先週、このコラムで「朝日新聞の劣化」を書いたが、どうして、とてもそんなレベルではなかった。

10月19日、朝日新聞の「天声人語」を読んで腹が立った、いや呆れ果てた。これぞまさしくデマゴギー。朝日新聞はいつから赤旗になったのか。

「天声人語」と言えば、代代、朝日の記者の中から文章家が選ばれ、大学入試問題などにもたびたび採用された、名物コラム。

古くは荒垣秀雄、入江徳郎から疋田桂一郎、深代淳郎まで、いわゆる"名文記者"を排出して来た。

その「天声人語」がなんと野党各党は、共産党が提案している「国民連合政府」構想に参加せよと露骨に呼びかけているのだ。

先週、書いたように朝日は5月以来、紙面を挙げてというか、まさに総動員体制で、反安倍政権、反「平和安全法制」に狂奔してきた。

「天声人語」でも25回も取り上げてきた。ちなみにかの「吉田証言」は15回取り上げている。

結果は9月19日未明に平和安全法制は成立。

朝日はそのことがよほど悔しかったのであろう。なんとか巻き返しを図ろうと、あがいた結果が19日の「天声人語」と見る。

書き出しは政界のフィクサーと言われた福本邦雄さんの思い出から始まる。

取材するたびに<生々しい裏話に驚かされ><辛辣な人物評と自民党の「右傾化」を憂える言葉が印象に残っている>という。

ぼくも福本さんはよく知っていて、福本さんが経営する有楽町のフジ画廊に時々、伺った。

ザックバランな人柄で近所の喫茶店でコーヒーを飲みながら聞く政界の裏話や昔話は実に面白かった。

19日の「天声人語」は先づ福本さんが回顧録で政治の要諦を「あまり欲を出すと駄目」と語っていると書く。

問題はここからである。

「あまり欲を出すと、駄目」というのは<「一内閣一仕事」くらいでよしとせよ、ということか>と勝手に独りよがりの解釈。

そこから突然、無理やり「左」にカーブを切ってくるのだ。

<今、たった一つの仕事だけのために新政権を樹立しようという提案が注目を集めている。共産党が唱える国民連合構想だ。目指すのは「違憲」の安保法制廃止という一点>

そしてこう続ける。

<暫定だから、日米安保の廃棄や自衛隊解消といった党の根幹の政策は凍結する>

<今の「一強他弱」状況は少なくとも政党間の選挙協力なしには覆るまい>

で、結論。

<それぞれの「欲」の抑えどころだと思うが>

要するに成立した「平和安全法制」を廃案にし、一強多弱状況を覆す、つまり安倍政権を倒すためには、お前ら野党は共産党に協力しろよ、と言っているのだ。

赤旗じゃ、あるまいし。

長年、朝日を批判的に読んできたが、これほど露骨、これほどストレートな書き方は初めて目にした。

それだけ朝日が焦っている証左でもあろう。

共産党が甘口のキャッチフレーズを唱えて権力を握った時にどんな事態が現出したか。

旧ソ連、現在の中国の歴史をちょっと振り返ってみればわかるではないか。

その時、朝日新聞はプラウダか人民日報になって生き延びるつもりなのだろう。


花田紀凱



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