SW2.5シナリオ『侵略者のいる森』
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SW2.5シナリオ『侵略者のいる森』

2018-11-17 05:28
    依頼討伐シナリオ『侵略者のいる森』テストプレイ済
    ■シナリオ概要
    このシナリオは、“導きの港”ハーヴェスと“迷宮王国”グランゼールを結ぶ街道から、少し外れたファーベルト平原にある小村を襲う野犬の群れを発見し、これを討伐することが目的となります。また、目的を達成する過程で、とある少女を救うことになります。
    ●セッションの所要時間
    本シナリオの所要時間は、ボイスセッションで3~4時間程度です。
    5時間もあれば、余裕をもってプレイできるでしょう。
    ●その他
    作中冒険者ギルドの描写、NPC等のRPで迷う場合は、本シナリオを作成する際に設定したものを纏めた設定集を確認するとよいでしょう。勿論、設定そのものを各GM・卓で作ってしまっても構いません。また、設定集を見ずにシナリオだけで遊ぶことも可能です。
    設定集:ar1699069

    ■セッションの準備
    このシナリオを遊ぶには、『ソード・ワールド2.5 ルールブックⅠ』(以下、『Ⅰ』が必要です。
    このシナリオは、冒険者レベル2~3のPC、2~4人で遊んでください。GMに不慣れな場合は初期作成のPCで遊ぶことを推奨します。それ以外の場合は、GMは導入部分の描写を多少改変する必要があるでしょう。
    ●戦闘について
    このシナリオは、「基本戦闘」ルール(『Ⅰ』P126)を前提に作成されています。
    ですので、『ソード・ワールド2.5 ルールブックⅡ』以降で追加される「上級戦闘」や「熟練戦闘」ルールの使用は推奨しません。もしそれらのルールを使用する場合、GMは戦闘バランスの調整等十分に注意してください。
    ●PCを作成する場合
    このシナリオでは、野外の自然の中での探索を主に行うことになります。
    そのため、PCをのうち1人はレンジャー特技を持っていることを推奨します。

    ■シナリオの舞台
    このシナリオは、“導きの港”ハーヴェス王国に存在する冒険者ギルド〈黄金の神と恋の射手亭〉に登録したばかりのPCたちが、登録して最初の依頼を受けるところから始まります。
    PCたちは、何らかの理由があって今回の冒険を共にすることになった新米冒険者のパーティーです。

    ■シナリオ本編
    ●イントロダクション
    “導きの港”ハーヴェス王国と“迷宮王国”グランゼールを結ぶ街道から馬車で1日ほどの場所にある農村、シアン。
    この村から近い森に野犬の群れが巣食うようになった。夜な夜な聞こえてくる野犬たちの遠吠えに、村人は危険を感じ怯えているという。
    この野犬の群れの討伐依頼が、冒険者ギルド〈黄金の神と恋の射手亭〉へともたらされた。森に巣食うのは、おそらくウルフの群れだろう。
    お使い”のような依頼内容だが、新米の冒険者が実力を確かめるには最適な依頼だ。

    ===================
    ●シナリオの流れ
    1)導入
    2)シアン村へ
    3)討伐へ出発~森の入り口~少女(ヘンリー)からの依頼
    4)森の探索~最初の遭遇
    5)パックリーダー率いるウルフの群れとの戦闘
    6)『獣の森の姫』の救出
    7)結末
    ===================

    1)導入
    多くの冒険者が集う街、港湾都市ハーヴェス。
    豊かな水に揺蕩うこの街には、日々、寄せては返す波のように人と物が流れてくる。
    それは冒険者とて例外ではなく、仕事の多いこの街に冒険を夢見て来る者は後を絶たない。
    きみたちはこの街にある緑の扉の入り口が特徴の冒険者ギルド〈黄金の神と恋の射手亭〉に冒険者登録を済ませたばかりの新米冒険者だ。
    登録を行った際、受付嬢のククル・ククルル(人間/女/21歳)は、こういった。
    「当ギルドでは登録して初めての依頼は、ギルドが選んだものを行っていただくことになっています。依頼そのものは断ることもできますが、その時もやはりこちらが選んだ別の依頼をしてもらうことになります。なので、こちらで適当な依頼を選び終わるまでギルド内で食事や他の冒険者の方と交流するなどしてお待ちください。お連れの方がいなければ、そこでパーティーを組むことをおすすめしますっ」
    時刻は昼を過ぎた頃。依頼を待つきみたちに、ククルが声をかけてくる。
    「お待たせしました。依頼を選び終わりましたので、お伝えします。ハーヴェスから歩いて2日、馬車で1日ほどの距離にある村、シアンからの依頼です。1週間ほど前から村近くの森に野犬の群れを見かけるようになったから、退治してほしいとのことです」
    ククルの話によれば、野犬とはおそらくウルフのことだという。

    ◯依頼の内容
    ・依頼人は、村長のロキール・スミアン(人間/男/56歳)。
    ・報酬は、成功報酬として、ひとりあたり500ガメル(失敗時は0)。
    ・目的は、シアン村近隣の森に巣食う野犬の群れの駆除。
    ・制限日数は、現地到着から5日間。過ぎると失敗と見なされる。
    ・滞在中の食事と宿はシアン村で用意する。
    ・初回依頼のサポートとして、ギルドからひとりあたりに〈ヒーリングポーション〉×1と、保存食1週間分が支給される。
    ・もし、より深刻な状況や想定外の事態が発生し、それを現場の判断で解決することができた場合、追加の報酬が支払われる。
    ・また、ギルドとしては冒険者たちの過激な行動は望んでいない。村人たちとは友好に接してほしい。当然、場合によっては報酬の減額等のペナルティもある。

    ◯状況
    ・シアン村までは、ハーヴェスから歩いて2日、馬車で1日の距離。
    ・シアン村は外部との交易頻度が少なく、ハーヴェスからの馬車も月一度程度しか行かないが、ギルドの馬車を自分たちで運転するならば無料で貸し出せる。
    ・シアン村は人口60名(12戸)ほどの小村。住民はほぼ農業従事者で占められ、また比較的高齢者が多く、ウルフといえども集団と戦うのは難しい。
    ・野犬の数は判明していないが、遠吠えや目撃から少なくとも5体以上はいるらしい。
    ・現在(依頼が届いたのは一昨日)の段階では、家畜の鶏が襲われた程度だが、村の人間が襲われないとも限らない。

    ウルフ『Ⅰ』P450について、魔物知識判定(『Ⅰ』P116)ができます(全員失敗した場合、ククルが教えてくれます)。
    なお、報酬のつり上げ交渉には応じません。また、現在はほかにPCたちに最適な依頼もないため、依頼を断るのであればまた待ちぼうけをくらうことになります。

    2)シアン村へ
    ハーヴェスの街を出て、シアン村へと向かう。ハーヴェスとグランゼールを結ぶ街道を行く道中には、右手に峻険なディガッド山脈、左手に緑豊かなファーベルト平原が広がり、きみたちは大小の差こそあれども、冒険の高揚感を感じるだろう。
    街道を行くこともあり、道中はアクシデントもなく平和そのものであった。
    そうして、旅を終えてきみたちはシアン村へと到着し、今は村長の家へと招かれていた。

    シアン村までの道中に事件は起こりません。PCたちは無事に村へと到着して村長の家へと案内されます。馬車で来たのであれば馬の世話と馬車の管理は村長に任せることができます。村長はPCたちを歓迎し、旅の疲れを労いつつ、詳しい事情を話します。

    ◯村長の話
    「依頼を受けていただいた冒険者さんがたですな。ようこそおいでくだすった」
    と、村長は皺が刻まれた顔に柔和な笑みを湛えてきみたちを歓迎した。
    そして、今回の依頼の事情を話し始めた。
    「森で最初に野犬を見かけたときは番(つがい)だと思って放っておいたものがどうやら群れだとわかり、家畜までも襲われたとあっては退治してもらうしかありません」

    村長の話をまとめると、次のようになります。

    ・野犬を見かけたのは村から見ることができる、歩いて30分ほどの距離の森である。
    ・最初に野犬を見かけたのは9日前で、その時は2匹しか見なかった。
    ・村の者は森に行く機会が少なく、木材が必要であれば木を伐りに行くだとか罠を仕掛けて小動物を捕る程度のことはするが、それも単独で行うことはなく、野犬の数も少ないと考えていたために、それほどの危険はないと放置していた。
    ・6日前に村人が見かけた野犬の特徴(耳の形や尾の長さ)の食い違いや、夜に森から聞こえる遠吠えの数などから、野犬の群れがいると判断した。
    ・5日前の早朝に村の家畜小屋が荒らされ、家畜の鶏が襲われたことが発覚した。小屋の状況的に、襲撃は夜間に行われ、家畜を襲ったのは森に巣食う野犬の群れだと確信した。
    ・村人に野犬の群れと戦えるような力はなく、また、次は村人そのものが襲われかねないと危険を感じたために、ギルドへ討伐依頼を出した。
    ・野犬は村の者が知る範囲だと、森から出てくることは殆どなく、その巣は森の奥にあると思われる。
    ・村の方でも、討伐する冒険者が来るまでの対策として、森の入り口に罠を仕掛けるなどはしたが、仕掛けた後の森に村人は危険を恐れて近づいていないので成果の方は分からない。
    ・罠を仕掛けた場所は森の入り口であることは分かるが、具体的な数などは村人たちも野犬の襲撃に緊張しつつ設置したために記録もなく、入り口に仕掛けられているということ以外は分からない。
    ・夜間の小屋の襲撃といい野犬の群れの行動にはどこか統制だったところがあり、群れを統率するリーダーのような個体がいると考えられる。
    ・もし群れのリーダーがいるなら、これは必ず討伐してほしい。また、それ以外の野犬もできるだけ討伐して、村の安全を確保してほしい。
    ・また、村人は野犬の退治は望んでいるが、森を傷つけることを望んではいない。火を放つ等の軽率な行動はしないで欲しい。これは冒険者ギルドの方にも伝えてあるため、もし行われたときは報酬の方も約束できない。

    ※時系列
    9日前:村人が最初の番と思われる野犬を発見。
    4日前:最初の発見から時間経て、野犬が群れであると判断する。
    3日前:野犬によって家畜が襲撃され、ギルドへ依頼を出す。急場凌ぎとして森に罠を設置。

    村長はこれまでの経緯を話し終えた後、PCたちに野犬がいると考えられる範囲の手書きの森の地図を渡します。そして、「旅の疲れもあるでしょうし、今日は一度森の様子を見に行くだけで、本格的な探索は明日からということでどうでしょう」と、提案してきます。
    また、依頼を受けてくれたPCたちを支援するために、薬品類・矢弾類を村の備蓄から、PC人数×100ガメル分まで、無償で提供してくれます(それ以降は、定価で買うことができます)。

    3)討伐へ出発~森の入り口~ヘンリーからの依頼
    PCたちが望むならば、いつでも討伐に出発することができます。
    森までは村から見えることもあり、迷わずに到着することができます。また、森までの道中で蛮族等と遭遇することもありません。
    GMは下に載せる「▼野犬の森の地図」を参照し、進める先を伝えてください。
    ▼野犬の森の地図

    ※オフセなら印刷、オンセなら画像を保存してお使いください。
    最初は「〈1〉森・入り口-ブロックB」から始まります。また、隣接するブロックへ移動することができます。ブロック間の移動には、一時間の時間経過を要するものとします。これは、「〈拠点〉シアン村-ブロックA」と「〈1〉森・入り口-ブロックB」間でも同様です。

    〈拠点〉シアン村-ブロックA
    PCたちの拠点となる小さな村です。村の中央には共用の井戸があり、そこから清潔な水をいつでも汲むことが可能です。井戸の近くには村の行事等に使用される簡単な調理スペースも存在します。また、村での食事や睡眠はいつでも安全に行うことができます。

    〈1〉 森・入り口-ブロックB
    冒険者たちは森の入り口へとやってきた。村からの道中では小さな森に見えたが、入ってみると思ったよりも草深い。道は、森の奥へと続く獣道が生い茂る草の中にかろうじて一本ある。村長の話によれば、冒険者たちが来るまでの急場凌ぎとして罠を設置したらしいが、生い茂る草のせいで一目見ただけではどこにあるかは分からない。

    このブロックには、野犬の対策として罠が設置されています。
    罠を探すなら、目標値9の「探索判定(自然)」(『Ⅰ』P114)が行えます。PCのうち誰かが成功すれば、設置された全ての罠を発見することできます。罠を探さなかった場合は、PC全員に目標値13の「罠回避判定(自然)」(『Ⅰ』P116)を行わせます。
    罠を作動させてしまった場合、PCは仕掛けられていたトラバサミ状の罠にかかります。
    罠は単純な仕掛けで腕さえ使えれば特に判定もなく解除できますが、体を傷つけるには十分な力があり、作動させた場合、1d+6点のダメージを受けます。
    ※以降、この森の中で行われる判定は、自然環境で行うものとする。

    PCたちが罠の処理を一通り終えたら、以下の描写をしてください。

    冒険者たちが見つけた罠には、不審な点があった。それは、罠のうちのいくつかが既に解除されていた点と、解除された罠の中には乾いた血が付着したものが混じっていた点だ。確かに罠は単純な仕掛けのものだが、野犬に解除できるようなものではない。血が付いたものは野犬が掛かったものだとしても、村人たちは罠を仕掛けた後は近づいていないというのに、何者かによって解除されている罠とは、一体どういうことだろう?
    そうして、冒険者たちが不審な罠の状態に気がついたとき、甲高い声が聞こえた。どうやら、それは冒険者たちに対して何かを叫んでいるようで、声がした村の方を見れば少女の姿があり、その少女は冒険者たちの前へとやってきた。

    ◯少女の話
    「こらっ! あなたたち、なにをしているのっ!」
    と、目の前の少女はPCたちに肩を怒らせて迫ります。
    少女の名前はヘンリー(人間/女/10歳)といい、シアン村の子供です。
    「せっかくはずしたのに! それは、あぶないし、ひきょうです!」
    彼女は人差し指をPCたちへ突き出して母親が子供を叱るような口調で言います。
    どうやら、口ぶりからすると罠を外したのはこのヘンリーであるようです。

    PCたちがヘンリーの話を聞くのであれば、以下にまとめる内容を話してくれます。

    ・ヘンリーは村人が扱う小動物用の罠は獲物を仕留めるのではなく、仕留めるために傷つけて弱らせるだけのものであり正々堂々としておらず、卑怯なものであると思っている。
    ・そのため、野犬の対策として罠を設置して村で冒険者を待つという村人のやり方を「汚い」と思った。
    ・ヘンリーはそんな状況に我慢ならず、自らの正義観に従い、村人の目を盗んでは森の近くにやって来て罠の様子を見ていた。
    ・2日前。森の近くで様子を見ていたヘンリーは、「女の子の悲鳴」を聞いた。
    ・ヘンリーは誰かが罠に掛かってしまったのなら助けなければと考え、森の入り口へ近づいた。
    ・ヘンリーが森の入り口へと来ると、草むらの中から「女の子が痛みに呻く声」が聞こえてきたために、その草むらへ近付こうとしたとき、草むらから人影が飛び出してきた。
    ・その人影は草を掻き分け森の奥へと駆けていった。
    ・驚愕のためにヘンリーの記憶は曖昧ではあるが、駆けていった人影は両手から血を流しており、体にはボロ布をまとっているだけに見えた。
    ・人影の後を追うことまではできなかったが、実際に傷ついた誰かを見てしまっては罠を捨て置くことはできず、ヘンリーは罠を探して目につくものは解除した。解除の際、ヘンリーは怪我をしていない。
    ・このことを村人に伝えようか迷ったが、白昼夢のようでもあり、また記憶に曖昧な部分もあったことと村人への不信感から伝えることができず、それからも森の様子を見に来ていた。
    ・そして、今しがたPCたちがその罠に触っているのを見かけて、つい叫んだのである。

    ヘンリーはPCたちに経緯を話した後、自分が見かけた罠に掛かった誰かも探してほしいとお願いしてきます。これは、シナリオにおける追加の依頼(村からの依頼とは別枠)です。その際、GMは以下の描写を行ってください。

    ◯ヘンリーからの依頼
    ヘンリーは慌てた様子で、自分の首から下げている小さな袋を破り、中に入っていたPC人数個の〈何かの欠片〉を取り出して、PCたちに差し出します。
    「ごめんなさい! あなたたちにおねがいするなら、依頼じゃないとだめよねっ……。これは、あたしのたからものです。森でひろってから、おまもりにもっているの。これで、依頼できますか?」

    目標値7の「見識判定」(『Ⅰ』P114)に成功すると、ヘンリーが差し出した欠片は〈剣のかけら〉であると分かります。依頼を受けるのであれば、その場で彼女からPC人数個の〈剣のかけら〉が渡されます。また、PCたちの目的に『悲鳴の少女を探す』が追加されます。

    PCたちとの話を終えると、ヘンリーはシアン村へと帰ります。彼女を1人で村まで帰しても問題はありません。また、PCたちが村で追加依頼の『悲鳴の少女』について調べても、村人の中に該当する者はおらず、見つけるなら森の中を探す他はないと分かります。

    4)森の探索~最初の遭遇
    〈2〉 森・分かれ道-ブロックC
    冒険者たちは獣道をたよりに森を進む。すると、行先が二手に分かれた場所に行き当たった。冒険者たちは既に森の奥におり、周囲には腰ほどの草が生い茂っている。

    野犬の痕跡などを探すなら、目標値9の「足跡追跡判定」(『Ⅰ』P113)に成功すると、どちらの獣道にも野犬の足跡があることが分かります。また、分かれ道の左「〈4〉森・左奥-ブロックE」から来る足跡がつい先程のものであることも分かります。つまりは、現在、PCたちの周囲には足跡の主がいる可能性がとても高いということです。

    上記の処理を終えるか、分かれ道で他の行動を行おうとすると、以下のイベントが発生します。

    ◯野犬たちの襲撃発生
    PCたちの周囲からがさがさと葉擦れの音が響きます。風のためではありません、それは何者かが草に潜むようにPCたちの周囲を這い回っているのです。音は周囲の木々に反射して四方から聞こえており、周囲は木々の間を抜けて森へ入る風により絡んだ草同士が揺れているために、這い回る者の正体を掴むことができません。そして、突如、音と揺れがきみたちへと近づきます。

    GMはPC全員に、目標値9の「危険感知判定」(『Ⅰ』P114)を行わせてください。成功すれば、何物かの奇襲攻撃を寸前で回避することができます。
    失敗した場合、何者かに足に噛み付かれてしまいます。
    噛み付かれたPCは即座に2d点のダメージを受け、また転倒してしまいます。その際、噛み付かれたPCは、一瞬だけ噛み付いた者の姿がウルフであることを確認できます。転倒したPCはすぐに起き上がることができますが、ウルフは再び草の中へと潜み逃走するために戦闘や攻撃を行うことはできません。

    PC全員が上記の処理を終えると、襲撃者はPCたちのいる分かれ道の右「〈3〉森・右奥-ブロックD」へと草に紛れて去っていきます。襲撃者が去った後、周囲の葉擦れや草が揺れるといった何者かが潜んでいる気配も消えます。周囲を警戒しつつであれば、傷を負ったPCの治療等も可能です。

    〈3〉森・右奥-ブロックD
    冒険者たちは分かれ道の右へと進んだ。どうやら、身動きに影響するほど草深かったのはあの分かれ道の場所だけだったようで、先へと進んでいると、膝より下ほどの高さの草が茂るだけになっている。ここでならば、奇襲を受けることもないだろう。だが、冒険者たちが気を休められることはなかった。
    なぜなら、冒険者たちの前に、牙を向いて威嚇するウルフの群れが現れたからだ。

    ●戦闘
    前線:ウルフ『Ⅰ』P450×(PC人数×2-2)体

    ウルフたちはパックリーダーによって統制され動いているため、最後まで戦い続けます。
    PCたちもこの戦闘によって、改めてウルフたちはリーダーとなる個体によって統制されていると確信します。

    パックリーダー『Ⅰ』P452について、魔物知識判定(『Ⅰ』P116)ができます。

    5)パックリーダー率いるウルフの群れとの戦闘
    〈4〉森・左奥-ブロックE
    冒険者たちは分かれ道の左へと進んだ。分かれ道より先へと進んでいくと、気がつけば周囲の腰ほどまであった草も膝より下ほどの高さのものが生えるだけになっている。
    そのために気がつくことができた。先程から、冒険者たちを見ている何者かの気配がある。
    おそらく、ウルフだ――
    と、その時、前方に草が敷き倒されている場所を見つけた。
    あれがウルフたちの巣であろう。
    その巣には、腕に酷い傷を負った十代前半ほどの人間の女の子が敷かれた草を血に染めながらぐったりとして倒れている。あの子がヘンリーの依頼にあった『悲鳴の少女』に違いない。
    冒険者たちが巣の少女に気がついた時、冒険者の前に一匹の大きな獣が姿を現した。
    間違いない、あの獣こそがこの森に巣食うウルフたちのリーダーだ。
    その獣は冒険者たちを睥睨し、森に響き渡る大きな遠吠えを一つあげた。
    すると、周囲にあったウルフの気配もそれに呼応して遠吠えをあげて、冒険者たちを取り囲むようにして姿を現した。

    ここでは、野犬の長であるパックリーダーと、パックリーダーに統率されたウルフたちとの戦闘が即座に始まります。PCたちは取り囲まれており、逃走することはできません。また、交渉の余地も一切ありません。
    PCたちが「〈3〉森・右奥-ブロックD」での戦闘を終えていない場合、そこで戦うはずだったウルフたちもこの戦闘の開始時から前衛として敵に加わります。

    ●戦闘
    前線:パックリーダー『Ⅰ』P452×1体
    前線:ウルフ『Ⅰ』P450×(PC人数-1)体
    ※「〈3〉森・右奥-ブロックD」での戦闘を終えていない場合、戦闘開始時から前線に(PC人数)体のウルフが加わります。「〈3〉森・右奥-ブロックD」より数が減っているのは、野生の勘により生命の危険を感じて、森から逃走したウルフがいたのでしょう。また、パックリーダーを倒したら、その時点で他のウルフは逃走します。処理の省略化の為、PLが逃走を許可するのであれば即座に逃走したとして処理して戦闘を終えてください。

    戦闘に勝利すれば、彼らから得られる戦利品の他に、1500ガメル相当の宝石の入った袋を入手できます。

    6)『獣の森の姫』の救出
    ウルフの巣には眠る傷だらけの少女の姿があった。血に濡れたボロ布を纏っただけのその少女は、とくとくと血を流す腕の痛みに顔を歪ませて、時折、弱々しい呻き声をあげている。その腕の傷は森の入口にあった罠によってついたものに思われる。少なくとも、ウルフたちによって傷つけられたものではない。――
    野犬たちはこの少女を護っていたとでもいうのだろうか?
    『獣の森の姫』は、未だ苦痛の中に眠り続けている。

    戦闘の勝利後、『獣の森の姫』を救助することができます。少女は、腕に小動物用の罠によるものと思われる深い傷を幾つも負っており、酷い状態です。傷の具合から見ても、かなりの量の失血をしたと思われ、青白くなった顔を辛そうに歪めたまま意識を失っています。
    もし、PCが少女の傷を治療したいと思うのであれば、目標値9の「応急手当判定」(『Ⅰ』P109)か、回復効果のあるアイテム・魔法等を用いることができます。これらによって、少女の苦痛は幾分か和らげることができます。しかし、腕は傷ついてからかなりの時間が経過しており、大きな傷痕が残ります。また、精神的にも衰弱が激しいために、PCたちが現状出来る行動によって意識が完全に戻ることはありません。
    少女が目覚めるまでに回復させるには、ハーヴェス等の大きな都市でちゃんとした治療を行う必要があるでしょう。

    PCたちが少女の状況について知ろうとした場合、目標値11の「見識判定」(『Ⅰ』P114)を行えます。成功した場合、『野犬に攫われて、群れの一員として育てられた人間の話』をどこかで聞いたことを思い出します。この『獣の森の姫』も、そのような人間なのかもしれません。

    7)結末
    パックリーダー率いるウルフの群れを討伐し、シアン村へ帰ると、今回の依頼は達成となります。また、『獣の森の姫』を救助することで、ヘンリーからの依頼も達成となります。
    村の人々はPCたちに感謝を伝えて、その働きを労います。ヘンリーもPCたちに感謝の抱擁を行ってから、『獣の森の姫』を助け出したPCたちを「まるで物語の英雄さまみたい!」と憧れの眼差しで見つめてきます。

    ◯『獣の森の姫』のその後
    PCたちが救助し、シアン村まで連れ帰った『獣の森の姫』ですが、事情を聞いた村長のロキールはPCたちの報酬を初期の倍額(ひとりあたり1000ガメル)にする代わりに、彼女の今後一切を冒険者ギルド〈黄金の神と恋の射手亭〉とPCたちに任せたいと伝えます。
    「言い辛いことではありますが、件の少女は、話によれば野犬の群れの一員であった可能性がとても高いようですな。この村は野犬の群れの被害に遭いましたから、何分、少女を村の人間にするなどといったことはできんのです……それに、彼女は大きな町でしばらく治療を受ける必要もあるでしょう……そこで、冒険者さんがたと、冒険者ギルド〈黄金の神と恋の射手亭〉に彼女の今後一切をお任せしたいのです」
    これは、PCだけでなくギルドに対してのものでもあるので、断ることはできません。また、報酬の追加については、それらの内容を書面にしたものを村長が渡してくれます。

    経験点と報酬
    無事冒険を終えると、PCたちは「1000点+倒した魔物ぶん+1ゾロぶん」の経験点を得ます。
    ハーヴェスに帰還し、冒険者ギルドに報告すれば、報酬として1000ガメルが支払われます。ヘンリーからの依頼の報酬である〈剣のかけら〉も献上すれば、名誉点も獲得できます。また、『獣の森の姫』はそのまま冒険者ギルドの預かるところとなります。
    『獣の森の姫』の扱いについては、今後公開される予定のシナリオをお楽しみください。
    望むのであれば、自由に設定を作成し、冒険者ギルドのスタッフとして、今後のセッションにNPCとして登場させてもよいでしょう。

    ■シナリオノート
    このシナリオは、私が『ソード・ワールド2.5』(以下、『SW2.5』)で作成する初めてのシナリオです。そのため、書き方や記述の面で『SW2.5 ルールブックⅠ』のサンプルシナリオ「蛮族を駆逐せよ」と、サプリメント『冒険の国グランゼール』をとても参考にさせていただきました。それでも、分かりづらい点等はあると思いますので、その際は気軽にお尋ねいただけると、作者として、嬉しいです。

    このシナリオはスタンダードな「依頼討伐型」にプラスアルファの要素が付いたシナリオとなります。お話の内容については割愛しますが、物語の最後に冒険者たちに救われることになる『獣の森の姫』について、少し解説します。本編の方では詳しく語りませんでしたが、彼女はパックリーダーによって攫われ、育てられた人間です。どのような事情で攫われたかについては、後の作成予定のシナリオで明らかになるかもしれませんので、今は特に語りません。ここで語りたい内容は、「攫われた後、『獣の森の姫』はどのような境遇であったか?」です。


    前述の通り、少女はウルフたちによって攫われた後に彼らの群れの一員として育てられました。彼女の群れの中での役割は、「ウルフたちの脚(人間でいうなら腕)では解除できない仕掛け罠などを解除すること」です。しかし、いくら人間なら解除できる罠といえども、非力な少女の腕では上手くいかないときもあります。その度に少女は腕を傷つけ、時として、しばらく動けないほどの怪我を負うこともありました。それでも、賢い野犬の群れが人間の暮らす場所に近づくことは稀だったので、幸運にも致命的な怪我を負わずに、これまではやってこれました。
    でも、その運も尽きるときが来ました。それが、今回のシナリオです。少女は人間用の罠を解除しようとし、ふとこちらの様子をうかがっている人間の気配に気が付きました。その気配の主は、冒険者たちに『悲鳴の少女(=『獣の森の姫』)』の救出を依頼したヘンリーです。
    人間に見られていることに驚いた『獣の森の姫』は、罠解除にしくじり、腕の肘から先にかけて深い傷を負いました。激しい痛みの中、悲鳴をあげながらも、こちらに件の人間が近づいてくる前に森のウルフたちの巣へと逃げ帰りました。
    巣へと帰ったものの負った傷は酷く、血は流れ、やがて少女は倒れてしまいます。そうして、危ない状態にあるときに、冒険者らによって救助されるのです。
    これが、『悲鳴の少女』の発見から、その救出までの顛末です。


    『獣の森の姫』のその後については、関わるシナリオとしてはこれから公開予定のシナリオを待っていただくとして、ちょっとしたNPCとして登場させる際の設定の(作者として考えている)指針を下記します。
    ・話せる言語は「ブルライト地方語」のみ。話し方はカタコト
    ・教養がないために頭脳労働はできないが、体を動かすことはそれなりにできる
    ・但し、腕を使った活動(戦闘や重い物を運ぶ)は不得意。杜撰な罠解除で負った傷のため
    ・両腕についた傷痕は、幾度も重ねてついたもので、救助されるまでは適切な治療も行われていなかったために一生残る。場合によっては、時折、傷が疼いて痛むとしてもよい
    ・少女はウルフたちに恨みは抱いていない。あくまで群れの仲間であった
    ・ウルフたちを排除した冒険者らのことを恨んでもいない。弱肉強食が世の常だと理解している
    ・以上の理由のために、孤児院や施設等に預けることは出来ず、そのために冒険者ギルド〈黄金の神と恋の射手亭〉(シナリオの設定通りだと)の業務を手伝う形でギルドの宿泊スペースで暮らしている
    ・少女に対して少ないながらも給金は出ており、一部は少女の食費や雑費に回され、一部は貯金されている
    ・少女の冒険者ギルドでの主な仕事は掃除や依頼掲示板への依頼紙貼り付け等の雑用である
    ・仕事の内容は徐々に教えられているため、今後できることも増える予定
    ・名前がないと不便なので、ギルドでは『シアン』という名を与えられ、呼ばれている。本人もそれで反応する模様
    以上、『獣の森の姫』改め、『シアン』の設定指針です。
    この程度の範囲があれば、ちょっとしたNPCとして登場させる分には問題ないかと思います。

    ●シナリオ作成者:トカゲッコー
    Twitter:@tokagekko
    ニコ生コミュニティ:co2735762
    公開した内容に何か質問や不明な点がありましたら気軽に御連絡ください。
    ブロマガのコメントで構いませんが、TwitterのリプライやDMでしていただけると、早めに反応できるかと思います。

    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
    この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

    本作は、「グループSNE」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『ソード・ワールド2.0/2.5』の、二次創作です。
    (C)GroupSNE
    (C)KADOKAWA

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