マル激!メールマガジン 2026年4月15日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1305回)
イラン攻撃に見るAI兵器を使った戦争の新しい形とは
ゲスト:佐藤丙午氏(拓殖大学国際学部教授、海外事情研究所所長)
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 これがAI時代の戦争の新しい形なのか?
 アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃は、史上初の本格的なAI戦争として歴史に刻まれることになりそうだ。ロシアによるウクライナ侵攻でもAIは軍事利用されてきたが、その後、ここ数年のAIの目覚ましい進歩を受けて、イラン攻撃では情報分析から標的特定までAIが一体的に活用されたとみられている。そして、その結果として、戦争の形が大きく変わろうとしているというのだ。
 AI兵器は、火薬や核兵器に次ぐ「第3の軍事革命」ともいわれるが、その一方で、その非人道性や制御不能リスクはかねてから懸念されてきた。しかし、技術の急速な進歩に法整備が追いついておらず、国際的な規制の枠組みが全くないのが現状だ。
 AIの軍事利用に関する国際的な動向に詳しい拓殖大学の佐藤丙午教授は、今回のイラン攻撃では人物の特定や移動経路の予測などにAIが広く使われた可能性が高いと指摘する。実際に複数のイラン政府の幹部、とりわけ革命防衛隊幹部や宗教指導者だけがピンポイントで次々と殺害されたことから、アメリカとイスラエルがイラン内部の情報をかなり緻密に把握した上で攻撃を実行していたとみられている。
そして、殺害すべき標的特定の正確性とその所在や行動を詳細に把握するスピードが、これまでのヒューマンインテリジェンスでは到底有り得ないほど迅速だったことから、標的やその所在の特定にAIが使われた可能性が高いと考えられているのだ。
 これまで標的を特定したり、その所在を把握したりするためには、地上で活動する情報部員が集めた情報にスパイからもたらされる情報などを加え、更にその上に衛星画像や膨大な量の通信記録や傍受された通信内容などを加えたインテリジェンスを、最後は人間が分析しなければならなかった。しかし、それをAIに行わせれば、人間では何日も、あるいは何カ月もかかる分析が一瞬でできてしまう可能性がある。
今回アメリカとイスラエルが開戦直後から宗教指導者と革命防衛隊の幹部だけを根こそぎピンポイントで攻撃し殺害できたのは、このためだと考えられているのだ。
 その一方で、AIは人の命を救う側面も持つ。AIを使って標的を特定した上で精密誘導弾などによりピンポイントで標的を攻撃することで、これまでのような無差別な攻撃と比べると、一般市民の犠牲は遥かに小さくて済むのもまた事実だからだ。しかし、そのような形でAIを使った攻撃を認めてしまえば今後、戦争のハードルが下がる懸念もある。これまで、民間人を巻き込み、大勢の兵士が犠牲になるからこそ、戦争は許されないと考えられてきた。
しかし、AIによって被害を限定できるのであれば、ある程度戦争は許容されるという話になりかねないからだ。AI兵器は戦争をめぐる倫理の前提そのものを問い直している。
 AI兵器をめぐっては、国連で議論が続いている。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みのもと、LAWS(自律型致死無人兵器システム)の規制について検討が進められているが、明確な国際ルールは確立されていない。そもそもLAWSには決まった定義すらまだないのだが、国際赤十字は「人間の介在なしに、敵を探し、判断して攻撃する兵器システム」としており、こうした理解が主流となっているが、国際的なルールづくりが難航し明確なルールがないまま各国がAI兵器をめぐる競争を進めているのが現状だ。
 AI兵器は戦争をどう変えるのか、国際的な規制の議論はどこまで進んでいるのか、日本の役割は何かなどについて、LAWSに関する国連専門家会合にも参加している拓殖大学国際学部教授の佐藤丙午氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・戦争で本格的に使われ始めたAI
・AIの軍事利用を世界的に規制する難しさ
・アンソロピックと米国防総省の対立から見えてくること
・AI兵器は戦争をどう変えるのか
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■ 戦争で本格的に使われ始めたAI
神保: 今日は「AI兵器」と呼ばれているものがテーマです。というのは、AIが実際の戦争で使われ始めているらしいと。特にイランやガザで使われていて、ターゲットにした人間がピンポイントで殺害されています。ウクライナの時にはまだ初歩的な感じで、無人型のドローンといった形でした。ウクライナでは顔面認識というのもありました。それがいよいよ、AIが実戦に配備されてきたと。これだけ人が亡くなっているのに不謹慎ですが、「AI兵器の国際見本市」のような状態になっているとも言われています。

 AI兵器によってたくさんの人が亡くなっており、そこではターゲットだけではなく住民や関係のない人たちも巻き添えになっていると。しかし今はAI兵器を制限する法律や国際法、あるいは条約が何もない状態です。これからどんどん開発が進むことが本当に大丈夫なのかどうか、またなぜそれが進まないのかを考えたいと思います。

 ゲストは拓殖大学国際学部教授で、海外事情研究所所長の佐藤丙午さんです。佐藤さんはAI兵器をめぐる制限交渉などをウォッチされていますが、今回のアメリカとイスラエルによるイラン攻撃の形態や使われている武器やその量も含めて、専門家としてはどう見ていますか。

佐藤: イスラエルやアメリカも、AIを全てに使っているわけではなく、人物の特定や移動経路の予想などには使っています。大きなニュースになった、撃ち落とされた米軍パイロットの救出作戦では、彼の心臓の波動を探知し、それをAIで解析して位置を特定して救いにいったということです。

神保: それは心臓の鼓動がユニークなものだからですか?

佐藤: そこまでは明らかになっていません。ユニークな鼓動を最初に登録していたから分かったのか、それとも砂漠の中に人がいるという鼓動の情報だけがピックアップできたからなのかという点はまだ明らかになっていません。ただ位置情報を精密に特定する時にもAIは使われます。普通の社会では雑音が多いので、その中で人間の心臓の音だけをピックアップする時にAIが使われることがあります。ただこれは兵器利用ではなく人命を救うためにあるものなので、むしろ開発した方が良いAIなんですね。

 しかし人間の心臓の音が特定できるということは、それを登録しておけば誰がどこにいるのかが分かるということです。そうすると、そこを攻撃すればピンポイントで相手を殺すことができる。それは良くありませんね。情報収集して解析するという問題と、それを使って攻撃するという問題の2つに分かれ、これらは衝突するんです。

 AIや兵器の利用を規制しようとすると、情報収集や解析まで規制しなければなりません。しかし一番悪いのは人を無差別に殺すことだと言われたら、その通りです。技術開発を規制するとさらに民間人の被害が出ることになるので規制すべきではないという考えも出てきます。国際社会の中ではお互いの正義が折り合わないんです。

神保: 前者の正義がなければ研究を進めることはできませんが、必ず後者の正義も出てくることは分かっていますよね。