SW2.5シナリオ『こんなコトがあったのです』
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

SW2.5シナリオ『こんなコトがあったのです』

2019-04-01 12:52
    依頼探索シナリオ『こんなコトがあったのです』テストプレイ済
    ■シナリオ概要
    このシナリオは、“導きの港”ハーヴェスに存在する地下水路を、冒険者の所属するギルド《黄金の神と恋の射手亭》の受付嬢ククル・ククルルと共に点検することが目的となります。また、その過程で冒険者は、地下水路に沈んだ物語を知ることになります。
    ●セッションの所要時間
    本シナリオの所要時間は、ボイスセッションで2時間程度です。
    3時間もあれば、余裕をもってプレイできるでしょう。

    ●その他
    作中冒険者ギルドの描写、NPC等のRPで迷う場合は、本シナリオを使用した独自の世界観設定を一部纏めた設定集を確認するとよいでしょう。勿論、設定そのものを各GM・卓で作ってしまっても構いません。また、設定集を見ずにシナリオだけで遊ぶことも可能です。
    設定集:ar1699069


    ■セッションの準備
    このシナリオを遊ぶには、『ソード・ワールド2.5 ルールブックⅠ』(以下、『Ⅰ』)が必要です。
    また、作中「水泳判定」が出てきますが、遊ぶ際に『ソード・ワールド2.5 ルールブックⅡ』(以下、『Ⅱ』)を所持していない場合は「冒険者判定(冒険者レベル+敏捷ボーナス)」を行うようにGMは指示してください。
    このシナリオは、冒険者レベルやPCの人数にとくに指定はありませんが、レベル2~5の冒険者1人で遊ぶことを想定して記述していますので、それ以外の場合は適宜描写等は合わせてください。
    ●戦闘について
    このシナリオは、「基本戦闘」ルール(『Ⅰ』P126)を前提に作成されています。
    ですので『Ⅱ』以降で追加される「上級戦闘」や「熟練戦闘」ルールの使用は推奨しません。もしそれらのルールを使用する場合、GMは戦闘バランスの調整等十分に注意してください。

    ●PCを作成する場合
    初期作成で遊ぶ際は、SW2.5に不慣れなPLでしたらプリースト特技を修得すると遊びやすいでしょう。SW2.5に慣れているPLでしたら自由に作って構いません。
    このシナリオは初期作成でも遊べますが、ハーヴェスの冒険者ギルド《黄金の神と恋の射手亭》の依頼を一度でも受けたPCですと、より楽しめます。可能でしたら、上記ギルドの依頼で冒険が始まる拙作侵略者のいる森を先にプレイしてください。

    ■シナリオの舞台
    このシナリオは“導きの港”ハーヴェス王国に存在する冒険者ギルド《黄金の神と恋の射手亭》に所属するPCの住処に、夜分そのギルドの受付嬢であるククル・ククルルが訪れるところから始まります。PCとククルは冒険者と受付嬢という関係上、それなりの交流があります。

    ■シナリオ本編
    ●イントロダクション
    ブルライト地方に聳えるディガット山脈は、北部から南部にかけて自然が作った壁である。これは単純に物理的な壁を意味しているだけではなく、山脈は巨獣や蛮族どもの一大巣窟となっているためでもある。山脈の南を頭部、北を体部として、大地に寝そべる暴れんぼうの巨人を想像すればよい。
    今回の冒険の舞台“導きの港”ハーヴェスは、この山脈の頭と海に挟まれた場所にある。
    その性質上、ハーヴェスは大陸の国家間の交通と交易の要所となっており、豊かな水源を有するこの国の気風は明るく、また、日中は様々な階級、職分の者たちが入り乱れ、その騒々しさのほどは訪問者たちの土産話になるほどだ。
    だが、この国にも、静寂の時間はある。
    ――ハーヴェスの夜は静か。
    と、旅人が吟ずるほど静かであるかはわからないが、確かに、日中の騒々しさからは思いもよらないほどにハーヴェスの夜はおとなしく、街中に巡らされた水路を流れる水音だけが、月と星の明かりに照らされるなか、響いている。
    今回の冒険は、そんな静かな夜、冒険者の住処の戸を叩く音が聞こえたところから始まった。

    ===================
    ●シナリオの流れ
    1)導入
    2)“第三地下水路”を進め
    3)ゴーストとの戦闘
    4)それでも星を見ていた
    5)結末
    ===================

    1)導入
    多くの冒険者が集う街、港湾都市ハーヴェス。
    豊かな水に揺蕩うこの街には、日々、寄せては返す波のように人と物が流れてくる。
    それは冒険者とて例外ではなく、仕事の多いこの街に冒険を夢見て来る者は後を絶たない。
    しかし、そんなハーヴェスの街も今は夢の中にある。
    時刻は午前0時。
    街が寝静まる時間にきみの住処の戸を叩く者がいた。
    訪問者の名はククル・ククルル(人間/女/20歳)――きみの所属する、この街にある冒険者ギルド《黄金の神と恋の射手亭》の受付嬢――きみとの交流も少なくはない。
    ククルは、出迎えたきみに対して唐突にこう言った。
    「わたしっ……わたし、とても困っていて、どうか、どうか……助けてください!」
    そうして、彼女は今回の冒険の、「依頼」について話し始めた。

    ◯依頼の内容
    ・依頼人は、ククル・ククルル(人間/女/21歳)
    ・報酬は、依頼を受けたら500ガメル。
    ・目的は、ハーヴェス“第三地下水路”の点検に同行すること。
    ・時間は今から。
    ・ランタン等の点検に必要な道具はククル側で準備しているため、冒険者が個人的に必要と思うものを持っていくとよい。

    ◯状況
    ・PCたちも知る通り、ハーヴェスは海岸沿いに位置し、またディガット山脈から流れるウォルタ川の終点でもあるため、街中に水路が張り巡らされており、それらは様々な形でハーヴェスのひとびとに恩恵を与えている。
    ・しかし、この豊かな水の恩恵はそれと同時にハーヴェスが水災に対して弱いということも意味している。
    ・そのため、ハーヴェスには防災機能と、また川と海の水を循環させるための仕組みとして地下水路がある。
    ・普段は目に見えるものではないため、この事を知らない者も多い。
    ・今回は、3年に1度行われる、そのハーヴェス地下水路の定期点検をやることになった。
    ・地下水路は第一地下水路、第二地下水路、第三地下水路、……とハーヴェスの区画に合わせて複数存在し、その区画にある商店、冒険者ギルド等が点検の担当に割り振られている。
    ・《黄金の神と恋の射手亭》は、“第三地下水路”の担当であり、今回のギルドの点検責任者にはククルが選ばれた。
    ・責任者といっても、この担当はギルドのスタッフのなかで一番新しく入った者が担当することになっており、実のところは面倒を押し付けられたようなものである。
    ・点検の行う時間は担当区域ごとに決められており、よほどの理由がなければ変えることは出来ない(「その程度」も出来ないギルドとして軽んじられる為)。
    ・点検の内容は、地下水路に異常はないかどうかを担当区画全てで確認するだけである。
    ・地下水路には脅威となる蛮族や危険な野生動物はいないためにククルひとりで点検が行えないことはない。それについてのククルの弁。
    「あの水路点検をすることになりまして。担当者にわたしが選ばれて……わたし、泳げなくって、水が怖くって……その、私個人のお願い……依頼ですが、水路点検に同行していただけませんか……?」
    [追加情報・PCがシナリオ『侵略者のいる森』を遊んでいた場合]
    ・一番新しい、という点ではシアンがその条件に該当するのだが、彼女にそれをさせるわけにはいかないとククルが名乗り出た。

    2)“第三地下水路”を進め
    「では、開けますからね。……ここからは一蓮托生ですよ」
    “第三地下水路”の重たい鉄の扉を前にククルはきみにいう。
    ただの点検。そこまで深刻な顔でいうことでもないが、彼女にとっては大事なのだろう。
    そして、その手に持つ〈地下水路の鍵〉で、重たい音をたてて、地下水路へ通じる厚い鉄製の扉が開かれた。
    「地下水路自体、単純な構造なので迷子になることはないと思いますが、はぐれないようにしましょうね、わたしをひとりにはしないでくださいね……! あと、念のために地図も用意しておきましたからっ」
    ……このあたりの準備の良さは、さすが現役受付嬢というべきか。
    兎にも角にも、地下水路の冒険の始まりだ。

    これより、ククルとの“第三地下水路”の冒険が始まります。
    GMは下の「▼ハーヴェス“第三地下水路”地図」を参照し、進める先を伝えてください。
    ハーヴェス“第三地下水路”地図

    ※オフセなら印刷、オンセなら画像を保存してお使いください。
    また、PCにはククルが事前に作成した地下水路の地図が渡されます(移行、PLにも「▼ハーヴェス“第三地下水路”地図が開示されます)。
    ククルの話によると、点検はマップを全て確認すれば完了となります。
    最初は「〈地下水路〉水路・出入り口-ブロックA」から始まります。また、隣接するブロックへ移動することができます。ブロック間の移動には、具体的な時間の経過はないものとします。1度イベントが起きたブロックは、以降は飛ばしてその隣接するブロックに移動出来るものとします。

    〈地下水路〉水路・出入り口-ブロックA
    開いた扉の先には、“第三地下水路”へと降りるための階段があった。暗い階段の下からは水の流れる音が聞こえてくる。
    ククルがランタンの明かりを点けて足元を照らしていう。
    「流石に暗いですね。足元に気をつけてください。……行きましょう」

    これより先のブロックからは「光源のない屋内や地下」として扱われるため、暗視を得ていなければマイナス4のペナルティ修正を受けます。但し、ククルのランタンの光源が周囲5m(1エリア/円形10m)を照らしているため、その範囲内であればペナルティ修正は受けません。

    PCが階段を降りて地下水路に行くと宣言したら、以下の描写をしてください。

    “第三地下水路”へと続く、暗く長い階段を降りる。
    水の流れる音は徐々に大きくなっていき、やがて階段の終点にきた。
    ハーヴェスの地下を巡る巨大な穴――水路がきみたちの前にその口を開いている。
    水路は流れる水の音が反響している。その音から轟々と流れる水を想像していたが、思ったよりも水の流れは緩やかだ。
    それなりに泳げるのであれば、落ちても致命となることはないだろう。
    また、水路には幅1mほどの通路があり、そこを行けば安全に点検を行うことが出来るだろう。
    そのとき、ククルが疑問符の付いた声を発した。
    「――え? すみません、ランタンの明かりを少し絞ります。注意してください」
    と、ククルがすぐ近くに来てから、ランタンのシャッターを下ろして明かりを絞った。
    「やっぱり、あの、水路の水が少しだけ輝いている気がしませんか?」

    ○輝く水路
    ククルの疑問を聞いたPCは、目標値7の「異常感知判定」(『Ⅰ』113頁)が行えます。
    成功すれば、確かにランタンの光源ではない何かで水路の水が淡く微かに輝いていることを確認することが出来ます。このブロックにはランタン以外に光源となるものは存在しないので、この水路を輝かしている光源はここ以外のブロックに存在することになります。
    失敗すれば、ククルの持つランタンの光源によって輝いているようにしか思われません。
    この時、PCがもう一度よく見ることを宣言すれば、確かにランタンの光源ではない何かで水路の水が輝いていることを確認することが出来ます。

    〈1〉調整池・分水路-ブロックB
    地下水路は洪水に対する防災対策としての機能もある。想定外の水量により地下水路の流下能力を超過する可能性を考慮して、一時的に水を溜める池――それがこの調整池だ。他に比べてもさらに流れは緩やかで、水の流れる音も静かな小川のようだ。

    調整池の水もブロックAと同様に、ランタン以外の光源により淡く微かに輝いていることを確認することが出来ます。光源となるものは確認することが出来ません。しかし、ブロックAに比べて、少しばかり、その輝きが強くなっているように思えます。

    上記の描写を行った後、GMはPCに目標値7の「聞き耳判定」(『Ⅰ』113頁)を行わせてください。成功すれば、PCが最初に気づいたとして以下の描写を行ってください。失敗すれば、ククルが気づいたとして以下の描写を行ってください。

    ○声が聞こえる
    『……て、……けて、………………たすけて』
    ――水の音に混じって、何かが聞こえた気がした。
    ククルはきみの顔を見た。お互い何も言っていないはずだ。
    では、さきほどの声は? いったい、どこから聞こえてきたのだろうか?
    「もしかして、この水路の輝きに関係があったり――わっ、きゃああ!!!」
    と、ククルが恐る恐るという様子で通路から調整池を覗き見、その瞬間に足を滑らした。
    まずい。このままでは、調整池にククルが落ちてしまう!

    描写の後、GMはPCに目標値13の「危険感知判定」(『Ⅰ』114頁)を行わせてください。成功すれば、咄嗟にPCがククルを掴んで救出することが出来ます。
    失敗すれば、ククルが調整池へと落ちます。ククルは泳ぐことができず、調整池の深さもあるため、このままでは大変危険です。助けるためには、目標値7の「水泳判定(冒険者判定)」(『Ⅱ』40頁)を成功させる必要があります。ククルの救出は成功するまで何度でも試みることが出来ますが、失敗するたびにパニック状態のククルに抱きつかれて一緒に溺れた等の理由で、1ダメージを受けます。
    この時点でククルがランタンを持っていた場合、調整池へと落ちるため、水路の輝き以外の光源がない状態となります。その場合、「月明かりや星明かりのみの夜の野外」として扱い、マイナス2のペナルティ修正を受けます。
    成功失敗に関わらず、ククルの救出後にPCは半透明の何かが水路の先「〈2〉落下式水入口-ブロックC」の方へと去っていくのを目撃します。PCはククルが調整池に落ちる瞬間にも、その背後にさきほどの半透明の何かが立っているのを見たような気がします。また、ククルは危機によってパニックに陥り、「精神効果(弱)」(『Ⅰ』193頁)となります。

    救出され、正気に戻ったククルはPCに礼を言います。腰を抜かしてしまったため、また服が水に濡れていた場合は濡れた服をなんとかする時間も必要なため、少しその場で休憩することになります。この時、ククルは恐怖と情けなさでPCに少しだけ弱音を吐きます。GMは以下の描写を行ってください。

    ○ククルの弱音
    濡れそぼった体を震わせながら、ククルはきみに礼をいう。
    「……助かりました。もう、だめだって、おもいました。だめです。わたし、だめだめですね。いつもは冒険者の方に偉そうに依頼を出すくせに、自分は水路の点検一つもまともに出来ません。もう、なんだか、情けなくって、怖くって……」
    お礼の言葉はやがて弱音へと変わる。ククルから滴るのは水路の水ではない。
    「すみません。まだ、足が動かなくて。落ち着くまで、少しだけ、相手をしてください」
    そうして、ククルは自分のコトについて話し始めた。
    「わたし、じつは受付嬢になるつもりなんてなかったんです。小さい頃は冒険者に憧れていて、大人になったらきっと冒険者になるんだ……そう思っていたんです。でも、ご存知の通り、わたし、ドジで、泳げなくて、弱虫で。だから、冒険者になるっていう夢から逃げて、『冒険』に出来るだけ近いところで接することが出来る受付嬢になりました」
    一つ長い息を吐いて、ククルは続ける。
    「――わたし、卑怯だったのです。自分の身を危険にさらさず、『冒険』の気分を味わえるって、そんな理由で受付嬢になって、なれてしまって。ほんとうは、こんなこと、する資格なんてないのです」
    『こんなこと』とは、今や、今までの、彼女が関わった『冒険』の全てを指すのだろう。

    PCが何かを言うか、何も言わなくても、しばらくすればククルは気分を落ち着け、水路の点検を再開します。PCが止めようとしても、「私の仕事ですから」と、先へと向かいます。

    〈2〉落下式水入口-ブロックC
    ――星が瞬いていた。
    落下式水入口の上、つまりは地上から、ではない。
    ――星は地上から落ちる水が降り注ぐ水面に瞬いている。
    星と思われた、水面を輝かせる光は、おそらく地上から流れてきたごみ――その輝きの多くは無数のガラス片だろう――だ。
    星空の明かりは地上の水路を照らし、水路から地下へと流れ落ちる水を通じて、この地下水路に沈んだガラス片に反射し、水面を星明かりで埋め尽くしている。
    「わぁ……きれい……」
    と、きみの隣でその光景を見つめるククルも感嘆の声を漏らす。
    「――星は、どこにでもあるんですね」
    調整池の事で感情的になっているからだろうか、彼女はそんな詩的なことをきみにいった。
    「こんなに素敵なものを、こんな場所で見ることが出来るなんて、わたし――」
    と、彼女が何かを言おうとした。だが、きみはそれを最後まで聞くことは出来なかった。
    なぜなら、きみはククルの背後に現れた、半透明の何かを見たからだ。
    それは声を上げる間もなく、ククルへと吸い込まれるようにして消えた。

    瞬間、ククルの気配が変わった。
    虚ろな瞳、ふらふらと揺れる体、緩んだ口元からは涎が垂れている。
    正気ではない、
    眼の前のものは、ククルの体ではあるが、ククルではない!
    ククルのなかにいる何かは、ククルの声を借りていう。
    「星が、星が見たかった。ただ、それだけだったのに。どうしてだろう?」
    『どうして』と、そう言いながら、ククルは、怒涛に水が落ちてくる場所へとゆっくり歩き出す。
    ククルは泳げないのだ! それに、例えククルではない何者かに操られていたとしても、あの落ちる水の直撃では致命は避けられない!

    描写を終えたら、即座に「●3)ゴーストとの戦闘」に移行します。なお、このブロックでは水面の輝きによりペナルティ修正は受けません。

    〈3〉分水路-ブロックD
    “第三地下水路”と“第四地下水路”を繋ぐ分水路です。ブロックEの方へと進めば“第四地下水路”へ通じる道へと向かうことが出来ます。

    〈4〉第四地下水路へ-ブロックE
    “第四地下水路”へと通じる道です。先へ進めば、“第四地下水路”へと向かうことが出来ます。“第三地下水路”の区画はここまでです。これより先はこのシナリオではまったく意味のない場所になります。

    3)ゴーストとの戦闘
    「うぅ……――どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうして――……星を」
    ククル(?)はふらふらと通路を歩き、怒涛に落ちる水の下へと向かう。
    正気でないのは一目瞭然だ。
    窮極の状況。どうすればククルは助けられる?
    とにかく、まずはククルのなかにいる何かを見破らなければ……!

    ここでは、ククルの体を操り、地上より落下する大量の水の下へと近づいていくゴーストとの戦闘が即座に始まります。この戦闘の敗北とは、ククルの死を意味します。ククルが落ちる水に沈むまでの猶予は長くありません(ククルは戦闘ラウンドが10ターン経過した時点で死亡します)。

    ●戦闘
    前線:「ククル・ククルル及びゴースト」(『Ⅰ』457頁)×1体
    ※「ククル・ククルル及びゴースト」は、同一のキャラクターとして扱われます。「ククル・ククルル及びゴースト」の肉体の【HP】は「10点」です。それ以外のステータスは、憑依しているゴーストの値を参照します。また、ゴーストはククル・ククルルに憑依しているため、その特殊能力を使用することは出来ません。「ククル・ククルル及びゴースト」に対する物理的な攻撃は肉体が受けたことになります(肉体の【HP】が0になった場合、生命力を失ったククルはゴーストの憑依に抵抗出来ずにククルの精神は完全に乗っ取られ、即座に「レブナント」(『Ⅰ』456頁)となります)。「ククル・ククルル及びゴースト」は攻撃を行わず、自分の手番では水の落ちる場所へ移動するだけで終わります(ククルの精神がゴーストに抵抗しているので全力移動でしか移動が出来ないため)。
    ★特殊処理
    ゴーストの「魔物知識判定」(『Ⅰ』116頁)に成功したら、以降、PCは補助行動として、1手番に1度、ゴーストに対して目標値9の「真偽判定」(『Ⅰ』119頁)を行うことが出来るようになります。
    成功したら、憑依したゴーストを倒すには「回復魔法により憑依したゴーストを浄化する(憑依したゴースト=精神の【HP】を0にする。精神の【HP】は「20点」)」か、「星の輝きを見せる(ゴーストの生前の無念、願い)」必要があるとわかります。
    この戦闘はイベント戦闘のようなものだと考えて、GMはPLの提案に柔軟に対応してください。

    戦闘に勝利すれば、ゴーストを浄化し、ククルを正気に戻すことが出来ます。

    4)それでも星を見ていた
    戦闘は終わった。
    ククルに憑依していたゴーストは消えたようだ。
    「う、うぅ……あれ? わたし、は……」
    正気の様子に戻ったククルは、きみに事情の説明を求めた。――
    「そう、なんですね。また、あなたに助けてもらいました――あの子も消えたみたいです――ああっ、そうです! わたし、憑かれている間、少しだけ、夢を、わたしに憑いていた子の過去を見ていました……」
    そうして、ククルは「それでも星を見ていた少女」の話を始めた。

    ○それでも星を見ていた少女
    「といっても、そこまで長いお話ではありません。前の点検より後ですから、今から1~2年ほど前でしょう」
    と、ククルは落下式水入口を見上げた。今も星空の光を運ぶ水が落ち続けている。
    それは、嵐の日の翌日で、ハーヴェスを巡る水路の水嵩が増していたことから起きた。
    「ある少女が、夜遅くに家への帰路についていたとき、不注意のため、水路に落ちてしまいました。その不運な少女は泳ぎが不得手でした。加えて、だれも、その事故に気がつく者はいませんでした」
    ククルは息を継ぎ、
    「普段は流れの遅い水路です。ひとが流されても危険はありません。しかし、増した水嵩は流れを速くし、夜の闇に隠されて誰にも気づかれなかった泳げない少女は、その水路の終着点へと行き着いてしまったのでした」
    ククルは落下式水入口の上を指差し、そして、水の流れるままに下ろした。
    「――星が綺麗だったそうです。落ちる瞬間、嵐が雲を全て払った空には、月と星だけが瞬いていた、と。それは、その少女の見た最期の、人生で一番うつくしい景色でした」
    ククルはきみを見た。濡れた瞳が、星の輝きを映している。
    「高所から水に叩きつけられた衝撃は、どれほどだったのでしょうか。それでもすぐには死ねず、薄れゆく意識のなかで、『もういちど、あの綺麗な星空を』と願う心は、どれほど可憐なのでしょうか。『どうして』と問うて、それでも星を見ようと落ちる水を浴びる孤独は、どれほどだったのでしょう。……」
    話し終えたククルは、一度、目を閉じて、次に目を開いた時、彼女は微笑んでいた。
    その微笑みは、全ての悲しみを隠せるようなものではなかったが、
    「でも、あなたのお蔭であの少女はこの孤独な場所から救われたはずです。だからこそ、わたしはこうして無事でいるのでしょうから。――きっと、そうなのです。救われていなければ、この話には救いがなくなってしまいますもの」
    それは、厳しい冒険から帰ったきみたちを温かく迎える、あの優しい受付嬢のものだった。

    5)結末
    ゴーストを浄化し、水路の点検を終えて帰路に着いたら今回の依頼は達成となります。地上へ出る頃の時刻は午前4時といったところです。夜通しのことであったのと、ククルの疲労が甚だしいため、詳しい話は後日ということで、その場は解散となります。

    ○それでも、星を見ていたい
    後日、ククルがPCに改めてお礼をしたいとのことでふたりは集まります。
    お礼のガメルや言葉、地下水路の冒険の想い出などを語った後、ふとククルが言いました。
    「そうだ。あの調整池で、わたしは受付嬢になるつもりなんてなかったと言いました」
    「でもですね、実はですね。……わたし、今がとっても楽しいっ」
    「ドジで、弱虫で、情けないところもたくさんあるわたしですが――」
    ククルはふわりと、やわらかでどこか頼りない、いつもの優しい微笑みを浮かべます。
    「――それでも、素敵な『冒険』をする、輝く星のようなあなたたちを特等席で見ていられる今に、とっても満足しているんです! だから、これからもよろしくお願いしますね?」
    ――冒険者さん、と、ククルは楽しげに笑います。
    その笑顔こそが、今回の『冒険』への報酬であり、結末でした。
    これは、冒険者と受付嬢の地下水路を巡る物語の顛末。

    ◯経験点と報酬
    無事冒険を終えると、PCたちは「1000点+倒した魔物ぶん+1ゾロぶん」の経験点を得ます。また、ククルから、お礼として500ガメルが支払われます。

    ■シナリオノート
    このシナリオは、通常の冒険者たちの冒険であれば序盤に出てくる脇役の「受付嬢」にスポットを当てた、いってしまえばスピンオフのようなものになります。そのため、冒険の始まり方も通常の冒険とは違い、受付嬢――ククルからのお願いという形で始まります。
    このようにした背景には、前回に公開した拙作『侵略者のいる森』が、わりあいに王道な冒険という感じでしたので、少し変わった冒険のシナリオを作ってみたいと思ったこと、短時間で少ない人数で遊べるようなシナリオを書いてみようと思ったことがあります。


    どのような物語であったかは、ここで繰り返しても仕方がありませんので割愛するとして、ここに書きたいことは戦闘の特殊な処理(ギミック)についてです。
    今回のシナリオで用いたギミックは、PCの構成によっては少し難しいものになるかもしれません。しかし、SW2.5は戦闘でも不意打ちや仕掛け罠、他にも敵同士の同士討ちを狙ったりなど、戦闘という問いに対して自由な解法を用いることが出来るシステムです。
    ですので、GMをする際は、PLの提案に対して出来る限り乗ってあげるようにしてください。

    今回のシナリオを冒険者1人で遊ぶことを想定しているとした理由は、もちろんシナリオの趣旨から複数人の冒険者パーティーで挑むものではないとしたこともありますが、PLの自由な提案に対して、GMが提案したPL以外のPLとのバランスの兼ね合いを考慮しなくていいようにという意図もあります。
    少し変わったシナリオで、いつもと少し違った冒険をしてみるのも、良いでしょう?


    ●シナリオ作成者:トカゲッコー
    Twitter:@tokagekko
    ニコ生コミュニティ:co2735762
    公開した内容に何か質問や不明な点がありましたら気軽に御連絡ください。
    ブロマガのコメントで構いませんが、TwitterのリプライやDMでしていただけると、早めに反応できるかと思います。

    クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
    この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

    本作は、「グループSNE」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『ソード・ワールド2.0/2.5』の、二次創作です。
    (C)GroupSNE
    (C)KADOKAWA


    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。