Sufjan Stevens/Carrie & Lowell
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Sufjan Stevens/Carrie & Lowell

2015-11-06 03:32



    1. Death With Dignity
    2. Should Have Known Better
    3. All of Me Wants All of You
    4. Drawn to the Blood
    5. Eugene
    6. Fourth of July
    7. The Only Thing
    8. Carrie & Lowell
    9. John My Beloved
    10. No Shade in the Shadow of the Cross
    11. Blue Bucket of Gold

    USはミシガン州南東部デトロイト出身のインディフォーク/シンガーソングランターの7th。USインディフォーク界を代表するアーティストとして知られるSufjan Stevensによる約5年ぶりとなる最新作「Carrie & Lowell」が散々海外メディアで高得点叩き出してるのも納得なくらい素晴らしい内容で、既に散々語り尽くされている気がしますが、これは今年のベストに入れなきゃ始まらないだろうと思ったので取り上げてみます。そんな彼の過去作を軽く振りかえると、「Michigan」「Illinoise」などのアメリカの州を題材にした作品が大絶賛されました。そのアメリカをコンセプトにした作品は以降リリースされていないのでもう飽きてしまったのでしょうか。そして前作「The Age Of Adz」ではエレクトロニカやアンビエントなどを巧みに取り入れたエクスペリメンタル極まりない作品で賛否あるものでしたが、久しぶりにリリースされた本作ではそれらの無駄を全て削ぎ落して至ってシンプルなインディフォーク路線へ回帰しています。レビュー冒頭から素晴らしい作品だと言いきってしまったわけですが、今作には彼に纏わるコンセプト→アートワークに写る彼の両親「CarrieとLowell」を題材としています。そのきっかけとなった母Carrieが胃癌で2012年に亡くなったことをきっかけに制作されたものらしく、その母が統合失調症や薬物中毒からなる鬱だので育児放棄した結果、幼少の彼に暗い影を落とすことになる。しかし再婚した父Lowellは人格者でSufjanに希望の光をもたらし、音楽活動も全面的にバックアップ(彼のレーベル「Asthmatic Kitty」のディレクターとして)するように。その後母は施設での生活を続けていたそうですが、前記の通り二人に見守られながら旅立ったそうです。そんな複雑な環境において育った彼の歩みを赤裸々に振り返る自伝的な作品となっているのだが、実際これでもかなり端折って書いているのでこれ以上は他を方のレビューを参考にとしか言えない。尚、そんなコンセプトを持っていることを事前から知っていたため、その詳しい解説/対訳が見たくて珍しく国内盤で入手しましたが、実際のところ彼の人生におけるストーリーだったりはほとんど触れられていなかったのがホント残念でならない。

    冒頭を飾る1. Death With Dignityからシンプルなアコギ路線は貫かれていて、バンジョーや囁くような繊細なコーラスがどこまでも温かで優しい音色を奏でる至福の一曲である。しかしこのタイトルはオレゴン州にのみで許された「尊厳死」という意味を持つ。歌詞も重苦しい単語が並ぶが、苦しみから解放され天国へ登っていくような荘厳さすら漂っていて、安らかな母の旅立ちを願っているかのような音にも捉えられる。続く2. Should Have Known Betterでも同様にアコースティックギターを基調としたものであるが、ピアノやオルガンの音色が加わるとチェンバーポップのような聴き心地を覚え、シンセサイザーによる一筋の光から漏れ落ちてそこはかとない温かみを与えてくれる。しかし3. All of Me Wants All of Youではほんのりと陰りのあるメロディすなわち母の喪失を思わせる重たい空気が漂い始め、シンセによるアンビエントな路線な4. Drawn to the Bloodでの終盤における大聖堂のような神聖なシンフォニーへの流れる様は正に当時の彼の空虚感を表現しているに等しく、Nick Drake級の悲愴感すら感じて胸を締め付けられます。中盤戦に差し掛かる5. Eugene以降でもやはり物悲しいムードが付いて回っていて、6. Fourth of Julyでのぼやけたアンビエント感は記憶を思い返して懐かしんでいるようにも思える。彼特有の繊細さだけでなく柔らかみを持たせて、より味わい深く親しみ易く作られている7. The Only Thing~8. Carrie & Lowell、そしてメロディアスで明快なギターがゆったりと響き渡る10. No Shade in the Shadow of the Crossを挟んで、アルバムラストの11. Blue Bucket of Goldでは透明感に溢れ壮麗過ぎるシンセのアンビエントにて魂が浄化されるかの如く静かに幕を締める。それは母との死別や思い出の数々に区切りを付けるかのようにも見えて、その全てを乗り越えた瞬間でもあるのかもしれない。

    実験性に溢れる一方で本来の吟遊詩人のようなシンガーソングライターとしての姿からはやや遠ざかっていた前作から一転、至ってシンプルかつ内省的な歌ものインディフォーク路線への回帰、即ち原点=ルーツに立ち返った作品で、続きが望まれているアメリカ州シリーズの続編として捉えても(コンセプト内の舞台はオレゴン州)何ら謙遜ない素晴らしい内容。しかし、全編アコースティック路線であることからどの曲も似たようなものでメリハリがあるわけでもなく、感情を揺さぶられるようなフレーズや強い個性、技巧的なテクニックもまずない。聴く者によってはただ淡々と弾き語っているだけにも聴こえるはず...なのにどうしてここまで惹きつけられてしまうのだろうか。そのどこまでもフォーキーで温かなサウンドは実に味わい深く、彼の複雑に絡み合った想うがままに剥き出しの感情を歌詞やメロディに乗せ描き出した究極の愛に満ちた傑作であると言える。更にシンプルな作風であることからコンセプト云々抜きにしても至って入り易いのもポイントで、初期の「Seven Swans」を想起させる場面も。そんなかんじで、今年2015年を代表する最重要作品の一つであることは間違いなく、彼にとっての新たな代表作に名を連ねる傑作だ。個人的には最高作と呼び声高い「Illinoise」すら凌駕する作品とすら思っていて、これ以上のインディ作品はそうそう出てこないと断言出来るほど否の付けどころがない大変美しい一枚。もう一人のSteven(次掲載予定)と一緒に年間ベスト上位確定です。


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