無職転生 二次創作 閑話 「最後の言葉 ~Memories of Rara~」
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無職転生 二次創作 閑話 「最後の言葉 ~Memories of Rara~」

2015-07-23 08:49
  • 4

※この作品は、無職転生完結後、蛇足編が生まれた直後(2015年七月)くらいに書いた物語ですので、その後の蛇足編ララの設定とは性格などがかなり違いますが、そこらへんはご了承ください。
当時の(店`ω´)のイメージで生まれた作品ですので、そこらへんもご了承をば。





ーーーーーーーーーー





お父さんの名前は、ルーデウス・グレイラット。
お母さんの名前は、ロキシー・M・グレイラット。

二人共、世界史にその名を残す、偉大な人物だ。

お父さんの活動で、この世界の常識がいくつか変わり。
お母さんの研究で、魔術世界の常識がいくつか変わった。
それらは、基本的に有益なものだ。人を幸せに導くものだ。
だから、二人共、私にとっても、偉大な人物なのだ。


私は、ララ。
ララ・グレイラット。
後に、救世主と呼ばれる事になるらしい、今はただの平凡な女の子。
私が何を為して、救世主たるのか、今はまだ、私は知らない。わからない。



━━━この記憶は、そんな私の、私の中にある、私だけの大切な思い出。



忘れないために。
忘れ去られないために。
今日、この日から、ここに書き記していこうと、そう思った。



ー甲龍歴481年 とある晴れの日 ララ・グレイラットー





                 *




「━━━ララは、好きな人とかいないのか?」


出し抜けに、そんな事を言われてしまった。
あまりにも唐突だったので、私は絶句してしまう。

「どうしたんですかルディ、いきなりそんな事を言うなんて」

お母さんが、フルーツの蜂蜜漬けを口に運び込むのを一旦止め、お父さんに問う。
お父さんは逆に、そう言われる事が驚きだったようで、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。食べかけのお握りの中身は、酸っぱい果実を塩漬けにした奴。私は苦手だ。

「いきなり……かなぁ?父親としては、ずっと気になっていた事なんだけど」

そう言って、お父さんはお握りを口にする。酸っぱそうに顔をしかめた。面白い。
口元についた米粒を、お母さんがつまんで取ってあげている。微笑ましい。

青い髪、長い三つ編み。小さな身体。少女と呼べるほどに幼い顔。
見た目だけなら、私と大差ない母。旅行に行くと、姉妹とよく勘違いされた。
お父さんと一緒にいると、祖父と孫娘と思われる。
それにはもう慣れたけど、なんとない寂しさは、今も慣れることがない。

「そうですねぇ、でも、食事中に言うことでしょうか」
お母さんは首を傾げつつ、スィーツを口に運ぶ。幸せそうな顔。

今、私たち親子三人(+レオ)は、青空の下で仲良くお昼を食べていた。
シャリーアから離れたスコット砦跡というところでだ。
ここには七大列強石碑があり、石碑が起点となって、甲龍王ペルギウス様の居城に赴くことができる。
つまり、今日これから、私たち三人とレオは、ケイオス・ブレイカーに向かうところなのだ。
もう何年もずっと続けている、お父さんとペルギウス様の魔術実験の為に、である。

そういえば、昔は魔族を居城に入れさせる事を嫌がっていたペルギウス様だったけれど、最近はそんなことは無い。

キッカケは、私とレオ。

「救世主とその従僕たる聖獣」というペアが、ペルギウス様の興味を引いたから、らしい。
その昔、盟友だった龍神ウルペン様が聖獣を連れていたからなのと。
「生まれ変わる存在」というのが、彼の研究と重なり合ったのだそうだ。

確かに、ドルディア族の伝承では、数百年に一度、救世主がこの世に現れ、その存在を守護する聖獣も生まれるとされる。
レオが本当に聖獣なのかという疑問はあるが、それについては龍神のオルステッド様が太鼓判を押してくれている。彼もドルディアの伝承を知っていたし、

「ルーデウスの巨大な魔力で召喚したのだ。生半な存在ではありえん」
と仰っていた。

そんな聖獣レオ君。昔は大きな子犬みたいな感じだったけど、今では精悍な巨獣。
私たち親子三人を乗せても余裕なくらいだ。
大きい癖に、それ程ご飯は食べなくなった。ドルディアの族長様が言うには、聖獣は成体になると、霊的に進化するようで、この世の理を半ば逸脱した存在になるのだそうな。
……私には、何を言ってるのかさっぱりだけど。
まぁ、半分は神様、半分は犬って感じらしい。

あ、話が逸れちゃった。えっとえっと。
そんなレオを従えている私の存在が、ペルギウス様の興味を引いて。
それで、何度もお父さんに連れられて、天空のお城に遊びに行き。
そのうち、ルイジェルド叔父さんとルイシェリアも呼ばれ。
そうこうしているうちに、お母さんにも許可が出て。
なし崩しに、グレイラットの身内なら、という流れになったそうな。
お父さんが言うには「魔族だから嫌い、って訳じゃないから」だそうで。
「意地っ張りなだけで、本当は優しい人」らしいです。


------


ピクニック気分で昼食を食べ。
お父さんが笛でアルマンフィさんを呼び出し。
私たち三人は、空の上の人に。
簡単に言えば、今は空中城塞ケイオス・ブレイカーに降り立ってます。
目の前には、謎めいた仮面美人、シルヴァリルさんが。

「━━━ようこそ、おいで下さいました」

歓迎されている雰囲気は感じない。むしろ冷たい物言い。
でも、それもいつもの事で、慣れたこと。
無言の彼女に付いて、長い回廊を歩くのも、何度目だろう。
確かにこの空中城塞は巨大だけれど、わざと遠回りしているのだろうかと、いつも邪推してしまう。まぁ、そんな事はしないだろうけれど。足の悪いお父さんには、ちょっと可哀想と思う。でも、そんなお父さんを介添えするお母さんは満更でもない風だし、これはこれで、別にいいかなとも思う。

小一時間ほどして。
たどり着いたのは、大きな部屋。広間と言っても差し支えないくらい。
そこにあるのは、無数の石版。黒い石版、白い石版、赤い石版、青い石版。金銀色とりどり。
その全てが、積層型の魔法陣。石版ひとつだけでも、帝級魔術を百回は発動出来る濃密さ。
そこは、ペルギウス様自慢の研究室であり、実験室。
お父さんの莫大な魔力を、物質にコンバートするための施設、らしい。
魔力の物質化。即ち「魔力の結晶化」━━━。
つまり、人工的な、魔力結晶精製装置。

オルステッド様の魔力を外部から補充出来ないか、という観点から様々な方法が考え出された。魔力ポーションもそのひとつ。しかし、今までどれも上手くいっていない。
お父さんの予測では、この方法でも駄目かもしれないとのこと。
しかし、それならばと、別の案件に用いるつもりのようだ。
それが何かは、私は知らない。

研究室には、既にペルギウス様が待機されていた。

「━━━待っていたぞ、ルーデウス」

厳かな響き。伝説の英雄そのものの王気を発する甲龍王。
その銀髪、その黄金の瞳は、明らかに人族とは違う。上位種の輝きだ。

「……大変お待たせ致しました。偉大なる甲龍王」

お父さんは恭しく頭を下げる。アスラ王国式の礼法だ。
それを見て、頷くペルギウス様。

「魔力は満ち足りたか?体調に不備は無いか?━━━ご老体よ」

言いつつ、最後に「ハッ」と自嘲気味の苦笑を漏らす甲龍王。らしくもない諧謔に、照れたのだろうか。
確かに、父は齢74を数える老人で。
対して古代龍族であるペルギウス様は、齢500を遥かに超えているであろうに、未だ力漲る壮年の姿。彼の中で、その差異に対して、何か思うところがあるのかもしれない。
しかし、そんなペルギウス様の憎まれ口を、ニッコリと笑って頷くお父さん。

「えぇ。魔力は満ち足りています。体調も万全です。……貴方よりは若いですし」
「ハッハァー!言うようになったな、ルーデウス・グレイラットよ」
いかにも愉快そうに笑う甲龍王。お父さんも笑顔だ。

「では、いつものように、貴様の魔力を吸い上げるとしよう。今しばらく待て」

そういって、ペルギウス様は操作盤に目を落とす。それは、冷徹な研究者の貌。
待ちかねていた割に、待機させられてしまった。まぁ、いいか。

私たちは壁際にある、ソファーに座った。シルヴァリルさんが、目の前の小さなテーブルに、
新鮮な果実を搾ったジュースを三人分、用意してくれた。態度が冷たい割に、そういうところはソツの無い人だ。
お父さんは軽くお礼を言って、お母さんはペコリと頭を下げる。私もそれに倣う。ぺこり。

「……今回で、何度目の実験になるかな」

お父さんがソファーに背を埋めながら、ポツリと呟く。
確か、十年くらいは続けている筈だ。
途中、計画の見直しをしたらしいが。それは確か━━━赤ママが亡くなった頃だ。

あの頃のお父さんは、実験が思うように行かず、焦っていたように思えた。
逞しかった肉体が、年齢以上に衰弱するまで、魔力を絞り尽くしていた。
立ち振る舞いに支障が出て、記憶障害も起こしていたらしい。
それが、赤ママの葬儀を境に、快方に向かった。まるで、赤ママが命を与えたかのように。

………。

あの、荘厳な葬儀から五年余り。
月に一回の実験が五年。十年前から数えれば、120回ほどだろう。
お父さんが提供した魔力は、莫大な量になっている。それこそ、魔術エネルギーに換算すれば、世界を何度も滅ぼせるんじゃないだろうか。

龍神だった頃のラプラスは、闘神バーディと戦った時に危機に陥り、苦闘の末、当時は未完成だった『滅びの魔術』を暴発させて、闘神と共に、世界の半分を消失させたって聞いた。
その時に大陸の中央には大穴が開き、リングス海が誕生した。

お父さんの魔力総量はラプラスを超えると言われている。
よくよく考えたら、私のお父さんて、物凄い人なんだなぁ。世界を壊せる魔力を利己に使わず、世界平和にしか使わないんだから。あのオルステッド様やペルギウス様が、絶大な信頼を寄せるだけはあるんだなぁ。

「━━━━?」

広間のあちらこちらが明滅しだした。ペルギウス様が魔術装置を励起させているのだろう。
積み重なった石版が、それぞれの魔力光を眩く煌めかせている。

「━━━━?━━━━?」

部屋全体が、唸りを上げるように、鳴動している。まるで、この空中城塞が目を覚ましたかのように。巨大な怪物が身震いするかのように。

「お……ララ……るか?」

━━━ん?鳴動に紛れて、何か聞こえた。
と、思ったら、頭をポンと叩かれる。痛くはない。
お父さんの大きい手のひらが、私の頭を包んでいる。

「ん、あっ、ごめんなさい、ボーっとしてました」

お父さんは私に話しかけていたようです。私は自分の考えに没入しすぎていたので聞き逃していたのでしょう。私の悪い癖です。
でも、お父さんは慈愛顔をして、私をただ撫でているだけ。なんなんだろう。

「なんだか、思い出したんだよ」

思い出した?なんだろう、私も色々思い出してたけど。

「昔さ、大昔の話だけど。夢を見たんだよ」
「俺が年老いて。家族みんなに看取られて、大往生するんだ」
「オルステッド様もいてな。孫も曾孫もいて、……幸せな最後なんだ」

なんという、縁起の悪い夢なんだろうか。
私や妹のリリやお母さん、白ママやルーシー姉さんとかジークは寿命が長いので、ついうっかり忘れてしまうが、お父さんは普通の人族なんだった。……赤ママと同じ。
弟のアルスも、妹のクリスティーナも、今ではすっかり老境に差し掛かっている。

「………」

私は、急に寂しさに胸が締め付けられた。
近い将来、お父さんは私を置いて、逝ってしまうのだろう。
私だけでなく、お母さんや白ママを残して。━━━赤ママの待つ、光の橋の向こうに。


「━━━他にも思い出したことがあってさ」

お父さんは俯く私の頭を撫でつつ、言の葉を紡ぐ。

「昔、お前とルーシーが口喧嘩した事があっただろう」
「あの時、お前━━━」


フォォォォォォォォォォォォォォンッ!!


風鳴りのような、甲高い音が鳴り響いた。
ペルギウス様の操作する魔術装置が完全励起したようだ。
お父さんが何かを言っている。しかし、私の耳には届かない。聞こえない。
いくつかお父さんは言葉を発したようだが、激しい励起音に邪魔をされ、苦笑する。
最後に、何かを呟いて、私の頭をひと撫でして立ち上がる。

「ルーデウスッ!時間だッ!座に着けッ!!」

まるで荒れ狂うチャリオットを制御する騎兵のように、甲龍王は雄叫びを上げる。
お父さんは頷き、杖を突きながら魔術装置の中央に進む。
そこには座席がある。お父さんの魔力を吸い上げる黒い椅子が。
お父さんはそこにゆっくり座り。ひとつ深呼吸をした。
それから、目を瞑り、しばらくしてゆっくり開く。

私は胸がどきりと鳴った。お父さんの視線が、私に向いたから。
何かを呟いている。やはり励起音で聞こえない。
にっこりと、お父さんは笑った。
それから、お父さんは腕輪を外し━━━。
むき出しになったその手首を、私に向かって見せた。

お父さんの手首に隠されたすごいカッコイイ紋章━━━ミグルド族の紋章を。





フォォォォォォォォォォォォォォンッ!!






--------






━━━その日、最後の魔力供給実験を終え。


ルーデウス・グレイラットは人事不省に陥いった。
彼はそれより半年の後に目覚め、そして家族に看取られつつ、幸せに逝去する。


時に甲龍歴481年 とある晴れの日の事だった━━━。




























ここまで書き記して、思い出した事がある。
お父さんの言葉。聞き取れなかった言葉。最後の言葉。




『━━━いつか、好きになった人を、お父さんに見せてくれよな』




お父さんは、最後に私の頭を撫でて、そう言ったんだった。


━━━うん。

いつか、お父さんに見せてあげよう。私の好きになった人を。


━━━光の橋の向こうで。


だから、それまで。

私を待っていてね。お父さん。





              ーfinー 





それでは、また(店`ω´)ノシ

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×
ララの好きになった人はヒトガミ封印メンバーの中にいて、それでお辞儀してたのかななど色々考えてしまいました。本編もこのような心温まるストーリーだと良いなと思うような素敵な話でした。
53ヶ月前
×
>>1様へ
(店`ω´)温かいコメントありがとうございます。とても嬉しく思います。

一応、260話「最後の夢」の封印メンバーのお辞儀をしていた彼が、ララの「お父さんに見せてあげよう」の人、という設定です。「光の橋の向こう」というのは天国という意味と、ヒトガミのいる世界とを懸けた感じで…。
ララ的には、いつかどこかで父ルーデウスに会えるんじゃないかという予感があって、それが「光の橋」発言。

細かくて失礼しました。閲覧していただき、コメントもしていただき、本当にありがとうございました!
52ヶ月前
×
ララも立派になっちゃって。
こういう作品みると80年後の戦いが待ち遠しくなりますね!
51ヶ月前
×
>>らび様

(店`ω´)そう、立派になっちゃって。
原作だと、鼻くそほじってましたが。ちくしょおおおおお!!俺の純情が!!
まぁ、そういうヒロインいてもいいんじゃないかなーと。それはそれで、面白いなとw
一応、構想としては80年後のララの物語も考えてあります。ララ専用魔導鎧でカッ飛んでます。
今現在(2016 3.10)は書けるかわかりませんが。
閲覧ありがとうございます!
51ヶ月前
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