新SSR[雨夜の誓い]で、9年目にしてついに黒川千秋の”物語性”が知れ渡った
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新SSR[雨夜の誓い]で、9年目にしてついに黒川千秋の”物語性”が知れ渡った

2020-11-26 02:17

     2020年10月20日、デレステにて黒川千秋の2枚目のSSR「[雨夜の誓い]黒川千秋」が実装されました。
     昨年の4月に1枚目のSSR[ノブレス・ノワール]が実装され、今年の4月にはSR[白銀の騎士]が実装されたので、正直なところ担当Pとしてもこのタイミングで2枚目のSSRが実装されたことは青天の霹靂でした。

     しかしそれ以上に衝撃的だったのは、そのイラストが「悔し涙を浮かべた泣き顔」「雨の中でがむしゃらに叫ぶ姿」というとてもエモーショナルな場面を描いていた、ということでしょう。
     これまで他のアイドルでもあまり見られなかった表現で、シンデレラガールズ全体としても新鮮さをもって受け入れられたのではと思います。その当事者となったのが黒川千秋というのがさらに意外性を伴っていたかと思いますが、担当Pの自分も意外な思いをしていました。


    土砂降りの雨を「私らしい」と言い、がむしゃらに叫ぶように歌う。意外に思われただろうか。

     ――黒川千秋の悔し涙やがむしゃらに叫ぶ姿が意外だった?
     いいえ。彼女のそういう面を、担当Pの自分はずっと見てきました。
     しかし、だからこそそれがカードとして描かれること驚きが伴ったのです。

     これまで、黒川千秋のカードのエピソードやイベントのストーリーといった、誰もが触れるコンテンツの一番表層の部分で描かれるのはいつも「未熟さを乗り越えた先の、黒川千秋の新しい一面」でした。
     メイドや演劇やメタルロックといった新しい分野への挑戦、アイドルとしても人間としても成熟してPや仲間と共に過ごす穏やかなひととき。
     担当Pとしてそれはとても嬉しいものなのですが、一方で黒川千秋のことを詳しく知らないプロデューサーにとってそれは新しい一面ではなく、それこそが黒川千秋のアイドル像だというイメージになっていると感じていました。

     ですが自分はずっと、アイドル黒川千秋の魅力は”今”に至るまでの物語にこそあると思っています。
     アイドル黒川千秋の、失敗と挫折を繰返しながらも未熟な自分自身と真摯に向き合い挑戦を続ける姿。それこそが彼女の魅力の中核だと思うのです。だから自分は、黒川千秋の小説や動画を作る際はそういった面をフォーカスしてきました。


    今年の総選挙で作成した黒川千秋の応援MAD。タイトルに続く歌詞は「だけどガラスの靴をまだ諦めない」


     しかしそれは、”今”の黒川千秋にとっては通り過ぎた話であり、公式からこれからのイベントや新規カードで描かれるということは絶望的だろう。そう思っていた所に来たのが、今回の[雨夜の誓い]でした。

     舞台の本番でミスをして、帰りの車中で悔し涙を流す姿。
     大雨の野外ステージで、がむしゃらに声を張り上げる姿。

     どちらも黒川千秋のイラストとしては公式で初めて描かれたものです。でも、それは担当Pにはずっと”見えていた”姿だった。
     彼女は挑戦の物語の中で強く輝くのだということを100点満点の形で、それも”今”の黒川千秋としてコンテンツの最も触れやすい部分に置いてくれたのが、シンデレラガールズ9年間の黒川千秋の歩みの中でもとてもエポックメイキングな出来事だったと思います。


     さて、前置きにして主題は以上で、ここからは本編にして担当Pの余談です。
     先に書いた、黒川千秋の担当Pにとって「ずっと”見えていた”姿」とはどんなものだったか。記事タイトルにした黒川千秋の”物語性”とはどういったものなのか。
     そんな話をちょうど良い機会なのでまとめておこうと思い、久しぶりに長文記事を書きます。


     自分は黒川千秋の魅力を「泥臭い気高さ」と表現することが多いのですが、その「泥臭さ」は「未熟さ」と不可分です。
     自身の未熟さ故に失敗や挫折をしながら、それを真摯に受け入れてあくなき挑戦を繰り返す。その凜として直向きな姿に感じられる気高さが、彼女の魅力の中核であると考えています。

     そして、このような魅力にはその性質上、どうしても物語が必要です。
     200人近いアイドルが登場するアイドルマスターシンデレラガールズにおいて、その魅力として”物語性”があるアイドルは多岐に渡ります。
     しかしその多くはアイドルになる以前、またはアイドルになったきっかけに劇的な物語があり、そこからの連続としてそのアイドルの物語が描かれています。
     ゼロ地点にある物語は設定という名の個性として、そのアイドルを初めて知った際にも伝わりやすい情報です。

     一方で黒川千秋の物語性は、中々に説明が難しいです。
     アイドルになる以前は育ちの良い北海道出身の女子大学生。それ以外の情報はありません。
     アイドルになったきっかけはモバマスではスカウトでデレステではオーディションと、設定の一貫性すらありません。
     黒川千秋というアイドルのゼロ地点に、劇的な物語は存在しないのです。

     そして[雨夜の誓い]以前、新たに実装されるカードやイベントは押しなべて、劇的な物語を乗り越えた後の黒川千秋だった。
     勿論そこで描かれるその時点の黒川千秋の物語も素晴らしいものです。ただ自分が最も伝えたい黒川千秋の魅力は、「アイドルになってから今に至るまでの物語」という空白を埋めて貰って初めて伝わる。
     そのことが、ここ数年間担当Pとして黒川千秋の魅力を発信し続けた自分にとっては大きな課題意識としてありました。
     興味を持って深堀ってもらえればその物語にはアクセスできるようになっていましたが、そこまでしてくれる新規のプロデューサーは全体から見ればごく僅かでしょう。

     さらに言えば、公式が黒川千秋の「分かりやすい物語」を用意してくれたのもごく最近だったりします。
     現在、黒川千秋の物語を知りたいと言われたら、真っ先にデレステのメモリアルコミュを薦めます。
     メモリアル1はアイドルになったきっかけのエピソードとしてオーディションで大言壮語を吐くというものですが、メモリアル2・3はレッスン・宣材写真撮影の際の失敗のエピソードで、黒川千秋の失敗に真摯に向き合う姿勢がよく分かります。
     そして特にお勧めしたいのがメモリアル4で、他のアイドルと同様に黒川千秋の初仕事のエピソードです。
     以前にメモリアル4で行う初仕事の内容でアイドルの初期ランクを分類するという同人誌があったのですが、その分類でも最下層に位置するような小さな仕事が黒川千秋の初仕事になります。
     しかしそんな仕事に取り組む黒川千秋の姿を爽やかに快く描いており、悲劇に頼らず彼女の魅力を伝える素晴らしいコミュだと思います。
     メモリアル4の登場で、黒川千秋に興味を持った人にとりあえず「メモリアル4まで見て」と言えるようになったのはダイマ活動の大きな助けになりました。


    一つ前に作った2018年の応援MADはメモリアル4を中心にメモリアルコミュをフィーチャーしたもの。

     ではメモリアルコミュの実装前には何をもって黒川千秋の物語を伝えていたかというと、デレステで最初に実装されたN黒川千秋の台詞と、デレステ以前ではぷちデレラの台詞とエピソードでした。
     デレステのN黒川千秋の台詞では、「台本の読み合わせ、付き合ってほしいの。少ししか出番なくても…ね」「必死さを笑われるのも堪えるけど、失敗するほうが惨めよ」といった、彼女の直向きさを感じさせる台詞があります。
     ぷちデレラではデレステのメモリアルコミュ2と同様ダンスレッスンでの失敗を反省するエピソードをはじめ、Lvに応じた台詞の数々から様々なことを受け止めて変化していく過程を見ることができます。
     ちょうど自分が積極的に「俺達の少女A」などのダイマ活動を始めた時期では、この辺りの台詞を根拠に発信していたように思います。


    最初に作った応援MADは、まさにデレステのN黒川千秋とぷち黒川千秋の台詞を散りばめたもの。

     そしてさらに、ぷちデレラ実装以前はどうだったかと言うと――
     実は、明確な台詞という形で黒川千秋の挫折や失敗、逆境とそれに立ち向かう姿というのはほとんど描かれていません。
     モバマスでのN黒川千秋の台詞は大言壮語と、特訓後にプロデューサーの手腕を少しだけ認めるというのが主な内容で、デレステやぷちデレラで描かれていたような失敗や必死さの描写はありません。
     唯一挫折を感じさせるのが、初のSR[黒真珠の輝き]の「いっそこの黒髪を切ってしまおうかと思ったこともあったわ」という台詞で、その時点よりも前に何らかの挫折があったことを仄めかしている程度です。
     しかし、少なくとも自分にとっては、既にこの頃から黒川千秋の挫折や必死さがありありと目に浮かんでおり、この台詞こそが黒川千秋の物語を象徴するものになっていました。

     [黒真珠の輝き]が登場したのは2013年3月で、その前のR[気高きプライド]の登場は2012年8月のことでした。
     その半年ほどの間はモバマスが始まってちょうど1年という頃で、新規アイドルが次々実装されながらこれまでNやRでのみ登場していたアイドルがSRに昇格する、という流れが続いていました。
     これは決して、特に低レアアイドルの担当プロデューサーにとって希望に満ちていた訳ではありません。
     果たして自分の担当アイドルはSRとして実装されることはあるのか。
     新規に出た似た系列のアイドルに自分の担当の出番は食われてしまうのではないか。
     そんな不安が大きかったのを覚えています。
    (実際、当時の自分が脅威に感じていたのが、千秋と同様のCo強Rとして後から実装され間を置かずにSRが実装された、今では黒川千秋の代表的なデュオユニットであるブリヤントノワールの相方である水野翠さんだったりします)


     そして自分はちょうど、[気高きプライド]が実装される直前にモバマスを始めました。初めて課金してお迎えした[気高きプライド]を主戦力としたこともあり、思い入れが深いのがLIVE開始時の「私の歌声を聞いて…!」という台詞です。
     当初は素直に、勝ち気な黒川千秋らしい、マクロス的な響きに聞こえていました。
     しかし、前述のような情勢の中で、それが次第に黒川千秋の悲痛な叫びに聞こえてきたのです。

     見慣れたライブハウスの小さなステージの上に、千秋が一人、ピンスポットを浴びて立っていました。俺はいつも通り、舞台袖からそれを眺めていて。でも、いつもと違うところがあるのに、少しして気付きました。
     ……音が、何も聞こえないんです。
     千秋が登場したときに起こるはずの拍手や歓声、観客の息遣いさえ聞こえない。千秋はマイクに手をかけたまま動きません。ずっと、客席の方を見ている。
     誰か。お願い。
     そう呟く千秋の声だけが、はっきり聞こえました。そして、息を吸い込む音。

    「私の歌声を聞いて……!」

     スピーカーの音割れすら厭わない千秋の悲痛な叫びと、誰もいない客席。
     それを記憶に焼き付けて目を覚ます。そんな悪夢を、毎日のように見ていました。

     これは2014年~2016年に自分が書いていた、黒川千秋のカードをテーマにした連作SS「黒真珠の欠片」の、気高きプライド編の一節です。
     勿論小説なので脚色は強くありますが、この連作における[気高きプライド]での苦悩と[黒真珠の輝き]でもたらされる救いは、まさに当時の自身の感情が下敷きになっています。
     そしてこの話を書いたのが2015年の6月。ぷち黒川千秋の実装が2015年11月28日の4周年記念で、それより前になります。
     自分の例はかなり幻覚がキマっていて極端ではありますが、当時の黒川千秋担当Pは多かれ少なかれ、メタ的な境遇とリンクしてそこに真っ直ぐ向き合う黒川千秋の物語を見ていたと思います。

     随分と昔の話まで遡ってしまいました。
    ここまで振り返ってきたように、黒川千秋の物語性は最初に設定として与えられたものではなく、担当プロデューサー達が黒川千秋のキャラクター性と自身のゲーム体験の間に見出してきたものが徐々に公式の物語として具体的な形を得てきたというのが、担当Pを続けて来た自分の印象です。
     そして今回、その物語性が”今”の黒川千秋の物語に昇華され、アイドルマスターシンデレラガールズというコンテンツの最も表層に[雨夜の誓い]黒川千秋として実装されました。
     公式の供給に勝るダイマなし。9年目にして、いよいよ黒川千秋の魅力の中核が多くの人達に触れられるようになったのです。

     恒常SSRなので、思いがけず手元に来ることもあるでしょう。
     勿論、スカチケで入手していただけたのなら望外の喜びです。
     そうしたらぜひ、黒川千秋の物語に触れてください。

     挑戦する黒川千秋の姿は、とても綺麗なんです。

     以上、長文をお読みいただきありがとうございました。


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