いつかの風が吹く場所へ サブストーリー vol.1
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いつかの風が吹く場所へ サブストーリー vol.1

2014-07-07 00:01

    ―光凛6歳―

    先生「はーい、皆こっちだよー」

    おいでおいでしている先生の周りに皆で一斉に集まっていく。

    先生「集まったね? それじゃ一列に並んでー」

    皆ではーいと合唱して、言われた通りに走って列を作って行く。

    ちょっと変だって思われるかもしれないけど、わたしはこの一列に並ぶのがすごく好きです。

    雪美「わー ひかりちゃんってやっぱりおっきいねぇ」

    わたしの次に大きい、雪美ちゃんがすごいすごいという風に見てくる。

    光凛「ふふふ、でしょー?」

    一番後ろの子は一番大きい子。わたしは男の子よりも大きいのだ。

    腕相撲だって一番強いし、かけっこだっていつもクラスで一番速い!!

    このままおおきくなっていつかは、この幼稚園の建物よりもおおきくなれるかもしれない。

    雪美「でもね、こどものころにせがおっきくなったこは、おとなになるとおおきくなれないんだって」

    光凛「えー? うそだー」

    だってわたしまだおっきくなってるよ?

    雪美「ほんとだよー うちのおねえちゃんもようちえんのころはいちばんおおきかったけど、しょうがっこうではちっちゃいほうなんだって」

    光凛「でも、うちのおねえちゃんはようちえんからおっきくて、しょうがっこうの1ねんせいのなかでもおっきいほうだよ?」

    雪美「そうなの? うーん、なんでだろうねよくわかんないなー」

    先生「こらー雪美ちゃん光凛ちゃんお喋りしないー あなた達はおっきいからすぐわかるんだからねー」

    雪美「は、はーい」

    光凛「はーい、ごめんなさーい」

    怒られちゃった。

    雪美ちゃんのお姉ちゃんはおっきくなれなかったのかもしれないけど、わたしは違うもん。

    これからもどんどんおっきくなってやるんだ!

    ―3年後―

    雪美「わーい、去年より6センチも身長伸びたよー」

    光凛「そ、そうなんだ」

    雪美「光凛ちゃんは?」

    光凛「い……ち」

    雪美「え?」

    光凛「いっせんち……」

    雪美「そうなんだー じゃあ光凛ちゃんにもうすぐ身長追いついちゃうかもね。待っててくれる?」

    光凛「やだ! もっとおっきくなりたい」

    あれれ? おかしいなぁこんなはずじゃなかったのに。

    友達は皆、どんどんおっきくなってるのにわたしはほとんど去年とおんなじまんま。

    まだ女の子の中では一番大きいと言ってももう昔程の差は無い。

    これは牛乳を飲む量を増やす必要があるのかもしれない。

    ―3年後―

    雪美「やったやった 身長160センチになったよ!」

    光凛「……そう」

    雪美「あー……もしかして光凛ちゃん……」

    光凛「……聞かないで」

    雪美「うん、なんかごめんね」

    気遣われてしまった。

    おかしい。

    こんなの絶対におかしい。

    雪美ちゃんは給食の牛乳をよく残すし、休み時間も絵ばっかり描いてるし、授業の時間も寝ていない。

    なのに、どうしてそんな身長になったのだろう。

    その一方でわたしは、牛乳をおかわりするし、運動もしてるし、授業時間もよく寝てる。

    どう考えてもわたしの方がおっきくなれるはずなのに、どうしてわたしの身長は140センチも目前に止まってしまったのだろう。

    同じ家の同じ環境で育ったお姉ちゃんの成長はまだ止まっていないというのに、理不尽すぎる。

    雪美「でも、おっきくなくても光凛ちゃんは光凛ちゃんだよ。あんま気にしなくてもいいと思うな」

    遥か頭上からにっこりと優しい笑顔を向けられる。

    その視点から見るのは数年前まではわたしの方だったのに、いつからわたしは見上げる側に回ってしまったのだろう。

    この時、わたしの脳内に幼稚園の時の雪美ちゃんの言葉が蘇ってきていた。

    “でもね、こどものころにせがおっきくなったこは、おとなになるとおおきくなれないんだって”

    あれは、事実だったの?

    体の中から力が抜けがっくしと肩を落とす。

    雪美「ひ、光凛ちゃんだからそんな落ち込まなくても……ほら、わたし達まだ小学生だよ? これからまだおっきくなれるかもしれないよ?」

    光凛「……ホント?」

    雪美「うん、ほんとほんと。だからさ、そんなに落ち込まないで?」

    光凛「ううう……」

    すっかりおっきくなって、体つきも大人の女の子になった友達に励まされる。

    雪美ちゃんが昔言ってた事が当たったなら、この言葉も当たるのかもしれない。

    それを信じてこの日から家で飲む牛乳の量を二倍にする事にした。

    ―4年後―

    隼人「おい、チビ」

    市川「光凛ちゃんはちっちゃいなぁ」

    光凛「う、うるさいですよ!? これからおっきくなるからいいんです」

    あれから4年。雪美ちゃんの言葉を信じて生きてきたわたしですが、身長はいまだに140センチに届きません。少しくじけそうです。

    光凛「はぁ……」

    隼人「朝からため息ついてんじゃねーよ」

    光凛「わわわっ」

    頭をくしゃくしゃにされ、適当にセットした髪がもっと酷い事になります。

    隼人「ちっちゃい奴が下を向いてるともっとちっちゃく見えるぞ? せめて上向いて歩け」

    光凛「むぅ……」

    まずは髪をくしゃくしゃにしたことを謝って欲しいところですが、なんとなく励ましてもらったような気もするので、チャラにしましょう。

    とりあえず隼人先輩に言われた通り、顔を上げて空を見ます。

    青い夏の空がどこまでも広がっている。

    この空から見たら、わたしの悩みなんてすごく小さいものなのかもしれないなぁ。

    そう思うと少しだけ気分が楽になりました。

    そうだ身長が小さいことばっか気にして心まで小さくなっちゃダメだ。

    これからは心をおっきくすることだけを考えて生きていこう。

    光凛「ただ……」

    できるならもう少しだけ身長おっきくなりたいなぁ。





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