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記事 4件
  • 三木由希子氏:原理原則なき「デジタル改革関連法」では個人情報は護れない

    2021-05-26 20:00  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2021年5月26日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1050回)
    原理原則なき「デジタル改革関連法」では個人情報は護れない
    ゲスト:三木由希子氏(NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長)
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     デジタル庁の創設などが盛り込まれた「デジタル改革関連法」が5月12日、成立した。これは63本のデジタル関連の法律を一括りにしたもので、その中には個人情報保護法の抜本的改正など国民生活に密接に関係する法制度の変更も含まれるが、そのわりには法案の中身に対する世間の関心は必ずしも高いものとは言えなかった。冒頭で指摘したような今

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  • 木下洋一氏:日本は難民を受け入れない国から難民を送り返す国になるのか

    2021-05-19 20:00  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2021年5月19日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1049回)
    日本は難民を受け入れない国から難民を送り返す国になるのか
    ゲスト:木下洋一氏(元入国管理局職員、未来入管フォーラム代表)
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     日本は「難民の地位に関する条約」(通称:国連難民条約)のれっきとした批准国だ。条約に基づき、人種や宗教、国籍、政治的な意見のため母国で迫害を受けるおそれがある人が保護を求めてきた場合、これを保護する義務がある。しかし、日本は世界の中でも異常といって差し支えがないほど難民受け入れのハードルが高い。ちなみに「移民」受け入れの是非はそれぞれの国の政策判断だが、「難民」の受け入れは国際条約上の義務だ。もし難民を受け入れたくなければ、条約から脱退するしかない。
     ところが日本には、どうやら世界とは異なる独自の難民の定義があるようだ。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、2018年、1万9,514人の外国人が日本に難民申請を行ったが、条約上の難民として認定されたのは42人で、認定率(申請者に対する認定者の割合)は0.22%だった。これがどれだけ国際基準から逸脱しているかというと、例えば同じ年、アメリカは30万9,083人の難民申請者に対し認定された難民が3万5,198人(認定率=11.4%)、イギリスは5万2,575人に対し1万2,027人(認定率=22.9%)、ドイツは31万9,104人に対して5万6,583人(認定率=17.7%)、フランスは18万2,267人に対し2万9,035人(認定率は=15.9%)だった。日本は数にして欧米の数千分の1、認定率でも数百分の1程度しか難民を受け入れてきていないのだ。
     そもそも極端に低い認定数や認定率も大いに問題だが、日本政府から難民申請を却下された99.9%超の外国人の扱いが更に深刻な問題を孕んでいる。彼らは基本的に不法滞在者となり法務省の入管施設に収容されるが、その施設の環境が劣悪で、2007年以降17人の外国人が収容施設で死亡している。最近では収容施設での新型コロナウイルス感染症の集団発生も報告されている。また3年を越える長期収容者も多く、これもまた国連を始め国際的人権団体などから度々問題視されてきた。
     ところが、その日本の入国管理制度が更に「改悪」される法案が、今にも国会で成立しようとしている。出入国管理法の改正案は現在与野党で修正協議が行われているが、その成否にかかわらず与党は早ければ来週中にも衆議院の法務委員会で採決に持ち込む構えを見せており、是が非でも今国会で改正案を成立させる腹づもりのようだ。
     法務省は現行の入管法の下では政府の強制送還の権限が弱いため、難民として認定されなかった外国人がそのまま不法滞在者として国内に残ってしまう。結果的に入管の収容施設に収容されている不法滞在者の数が、3000人を越える事態となっているという。そのため、今よりも容易に強制送還が可能になる制度に変える必要があるのだと、法務省は改正案の立法趣旨を説明している。
     具体的には現行法の下では難民申請者が何度申請を却下されても、申請を繰り返しているうちは本国への強制送還はできないことになっているところを、3回難民申請を却下された外国人については強制送還が可能になる。
     そもそも現行法の下で難民認定を申請して外国人を強制送還できないのは、難民の可能性がある外国人は本国で迫害される恐れが否定できないので、仮に自分が難民であることが証明できていなくても、そのような恐れがある外国人を本国に送り返してはならないという、難民条約の趣旨に沿った制度になっているに過ぎない。ところがこの改正案が成立すれば、本当の難民を命の危険に晒す恐れのある本国に送り返してしまう危険性が大幅に増してしまう。
     また、今回の改正案では、これまで国際社会から繰り返し指弾されてきた日本の入管法の問題点は、実質的に何ら改善されていない。そこにさらに難民の本国への強制送還をより容易にする改正が行われてしまえば、日本の入管制度のみならず、日本の人権感覚に対する信頼は根本から損なわれることは必至だ。
     入国管理局の入国審査官として18年間入国管理行政に携わってきた木下洋一氏は、自身の経験から、入国管理に関わる裁量が入国管理局に一手に握られ、裁判所を含めた外部からのチェックが全く入らない仕組みになっているところに日本の入管行政の根本的な問題があると指摘する。また、外部からチェックを受けない入国管理局内では、多くの難民を認定する審査官よりも、厳しい審査を行い申請を却下する審査官の方がより評価される価値基準が支配的なのだと語る。
     日本は難民を母国に強制送還することで、彼らの生命を危険に晒す国になってしまうのか。そもそもなぜ日本はこうまで難民を受け入れようとしないのか。にもかかわらずなぜ日本は難民の保護を義務づける条約には加盟しているのか。入国管理のあり方に疑問を持ち、2年前に入管を退職し、今は不法滞在外国人の支援をする団体を主宰する木下氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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    今週の論点
    ・在留者に不寛容な「入管マインド」
    ・先進国で圧倒的に少ない、日本の難民受入数
    ・国連が指摘する、日本の入管制度の問題点
    ・やはりパブリックという概念がない日本独自の問題か
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    ■在留者に不寛容な「入管マインド」
    神保: 今回は日本の難民問題をテーマにお送りします。今国会で出入国管理法の改正案が提出されましたが、こういうことをきちんと落ち着いて議論するような舞台設定ができていないときにやってしまっていいのか、ということも含めて考えていきたい。宮台さん、最初に何かあれば。
    宮台: 日本は是々非々で議論をするということがもはやできなくなっています。既にあるものを変えられないどころか、より悪くなる方向に変えてしまう。検察の火事場泥棒のような動きもそうでしたが、最も重要なのは、長期的な国益を考える人がいないということです。 

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  • 後藤逸郎氏:誰がそうまでしてオリンピックをやりたがっているのか

    2021-05-12 20:00  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2021年5月12日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1048回)
    誰がそうまでしてオリンピックをやりたがっているのか
    ゲスト:後藤逸郎氏(ジャーナリスト)
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     日本の権力の中枢には、何があってもオリンピックだけはどうしてもやりたい人がいるようだ。
    緊急事態宣言の延長を発表した5月7日夜の記者会見で、菅首相から7月24日に開幕が予定されている東京オリンピック・パラリンピックの開催を再考する姿勢は微塵も見られなかった。再考どころか、むしろ「何としてでもオリンピックだけは開催したいので、この際、緊急事態宣言の延長もやむを得ずと判断した」とでも言いたげな発言が目立った。何があっても五輪開催だけは譲れないというのが、現政権の姿勢のようだ。
     東京や関西圏では感染者が急増し医療状況は逼迫している。しかも日本はワクチンの接種が中々進まず、未だに人口の1%程度しか接種を受けられていない。これは先進国の中では断トツで最下位だ。そんなところで今から2ヶ月半後には、世界の200を超える国と地域から1万1000人を超えるアスリートと5万人を超える関係者が一堂に会する世界最大の国際イベントを無理矢理開催しようというのだ。これはもう異常としか言いようがないではないか。世論調査によるとホスト役となる日本国民も7割が五輪の開催には否定的で、国際的にもこの状況下で五輪を開催する日本に対して「無責任」との批判が高まっている。このような状況下で一体誰がそうまでして五輪を強行したがっているのだろうか。
     元毎日新聞記者で著書に『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』などがあるジャーナリストの後藤逸郎氏は、綿密な取材に基づき五輪の背後にある利権構造を解き明かす。どうしても五輪を開催したい人がいるのだ。
     日本政府は五輪開催の是非はIOCに決定権があるというが、後藤氏によると、そもそもIOCは無観客であろうが何であろうが五輪が開催されテレビ放映権料が入れば十分に儲かる仕組みになっている。加えてIOCにはTOP(ザ・オリンピック・パートナー)と呼ばれるグローバルスポンサーからのスポンサー料(これも非公表だが1社数百億円とされる)が入る。IOCの2013年~2016年のTOPスポンサーからの収入は10億ドル(約1053億円)にのぼる。東京大会のTOPにはコカコーラやGE、インテルなどの世界に名だたる有名ブランドに、日本からブリヂストン、パナソニック、トヨタなどが名を連ねる。
     IOCは収入の90%を各国のオリンピック委員会や国際競技連盟などに支援金として支出し、10%を自分たちの収入にしているだけというが、実際の財務や役員報酬などはいずれも非公開だ。IOCは法律的にはスイスの国内法に基づくNPOという位置づけにあるため、スイスの法制・税制から守られ、財務や報酬の公開を義務づけられていない。しかもバッハ会長を始めとするIOCの理事はIOC傘下にある財団やOBSなどの数多ある子会社、関連会社の役員も兼務している。まず、五輪の主催者であるIOCが、どうしても東京大会を開催したい立場にある。
     放映権料は丸ごとIOCに持っていかれる構図になっているが、JOCにとっても東京大会はゴールドスポンサーからオフィシャルサポーターまで3段階のスポンサー群が設けられており、国内スポンサーからの収入だけで3,000億円からの収入をもたらす。
     しかし問題は2013年に五輪を招致した段階では、「コンパクトな五輪」を標榜していた東京大会の予算が、いつのまにか1兆6000億円まで膨れあがっていることだ。最終的には1兆円近くになる赤字分は第一義的には開催都市の東京が穴埋めすることになっているが、国が債務保証をしているため、都が負担できない分は、結局は税金で補填されることになる。しかも、日本は大会経費以外にも国立競技場やその他の施設建設費などで、国と都で合わせて既に五輪のために1兆円を超える財政負担をしている。当初7,340億円で開催できるはずだった東京大会が、最終的には何と3兆円を超える財政負担を生んでいるのだ。
     しかし、一番の問題はこれだけ多くの問題を抱えた五輪の大会やIOC、JOCなどの利権構造を、既存のメディアがほとんど報じようとしないことだ。結局のところ五輪はメディアにとっては最大のキラーコンテンツだ。新聞にいたっては驚いたことに読売、朝日、毎日、日経の4紙は、自分たち自身が東京大会のオフィシャルパートナーとして大会のスポンサーに名を連ねている。メディア自身が自ら進んで利害当事者になっているようでは、五輪に関する中立的な報道など期待できようはずもない。
     五輪大会は医療体制にも多大な負荷をかける。先週、五輪組織委が日本看護協会に大会期間中の500人の看護師の派遣を要請しているころが明らかになったのに加え、今週は同じく200人のスポーツドクターも募集していることがわかった。五輪の大会期間中は、元々脆弱な日本の医療体制が更に手薄になることが避けられない。このような状況下でどうしても五輪開催を強行するのであれば、菅政権そしてIOCと組織委は、コロナに感染して十分な医療のケアを受けられないがために病状が悪化したり死亡したりする人を、大会期間中に一人たりとも絶対に出さないことだけは保証してほしいものだ。
     ジャーナリストの後藤氏と、なぜそうまでして五輪を開催しなければならないのか、誰が何のために五輪開催を強行しようとしているのか、その結果、国民にはどのようなツケが回ってくるのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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    今週の論点
    ・感染対策が見えない東京オリンピック
    ・誰がそうまでしてオリンピックをやりたがっているのか
    ・オリンピックを中止すべき7つの理由
    ・商業主義で変わり果てたIOCと、スポンサーの責任
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    ■感染対策が見えない東京オリンピック
    神保: 今回はオリンピックがテーマですが、新型コロナウイルスのワクチン接種がいよいよ始まるということで、まずはその話をしたいと思います。ゲストは元毎日新聞の記者でジャーナリストの後藤逸郎さんです。
     日本はワクチンの接種が非常に遅れており、世界の新規感染者率を見ると、あのイギリスが実は日本とほぼ同じくらいまで来ています。注目したいのは、人口の少ないイスラエルはまた別として、なぜアメリカやイギリスが一斉に接種できたか。日本でどれくらい知られているかわかりませんが、イギリスは1月、アメリカは3月に法改正を行い、医師を筆頭に、理学療法士、医学生、看護師、整体師、足病医、管理栄養士、作業療法士、視能訓練士、義肢装具士、放射線技師、またスピーチ・アンド・ランゲージセラピストまでが打てるようにしたこと。特に大きかったのは、薬剤師が薬局で打てるようにしたことで、だから接種が一斉に進んだんです。日本では、きちんとした医師がいる場に限り、歯医者さんも打っていいということになりましたが、これも相当、七転八倒だったようです。というのも、その間、歯科医としての仕事ができなくなるからです。
    宮台: 機会費用が生じるというやつですね。 

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  • 斎藤幸平氏:コロナでいよいよ露わになったコモンを破壊する資本主義の正体

    2021-05-05 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2021年5月5日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1047回)
    5金スペシャル
    コロナでいよいよ露わになったコモンを破壊する資本主義の正体
    ゲスト:斎藤幸平氏(大阪市立大学大学院経済学研究科准教授)
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    月の5回目の金曜日に特別企画をお送りする5金スペシャル。
     今年2回目の5金となる今回は、25万部の大ベストセラーとなっている『人新世の「資本論」』の著者で新進気鋭の経済・社会思想学者として今論壇の話題をさらっている大阪市立大学准教授の斎藤幸平氏をゲストに招き、資本主義の限界や成長が豊かさをもたらすという神話への疑問点などについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司との特別対談を無料でお送りする。
     斎藤氏はマルクスが「資本論」の中で著した、人間が資本に振り回されるようになり主体と客体が逆転するという話は、まだまだ大きな経済成長が期待できる20世紀の資本主義の黄金期には流行らなかったが、21世紀に入り資本主義の限界が至るところで露呈し、地球環境問題も深刻化の一途を辿ることに加え、新型コロナウイルスによって資本主義の矛盾や限界がより顕著になったことで、世界中でこれまでの社会や経済のあり方について「これで本当にいいのか」と考える人が増えたと指摘。その結果、人新世(人間が地球の地質学的特徴まで変えてしまった時代)のあり方が根本から問われるようになったと言う。
     これまで人類は、いや少なくとも先進国では、あたかも無限の成長が可能であるかのように振る舞い、成長こそが豊かさを、豊かさこそが幸せを約束するものと信じて疑わずにやってきた。しかし、その実は成長のコストを外部化することで、その代償を一部の人に押しつけ、その恩恵を一握りの豊かな国だけが独占してきたに過ぎなかった。外部化するコストの矛先はかつては発展途上国の人々であり、また地球環境だった。そしてわれわれの底知れぬ欲望がグローバル化なるスキームまで生み出したことで、しわ寄せの押し付け先をいよいよ国内の弱者にまで求めるようになっていった。
     また、飽くなき成長を追求した結果、その先に真の豊さと幸せが待っていたかと言えば、それもまた必ずしもそうとはいい切れないのが現実だった。
     斎藤氏はバブル以降しか知らない世代は、そもそも成長によって豊かになろうという感覚がなく、グレタ・トゥーンベリさんに代表されるさらに若い「Z世代」になると、気候変動に対する恐怖すら覚えるようになってきている。そうした世代にとっては、上の世代が訴える「格差の是正」だの「SDGs」だといったスローガンは、結局のところ現在の経済・社会構造を根本から壊さないための弥縫策にしか見えず、彼らの感覚では「何言ってんの?」という疑問があるのだと言う。その世代にとっては、小手先の微調整などはもはや手遅れであり、コモン(社会的共通資本)をベースにそもそも成長を前提としない新しい社会・経済システムを根本から作り直さない限り、今世界が直面する問題は解決しないと感じる人が増えているのだという。
     『人新世の「資本論」』が思想書としては異例中の異例とも言うべき大ヒットとなった背景には、そうした世代の人々の「よく言ってくれた」との思いがあったという手応えを感じていると斎藤氏は言う。
     最後に斎藤氏は、『人新世の「資本論」』には今後日本で自分たちが作っていくべき社会像を描くところまでは踏み込んでいないことを指摘した上で、今後本書で紹介された「コモン」という考え方やその価値が広く理解されることで、多くの人が地域やコミュニティで何らかの動きを始めるきっかけになることに期待していると語る。
     われわれが人として子々孫々のために今すべきことは何なのか、そのためにどこから手を付けたらいいのかなどについて、「人新世」という地質学的な長いスパンで現在の社会のあり方に対する問題提起を行っている斎藤氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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    今週の論点
    ・『人新世の「資本論」』がベストセラーになった理由
    ・いま見直されるマルクスの思想
    ・若い世代が発信することの意味
    ・ローカルから始める社会変革:まずはそのための一歩を
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    ■『人新世の「資本論」』がベストセラーになった理由
    神保: 本日は2021年4月17日金曜日で、通常回で配信する予定だったのですが、汚染水問題が急展開を迎えたためそちらを先に出し、とても価値のあるテーマとして5金の無料放送で取り上げることにしました。
    宮台: 汚染水問題にもかかわります。今回のテーマは「人新世」(アントロポセーン)で、これは地質年代として提案された理由がポイントであり、人間が作り出した物質が含まれている地層として特定されるような、新しい地学的な年代がすでに始まっていると。まさにその意味で言えば、トリチウムが地質に含まれることが、将来のアントロポセーンを特定するときのひとつの条件になるかもしれない。
    神保: ゲストの名前はサイトに出ているのでもったいぶる必要もないのですが、『人新世の「資本論」』という本がとにかく売れています。なぜここまで関心が集まったのかということも含めて、お話を伺っていきたいと思います。 

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