金元/子あひるB、醜いあひる(白鳥)、他のあひるA
川上/母あひる、子あひるA・C、他のあひるB、若い雁、白鳥

※子あひる達の性格は、A無邪気・Bもはやメイ・Cのんびり。

SE 森のざわめき
母あひる「もうそろそろかしらね」
SE コンコン
母あひる「あ♪孵るのね♪」
SE コンコン…パリパリ
子あひるA「っぷはー!!生まれたよー!!」
子あひるB「まま!あなた、ままって言うのね!!」
子あひるC「んあー!うまれたのねぇ~」
母あひる「可愛い子供達♪あら?まだの卵があるのね。……それにしても大きいわね……これ、私のかしら?もしかして、他の卵?でも、もうすぐ生まれそうな気がするし、もう少し温めてみますかね。」
子あひるA「まぶしー!あたたかーい!」
子あひるB「もう少しって、あしたー?」
子あひるC「ふぁー、世界って広ーい!すごーい!」
母あひる「あら?世界はもっともぉーっと広いわよ♪ 庭の向こうには畑も広がってるし、そこの木々を抜けたら川もあるわ。 きっともっともっと広いから、あなた達でその先を探してみてね」
子あひるA「行ってみたい! 行こう!」
子あひるB「いってらっしゃーい」
子あひるC「コンコン聞えるよぉ」
母あひる「お寝坊さんが、やっと目を覚ますのかしら?」
SE コンコン…パリパリ
醜あひる「オレ、参上!」
子あひるA「……なんか……きちゃない……」
子あひるB「あれー?」
子あひるC「おっきい……とってもおーっきい(ぽかーん)」
母あひる「なんてまぁ、でっかい子。兄弟に全然似てないわね。う~ん……でもまぁ、いっか♪」


母あひる「さぁさぁみんな、泳ぎの練習をしましょう。飛び込め―!」
子あひるA「うわーい♪」 ぱしゃ
子あひるB「うわー♪」 ぱしゃ
子あひるC「よいしょっと」 ぽちゃ…
醜あひる「とぅー!」 ばしゃん!
子あひるA「あ、あれ?あれれ?」
子あひるB「おじゃまたくしー」
子あひるC「おいしー?」
醜あひる「気持ちいい、ちょー気持ちいい」
母あひる「なんて上手に泳ぐんでしょ♪ちょっと大きいし個性的だけど、ちゃんと私の子ね♪なんて言うか......愛嬌があるわよね、うん。じゃあ、みんなにお披露目しましょうかね♪ほら、しっかり歩いて♪1、2♪1、2♪」
他あひるA「ひょえー!なーんてぶっさいくなんだ」
他あひるB「うお!」
SE ゲシッ
醜あひる「痛っ!」
母あひる「なにするの!この子は何もしてないじゃないの!!」
他あひるB「いやだって、あまりにデカくてへんてこりんだから、つい蹴り飛ばしちゃった」
他あひるA「そいつ以外はかっわいいのに、きもち悪い」
他あひるB「あっちいけ!」
SE げし!
醜あひる「や、やめろー!」
他あひるA「猫にでも食われてしまえば良いのに」
他あひるB「見かけたらいつでも蹴っ飛ばすからな。俺に見つからないようにコソコソ生きろよ」
他あひる二羽「あはははは!」


醜あひる「俺のせいで、兄弟に迷惑をかけている......ママも嫌な思いをしてるに違いない......どこか遠くへ行こう。俺に出来る事はそれしかないんだから......」
SE バサバサ

若い雁「よぉ、そこのショボくれたお前。随分と苦労してるみたいだな。その死んだような目、気に行ったぜ?アタイたちと一緒に渡り鳥にならねぇか?」
醜あひる「渡り鳥?」
若い雁「おうとも。熱くなれば北へ、寒くなれば南へ。自由気ままに飛び回る生き方さ。良い渡り鳥ってのは、強さと優しさを兼ね備えてなければならない。おまえみたいな地獄を見た奴は、すっげー優しくなれるだろうから、歓迎するぜ」
醜あひる「渡り鳥かぁ......」
若い雁「すぐ近くの沼に、可愛らしいイカした雁が沢山いるんだ。気前の良いお嬢さんたちがな。運だめしに、ナンパしにいかないか?」
醜あひる「ナンパ?!」
若い雁「長旅にはパートナーがいた方が良いぜ?それとも、アタイが良いかい?願わくば、アタイのパートナーはもっとワイルドな奴が嬉しいけどな(笑)」
醜あひる「そ、そんな!俺なんかじゃ......釣り合わないから......」
若い雁「それじゃあ、行こう!」
SE バサっ!......ダーン!!と銃声)
若い雁「ギャー!」
醜あひる「うわー!」
SE 猟犬たちの吠える声
醜あひる「何が起こったんだ?俺がいると駄目なのかもしれない。俺が不幸を呼び込んでるに違いない......」

SE 冷たい風が吹く
醜あひる「兄弟はいま幸せにしてるだろうか?ママは俺の事なんて忘れてくれただろうか?ひとりぼっちだけど、なんとか生きてるよ......」
SE 白鳥の鳴き声
醜あひる「あ......輝く白い羽。長くしなやかな首......美しい。ママ達とは全然違う姿の鳥なのに、凄く美しい......あの鳥たちも渡り鳥なのかな......」
醜あひる「......疲れたな。どうせなら、猫にやられたり、飢えて死ぬくらいなら、あの美しい鳥に殺されたいな......どんな事をしたら良いんだろうか?迷惑をかけて怒らせたら、攻撃してくれるかな?おーい!」
SE 被せながら白鳥の鳴き声
醜あひる「え?!今の......俺の?」
SE 白鳥の鳴き声
白鳥「あら、こんなところに若い白鳥が。群れからはぐれたの?」
醜あひる「え?白鳥?」
白鳥「えぇ......あなた、白鳥でしょ?水面に映る自分の姿を御覧なさい?」
醜あひる「こ......これが、俺?俺、あひるじゃないのか?」
白鳥「あひるだったら、バケモノみたいな大きさね(笑)」
醜あひる「そっか......あひるじゃなかったんだ......そうだ!」
SE バサバサ
醜あひる「おーい!」
母あひる「白鳥?若いわね......」
醜あひる「ママー!」
母あひる「ママ?!え?あら?その匂い......あのときの、大きな私の子?!」
醜あひる「そうだよ、ママ!俺は、あひるじゃなくて白鳥だったんだって!ちゃんと生きて、大きくなったよ!」
母あひる「生きていてくれたのね!!辛かったでしょ?よく頑張ったね......よく耐えたね......不安だったでしょ?怖かったでしょ?」
醜あひる「俺、ママの子で良かった!結局種族は違ってたけど、俺のママは、ママなんだ!」
母あひる「えぇ、あなたは私の子供よ......」
醜アヒル「同じ種類の群れを見つけたから、これからは一緒に旅をしようと思う。だから、一緒に暮らせないけれど、生きてるんだって、感謝してるんだって伝えたかったから、会いに来た!」

母あひる「そう。達者で暮らすんだよ。良いお嫁さんを見つけてね。そして......これからも優しい子でいてね。バイバイ」
醜あひる「わかった......じゃあね!!」