いつかの風が吹く場所へ サブストーリー vol.4
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いつかの風が吹く場所へ サブストーリー vol.4

2014-07-28 01:53


    夏も終わりに近づき、この校門から校舎に至るまでのあんなに青々としていた道の木々の葉っぱも、今ではちらほらと赤や黄色も見かける。

    まだまだ残暑が厳しいとはいえ、夏真っ盛りのふざけたような気温の日はだいぶ少なくなってきて、秋の匂いを薄々と感じる。

    隼人「ふわぁ……」

    そんな季節の変わり目を感じる道の真ん中、歩きながらあくびをする。

    季節が変わるとはいえ、朝が眠いという事実だけは変わらない。

    優奈「おお、はやくん朝から気持ちがいい程でっかいあくびしてるねぇ」

    ニタニタとしながら登校中の生徒の集団から梅津優奈が顔を覗かせ、俺の隣に並んだ。

    隼人「見るなよ」

    優奈「見るなって言われても、そんなでっかいあくびしてたらメガネをかけてないのび太君でもわかると思うよ? 少しは手で隠すとかしろいっての」

    隼人「いいんだよ。俺はなにも包み隠さないありのままの姿で生きていくんだ」

    優奈「おーおーワイルドだねぇ。でもなにも包み隠さないんだったら服もいらないよね? 制服脱いで太古の人間のスタイルとってこ」

    隼人「それじゃただの変質者だろ」

    優奈「いいじゃん変質者。普通の人間ばっかじゃつまらないし、たまにはそういう奇行に走る人がいていいと思うよ」

    隼人「ほう、じゃあお前は全裸の男が目の前に現れてもなんとも思わないんだな?」

    優奈「ん? そんなキモい奴がいたら握りつぶすよ? こうやってね」

    梅津の右手が空中で何かを掴んだかのようにぐっと握られる。

    股間がヒュンとなった。

    隼人「そういえば、お前がこの時間に登校するって珍しいな。今日は陸上部の朝練無かったのか?」

    優奈「そーそー 今日は完全にオフ。大会前のコンディション整える為の調整期間よ」

    隼人「また大会か。この前、秋季の市の大会と県大会だったのに大変だな」

    優奈「そう? そこらへんは慣れっこだからね。それよりもこれからは国体とジュニアオリンピックと駅伝と……うん、秋だけで5個以上は試合でるね」

    さらりと言うけど、そんな短期間でそれだけ公式戦できる人間なんてそうそういない。

    梅津優奈は陸上界の実力者だ。

    一年の頃からインターハイに出場して、今年は二年生ながら全国六位に入り、来年は間違いなく優勝争いの筆頭になるだろう。

    優奈「まぁ、個人競技は自信があるんだけどねー……問題は駅伝の方なーんだよなー 先輩達受験勉強で忙しいから出ないとか言ってるし。メンバーがいなくて困った」

    隼人「お前一人いれば勝てるんじゃないのか?」

    優奈「ダメダメ。うちが仮に一分差をつけてゴールしたとしても他の四人が十五秒以上差を詰められる可能性があるもん。あー怖い怖い」

    優奈「もういっそ、はやくんが女装して出てくれない? そしたら百人力なんだけど」

    隼人「俺に変質者になれと? お前に玉握りつぶされそうで怖いから嫌だ」

    優奈「えー……そんな事しないよぉ。ちょっと画像を学校中にバラまくだけで」

    社会的に握りつぶされそう。

    優奈「しょうがない。今日も元気にひかりんを勧誘しにいきますか。そだ、お願いを聞いてくれない場合はやくんを人質に……ふふふ」

    隼人「あいつ嫌がってんだからやめてやれよ。嫌々走らせてもロクな事にならないと思うぞ」

    優奈「んー……それは無理かなぁ。あの子を走らせるのはうちの使命だって思ってるし、そこは譲れないよ」

    隼人「使命って随分と大きく出たな」

    梅津は星河の事に関してだけは目の色を変える。

    二人になにがあったのかは俺には分からないけど、梅津をそこまで動かす程の何かがあった事は確かなのだろう。

    隼人「というか俺を人質になったところであいつにとってそんな動揺する要素があると思わないんだが」

    その言葉に梅津は何故かにやりといたずらな笑みを浮かべ

    優奈「そんな事ないよ。えいっ」

    ふにゅっ

    隼人「~~~!?」

    突然絡まれた腕に梅津の女子の象徴である二つの柔らかな膨らみがあてられる。

    優奈「はーい笑ってー はいパシャー」

    神がかりとも言える速度で携帯のカメラで激写される。

    優奈「おー よく撮れてるよほらほら」

    今撮られた写真を見せ付けられる。

    突然の事にアタフタとしている自分の情けない顔が映し出されていた。

    隼人「お、おおおお前どういうつもりだよ!?」

    優奈「どういうつもりだよって言われてもなぁ……この写真を使って、はやくんゲットだぜ!! 返して欲しければ陸上部に入りなさいってひかりんに言うよ?」

    隼人「嘘だらけじゃねーか!!」

    優奈「ちっちっ こういうのは嘘でも勝手に相手が思い込んでくれればいいんだよ~」

    隼人「その画像消せっ!!」

    優奈「ん~ 消してもいいけど、もう遅いと思うよ?」

    梅津が親指をさす。

    登校中の生徒が物珍しげな視線でこっちをジロジロと見てヒソヒソ話をしている。

    優奈「あとはああやって噂が一人歩きしてくれるしね。あの二人付き合ってのかマジかよーみたいな」

    隼人「それは変な噂が流れるだけでお前にとっても何の得が無いじゃねーか」

    優奈「うちとしては、ひかりんの耳にまで届いて、ひかりんがうちの要求を飲むようになってくれればそれで問題ないよ」

    隼人「お前たったそれだけの為に、どうでもいい男に抱きついたりするなよ……」

    目的選ばなさ過ぎだろ。

    その為にどれだけの誤解を解かなければならないと思っているんだお前は。

    優奈「あっははは はやくん意外と純情ボーイだねぇ。でも心配はご無用だよ。はやくんはうちの中ではどうでもいい男子グループには入ってないから」

    梅津がにっこりと笑顔を浮かべる。

    隼人「え?」

    優奈「んじゃ、そろそろうち行くね。また会おう」

    梅津がじゃねっと言って、昇降口の中へと消えていった。

    なんだったんだあいつ……?


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