無職転生・二次創作 閑話「鬼の目にも…?」その1
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無職転生・二次創作 閑話「鬼の目にも…?」その1

2015-05-26 00:33

    俺はTKGが好きだ。
    俺はTKGが好きだ。
    俺は、TKGが大好きだ。

    殲滅TKGが好きだ。
    電撃TKGが好きだ。
    打撃TKGが好きだ。
    防衛TKGが好きだ。
    包囲TKGが好きだ。
    突破TKGが好きだ。
    退却TKGが好きだ。
    掃討TKGが好きだ。
    撤退TKGが好きだ。


    ━━━とにかく、それくらいTKG、つまり卵かけご飯が大好きなのだ。


    米の飯が、炊きたての甘い飯が、なにより好きなだけに。
    生卵の、ホカホカの飯に流し込んだあの香ばしさ。
    醤油の風味。白身のとろっとした口当たり。そして喉ごし。
    あの旨さ、充足感は、この世界に転生してから、とんと味わえなかった。
    何しろ、肝心かなめの醤油がないのだ。塩ではダメなのだ。

    米は見つけた。そしてアイシャが丹精込めて作っている。
    しかし、醤油が無い。皆無なのだ。絶無なのだ。
    あぁ、食いたい。貪りたい。あぁ、TKG。

    ところがだ。
    ひょうたんからコマというか。
    ギースとの最終戦の時に、見つけてしまったのだ。
    何って、醤油だよ!

    ビヘイリル地方の特産品で、あちらでは「鬼水」と呼ばれている代物だ。
    どうも、鬼族とよばれる、巨漢の魔族が好んで飲用しているらしい。
    人間が飲んだら、即日肝臓を壊して、明日の朝日も拝めないであろう。
    実際、北神流のドーガが、ガブリと飲んで、ひっくり返ったからな。

    俺はそれを入手した後、スペルド村に持ち込んだ。
    目的はただひとつ。TKGを食べる為だった。
    それから、思い出した約束がひとつ。
    世話になったルイジェルドに、俺の至宝のメニューをご馳走するためだ。

    飯は炊けた。味見も兼ねて、まず俺が一杯目を食す。
    結論は━━━夢にまでみた、卵かけご飯だった。
    まぁ、醤油の風味が若干違うとか、卵も味わいが違うとかは、あるにせよ。
    俺の飢えは満たされた。
    あとは、積年の想いを、解き放つだけだ。
    俺と家族の命の恩人、白皙の美丈夫━━━ルイジェルドに。

    彼には、底知れぬ恩義があった。
    危険な魔大陸を、三年も一緒に旅をして、俺とエリスを護り続けてくれた。
    それだけでなく、ノルンとアイシャの二人の妹も、護衛して送り届けてくれた。
    ギースと闘神との戦いでは、瀕死の重傷を負っても、最後まで戦い続けてくれた。
    それなのに、涼しい顔をして「なに、大したことではない」とか言っちゃうのよ、あの人。
    どんだけ俺の乙女な部分を刺激するというのか!あぁもうルイージェさんたら!!

    俺は手馴れた作業で、TKG一人前を作る。そして、そっと彼に差し出した。
    まるで、千利休が、織田信長に、茶を出すが如く。
    彼が食べている間に、ノルンも来ていたので、彼女にも差し出す。
    ノルンは俺の家でも米を何度も食べているが、それほどお気に召してはいなかった。
    しかし、このTKG醤油風味は、口に合ったようだった。
    何しろ、ルイジェルドより早く食べ終わったのだから。
    まぁ、その後、病み上がりの人間に解毒が必要なモノを食わすなと叱られたけど。

    俺の意気はいやが上にも有頂天だ。
    ノルンとルイジェルドからも、旨いとお墨付きを貰ったし。
    今度は、お世話になった人たちにも、食べさせてやろう。
    食通どもの舌を、俺のTKGで唸らせてやるぜ!



    「━━━そう思って、こちらに赴いたのです」
    俺は得意満面に頷いた。

    場所は、遥か上空、雲の上。天空の城ラ○ュタ。じゃない、空中城塞。
    目の前には、尊大な態度で玉座にふんぞっている、甲龍王ペルギウス。
    相変わらずキンキラキンだな。シルヴァリルが横でヒソヒソ耳打ちしている。

    「ふむ。何やら、面白いモノを我に食べさせようというのか、ルーデウスよ」
    人の心を圧倒させるような、迫力のある声が広間に響き渡る。

    「はい!これは、私が長い間探し求めていた、至宝の一品。我が魂の食物です」
    俺は仰け反るようにして、天井を仰いだ。美しいシャンデリアが目に入る。

    「ほう!ソウル・フードと申すか!それ程の美食、まだこの世界にあったとはな」
    大仰に驚く振りをするペルギウス。フッその顔を、本当に驚かせてやんよ。

    「それでは、調理室をお借り致します。食事時は、今からそう━━━二時間後に」
    俺はアスラ貴族式の儀礼に則って、頭を下げる。

    「なにぃ?二時間だと?」
    しかし甲龍王は色めき立った。

    「我をそれだけ待たせる価値のあるモノなのか?お前の魂の食物とやらは!」

    よっぽど腹減ってんのかな。食いしん坊な王様め。空腹は最高の調味料って知らんのか。

    「我が満足せぬ場合、貴様の首を捻り切るやもしれんぞ!」

    妙にキツイお言葉だなぁ。食に関して、こだわりがある王様ではあるけども。
    ペルギウスは王座より立ち上がり、バサリと白いマントを翻した。

    「どうだ、ルーデウス・グレイラット!我を満足させられるのか、否か!?」
    「できらぁ!!」

    あ━━━つい、売り言葉に買い言葉で返してしまった。
    うん、まぁ、大丈夫だろう。
    旨いものは、東西を問わず。異世界を問わず、だ。
    俺はそそくさと素材を持って、厨房へと駆けていった。


    きっかり二時間後。
    食事会は、例の庭園にて行われた。
    主賓席には、空中城塞の主である、甲龍王・ペルギウスが鎮座。
    俺は手押し車の上に、炊きたての土鍋、茶碗を乗せて登場。

    腕組みをする龍王の目の前で、俺は満を持して、土鍋の蓋を取る。
    ━━━ふんわりと、芳醇な香りが立ち込めた。
    さしものペルギウスも、喉を鳴らしている。アイシャ米の破壊力だ。
    お手製の茶碗に、しゃもじで銀シャリを盛り付ける。
    今回は上手く炊けた。お米の一つ一つが立っている。上出来だ。

    「……ふむ。良い香りだな。しかし、主菜が見当たらんぞ?」

    ふふん。食いしん坊ちゃんめ。ここからが、俺の妙技。

    飯を盛り付けた茶碗を置き、別の小鉢に素早く生卵を割り入れる。
    醤油を適量注ぎ、軽く箸でかき混ぜ、そして━━━。

    「ぬおおおお!待て、ルーデウス!何をするのだ!!」

    ペなんとかが喚いているが、キニシナイ!
    俺はかき混ぜた黄金色の液体を、純白の宝石の上に注ぎ込む。
    嗚呼、この鼻の粘膜を蕩かすような香ばしさよ。


    ━━━甲龍歴431年 空中城塞ケィオス・ブレイカーにおいて、TKGが披露された。
       これは歴史的快挙であり、事実である━━━。


    「……どうぞ、熱いうちに、お召し上がりください」

    放心したペルギウスの前に、ことりと茶碗を置き、俺は数歩後ろに下がる。
    俺は満足だった。
    この後、ペルギウスはTKGを食し、口から光線を吐きながら、空を飛び回るだろう。
    そして、こう叫ぶのだ━━━。

    「……貴様、ルーデウス・グレイラット。我を愚弄する気か?」
    「うーm……うぇぇ?」

    アレアレ、ペッペッペさん、なんか睨んでらっしゃる。どぼちて?
    なんか、背景が歪んで見えるし、ゴゴゴゴとか雷みたいな音も聞こえる。

    「これは、一体なんだ」

    ペルギウスは茶碗を指差す。なんか行儀悪いぞ。

    「なんだって、TKGっす」
    「だから、なんだと言っている」
    「しつこいなぁ。俺のソウル・フードだっていったじゃないっすか」

    俺は段々イライラしてきた。なんだってんだ。とっとと食えよ。冷めるだろ。
    しかし、甲龍王は額に何本も血管を浮き立たせて、茶碗を睨んでいる。

    「これは、炊いた米に、生の卵をかけまわしただけではないか!」

    激昂する王様。だが俺は悪びれない。

    「……そうですけど?」

    「貴様!この我を甲龍王・ペルギウス・ドーラと知っての狼藉か!!」

    ガターン!と席を蹴立てて、ペルギウスは叫んだ。めっちゃ怒ってはる。

    「なんだ、これは!料理と言えるのか!」
    「だから我は食事を馳走されるのは嫌なんだ!」
    「人の城に来て、こんなものを食わせるとは!」
    「オルステッドを呼べぃ!」

    なんか、滅茶苦茶な事言い出してる。あと、社長関係ねーだろ。

    「我も舐められたものだな!古今東西、ありとあらゆる芸術と美食を極めた、この我が!
     こんな!ただ炊いただけの米に!生の卵などという汚物をかけ回すなどと!!」

    あ、流石に今、聞き捨てならないセリフを聞いちゃった気がしたなー、俺。
    生卵が、汚物?なんだそれ。オメー、もったいないお化けが出てくんぞコラ。

    「へー、ありとあらゆる美食を極めたお方って、一口も食べずに見極められるんですかー。
     へー、凄いなー、憧れちゃうなー。とっても俺にはできねーやー」
    俺はヘソを曲げた。曲げるヘソなら、俺に敵う奴はいないってくらいだぞ。
    頭来たんで、耳をホジホジして、フッと息で飛ばしてやる。

    「ぬううう!生意気な口を叩きおって!貴様!素っ首出せぃ!捻り切ってくれる!」
    甲龍王は色めき立つ。近くに侍っていた使い魔どもも、一触即発の気配。
    だが、俺はあくまで冷静、冷静です。

    「まぁ、俺の首を捻り切るのもいいですが、一口くらい食べてみてもいいんじゃないですか?俺の料理「TKG」は熱いうちが旬。旬を逃すような真似を、甲龍王様ほどのお方がなさるなんて!食に対する冒涜とも取れますが?」
    俺は畳み掛けるように言う。果たして、ペルギウスは歯ぎしりせんばかりにしている。

    「グヌヌ…よくぞ抜かしたものだ」

    椅子に座りなおす。すかさず、シルヴァリルがナフキンを首周りに巻きつける。
    ペルギウスが茶碗を手に取る。顔に近づけ、匂いを嗅ぐ。
    「━━━フム、香りは合格だ。香ばしい」

    次に、米だけを口に含む。慎重に味わっている。
    「ムゥ。これは味わったことの無い米だ。━━━貴様、まさか!」
    クワッと目を剥き、睨みつけてくる。俺はニヤリとする。
    「……自家製、アイシャ米とでも、申しておきましょうか」
    「ほぅ、自家製。貴様、米を自力で栽培しているのか」
    「えぇ。本物を口にしたいのなら、当然でしょう」
    俺は誇らしげに語る。

    「種籾より数年かけて選別し、我が愛妹アイシャ・グレイラットによって栽培された、今現在、この世にひとつしかない、アイシャ米。……麗しき処女の手による作品です」
    「ヌッ、あの小娘の手によるものか…」
    ペルギウスは、まるで絵画を愛でるかのように、盛り付けられた米を眺めた。
    しかしすぐに思い直したかのように、厳しい眼差しになる。

    「だが、それと味とは関係ない。そう、要は味なのだ!」
    さっきは食べる前に貶してた癖に。

    ペルギウスは添えられていたスプーンを手に取る。
    そして、そっと、黄金色に染まった米を、掬い取って、口に含む。

    「━━━ウグッ!!」
    龍王が呻いた。なんだ、なにか問題でもあったか。
    しかし、すぐに落ち着きを取り戻したのか、二口目を食べた。
    「……うむ、炊きたての米の香りと、熱された卵黄の香りが、マッチしている」
    咀嚼をして、ゴクリと飲み込む。そして三口目、四口目。

    「米というのは、香り高いモノなのだな。炊き方と水が良いのか」
    「この卵は、新鮮そのもの━━━今朝、産み落とされたものか」
    「鶏のエサも、吟味しているというのか。濃厚であり、余計な雑味が感じられん」
    「この茶碗、そっけなく感じるが、匠の美意識を感じる」
    いや、それ、俺のお手製ですけど。

    パクパクと口に入れ、その都度何かしら文句を垂れる。忙しいな。
    落ち着いて食べればいいのに。
    気が付けば、あっという間に食べ終えていた。
    深い溜息をつきながら、茶碗をテーブルに置く。
    俺はそれを見計らって、お茶を出す。本当は緑茶が良かったんだが。
    そのうち、緑茶もなんとかしよう。

    ペルギウスはティーカップを手に取り、ズズーっとお茶を啜るように飲んだ。

    しばし、静寂━━━。

    俺は、直立不動の姿勢を崩さず。
    ペルギウスは瞑目している。

    「……結論から言おう」
    「……はい」
    俺は静かに頷いた。

    ギロリ。ペルギウスは俺を睨んだ。
    「━━━食えなくは、無い」
    「━━━はぁ?」
    俺は茶碗を見る。綺麗に食べきっていた。それなのに。
    「食べきってるじゃないですか」
    俺は問いただす。
    「フンッ!我に食物を粗末にせよとでも言うのか!」
    プイッとそっぽを向かれてしまう。なんだこの王様。

    「味は、悪くはない。だが、これは料理とは言えん!」
    「料理とは!もっと!精緻であり、手をかけるべきである!」
    「素材と素材を混ぜただけでは、認めることはできん!!」

    んー、つまり、美味しいと言いたくないだけか。
    なんとなく、俺はコイツの言いたいことがわかってきた。
    つまり、素材や味だけじゃダメってことね。こーの意地っ張り。

    「……わかりました。一週間お待ちください。本物の料理をお持ちしましょう」
    俺は啖呵を切った。自信は無い。だが、こっちにも意地がある。

    「甲龍王が納得するような、料理をきっとお見せしましょう」


    俺はそう言い残すと、空中庭園を後にした。
    長い回廊を足早に。
    目指すは、我が家。
    総力を結集して、事に当たってやる。
    ルーデウス・グレイラットは、伊達じゃない!




             ーその2につづきますー





    なんだ、この話…。
    それでは、また。(店;`ω´)ノシ



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