• クトゥルフTRPGシナリオ「人魚の霊薬」

    2016-05-28 03:39

    ○事前準備
     現代日本が舞台
     推奨技能は「目星」「聞き耳」「図書館」「精神分析」あと無理にとは言わないが「心理学」もあっていい。
     プレイ推奨人数 1~3人くらい


    ○導入

     共通の知り合いの先輩が、連休の帰省のついでに暇だから遊んでくれと頼まれる。
     先輩の故郷である漁村へと車で釣りをしにいく。

     海水浴場の奥、潮の関係で岩場から浅瀬が続き、ある島と陸地をつなぐ道ができる。
     そこが素晴らしい釣り場ということで先輩に誘われる。

     沖の、かなり島に近い場所で釣り開始。

    ☆1d10ふってその数で魚を何匹連れたか判定。(フレーバーなのでよし)

     道の先にある島は私有地。
     悪い噂がある。肝試しに行った奴が怖いものを見たのか精神のバランスを崩すくらいのショックを受けて戻ってきた。廃人に為って病院にいるという噂まである。

     しばらくすると先輩が飲み物をとりに陸地に戻る。

     一緒に取りに戻るを選択された場合、「アイスを買いに行く」とか「急に先輩の知り合いが現れた」というイベントをおこし先輩と引き離す。
     プレイヤーを釣りスポットに戻した所で違和感に気づく。足元に水が触れており、次の瞬間海面が凄まじい勢いで上がり始める。
     やがて足が完全に浸水しこのままでは海に投げ出される状況になる。
     島のほうが圧倒的に位置的に近いと説明。

     泳いで陸地戻ろうとか言われたら
    「島に向けて海流が集中し始め押し戻されるように島へと引きずられる」
     と描写。
     水泳でそれでも突っ切りたいと言われたら、海から手が伸びてきて引きずり込まれます。
     水泳もう1回降れば脱出できる。
     諦めさせて島に誘導してください。


    ○島

    ☆船着場
    ☆鬱蒼と茂る森

     があることがわかる。

     先輩に連絡を取ろうとすると、ひとしきり心配の描写を入れ「船を出してくれるように掛けあってみる」と応じてくれる。

    ○船着場

     案内板があり、森のむこうに屋敷があることが分かる。

    ○森
    ☆目星
     森の奥に建物があることが分かる。
    ☆聞き耳。
     唸り声のような異音が聞こえる。(PLに警戒心が強いような人がいるなら描写しないでもおk)

     あまり入りたくない様子で停滞してしまった場合、「風が冷たくなってきたため外にとどまりすぎるとHP減っていくかも」と建物探すのを誘導。

    ○屋敷入口
     屋敷にたどり着くと鍵がかかっている。
     窓は頑丈な気の板で目張りされていて閉じられている。
     すぐとなりに離れがある。

    ○離れ
     屋敷から少し離れたところにある小さな小屋のような建物。
     一つ窓がある。
    「窓から除くと入り口のすぐ近くにある机の上には鍵が一つ落ちている」
     そして部屋の奥には何やら動く影が……。

     中には異形の存在がいる。
     異形の存在は体を布に包んでいるが、感情のない濁った魚のような瞳でこちらを見つめてくる。
     それは耐え難い異臭を放っている。

     よく見れば異形の存在は鎖に繋がれている。

     取り敢えず
    ☆san 0/1
     外套を剥ぎ取ったら以下の描写。

    「それの腹は白かったが、その体の全体の主な色は灰色がかった緑であった。その体の大部分は光沢をオビてつるつるしていたが背中の端には鱗がついていた。そしてその体型はなんとなく両生類を思われたが、頭は魚のそれでその頭には決して閉じることのないぐっと盛り上がった目がついていた。その首の両脇には呼吸しているエラがあり長い手足の先には水かきがついていた」

    補足(この連中は不規則に日本の足で跳ねることもあればまた四本の足で跳ねる時もあった) ―ラヴクラフト全集1巻インスマウスの影より抜粋


    ☆san 1/1d6

     感情の持たぬ声でかすかに声を発する。
     聞き耳で「人魚の霊薬……海より来る……」
     そしてその後呪文のような
    「ふんぐるい・むぐるうなふー・くとぅるふ・る・りえー・うが・なぐる・ふたぐん」
     と聞き取れる。

     会話は不可能であり、トランス状態である。
     長く居座っていると攻撃的な様子になりいきり立って襲いかかってこようとするが鎖に邪魔をされる。

    ☆チョコレートをあげる
     意識を取り戻す。
    「ルルイエよりの使者が深きものになりかかっている自分を迎え入れようとしているのが事件の発端」
    「自分が深きものになりきらないためしびれを切らした」
    「彼らにとって同胞意外の存在、たといえば人間などは塵芥と同じであり、判別できない」
    「そのため島ごと海中に飲み込もうとしているため島が沈みそうになっている」
    「自分に霊薬を飲んで成り果てたら島を沈めなくても迎えられるから脱出できるだろう」
    「そのために霊薬を持ってきて欲しい」
    ☆心理学で嘘をついてないことがわかる。
     また彼から
    「洞窟のコウモリの対処法」
    「自分の誕生日」(0317)

     を教えてもらえる。

     鎖を外して一緒に来てくれないかと頼むと。
    「これは父が僕を人を襲わないようにとつけてくれたものなので。父のくれたものを壊したくないので一緒に歩くことはできません。すいません……」
     と断られる。


    ○屋敷の中

    ①客間
     机の上に日記0と倉庫の鍵
    ☆倉庫の鍵
    ☆日記0
     島と陸地をつなぐ道が飲まれた時。
     海の底にある冒涜的な都が浮上する。

     この島は死せるクトゥルーの抱擁によって海に飲み込まれるだろう。
     どうしようもない。抗えないのだ。

    ☆これを読んだ後に外に出るか窓から外を見ると、海岸が完全に浸水しており、なおも水深が上がってきているという描写を入れる。


    ②食堂
     奥に調理室への扉がある。
     ノートがある。
     中身はべったりと血まみれ。
     何かのレシピらしい。

    ☆ライターが落ちている。

    ③調理室
    ・冷蔵庫の中にある。
     ズンドウの中に大量の血液が入って冷蔵庫の中に収容されている。
    ☆100年生きたウミガメの血。
     冷蔵庫は血塗れ。臭気が凄まじい。開けたら
     SAN0/1

    ☆目星
     包丁を入手できる。ダメージ判定の結果に+1する。(ダメージ確定した後、さらに+1点のダメージが入るようになる)


    ④倉庫
    ☆鍵がかかっている。
    ☆「目星」屋根修理用の大きなハシゴがある。使うと2階へ生ける。
     日記がガラクタの中に落ちている。

    ・日記1
     私の息子はかねてより不治の病を持って生まれた。親の責務として愛すべき我が息子を少しでも生きながらえらせるため、藁にもすがる思いで私は生きてきた。
     息子は病床にふせっていたため、読書が好きな温厚な子である。病気の苦しみに耐えながらも私と妻の看病に必ず礼を述べてくれる優しい子供だった。
    そんな愛おしい我が子をなんとしてでも苦しい思いから解き放とうと私は様々な方法を試した。
     幸い私は先祖から資産を受け継ぎ、会社を持っている身であったため多くの選択肢を試すことができた。
     しかし莫大な費用をかける高度な医療も息子の体を回復させるものでなく、日増しに募っていく苛立ちが妻を傷つけたのだろう。
     妻はふいに家を出て行った。誰も行き先を知らず、煙のように消えうせてしまった。探偵を雇って探しても見たが影も形も見当たらない。
     私には息子しかいなくなった。
     私はついに正規の方法でなく胡散臭い霊薬や祈祷に手を出した。
     大概はインチキであり、金を捨てるような愚行であったし、もはやそれは私の気休めとも自傷ともつかぬ行動であった。

     だがしかしつ私は「人魚の肉」を調理した霊薬なるものに巡りあってしまった。


    ○ハシゴで二階へ

    ⑥書斎
    ☆勉強机に日記

    ・日記2
     私は古今東西のありとあらゆるものを息子のために試した。祈祷や霊薬といった眉唾なものにまで手を出した。
     そんなある日、私はそれに出会ってしまった。
     見るからに胡散臭い行商人の男から紹介された「人魚の霊薬」なるものを私は購入する。今思えば胡散臭い男だったし、全てをあざ笑うような笑みを浮かべていたのを強烈に覚えている。
     義務のようにその薬を使った途端、なんと見事に息子の隊長は良くなった。
     歓喜し、神に感謝した。その薬を売ってくれた男を神とたたえたものだ。

     しかしそれはさらなる絶望の始まりだった。

     定期的に薬を与えねば効果はないという漢の言葉を信じた私は霊薬を息子に与え続けた。効果は絶大でベッドから離れられない息子は一年も立たぬうちに歩きまわることができるように鳴った。
     だがしかし奇怪なことはすぐに訪れた、
     息子の体は何か別種のものに変じはじめたのだ。紅顔の天使のような顔から表情が消え失せ、体が発疹をはっするように粟立ってきた。
     力は人間離れして強くなり、時折奇声とも鳴き声ともつかぬ声を発するようになる。
     この世ならざる異形。ありえてはならぬものに息子は為ってしまったのだ。

     私は恐ろしくなり息子から薬を取り上げた。すると息子は地獄をのたうつような苦しみの叫びを上げ、理性を失って暴れだすようになった。
     それは冥府より妻の霊が息子を地獄に引きずり込むような苦しみの声だった。
     私は耐えかね、薬を与える。すると大人しくなる。
     それを繰り返した。

     息子の体はもはや完全に異形となり、身を隠すしか無かった。私は故郷に戻り孤島へと移り住んだ。
     だがそれすらも……もはや何かの手の上だったのだろうか。

    ☆技能:図書館
     レシピがあり、霊薬の作り方が乗っている。
    「100年生きたウミガメの血に、人魚の肉を入れ、フグを生きたまま煮立てたものが霊薬となる」
    とある。

    ☆図書館2(もしPLより指定があった場合)
     ルルイエ、クトゥルフ、深きものどもの知識をGM裁量で与えてください。

    ⑦主人部屋
    ☆鍵がかかっている。
    ☆聞き耳で中から音が聞こえる。金属の何かがこすれるような音

     入ると鎖で首をつった白骨死体。(息子の体を縛る鎖と同じもので首をつっている)
     SAN1/1d3
    ☆足元に遺書。

    ・遺書
    「愛する息子へ
    お前の愛が揺らいだことはない。
    しかし、絶望と狂気が私に愛するものへの殺意さえ抱かせる。
    この地獄にもはや耐え切れない。

    金庫にこの地獄を作り上げた人魚の肉を入れる。
    息子よ、それでもなお遠い海の底を望むなら
    “妻が去ったあの日”

    “君が生まれた日”
    を打ち込むといい」


    ⑧息子の部屋
     すさまじい蔵書の数
     チョコレートがおいてある。
    ☆資料部屋への鍵
    ☆チョコレートの入ったビン

    ⑨金庫、書類部屋
    ☆鍵がかかっている。
    ☆日記3
     息子は海を見て叫び声を上げることが多くなった。
     発音できぬ奇怪な叫び。
     あくる日の夜、息子の叫びに気を立てた私は叱ろうと外に出た。
     声を張り上げた私は――息子の視線の先にあるものに気づいてしまった。

     海より何かがこちらを見ている。
     無数の目が、何かを探すようにぎろりと我々の方を探している。
     それは異形となった息子と同じような、感情を持たない魚類の目であった。

     恐怖のあまり食事さえ通らなくなった私は、このままではと決死の覚悟をして息子に話しかけた。
     息子がかつて好きだったチョコレートを差し出し、そして笑顔を見せる。
     すると息子はおずおずとそれを受け取り、口に含んで語りかけてきた。
    「僕はもうすぐ別の存在になる」
    「父さんは早く逃げるといい」
    「彼らは変わりきらない僕を早く迎え入れたがっている。焦れた彼らはこの島ごと僕を海の底へと連れ込む気だ」
    「僕が異貌のものになれば、彼らは島への興味も無くすだろう」
    「彼らがしびれをきらせば、島は外界より閉ざされ、父さんの逃げ場もなくなってしまう」
    「だから僕は霊薬を飲み、異貌のものになれ果てよう」
    「島を出て後は僕に任せて欲しい」
     その時の息子の声はかつての愛する息子の優しい声だった。
     私はこの時、可能な限り息子を守ろうと決意した。
     その先に何が待っていようとも。

    ☆金庫
     11280317
     で開く。
     中に「人魚の肉」が入っている。

    ☆屋敷の見取り図
     屋敷の裏側に魚を飼う生簀が整備されていることがわかる。

    ⑩フグの生簀
     洞窟
     血吸いコウモリが巣食っている。
     火をおこし、煙でいぶせば通行できる。
     共食いをして生き残ったらしい。
     生きたフグを手に入れる。

    ○エンディング

     調理して食わせる。
     少年に礼を言われる。
     そして自分を迎えに海の底よりたくさんの深きものどもがやってくると少年は言う。
     陸地までの道ができているから必ず振り向かないように走ってくれと言い残される。
     
     戻ると道が現れている。
     道に足をかけると、背中に海より出でたディープワンたちの振動をうける。100匹はいるだろうか。
     振り向いたらSANが死ぬ。

     全速力で走りぬけ、陽の光が差し込んでEND。
     帰りを海難救助隊に文句を言う先輩が出迎えてくれる。


     伊角 一樹 父の名前
     伊角 優希 息子の名前


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  • 凡人が考えたGレコという物語の展開予想が完全に敗れ去った話

    2015-04-16 21:39


    *注;この文章の大半は、18話視聴以前の考えがベースになっており、本編の内容とは一切合切関係ありません。



     ライダー一挙放送にかまけ、クロアンも純潔のマリアもファフナーも見れず、あまつさえGレコを見ないという犯罪じみた日々を送っていた自分もついにGレコを見ることが出来た。

     情報が公開された瞬間から僕は富野由悠季という一世代を作り上げた伝説のクリエイターの最新作に、心ときめいていた。
     僕は「ブレンパワード」という作品が大好きである。
     これはVガンダム以降、アニメ制作に携わる機会がなかった富野監督が、アニメ復帰一弾として作り上げた作品で、心を震わせてもらった作品だった。
     オルファンという神のごとき古代遺跡の研究に囚われた家族に違和感を感じた主人公がその家を飛び出して苦悩する作品である。主人公の懊悩、そしてそのライバルであるジョナサン・グレーンという主人公の影のような男との対話。
     それを支える宇都宮比瑪というたくましい少女との触れ合いにより、頑なだった少年の心が成長していくさまにたまらなく心を揺さぶられる。
     
     富野作品はひと通り見てきたけれど、僕は若造でザンボット~ファーストガンダムまでの名作をリアルタイムで見れず、ネタバレくらいまくった後に見た人間だから、新鮮な気持ちで見れたのはこのブレンパワードが初だった。
     そして、まっさらなまま作品を味わうことで感動して、心から富野由悠季を好きになったのはこの作品のおかげだった。
    (すいませんリーンの翼は未見です)

     ところで富野作品の特徴として親子関係が非常にこじれているというものがある。Zガンダムのフランクリン・ビダンのようなガチクズ親から、ダイターン、Vガンダムの人間としてちょっとやばい親など親が登場する作品はだいたいその関係が歪んでいる。。
     ザンボット3のような例外もあるが、基本的に富野作品の親は一癖ある人間が多い。
     
     しかしGレコでは初めてそのような関係性が崩れていったのだ。
     
     主人公、ベルリと母の間にはかつての富野作品で見た憎しみ部会関係など微塵もなかった。
     
     第一話でベルリは学友に「運行長官の母を持つ」と揶揄され、少し顔をしかめていた。
     これはコンプレックスであり、これを乗り越えていくことがテーマなのかなと僕は思ったし、そのことでブレンパワードが頭をかすめた。同時に少しがっかりしたものだ。その話はブレンパワードである程度解決されていたのだから。
     だが次の話で、なんとベルリと母は笑いあいながら抱擁までし合ってみせたのである。
     正直目が点になった。
     今までこんな穏やかな親子関係を富野作品で見たことがなかったからだ。
     凄まじく警戒した。
     いつ「これ……母さんです」とVガンダムみたいにならないかと。
     
     だがしかし、同時に思ったのだ。今回はこのプラス面での親子関係が主軸になってくるのではないかと。
     結論から言えばそんなものは欠片も関係なかったし、Gレコを読み解く上でまるで見当外れな視点だった。
     だが取り敢えず、僕がGレコに何を求め、そして盛大にどういう間違いをしたのか語ってみたい。
     Gレコが何を伝えたかったかなんてのはほかの頭がいい人たちが凄まじく詳細に解説してくれているし、こんな旬を逃した状態で語っても面白く無いだろうから。
     
     
     さて、僕はGのレコンギスタという話を親子関係という視点で収束を始めるのではないかと考えたわけだ。
     これは話数を消化するごとに僕の早とちりな脳は確信を深めていく。
     
     Gレコの序盤はだいたいこういう話だ。
     海賊行為を働いてきたモビルスーツを鹵獲してみればそこからはアイーダと名乗る少女が出てきて、その少女を助けに来たモビルスーツを、ベルリは成り行きで撃墜してしまう。
     そのモビルスーツに乗っていたカーヒルという人物はアイーダの恋人であり、その罪悪感からベルリは海賊軍へと身を投じる事になるというのが前半の主な流れだ。
     
     目立つ登場人物において、親持ちの人間がとても多い。
     
     ベルリ 運行長官の母を持つ
     アイーダ 軍事長官の父を持つ
     天才クリム  大統領の父を持つ

     主要登場人物のだいたいが立場を持つ親を持っているという共通点がある。
     この主要登場人物の中で一人だけ例外がいる。 とりあえずノレドやラライアはヒロイン枠として別に考える。
     それはライバルキャラのマスクである。
     明確なライバルキャラとして描かれるマスクは親を持たない。しかし彼は在る人間の強い影響を受けている。
     それはもちろん、情報部のクンパ・ルシータ大佐である。クンパ大佐の働きにより、キャピタルタワーの自衛組織でしかなかったキャピタルガードはキャピタルアーミーとして組み替えられ、その重要なポストにクンパはマスクを見込んで編入させる。

     いわばベルリが運行長官の息子だから、キャピタルガードに入ったのとあたかも対応するようにマスクはキャピタルアーミーに入っているとも取れる。
     マスクは情けない男である。終盤に至るまで戦闘で勝ち星を上げたことが本当に1回もない。
     新型モビルスーツに乗り込み、ベルリに突っかかっては負けるのを繰り返す。これはガンダム以降の富野作品の様式美でもあるが、シャアやジェリドは左遷されているし、マシュマーは強化人間にされる罰も受けている。
     しかしマスクはそんな派手な黒星まみれの戦歴でも軍の中で一定以上の発言権を常に保ち続けている。これは違和感であるが同時に伏線でもあるのかと考えた。
     
     これはクンパ大佐の圧力ではないだろうか。そう考えればクンタラという崖っぷちの立場での失敗連打を繰り返しても残れることに辻褄は合う。このコンプレックスが爆発することで作劇にもダイナミックさが産まれるし、後半に明かされることで納得感も出る。
     だがなぜクンパ大佐はこんなにもマスクに肩入れするのか。見込んでいるとはいえ納得できる許容量を超えている。
     しかしそれが、マスクが大佐の血縁者だったら?
     彼が度を越してマスクに甘い理由もこれでいっぺんに説明がつく。
     これにより主要登場人物すべてに「親と子」という1つのテーマで線引がされた。
     さらにベルリとアイーダの二人にも何らかの血縁関係があるのではないかという示唆が初期から行われていた。
     
     主役機、Gセルフにはレイハントン・コードという謎の生体認証があり、それはベルリとアイーダ(とラライア)しかつないこなせなかった。生体認証で、二人しか使えないという点で最も簡単に考えられるのはベルリとアイーダに血縁関係があるということである。
     1話の段階でこの2人(3人)の間には血縁関係があるのではないかと噂されていた。
     
     さらにアイーダには父しかおらず、ベルリには母しかいない。 
     僕の中にはアメリア大統領とスコード教幹部の禁断の恋によって生まれた子供と、そのスキャンダラスな出来事から愛憎交えたスペクタクルが展開されるのではないかという妄想に染まりきった。
     
     その想像は話を越し、実際にベルリの母が相当無茶をやってベルリを助けにシャトルで来る所で確信に変わった。
     それはその少し前にアイーダの父が最前線へと登場するのとほぼ時を同じくしていたからだ。
     親たちが出会い、そしてドロドロの昼ドラ展開するんちゃうの? やったぜ。と僕はガッツポーズをしながら次週を楽しみにしていた。
     
     さらに考えを決定づけたのは富野監督がGレコを作成に取り掛かる前にやった講演会で、関心ごととして知らず知らずに刷り込まれてしまった慣習や常識といったものが産む偏見に対して考えているという旨の発言をしているのを小耳に挟んだからだ。
     アメリア軍の重鎮とキャピタルタワーの運行長官という敵対組織の(実際は違うんだけどこの時はそう思っていた)トップ二人の許されざる恋によって生まれた姉弟が、両親の都合により離れ離れになった。
     その理由が、両親それぞれが仕事と立場を選んだが故の結果であり、国の壁という慣習や常識が産んだ悲劇である。
     さらにそれが原因として実の姉弟であるベルリとアイーダが殺し合いをするような出会いをしてしまったのだ。
     それはまさしく両親たちの、ひいては世界の体面と常識が産んでしまった悲劇として描ける。
    「慣習と悲劇」というマクロな視点と「親と子」というミクロな視点がこうすることで繋がる。
     そして昔のようにわだからまりから戻れない親たちと、屈託なくしがらみに囚われず家族として絆を深める子どもたちを対比させ、子どもたちはそういう固定観念にとらわれぬまま家族として生きることをやるのかなと思ったのだ。僕の中では完全にGレコは「親子の物語」として読み解かれていった。

     ならその落とし所は? 
     ベルリとアイーダは上記の分析から敵対することはほぼ無いはずだ。実の姉弟でも争うしかないとかいうのはブレンパワードでやったことだし。
     
     
     ここでもう一つ登場するのが、度々本編で触れられていた「クンタラ」という概念である。
     これはGレコの世界における人種差別、あるいは階級差別のようなものであり、クンタラの人間は普通より社会的に一段下がる扱いを受けるらしい。
     
     そして、ならば親子関係においてさらに歪なものを抱える第三者を投入することで、その歪みをより可視化するのだろうと考えた。
     クンタラという設定はまさしく「社会が生み出した固定概念」というやつだ。過去の奴隷階級のようなもので、クンタラだからというだけで差別を受けている。
     このクンタラだからという慣習で差別を受けている常識に、何かとんでもないどんでん返しを与えてやれば、「刷り込まれた常識で判断することの危険」を伝えられる。
     そしてこのクンタラもまた「血筋によって受け継がれる」ものであるということだ。
     マスクことルイン・リーはこのクンタラという被差別階級に生まれている人間である。彼にクンタラという呪いを与えたのはもちろん親であり、Gレコの社会全てだ。
     クンタラという設定は血のつながりという設定と非常に相性がいい。
     
     それを考え僕は、上記で上げた本編描写から読み取ったものからも、マスクとクンパは血がつながっているのではないかと考えた。
     
     だがこのまま組んたらの設定をただの被差別者としてのみ扱ってしまえば、弱者のヤムに稀ぬ暴発を力で押しつぶすだけの後味の悪さが残ってしまう。
     そこでまず、物語の展開にダイナミズムを持たせるためにクンタラの設定にも大きな仕掛けがあるのではないかと考えた。
     
     本編中でクンパ大佐は、あきらかに一介の地上人には持ち得ぬコネクションを持つ姿を描写される。
     
     それはフォトンバッテリーを作る宇宙の人々へ通信を行う描写がある。
     宇宙戦を開始したタイミングで、クンパ大佐は宇宙への情勢に対して明らかに地上の人間が知る由もないことを知っており、それを度々描写されていた。
     つまり宇宙へのパイプを持っているというのは明らかであるが、ではそのパイプはどこからゲットしたのだろうか。
     宇宙エレベーターの利権を言ってに占めるキャピタルタワーの重鎮だから?
     しかし同じくらいの権力があるベルリ母はそのようなパイプを持っている形跡がない。
     これはクンパ大佐独自のコネクションということになる。
     ではそれはなぜ持っているのかということを考えると、もちろん「クンパ大佐が宇宙勢力のスパイである」という結論に行き着く。
     
     ではなぜ宇宙とクンパ大佐が繋がっていなければならなかったか。諜報部の長という立場以上のことを彼は行い、なんらかの野望を秘めているような立ち振舞をする。
     このキャラをこの位置に配置した意味とは。そこから逆算し伏線が最後にどう解かれていくのかを考える。
     
     前述したが、Gのレコンギスタはクンタラが被差別階級という常識がなんらかの転倒をおこすのではないかという推測が成り立つことを話した。では常識の転倒とは? それは「価値観が逆転する」ことがわかりやすい。
     僕はマスクの父がクンパ大佐であり、クンパ大佐はクンタラに関係があると考えている。それと宇宙への特殊なコネクションという要素を足して考える。
     
     そもそもクンタラはなぜ差別されるようになったのか。本編ではほぼ終盤までそれは語られない。なぜひたむきに隠すのだろうか。それは設定考えてないなんてことはありえない! つまりクンタラの発生した理由は隠さなければならないほど物語にとって重要なのではないかとかんがえられる。
     それから察するに僕はこう結論づけた。
     
     クンタラは元々、地球圏の本来の統治権を持っていた――。
     という歴史があるのではないだろうか、
     
     フォトンバッテリーを配布するキャピタルタワーは宇宙に住む人々が持ち込んだ建造物である。これを地上にもたらした宇宙人技術者は絶対にいるはずであり、その技術と裏腹に地上の文明は中世時代で止まっている。
     そんな科学技術の後退した文明の中、圧倒的な科学力を盛った技術者たちは英雄のように、あるいは神のように扱われたのではないか。
     しかし彼らは特権により次第に傲慢になっていき、地上の人間にその座を追い落とされる。
     追い落とされた彼らを、傲慢になってしまった失望と怒りから地上人は「クンタラ」と呼び嫌った……。
     そのようなバックストーリーを妄想すれば、クンパ大佐が何を望んだか自ずとうかがい知れる。
     
     彼は本来クンタラが地上の支配者であった歴史を知っており、地上を正当に支配できる権利がクンタラにはあるという妄執を抱いている。
     しかし社会常識からそのようなことは言えないので、出自を偽ってキャピタルタワーへと出仕し、内部から変えようと能力を生かして上に上り詰めた。
     野望のために彼は身重の妻と子を捨てていった。その子がルイン=マスクである。
     ルインは母に育てられ、父であるクンパを知らずに育つ。母もクンパの立場を考えて何も言わなかった。
     上り詰めた彼は、自分が老い先短いことを知って諦めの境地にいたが強くたくましく育ってルインを見て、息子になら先をたくせると考え野望を成就しようとついに動き出す。
     
     というストーリーだと僕は確信していた。
     野望のために家族を捨てたルインとクンパ。そして立場と権力によって家族をばらばらにされしまったベルリとアイーダ似たもの同士の対になっており、そんなマスク達を見て改めて自分たちの関係を考えなおすこともできる。
     これが僕の考えたGのレコンギスタという作品だった。
     
     そんなものは15話を超える頃には全く見当違いの妄想だということがわかってしまったのだが……。
     Gのレコンギスタはそんな生ぬるい家族の話ではなかった。
     もっと巨大で、もっととんでもないものだったのだ。
     
     それがどういうものかは別の機会に書こうと思う。
  • 読書感想文3 ~スタートダッシュのかけ方を間違えた~「魔法少女オブジエンド」

    2014-10-13 22:02

    魔法少女オブ・ザ・デッド


    ○スタートダッシュが惜しすぎる作品

    この物語、3巻から一変する物語である。
    1~2巻までは正直にいって「出落ち」である。ゾンビのことを魔法少女って言えば面白いんじゃね? という突発的な発想に支えられていることがわかる。
    自分もかなり2巻までは微妙な気分で読んでいた。

    ゾンビをわざわざ魔法少女と名乗らせる意味を感じなかったのだ。
    2014年に生きる我々は、魔法少女といえばリリカルなのはを経てまどか☆マギカを経験してきた世代だ。言って、まどかを見た人間なら魔法少女という存在を汚れえない神聖なものとして体験してきた感覚のようなものがある。

    それが唐突に血に塗れ、ゾンビとなる光景は生理的に辛い部分があったし、切り離せない自分の心の狭さでもあるとは思う。

    2巻までとてもチャンピオンっぽいなと思って読んでいた。
    グラップラー刃牙や浦安鉄筋家族などのイメージがあり、チャンピオン漫画=テンションが高いという印象が付いている。

    だが3巻を超えると、魔法少女がある目的を持っていることがわかる。それが「魔法少女オブジエンド計画」なる謎の計画の成就であり、彼女たちが何らかの計画をもってこの世界に介入してきていることが伺える。

    この計画が上位存在が哀れんで人類補完計画をしてやろうと思い立った、みたいな薄っぺらい目的ならもはや完全に読み捨てるところだったが、とあるキャラの個人的な願いを叶えるために存在しているのではないかという命題が出てくる。

    ここで物語は一本芯が通る。

    この物語の1巻までの緊迫感のなさ、他の漫画との類似点が多く見える様子は登場人物のあ私が地についてない、つまり感情移入できないからだと思う。
    退屈な日常を送る主人公は幼馴染の少女がいじめられている姿を完全に見捨てて心を閉ざしているというスタートを切る。

    ここに屈折した主人公の感情を感じることができるが、この感情は丁寧に描写しないと、ただの保身に走る下衆として取られかねない。
    何かトラウマを抱えて彼女を見捨てざるをえない状況に陥っているのかと想像したら、「その前に事件が始まってしまう」のだ。
    ここで読者の気持ちは主人公が下衆いイメージをいだいたまま置き去りにされる。
    こんな奴に感情移入できないため、宙ぶらりんの気持ちのまま物語が進んでいくのだ。
    そもそもいじめられてる設定が後の巻の展開で強引にフォローを入れているもあまり必要ないものであり、刺激的な要素を無節操に詰め込んでみた感のある1巻を特に象徴する部分になっているように思う。

    3巻からタイムリープ要素が追加される。
    主人公たちは過去に飛ばされ、魔法少女の誕生にまつわる話を聞く。そこで遅まきながら主人公がなぜ幼なじみを助けに行動しないのかという設定も語られるがとても遅い。せめて1巻の間にやってくださいオナシャス。
    しかしこのタイムリープものが功を奏して世界観の謎にぐっと深みが出る。
     主人公がもともと置いてきぼりだったわけですよ。
     謎のゾンビによって世界が破壊されるという設定に学生が巻き込まれ型で放り込まれると、事の大きさに加え現状を打破する努力ができないため置いてきぼりにされてしまうのだ。
     しかし過去編でセカイ系の片鱗とともに主人公の周囲の人間関係が世界の危機へと直結する。
     これにより主人公がようやく物語へと参加した感じは出てきた。しかし、謎と伏線は晴れたものの、世界的な陰謀に加え時間軸まで加わったので把握するだけで巻数を消費しなきゃいけない説明不足状態になる。
     しかし説明だけでは面白く無いので④巻は人間ドラマでその欠落を埋めようとする。
     もう魔法少女がゾンビであるという目新しさも消えているのでそういう骨の部分で相手しなければならないのは自明である。
     だから④巻ではサブキャラがいきいきと活躍し始める。特にこの中で活躍を始めたのは、芥龍之介というキャラで最初はただの極限状態で頭イっちゃったおかしいキャラなのだが、彼にだけ性欲で行動するというわかりやすい導火線があるため、大活躍をはじめ、ある理由で超人的な力まで手に入れてしまう。
     主人公を食うレベルの活躍を見せ始める。
     芥の覚醒シーンは作者の書き込みと相まってなかなか背筋が震えるものがあり、楽しい出来となっているからグッド。
     ただそこからさらにタイムリープ展開へと発展していく。つまりこれ、①巻の設定が収拾できないんでリセットしますといった感じで、とにかく最初の設定がすべて足を引っ張っている。
     藤田和日郎の壮絶な後付に通じる積み上げ方ではあるのだが、この②度めのタイムリープからの魔法少女の謎の核心へと触れていく展開で、ようやく主人公が主人公らしくなっていく。
     決断し、ヒロインを守るという意思を長い旅によって得たからだ。重ね重ね言うが①巻をもうちょっと練り込んでいれば単行本1冊くらいは圧縮できたはずである。惜しい。

     だがその尻拭いとテコ入れの⑤巻は作者の苦悩が見て取れ、さらに冗長感もあることは確かなのだ。
     しかし後半はきちんと盛り返してくるのも間違いなく、なぜそんなことができるかというと、作者さんがこの物語で自分が何を書きたかったのかというテーマをきちんと把握されていたということがあるのではないかと思う。
     それは、主人公が何を守りたいのか、ということだ。彼女がどれだけ大事でどれだけのことをして守りたいかという思いの大きさだ。
     だから二人の関係はセカイ系のように大きく物語の鍵を握るように進んでいく。人の成長がなければな物語ではないという根本を作者はきちんと意識している。

     だからこれは駄作ではない。
     けれどそれでも新規で読み始めることはおすすめしきれない。
     ただ、ループもの。タイムリープものというジャンルにときめきを覚える人なら最初からそういう漫画だと知った上で読むことを前提に面白い作品である。