マル激!メールマガジン
飯田哲也氏:日本はどこでポスト福島のエネルギー政策を間違えたのか
2026/03/25(水) 20:00
マル激!メールマガジン 2026年3月25日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1302回)
日本はどこでポスト福島のエネルギー政策を間違えたのか
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)
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70年代のオイルショックの教訓も、15年前の福島原発事故の教訓も、日本はまったく活かせていないようだ。
アメリカとイスラエルによるイラン攻撃と、それに対するイランの報復がエスカレートする中、エネルギーをめぐる国際情勢は再び緊張の度を高めている。原油価格の上昇は燃料費にとどまらず輸送費や食料価格を通じて日本経済全体に波及し、エネルギーと食料の双方で自給率の低い日本の脆弱性を改めて浮き彫りにしている。日本は世界の中でも中東からの石油に最も大きく依存している国だからだ。
しかし、問題は外部環境だけではない。福島第一原発事故から15年を経た現在、日本の再生可能エネルギー比率は依然として約25%にとどまり、世界的なエネルギー転換の潮流から完全に取り残されつつある。再生可能エネルギーに関連した様々な技術でも、日本は取り残されつつある。なぜ日本は、ポスト福島のエネルギー政策に失敗したのか。
飯田氏がまず問題視するのは、ポスト福島の日本の電力システム改革が、実際には「既得権益を守ることを優先した自由化」に終始している点だ。発送電分離は形式上は実施されたものの、実際には送電会社に対する大手電力会社の影響力が依然として強く残っている。その結果、電力市場における意思決定は既存の発電事業者に有利に働きやすく、再生可能エネルギーの導入が優先されにくい構造が温存された。
そもそも電力会社にとって、自分たちの利益に直接つながる原子力や火力発電を減らしてまで、事実上誰もが参入できる再生可能エネルギーのシェアを増やしていく動機は働きにくい。この制度的バイアスが、日本の再エネ導入の重たい足かせになっていると飯田氏は言う。
再エネ普及の柱として導入された固定価格買取制度(FIT)にも、根本部分で構造的な問題があった。日本のFITは「認定時に買取価格が決まる」仕組みを採用したため、事業者は設備コストの低下を待ってから稼働させた方が利益を得やすい。その結果、認定容量は増えても実際の稼働は遅れ、普及のスピードが鈍化するという逆転現象が起きた。本来、技術革新によってコストが低下する局面では、導入が加速するはずだが、日本では制度設計の不備がその流れを阻害してしまった。
しかもそれは再エネ賦課金という形で必要以上に一般の消費者の負担を増やす結果となっている。
ところが、海外では状況が大きく異なる。太陽光や風力は多くの地域で最も低コストの電源となり、導入は急速に拡大している。二酸化炭素を排出せず、燃料輸入にも依存しない再エネは、安全保障と経済合理性の両面から選好されるようになっている。
議論の核心は、エネルギー問題が単なる技術やコストの問題ではなく、「社会の統治構造」に関わるテーマであるという点にある。従来の大規模集中型エネルギーは、中央集権的な統治と親和性が高い。一方、再生可能エネルギーは地域分散型であり、電力の生産と消費の関係を根本から変える可能性を持つ。この転換は、既存の利害構造や制度の再編を伴うため、必然的に抵抗が生じる。日本で再エネ導入に対する風当たりが強い背景には、こうした構造的要因があると飯田氏は指摘する。
福島事故後、日本は一時的にエネルギー転換への機運を高めた。しかし、その後の制度設計と政策運営の中で、既存システムとの折り合いを優先し、結果として抜本的な転換の機会を逸した。世界が再エネを軸にエネルギー安全保障と経済競争力の再構築を進める中、日本は依然として過渡的な状態にとどまっている。問われているのは、単なる電源構成の見直しではない。エネルギーを誰が、どのようにコントロールするのかという、より根源的な問いである。
アメリカとイスラエルのイラン攻撃により、対外依存度が高い日本のエネルギー政策がにわかに危機を迎えているが、そのリスクは15年前に致命的な原発事故を引き起こしておきながら、その後、再エネへの転換に失敗し、以前としてエネルギーの対外依存度を引き下げることができていない日本の政策的な失敗という面が大きい。そして、それはまた日本が再エネとデジタルを融合させた新しいエネルギー技術の面で世界から大きく後れを取る原因となっている。
太古の時代から人類の統治形態はその時々のエネルギーのあり方と表裏一体の関係にあった。人類の歴史は、社会の統治形態をその時々のエネルギー利用の方法に適応させることに成功した国や社会が、より多くの繁栄を享受してきたと言っても過言ではないだろう。その意味でも今の日本の状況は危機的だ。
今からでも遅くはない。日本はポスト福島の教訓を活かし、エネルギーの対外依存度を減らすと同時に、世界の技術革新の潮流から落ちこぼれないようにしなければ、短期的にも長期的にも大きく国益を損なうことになる。環境エネルギー政策研究所所長でエネルギー政策、とりわけ再生エネルギー分野の第一人者の飯田哲也氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・イラン攻撃で改めて問われる日本のエネルギー事情
・世界で劇的に進むエネルギー革命の実相
・日本ではなぜEVが普及しないのか
・統治形態とエネルギーの密接な関わり
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■ イラン攻撃で改めて問われる日本のエネルギー事情
神保: イラン攻撃によって世界中が大混乱になっています。先週のマル激では、トランプのような大統領を選ぶと何が起きてもおかしくないのだというような話をしましたが、今日はその延長で、エネルギー問題を取り上げたいと思います。
今まさにエネルギー問題を中心として世界が大変な状況になっているのですが、今日のテーマは単なるエネルギー政策にとどまりません。実はエネルギーは、統治形態と完全に表裏一体の関係にあるんですね。
宮台: エネルギーと食の共同体自治がない状態、言い換えればエネルギーを外部に依存している状態では、国際関係のプレイヤーである主権国家としての主権の行使には、どうしても枠がはまります。国際自由貿易体制とは言っても、何に依存しているのか、また何が自立できていないのかという種別がとても大事だということです。
神保: 日本のようにエネルギー源を持っていない国はエネルギーの対外依存度が非常に高く、ホルムズ海峡に少し機雷が撒かれただけでも、ガソリンがリッター200円近くになっています。暫定税率なしで200円なので、もし暫定税率があれば225円くらいになっていることになります。財源を犠牲にして暫定税率をやめたのですが、今回のことで吹っ飛んでしまったわけですね。3.11があってもエネルギー政策を転換できなかった日本が、イランで有事が始まったことで簡単に転換できるとは思いませんが、いよいよここにきて危なくなっています。
さて、今日のテーマですが、古くからエネルギー源と統治形態は表裏一体の関係にありました。先史時代に人間が火を使い始めると、薪・枯れ木・草・樹皮などの燃料の確保と管理が重要になった。それが時代を経てだんだん中央管理になっていきます。エネルギーは農作業の生産性にも直結していて、鉄は戦争だけでなく農具にも関係しています。農具が鉄になるだけで生産性が大きく上がりました。金属を使うためには火が必要で、そのためにもエネルギーが必要になります。
そして今、エネルギー源としての石油が限界に来ています。石油は偏在しているのでその地域に欧米列強の利権が集中し、地政学的なリスクが大きい。また原子力にも大変なリスクがあります。原子力発電は核の問題とも直結していて、核の保有は覇権とも関係しています。
そうした中で新しい再エネの技術が出てきています。これは国内でまかなえる可能性があり、対外的な依存を減らすこともできる。良いことのように聞こえますが、これは権力の分散にもつながり、地方の自立を意味するので、ある人々にとっては都合の悪いことかもしれません。再エネは本質的に分散的なエネルギー源なので、中央集権的な世界で生きている人たちは簡単にこれを許すことはできません。
2024年の日本の原油の輸入元を見ると、海外依存度が99.7%、中東依存度が95.1%となっています。アラブ首長国連邦43.7%、サウジアラビア40.0%、クウェート6.8%、カタール4.1%。イランからは制裁対象になっているので買っていませんが、ホルムズ海峡を実効支配しているのはイランなので、ペルシャ湾岸の国々から買う場合はそこを通らなければなりません。
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