【ネタバレ・感想】『ARIA The AVVENIRE』
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【ネタバレ・感想】『ARIA The AVVENIRE』

2015-09-29 02:04
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普段はFilmarksというところに映画の感想を乗っけてるのですが、今回大好きなARIAが劇場で公開されたということで、思いのたけをブロマガにも乗せました。見当違いな部分等あると思いますがご了承ください。
https://filmarks.com/pc/WestSazan

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 やって参りました。天野こずえ先生原作『ARIA』の後日譚と言える今作。漫画とアニメが同時に完結した7年前、それだけでも幸せだったファンからすると今回"Blu-rayボックスのオマケ"として完全新規のアニメを3話も作っていただけるなんてもう本当に嬉しいし、正に"奇跡"だなと思う次第なわけですよ。

    

■原作の魅力
 自分は今でも一番好きな漫画を挙げるなら"ARIA"と答えるでしょう。それだけ印象に残る、今尚魅了して止まないメッセージがあったわけです。この漫画には所謂"日常系"や"癒し系"と言われていますが、そう形容される所以は、この漫画の世界観に対する理想論と現実にあるんだと思います。この漫画の世界観は一見SF/ファンタジーを装う一方で"シビアな現実"という側面もあるんです。その側面が場合によっては読者の実人生に照らし合わせられるわけですね。ただ、そういったどうしようもない現実・制約をどうポジティブに転換するか、どう人間あるべきかを毎回示唆してくれるところにこの漫画における癒しはありました。

 例えば、原作6巻の27話『ヴェネツィアンガラス』で"一旦途絶えた伝統芸能"に対して「その人が嘘モノと感じるなら、それはその人にとっては嘘モノ。でも貴方が嘘モノだって言われて傷つくのは、貴方の想いが本物で大切なものだから」「過程や時間が違い、人が何を想って創り何を感じてきたかも違う。すくなくとも私の場合、本物か偽者か決めることは全然問題じゃない。好きだという気持ちとその気持ちを宝物のように感じられる私が今こうして存在しているから」(要約)と主人公の灯里は言います。この話はともすれば"パクリの肯定"ともとられてしまいかねない非常に難しい部分ではありますが、要するにこの話を通じて描きたいことというのは"この世に2つと同じものは無い"という万物のアイデンティティ的なものなんですよね。なので世の中あらゆる類似品が出回る中、言ってしまえば(善悪とは別に)明確なパクリにさえ系譜的にはオリジナリティがあるという陽性な考え方です。

 他には、原作10巻の48話『トラゲット』で「人を変えることができなくても、自分を変えることはできる」「何時でも何処でも何度でも、チャレンジしたいと思った時がまっ白なスタート。自分で自分を終わりにしない限り、本当に遅いことなんて無い」(要約)という会話があります。これは例えば現代社会の就職についての言及ともとれますし、単純にやりたい・なりたいへの動機付けの後押しという一種のエールともとれますよね。

 さらにもうひとつ、今作に深く関わってくる、原作6巻の26話『オレンジな日々』での先輩からのアドバイス。「あの頃は楽しかったじゃなくて、あの頃も楽しかった」「きっと楽しいことは比べるものじゃない」「今楽しいと思えることは、今が一番楽しめる。だから、いずれは変わっていく今を、この素敵な時間を大切に」(要約)これですよ。進学でもクラス替えでも引越しでも就職でも死別でも、なんでもいいです。あらゆる形で誰もが友人や環境が変わる体験をすると思います。そして誰もが過去を振り返ることってあると思うんです。ただ振り返ることで今を否定することって、要はこの先の悪循環の示唆でもあるんですよね。過去与えられるだけだった"楽しさ"を今度は見つけていくことが、つまりは大人になること・日々に活気をもたらすことなんだという、非常に開けた(ポジティブな)考え方だなと思います。一種の生きる上での指標ともなる文々に共感した人は多いのでは。

          

■理想論?
 ここまで原作の癒し部分をずらずらと上げてきました。ただ、別段新しい思考というわけではないですよね。生活に追われつい忘れがちなものなんです。こういう日常の中に潜む"忘れてしまった"小さなポジティブを思い出させてくれる点が、時として癒しになるんです。これは人によっては体の良い理想論・良き事の押し付けとも取れてしまいかねない部分はあると思います。現実を考えれば、パクリはパクリだし、いくらチャレンジしたいと思っても社会構造や法律を動かすことはできません。生活や精神が逼迫しているからこそ、思考をポジティブに傾けるのは難しいのです。しかし、だからこそ"ありえない"で終わらせてはいけないものはあるんですよね。かの高橋ヨシキさんも「理想論は非常に大事。人権にしたって人種の平等にしたって、何でもいいが"理想論があったから"進んでいった。これを踏まえた場合「現実ではこんなことはありえない」「頭の中お花畑」という意見は先についてのビジョンが無いだけといえる」(2015/02/07 ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル サタデーナイトラボ「スタートレック特集by高橋ヨシキ」より要約)と言っています。まぁこれは、スタートレックにおける”前提の世界観について、理想論という意見の是非”の中での発言ではありましたが、通呈していることはありますよね。リアリズムも大事だけれども、前提にある善的・陽的な思考は疎かになってはいけない、実は非常に大切なモノだということです。さらに言えば、登場人物は"理想的な世界観"で甘い関係を築いていくのではなく、現実社会のデフォルメ的世界観で登場人物に"理想が根ざされていく"んですよね。だから説得力を持っているんです。主人公の灯里の狂気じみたポジティブは物語の最初こそ浮いたモノと見られがちではありました。最初から甘い世界に易しい考えならここまで響きはしないですよね(一部甘い設定はありますが)。普遍的な思考・価値観、絶対的な社会構造や時間経過を含むからこそ、この作品の理想論は評価されているのでしょう。

■大団円
 そしてそんな理想論では拭えない絶対的な終わりを描いて見事着地したのも評価されたポイントでしょう。先ほど書いた"灯里の狂気じみたポジティブ"は本人にとって精神的なマイナスであろうと発揮されます。これが原作終盤にこれでもかと押し寄せ、あるとき決壊してしまうわけですね。先輩の寿退社や友人の昇進という"相手にとっての幸せ"が"自分にとっての寂しさ"になり、唐突な環境変化に戸惑うわけです。その変わってしまう今を受け止め、いつしかの「あの頃は楽しかったじゃなくて、あの頃も楽しかった」というアドバイスを思い返し、一歩踏み出していくと。ここで改めて灯里が正常な10代の娘であったことがわかるし、明るい未来への示唆にもなるという。さらに後日譚にて漫画序盤のアリシアさんと同じカットをはさんで、アリアカンパニーという場所を中心とした廻り廻る人間関係を仄めかし完結。ぬるま湯で終わらせないところにこの漫画におけるリアルがあるし、それまでのメッセージが生きてくるんですよね。もうね、すばらしいんですわ。ただ、改めて全巻読み返してみると"人の詩集"を覗き読んでいるようでふと恥ずかしい気分に駆られるのも確か。

       

 さあ原作ARIAの魅力をこれでもかと書きましたが、今作『ARIA THE AVVENIRE』に私が原作から感じ取った魅力があったかというと……あれあれ?というのが正直な感想。


■良いには良いが……
 今作は3つのエピソードを連続で流し1本の映画としています。1つ目のエピソードは原作10巻46話『誕生日』がベース、2つ目のエピソードは原作11巻53話『ケット・シー』がベース、3つ目のエピソードは完全新作となっていて、一見全く関係ないエピソードが並んでいるように見えます。しかし、この3つのエピソードや企画自体に通呈するテーマとして"奇跡"があるわけです。水の三大妖精が誕生日に偶々顔を合わせることが出来た奇跡、ケット・シーに最後の再会が出来た奇跡、先輩後輩を含め一同を会することが出来た奇跡、そして7年越しにARIAという作品の続編が作られた奇跡。その他にも舞台挨拶でキャストの方々がこの作品を廻ってのこれまでの様々な奇跡を語っていたりして、結果あらゆる方向から奇跡が篭っているわけです。もう正直これだけで満足ではあるんですよ。そら泣くんですわ。内容とか関係なく条件反射で涙腺が壊れるんです。しかしこの出来上がった作品について、一ファンとして言いたい部分があるというのも確かなんです。

■尺とチョイスのミスマッチ
 まず1つ目と2つ目のエピソード。ここの構成は、新規シナリオ→回想(原作シナリオ)→新規シナリオ、となっています。1つのエピソードが20分なので新規シナリオと原作シナリオはおよそ10分ずつです。するとですね、どうしても原作シナリオについては要点を抑えただけの性急な映像化になってしまうんですよね。そしてこの原作シナリオを挟んでいる新規シナリオについても回想に対してのお膳立て以上の役割が無くて、正直アイちゃんあたりの新規後輩組の存在意義がありません。だいたい回想後は「素敵だね!奇跡だね!」以上の反応も展開も無いという。結果新規シナリオも原作シナリオも感慨を感じる余地が無く、薄っすらしたまま終わってしまっているんですよね。これやるんだったらどっちかに絞るべきでしたよね。ガッツリ原作シナリオを映像化するか、原作シナリオを匂わせる完全新規シナリオか、どっちかでしたよ。さらに言うなら、ケット・シーとの別れの話はそれまでのオカルトシナリオの積み重ねがあるから最後の奇跡として効いてくるのであって、単品で出されて「どうですか」ってのはおかしくないですか。もっと言うならこのシナリオって要は親離れのメタファーだったり、この後の"変化"という展開への示唆だったりするわけですよ。こんな重要なシナリオを10分弱って。待ちに待った原作シナリオの映像化でしたが、残念の一言。

■同窓会から先が欲しい / ARIA本来の魅力
 最後のエピソード、『その遙かなる未来へ…』ですが、もうなんかこのエピソードに至っては同窓会以上の意味合いが無いんですよね。「一同が会したね!奇跡だね!」以上の展開が無い上、一同が会するきっかけを作ってくれた新規後輩組にいたっては後半からどんどん存在が薄くなっていき、ラストカットにて消えるという扱い。遙かなる未来を示唆するには何が必要ですか?未来あるものですよね?機会を作ってくれた新規後輩組に希望を持ちつつ、共に進んでいくのが正解じゃないですか?願いの種が花開くのは未来があってこそでしょ?すべてのエピソードに言えることですが、後ろを振り返りすぎです。「あのとき面白かったね」のオンパレードで、未来を見せてくれないんですよ。わかりますよ、アテナさんのルーミスエテルネなんて聴かされた日には過去を髣髴とさせ真の全員集合という意味で泣くんですわ。でも、ARIAって奇跡で終始するような、泣くことを急かすような作品でしたか?違うんですよね、あくまで奇跡や落涙は副産物だったんですよ。今回の話は花が咲いた部分を見せているだけで、種を植えてくれないんですよ。
 今回、最後のエピソード『その遙かなる未来へ…』は原作者天野こずえ先生が書き溜めていたモノをベースに作っていて、確かにこのエピソード(パンフレットに載っています)も素晴らしいんですよ。原作の時点で断片的に伺える情報ではありましたが、アリシアさんの心境がばっちり詰まっている良いエピソードでした。でもこのエピソードはアリシアさん視点のARIAであり、アリシアさんの中で完結している話なんです。となると今作に通呈する"奇跡"とは食い合わせがそもそも悪いんですよね。AVVENIREにおける奇跡・未来とアリシアさんが一歩進むことで成る奇跡・未来は全く別の話なのに、AVVENIREのラストでアリシアさんの独白で終わらせてしまうから根本がすり替わってしまっているんですよね。これ音楽と絵面で丸め込まれそうになりますが、アリシアさんの独白と三人娘のプリマ昇格シーンでAVVENIREの幕を下ろすのはどう考えてもおかしいですよ。結局アリシアさんの話になってしまっているんですから。ここにきてとんでもない力技を見せられました。


ARIAらしさも十人十色、と言いたいところですが、そもそも一作品の作りとしてどうなのと思ってしまうところが多かったですね。葉月さんも言ってましたよ、「ARIAは泣けるだけの作品じゃない(うろ覚え)」って。

         


■良い所もありました
 なんといってもアテナさん問題、担当されていた方が両者亡くなっており登場が危ぶまれていましたが、会話こそないものの歌唱で参加という違和感の無い出番となりましたね。ルーミスエテルネは亡くなる以前に録音したサンプルだったようですが、効果的に使われていました。
 あとは、音楽使い。BGMが流れてくるだけでもう没入できるくらいシーンや世界観に馴染んでいるんですよね。過去のシリーズの音楽を多用している分そこに関しては気兼ねなく観れると。また、EDテーマに関しては新規ですが、作品の雰囲気にあった曲でしたね。これだけでなんかもうモヤモヤが吹き飛んでいくようでもあります。

■ここが欲しいなと思ったところ
 最後のエピソードにて全員集合していましたが、ここに暁・アル・ウッディがいたら嬉しかったですね。友達以上恋人未満を行き来している関係の方々のその後も見たかったかなぁと。
あと一番思ったこと。灯里をもっと見せてほしかった。主人公ですもの。

            


■終わりに
 云々と書き連ねてきましたが、7年前に完結した漫画・アニメが新作を引っさげてきた、これだけで本当に幸せなことではあるんですよね。新作についてここが良かったここがアレだ云々と問答できること自体ががARIAファンにとっての"奇跡"なんです。ここから先ARIAコンテンツが展開されるかはわかりませんが、原作の持ち味を生かした素晴らしい世界を広げていって欲しいと思います。Blu-rayボックス買います。


        


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私も原作からのARIAファンです。
本当に今回の映画化と言うのは、奇跡みたいなもんですよね。
映画化の発表がされた時、アテナさんの声優は変えないと聞いた時、それだけで制作陣のプロとしての誇り、心意気に鳥肌が立ちました。
まだ私は映画を見ていないので、感想をこの場に残せないのが残念です。
私もBlu-ray買います^q^
53ヶ月前
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>>1
ぜひ新作観にいってみてください!
53ヶ月前
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