鉄道の維持と価値 ローカル路線の存廃問題を考える
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鉄道の維持と価値 ローカル路線の存廃問題を考える

2017-05-07 17:29

    旅や交通について言いたい放題やるこのブロマガ、今回は公共交通を運営側から・・・というか、お金の視点で見てみようと思います。

    日本でも1987年までそうであったように、海外では国が鉄道を持っていたり、フラッグ・キャリアとなる航空会社を持っていたり・・・ということはよくある話です。その理由は、やはり鉄道はインフラの一部であるという位置づけであることがいえる・・・と同時に、鉄道は一定水準を保とうとすると、莫大なお金がかかることへの裏返しでもあります。
    新設するならなおさらで、車両だけでも数億円単位(費用の回収に1年数万円落とす定期利用客が1万人必要という計算にすらなってしまう)、しかもそれは導入費用だけであって、車両の整備にもお金がかかります。当然、電気設備にも費用がかかるし、安全対策なんかはなおさらお金が必要。電気設備を使うとお金がかかるからと、貨物用にしか残していない第3セクター(肥薩おれんじ鉄道など)もあるぐらいです。
    そして、そのお金を投資するだけのリターンを地域は果たして得られるのか。
    赤字を垂れ流し、存廃問題になると税金が入ることがありますが、結局収支改善できず廃止になるケースもあるようです。

    さて、鉄道の利点とはどこにあるのか。バスと比較して明らかに違うところはどこか。
    まず増発は車両が必要になるためお金がかかりやすいです。しかしそれに見合うだけの乗客増加が得られるのであれば当然する価値はあります。バスもこの例に漏れませんが、車両価格が大幅に違うことと、数年に一度ある全般検査(解体検査)みたいなものがバスには無いことが違います(車検はあるもののもう少し下級の重要部検査に近い?)。また、列車運行そのものではなく、途中停車駅などでもこれは当てはまります。需要があるところには積極的に停めるべきであり、応えていくことはよいことであると考えられます。ただし、列車は停車駅ひとつとっても加速に大電力がかかったり所要時間が延びたりするのでそう気軽に停め難い事情もあります。便利さと速さの板ばさみ状態でもあります。
    そして鉄道とバスを比較すると、都市部では鉄道のほうが速いパターンが多いです。京阪神地区なんかはこのパターンが多く、関西空港や伊丹空港に行くリムジンバスや有馬-宝塚線などの一部路線を除くと、だいたい鉄道が所要時間では圧勝、費用トントン、時間の正確性でも圧勝、輸送可能人員でも圧勝・・・となるわけです。
    しかし、ローカル線に多い、昼間に乗客が数人しか乗っていない単行列車となると話は別です。レールバスという単語ができるぐらいの路線というものがありますが、そういうところだと「バスでいいのでは?」と思うところがあります。速度もそこまで出ないため、バスのほうが速いなんてことも少なからずあります(芸備線備後庄原-備中神代など)。
    また、ある程度以上の田舎になると渋滞も少ないため、時間の正確性は高まります。
    この部分が、昔は道路状況が悪い区間が多く、「鉄道が無いと時間がかかるし不便」なんてところが多かったですが、道路整備によってこれが改善しつつあるのが現在の日本です。つまり地域によっては、道路を整備するか鉄道を維持するかの選択に迫られ、車社会であることもあいまって道路に振った場所もあるかもしれません。
    北海道の場合はかつて沢山の盲腸線がありましたが、現在では収入が見込める都市間輸送以外の路線は切り捨てざるを得ない状況となっているところが多いです。まだ残っている盲腸線と言ったら・・・
    ・宗谷本線(都市間輸送も担う)
    ・根室本線(東釧路-根室、都市間輸送の側面あり、鹿の事故が多い)
    ・石勝線(新夕張-夕張の夕張支線、2019年に廃止?)
    ・札沼線(桑園-新十津川、このうち非電化の北海道医療大学以北がヤバイ)
    ・留萌本線(深川-留萌、以前増毛-留萌が廃線、それ以外も高規格道路開通で危ない)
    ・日高本線(苫小牧-様似、長期運休区間アリ、国道が並行している)
    さらに盲腸線ではないもののJR北海道が廃止したがってる?路線(プレスリリースより)
    ・根室本線(富良野-新得、いわゆる狩勝峠区間、山間部が多く駅の前には国道が通る)

    これを全部残せというのはいくらなんでも無理でしょう。北海道の場合、鉄道もよっぽど速い列車でない限り、道路のバスと大差ない速度での運行となります。そして一つ重要な視点として、道路整備するならマイカーや他方から来る自家用車およびレンタカー、貨物自動車にも恩恵がありますが、鉄道の軌道整備は鉄道車両(と時間短縮で利用客に多少)にしか恩恵がありません。お金の出所も、税金か運賃収入かといった違いがあります。
    東北でも同様の例があり、盛岡-宮古間の「106急行」が鉄道並行ながら速いほか、鉄道が大回りな盛岡-久慈や山形-鶴岡・酒田などにも特急バスがあるので鉄道の存在意義が薄い区間も沢山在ります。
    ローカルな輸送では各停バス便でもできそうな区間はいくつか(106急行など)あります。その一方、輸送人員そのものは少なくても、渋滞を無視できたりマイカー駐車場がいらないところを評価されるケースも多いです。郊外大型店に押されても市街地の空洞化があまりないことが前提とはなりますが、つくばエクスプレスなどがこれに該当するようです。
    また、地方都市の中心部が郊外大型店の登場で必ずしも生活に必須ではなくなってきたところも大きいようです。これに対応し、軌道を作らなくても路線が開設できるバスの強みを生かして、市街地や最寄り駅からショッピングセンターなどに向かうバスを運行しているところもあります(福井や福山などが該当)。
    鉄道は簡単に路線変更できませんが、バスは災害があると迂回運行をしたり、ライフスタイルの変化に応じて路線を変えたりできるところも大きいです。

    ところが、鉄道にこだわるところはこだわります。その理由を考えると・・・なんとなくわかってきます。
    それは、時刻表です。
    時刻表には鉄道路線が載りますが、バスは特筆するところ以外載りません。
    そして全国時刻表以外は各社がバラバラに出しています。これではわかりにくい。
    さらに地域の交通手段としてバスではショボ過ぎるというのもあるでしょう。簡単に路線休止できますし。
    このあたりは、一考の余地はあると思います。それはまた別のときに。

    そもそも、鉄道など様々な交通手段の閑散路線に言えることですが・・・
    運転手と自分1人しか乗っていない乗り物が維持できる・・・とは思えますか?
    その乗り物に、自分は維持できるだけの対価を支払っていますか?
    そういう話です。
    本来は、自分1人や数人のために運行となると、タクシーで割り勘ぐらいの運賃がかかるのです。
    それをわざわざ安価な運賃で、小型車ではなく、費用がかかる大型車や鉄道車両、場合によってはもっと費用がかかる航空機・船舶で運行しているのです(最近ではコミュニティバスでも閑散路線ではハイエース程度の車での運行もあります)。
    いくら便利なものであっても、それが運航・維持・管理費が高額では全員にとっていいものとは言えないのです。人が一杯載れても燃料代が高すぎた「テクノスーパーライナー」がそれを証明しているようです。

    しかし、鉄道でなければできないことがあります。それは、旺盛な移動需要に応えることです。北海道でも札幌近く(特に新千歳空港-札幌-小樽)では満席近い乗車率がある列車も多く、この区間は列車がないと交通渋滞を招いてしまいます。空港連絡の鉄道やリムジンバスが整備されやすいのにはそういった理由がある訳で、運営側にも安定した収入源になり、利用側にも安定した移動手段として利用されるので、双方にメリットがあると言えます。
    また、鉄道がなくなって交通渋滞を起こした場合もあり、福井がこれに該当します(京福廃止で交通渋滞頻発、えちぜん鉄道として再出発、黒字化)。郊外から市街地に向かう場合も、市街地手前で渋滞しやすい都市(立川など)や駐車場があまりない都市(京都など)、一大集客地を抱える都市(横浜など)は鉄道の利便性が物凄く高いことが多いです。このような場所では鉄道は一つのライフラインとして機能する場合もあります。渋滞が酷いけど鉄道を敷くほどの移動はないかな・・・という都市では、バス専用道が整備されることもあります(新潟など)。

    さて、東海道新幹線では新横浜-名古屋間ノンストップの「のぞみ」が10分おきに東京や新大阪を出ていきます。少し立ち止まって考えると、東海道新幹線がどういう役割を果たしているかが見えてきます。
    それは、東京-名古屋-大阪の移動需要を満たそうとすると、鉄道以外ありえないぐらい多いからです。
    この区間が、仮に新幹線がなく、在来線特急の高速化(東京-大阪を6時間程度)だけで済ませようとするとどうなるか。
    そうすると、所要時間で大きく勝る航空機では、伊丹空港や羽田空港はパンク、500席仕様のボーイング747どころかオールモノクラス仕様のエアバスA380でも捌ききれないぐらいになってしまいます。なにしろ、新幹線8両の提供座席数よりもボーイング747-100SRの提供座席数のほうが少なく、計算上、ボーイング777を3機、10分ごとに飛ばさないといけないわけです。しかも、これは片道の話。往復ではこれが2倍になるので、まあパンクします。しかもここに同様の事情を抱える東北方面や信越方面が混じると・・・さあ大変。羽田・成田だけではなく、調布・横田・厚木・茨城も総動員しないと捌けないレベルです。
    現在ですら東名高速や中央道も連休になると渋滞する(東名阪道に至ってはほぼ毎日渋滞している)のに、新幹線が無かったら・・・まあ大変です。
    移動需要があまりにも旺盛なので、多少値段が吊りあがっていても混みますし、営業係数は50前後、JR東海の在来線に多数新車を入れても特に問題が無い・・・といったぐらいです。

    さらにその一方、一旦廃止になった東京大阪発着の夜行列車(上りだけ「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」が使えるが)ですが、高速バスでは夜行の勢いが凄く、東京-大阪間には1日何十往復も走っています。
    そしてあまり速くない飯田線沿線では路線バス的なポジションを飯田線各駅停車が、特急列車的なポジションを伊那バスや信南交通の高速バスが担うという逆転現象が起きたり、上越-新潟間移動も高速バスが優位に立ったり(列車の老朽化もあるにはある)、高速バスが在来線の鉄道輸送に風穴を開ける事例も発生しています。あの黒字第3セクター・智頭急行も日本交通高速バス(鳥取-大阪線)と勝負していたり、年々輸送の体系というものは劇的に変化しています。

    近年における航空機もただのワープの手段ではなく、LCCのような新しいビジネスモデルを打ち出したり、高速鉄道との競合に晒されたりする場合もあります。区間によっては船舶との競合もあります(東京-大島や福岡-対馬・壱岐など)。

    つまり何が言いたいかというと、「適材適所」「驕れる人も久しからず」という言葉は、交通機関の勢力図にもそっくりそのまま当てはまるということです。

    次回は、時刻表について考えていきます。


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