どっか集落でも作ってるんかね。

    「オルステッド様も、その『竜心炉』を使えるんですか?」
    「あぁ。それを自在に操るところに、ウルペン流の妙味がある」

    どうも、ウルペンは龍族にしては、魔力総量が著しく低い人だったらしい。
    人族との混血児だったからか、体質なのかはわからない。
    とにかく、肉体的強さ、魔力、闘気を融合させて戦う龍族としては、素質的にはオチコボレに等しいとまで言われていた。

    ところが、足らない素質を、恐るべき努力とセンスで穴埋めをし、凌駕してしまった。
    多分、日に30時間を超える矛盾した鍛錬、とか。
    100倍の重力で鍛えた、とか。
    四回目の変身を残していたとか。

    とにかく、人一倍、いや千倍くらい頑張ったんだろう。
    なんていうか、生前の俺に聞かせてやりたい話だ。

    魔力が足らないなら、なにかで補えばいいじゃない。
    ウルペンはそう考えた。━━━ではどこから?
    それが『竜心炉』だったらしい。

    エネルギー源は何か、とか、消耗はしないのか、とか。
    そういう難しい理論は、今は割愛しよう。
    彼も、詳しく語ってはくれなかった。

    とにかく、その『竜心炉』をフル活用するのが、ウルペン流の核心らしい。
    そして、その最大の奥義が「龍聖闘気」というチートスキルだ。
    物理ダメージも、魔力ダメージも、ほぼ無効化出来る、反則的な闘気。
    もちろん、肉体の運動レベルも飛躍的にアップさせる効果がある。
    ……金色になる野菜っぽい宇宙人みたいなもんかな。

    エリスも言ってたが、彼女自身、剣神流の奥義『光の太刀』と、彼女の佩刀『鳳雅龍剣』の二つが合わさらないと、龍聖闘気を纏ったオルステッドに傷を付けるのも難しいらしい。

    そういえば、アリエルの帰国パーティの時、水神レイダの剣は、オルステッドに毛ほどの傷も与える事が出来なかった。神級の攻撃すら無効化とか、どんだけ化物なんだろうか。

    そういや、俺は昔、岩砲弾でオルステッドに手傷を与えられたっけか。
    手の甲の皮が剥けた程度だったけど、俺の魔法も捨てたもんじゃないらしいな。
    ━━━まぁ、あの時も、魔導鎧一式で戦った時も、全殺しの目に遭った訳だが。

    「そういえば、ウルペンとペルギウス様は師弟関係だったみたいですけど」
    俺がそう水を向けると、オルステッドは意地の悪い顔をした。

    「そうだ。だが、ペルギウスは武の才能が無かったようだな」

    とんでもない事を仰る。
    俺は周囲を慌てて見回した。光のアルマンフィが聞き耳を立ててやしないだろうな。

    「でも、不死魔王アトーフェを、手刀一発でぶっ飛ばしてましたけど……」
    「その話は聞いた。それは、お前の『電撃』で麻痺していたからだろう」
    「そうでなければ、むざむざ甲龍手刀などを食らう筈がない」
    事も無げに仰る。手厳しいな。…ペルギウスの事が嫌いなんだろうか。

    「とはいえ、奴の本質は「召喚術師」なのだ。武に疎くても、問題はあるまい」
    そこまで言うと、お茶を飲んだ。自分でティーポットからお茶を注いでいる。
    随分喋ったから、喉が渇いたのかな。気に入って頂いて、結構でござる。

    ……案外、ペルギウスの事を、認める所は認めているんだろうが。
    なにか、複雑なんだろう。色々と。

    「そういえば、こんな話がある━━━」

    その後、オルステッドのペルギウスに関する話は続いた。

    駆け出しの頃、アトーフェに何度も半殺しにされた事とか。
    居城ケィオス・ブレイカーの操縦をミスり、赤竜の群れに突っ込んじゃった事とか。
    ラプラスとの決戦で、ラプラスの仕掛けたバナナの皮を踏んで滑り、窮地に陥った事とか。
    剣神流の初代剣神に戦いを挑み、尻を斬られた話とか。
    犬に尻を噛まれた話とか。

    ……どれひとつとっても、エリスに話せないような中身だった。
    やっぱ、この人、絶対ペルギウスを馬鹿にしてると思う。
    (……聞くんじゃなかった)
    俺は妙に饒舌なオルステッドを見ながら、後悔していた━━━。



                    *



    「ハッハァー!!」

    ━━━ペの字のドヤ声で、俺の回想が中断される。
    見れば、奴はなにかのモニュメントの上で、荒ぶる鷲のポーズを取っていた。
    この王様、ノリノリである。
    12人の配下やエリスは、ヤンヤヤンヤの大喝采。……もう、好きにしてくれ。

    「甲・龍・王!!甲・龍・王!!」
    「そこに痺れるゥ!憧れるゥ!!」
    「ニャハハハハハハハハハハッ!!」
    「キャーペ様サインシテー!!」
    ━━━━!!
    ━━━!
    …。



    ━━━その日、雲の上のお城では。
    ━━━当初の目的であった、ウルペンの武勇伝にまでは当然至らず。
    ━━━ペルギウスの自慢話が延々繰り広げられる事になった。
    ━━━その日は泊まって、翌日、二日目のライブが予定された。


    ……俺の尻は、もう限界である。
    オルステッドの話した真実のペルギウスと、当人の話す自慢話との実像の乖離に、噴き出すのを堪えるため、散々尻をツネっていたのだ。
    スリッパかハリセンがあったら、アイツの頭をスパンキングしていたに違いない。

    だが、当のエリスはご満悦の表情で、俺を抱き枕にしつつ眠っている。
    顔はニマニマとだらしなく笑み崩れていた。彼女の十歳の誕生日の夜を思い出す。

    ……もう少し、彼女の為に頑張るしかないかぁ。

    俺は暗澹としつつも、エリスの胸に顔を埋めて、赤子のように眠る事にした━━━。




             ーその4につづきますー




    ※一回、書き上げたのですが、保存をする前に誤作動が起きて、データが消えちゃいました。
    ノリノリで筆が進んでいたのにorz
    こまめにセーブは大切ですね…。

    それでは、また。(店`ω´)ノシ


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