イノベーションはどうやると促進されるんだろう?  パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する K・ラウスティアラ (著), C・スプリグマン (著), 山形 浩生ほか (翻訳)
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

イノベーションはどうやると促進されるんだろう?  パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する K・ラウスティアラ (著), C・スプリグマン (著), 山形 浩生ほか (翻訳)

2016-11-28 00:41

    分厚い本だけど、山形さんの翻訳だから、解説見ればだいたいはわかるかと思ったのだけど、解説がなかった。残念。

    本編はすごく面白い本で、主張がハッキリしてるから斜め読みもできるけど、ディテールが面白いからそれももったいない、みたいな感じ。結局時間が無くて雑にしか読めてない。

    シンプルな主張は、「発明した人の権利が守られないとイノベーションが阻害されるから、イノベーションのために保護があると言われているけど、実際どうなんだろう?」という問題意識のもと、さまざまな「保護の存在しない業界」を見ていく。
    • 特許、商標、著作権などのいわゆるIPについて、「他人と自分の製品をごっちゃにされない」ための商標はそれなりに整備されているけど、分野によっては他の権利は保護されていない。
    • たとえば、アメフトの戦術、カクテルや料理のレシピ、服のデザイン、コメディのネタなどは保護されておらず、実際にすぐ模倣される。でも、その業界のイノベーションは止まってない。
    • ファストファッションはデザイナーズブランドを一気にパクるのだけど、ファッション業界は壊滅してない。むしろトップデザイナーが別ブランドでファストファッション売ってたりする
    • ファッションでは業界団体がパクりを規制しようとしたけど、結局うまくワークしなかった。むしろトップデザイナーたちが、「模倣品が出ないと、失敗作だと思って落ち込む」みたいなことを言っている
    • ビデオデッキの発売時、アメリカの映画業界から「映画業界の滅亡」的なものすごい反発が起きた。実際はビデオが売れて映画業界は伸びた
    • どこの業界でも、なぜかトップ同士はパクらない。トップデザイナー同士、トップカクテル作者やシェフ同士はお互いの得意技をパクらないんだけど、トップレストランのメニューを安いレストランが模倣したり、海外に持って行ったりはよくやる
    • 服や食べ物については、パクられて普及し時代遅れになることで、トップのイノベーターはさらに新しい物を作るみたいな循環がある
    • また、多くのイノベーションは模倣から始まるし、別々のものをくっつけるみたいな形は多い。和食の技法をフランス料理に持ち込むような。その場合、日本人シェフが持っていたその和食の技法は、どれだけ彼オリジナルなんだろう。
    • コメディ、特にスタンダップコメディ(漫才)のネタも保護されない。「メキシコ国境に壁を作るって政治家が言ってるけど、移民を追い出したら誰が壁を作るんだい?」みたいなジョークはいきなり別の何人かが言い出す。が、大量のコメディアンとコメディがあるわりに、youtubeの今ではそれほどコピーはされづらい。(バレるから)それは権利に保護されているわけではなくてコミュニティベースで、「パクッたコメディアンを殴る」みたいな様式があるようだし、おおっぴらにパクると業界では仕事がなくなる。
    • より秘密主義のマジシャンのコミュニティでは、人のマジックをコピーすることには寛容だが、あまり知られていないマジックの種明かしをすると村八分にされる。

    つまり、保護されていない分野でもそれなりに回っていて、いろいろな形でイノベイターへのメリットの持って行き方がある、と言う話が書いてある。ざっと読んだだけで、僕はそこまで咀嚼し切れていない。
    面白かったのが、「時代遅れ」という概念だ。服も食べ物も、トップクリエイターが作って、真似されて量販店に回る頃には、トップクリエイターは別の物を作っている。トップクリエイターも最初は模倣から始まるのだろうけど、他人が面白がる物を作れるからそのポジションにいれる。真似する方が早いから、それはだんだんトップじゃないクリエイターに模倣されて普及していく。その間にトップクリエイターは利益を得ていて、かつ普及する頃には「また別の新しいもの」を作る機会が訪れる。だからトップでいられる。
    コモディティ化についてはこんな記事を書いたことがある。

    レストランの場合は、メニューは模倣できても、そのレストランで食べる体験はコピーできない。本書には至近距離によく似た店を弟子が出した、みたいな話もでていて、そこでも裁判の論点は「まちがって入っちゃわないか」だった。真似したことそのものではない。
    やろうと思ってもコピーできない体験、というものもかなり多い。

    今はインターネットのおかげで、誰でもクリエイターみたいな状態になっている。固定作業はどんどん機械とコンピュータがやるようになって、バイトでも店頭POP考えたり、メールの文章を考える機会などが増えている。

    事例がいっぱいある本なので、手元に置いてたまに見る、みたいな用途に向いてる気がするけど、これKindle版ないんだよなあ。。


    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。