渡辺浩弐のトークエッセイ7月11日 感想文
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渡辺浩弐のトークエッセイ7月11日 感想文

2020-07-11 04:50
    渡辺浩弐のトークエッセイ7月11日を見た感想

    渡辺浩弐のトークエッセイとは、小説家であり株式会社ジーティーヴィー代表である渡辺浩弐によるYouTubeライブ。配信チャンネルはGTV

    今回は「渡辺浩弐のトークエッセイ7月11日 2020.07.11 (配信アーカイブ)」の感想を書きます。

    以下の文章はトークエッセイの内容紹介や、それを聞いて私が思ったことなどを記しています。授業を聞いてそれをまとめ、感想を書くようなイメージで書かれています。私が聞いていて解釈を間違えた内容が、間違えたまま書かれている可能性があります。あらかじめご了解ください。

    また、人の会話は文章にした時に削ぎ落とされてしまう部分にも、お話やその人の本質が含まれるものだと思います。未試聴の方はぜひとも動画を見ていただきたいです。


    渡辺浩弐のトークエッセイ7月11日 2020.07.11 (配信アーカイブ)

    トークテーマ(サムネイルより):コーヒーブレイクしましょう。

    コーヒーをおいしく飲むためのコツ

    1. 豆を自分で選んで買うこと
    2. 豆を自分で挽いて、挽いたらすぐに淹れる
    3. 蒸らすのをサボらない(40秒から50秒)

    コーヒーを入れることは極めてゲーム的。淹れ方を変えることで味をコントロールできる。

    コーヒーは酸味と苦みが数値の両極に存在する。同じ豆であっても以下の三要素を変えることで酸味と苦味の度合いを変えられる。

    1. 焙煎の度合い(浅煎りorこんがり)
    2. 豆の粉砕の細かさ(荒目or細かく)
    3. 抽出する際のお湯の温度(ぬるめorアツアツ)

    焙煎を浅く・荒く粉砕・ぬるめのお湯でつくる→酸味の強いコーヒーになる
    こんがり焙煎・細かく粉砕・アツアツのお湯で作る→苦味の強いコーヒーになる

    コーヒー屋さんに並んでいてこんがり焼いているのはイタリアンロースト。浅煎りはライトロースト。中くらいがシティロースト(参考URL)。

    最近はスタバやマックでも、こんがり挽いた豆の苦いコーヒーに砂糖を入れて飲むのが主流。しかし昔は酸っぱいコーヒーが流行っていた。純喫茶と言われる時代の喫茶店のコーヒーは酸っぱかいものが多かった。これは眼も冴える。渡辺さんも最近は酸っぱいのが好き。アメリカンコーヒーはイコール薄いという意味ではない。本来は、酸っぱい味でビジネスマン向けに作られる、さっと淹れられて目を覚ますもの。

    コーヒーは自分でいろいろ試しているうちに、飲む前から味が分かるようになる。また、飲みたい味のコーヒーを淹れられるようになる。味をコントロールすることはゲーム的で面白い。コーヒーは飲む環境や自分の体調で味が変わるように思えるが、コーヒー自体は同条件なら必ず同じものを作れる。複数の豆の配合をそれぞれ何パーセントにするか、どれくらい焙煎するか、粉砕するか、お湯の温度と蒸らす時間をどうするか。これらを同じように設定すれば必ず同じ味になる。必ず同じ味を作れるということは、その時々の自分の気分によって味わい匂いを選んでつくることができる。

    コーヒーに限らず、料理は職人芸のような経験がものをいう世界と思われがち。渡辺さんはコーヒーを10年以上淹れてきて、料理とは本来デジタルに味を規定できるものではないかと考え始めた。

    ともすれば信仰すらされる、職人が持つ秘密の技術などは本当は存在していない。突き詰めればそのような技術もデジタルにパラメータ化できるのではないか。師匠の後ろ姿を何十年見て分かった気になる必要はなく、職人芸すら再現できるはずである。


    理系の立場から数字を用いてコーヒーの価値を記した本が少ないが存在する。

    コーヒーの科学旦部幸博・著

    医学系、バイオ系の研究者。

    コーヒーとはそもそもなんなのか。どういう植物なのか、どんな種類があり、どこで生育しているのか。それをどうやって焙煎・抽出して飲んでいるのか。そういう基礎から紹介されていて、読み物としてまず面白い。そこから徐々に自身の研究室を用いたと思われる数値的な具体的な話も出てくるが、難しいと思わず読んでほしい。

    どう加工・加熱したらコーヒー豆にどのような変化が起こっているのかを図やグラフを用いて記されている。科学者としての分析データのビジュアル化によってそれらがわかりやすい。プロセスから結果まで、理系ならではの立場からコーヒーのおいしさを分析している。

    工学屋の見たコーヒーの世界広瀬幸雄・著

    金属疲労に関する材料強度学の専門家。変わった研究でイグノーベル賞も取った方。

    コーヒーについて匂いや味わいの分析や、抽出条件を変更して液体性の変化を分析している。その反面で自分の好きなコーヒーを世界じゅうをめぐって見つけるという、情緒的な部分もあり面白い。言ってみれば理系の方の文学。味というかたちのないものをデジタルに求めながら最終的に情緒で表現する。渡辺さんはここに本当の文学のヒントのようなものを感じた。ある種の研究書を文学作品として読む楽しさの皆さんに伝えたい。

    文学は情緒だけではだめで、理系的なスタンスの上に情緒を語っていくことがすごく大事。日本の教育は最終的に文系に行く人でも、ある程度の高等数学を勉強する。数値的な教養がコーヒーを飲むときに発揮され、生活が豊かになることもあり得る。三平方の定理なんか一生使わないよと言う人は多いし、実際そうだとも思う。でもそれらの教養が役立つ時もあるのではないか。それは否定できない。

    匂いや味わいを文章として表すと情緒的なものになる。グルメ本は数多く出るようになってきたが、情緒だけで語られる本は面白くなくなってきている。そうではないものが求められてきている。

    情緒による食批評を突き詰めれば、タレントが料理をおすすめしたグルメ本になる。しかし科学的に突きつめていったものが必要になると考える。それを突き詰めていった先に情緒を数値化することが大事である。

    ゲームの評論も同じで「ここが面白い、気持ちいい」だけではなく、なぜ面白いのか、裏側にあるパラメータの設定まで表すことが必要。そのような評論の存在によって、評論を読んだ次世代からゲーム制作にまわっていく人も出てくるのではないか。

    そんなことを思いながら、日々コーヒーを淹れ、ゲームをプレイしている。


    今回の放送ではどのお店のどの豆がいいということは、意図的に言わなかった。

    皆さんがお店に実際に行ってみて、香りがいいとか、試飲させてもらっておいしかったとか、そういうことからいろんな種類を試してほしい。他人のお勧めを摂取することは食べ物でも情報でも、多くあると思うが、たまには自分で選ぶということをしてみてほしい。

    コピ・ルアクは発酵コーヒー。エレガントな味わいがする。

    コピ・ルアクはインドネシアのコーヒー園で作られている。ジャコウネコの糞に含まれているコーヒー豆から作ったもの。ジャコウネコは害獣でコーヒーを食べてしまう存在だった。

    実はコーヒーは果物。我々が飲んでいるのはタネの部分。タネの部分は消化されずに糞に残る。それをコーヒーとして飲んでみたらおいしかった。

    同じように象の糞からコーヒーを作る方法もある(調べたところ「ブラック・アイボリー」というらしいです)。こちらは象にコーヒーを食べさせて作る。象の糞はそれだけで食用になるくらいきれいなもの。臭くもなければ汚くもない。

    ブラック・アイボリーとコピ・ルアクでは、コピルアクの方が高級。ジャコウネコを家畜として作っているわけではなく、偶然できるものなので希少性から高い。今のところコピ・ルアクは工業的に生産されているわけではなく、すべてが天然もの。恐らく大量生産するほどにはニーズがないからではないか。コピ・ルアクは原価で600~1000円。お店では3000円で出しているお店もある。

    同じように美少女にコーヒー豆を食べさせて発酵させるお客さんに提供するという手もある。というのはさすがに冗談だが、コーヒーはパラメーターがいくつも存在するので、タレントや作家のキャラクターコーヒーというのは需要があるのではないか。

    コーヒーは言われているほど胃に悪くない。カフェインは入っているが自然由来でケミカルなものではない。そのためカフェインの常習性も少ない。コーヒーの体への良し悪しについては研究があり、もちろんどちらも存在する。渡辺さんはそれらを確認したが、暴飲しなければ言われるほどに悪いものではないと考えている。

    渡辺さんは自身の経営する喫茶店で焙煎もカフェ内でやろうと考えたことがある。しかし試してみたら、香りが強すぎた。お店に入ってきた瞬間に何もかもがコーヒーの匂いになってしまう。紅茶なんか飲んでいられなくなってしまった。

    バルザックはコーヒーに塩を入れて飲んだ。渡辺さんも試してみたら意外においしかった。癖のないスープのような味わい。

    今日言いたかったのは二つ。

    1. 感覚や感性といった抽象的なものの数値化
    2. 理系の研究家が味を真面目に研究そういうことが文明を一歩先に進める発見発明に結びつくこともあり得るのではないか

    以下、このブロマガ書いている人の感想などです。

    渡辺さんのコーヒートークも久し振りに聞いたような気がします。今回の内容は基本的に「渡辺浩弐の日々是コージ中 第544回 10月30日「ゲームとしてのコーヒー」」 や『パンドラVol.2 SIDE-A』掲載の「シミュレーション・ゲームとしてのコーヒー」の繰り返しとなっています。突き詰めれば最後に語られている言葉の一点目の「感覚や感性といった抽象的なものの数値化」です。

    しかし、この点について新しく語られたと思った部分が一点。先に書いた言葉を使うなら「必ず同じ味を作れるということは、その時々の自分の気分によって味わい匂いを選んでつくることができる」という点です。

    渡辺さんとしては当初から「抽象的なものの数値化」に、この点も含んで書いていたのだと思います。しかし、私は気づいてなかったなーと。音楽で言うとメロディーを強めにして聞くか、リズム隊を強めにして聞くかを自分で選べるようなものですね。寝る前にはメロディー重視でゆったりと。車の中ではリズムを聞かせてノリノリで、みたいな。

    コーヒーの淹れ方がゲーム的であると書かれていますが、今日はどういうプレイスタイル(味)でやりたいのかを 選べること自体が既にゲーム的なのかなと感じました。

     

    キャラクターコーヒーについて。

    渡辺さんは意図的に述べなかったのでしょうが、渡辺さん自身が以前にキャラクターコーヒーを作っています。2008年に講談社BOXとの協力企画で、講談社BOXにまつわる作家さんのキャラクターコーヒー(『パンドラVol.2 SIDE-A』では「作家ブレンド」と称されています)をK-CAFE(当時はKOBO CAFEという名前)で作っています。

    作家さんの依頼内容から渡辺さんがイメージしたコーヒーを作成するというもので、たとえば佐藤友哉さん(『転生! 太宰治』シリーズの最新作がボイスドラマとして発売中!)の「佐藤友哉ユヤタンコーヒー」ではこのような感じ。

    【佐藤友哉ユヤタンブレンド】

    ★依頼コメント★

    酸味が利いているだけ利いているような、栄養のある土を食べているような味で、中華料理にも負けないほど濃厚な感じのブレンドをバリバリのブラックで。鼻にガンガンくるような香りが好きです。でも頭が痛くなるほどの香りは苦手です。

    ☆ディレクションコメント☆

    モカ・キリマン系の豆を浅煎りで80℃くらいの低温で淹れます。若草のような香りが立ちのぼります。最近は酸っぱくておいしいコーヒーが忘れられているように感じていましたから、佐藤さんのオーダーは嬉しかったです。

    ■感想コメント

    あんな怪しいイメージコメントから、なぜこうも美味いコーヒーができたのかが最大の謎。酸味がとっても蠱惑的。カフェイン2倍も実務的。またしても僕内部の渡辺浩弐ポイントが上昇。渡辺さんの実力は青天井や!

    おそらく、KOBO CAFEで各作家さんがフィーチャーされた時にお客さんにも振舞われたのかな?(私は渡辺さんがフィーチャーされた時にしか行けなかったので詳細不明) 昨今では、アニメなどのコラボカフェで各キャラクターの名前がついた飲食物が振舞われることがよくあります。

    しかし、それらは基本的に既製品の名前を変えただけのことが多いです。飲み物なんか紙パックとかペットボトルから注いだだけでしょって感じの。それらを考えると2008年時点で提供物へのしっかりしたこだわりを持っていたカフェというのも先見の明がありますよね。こういう作られ方なら多少高くってもみんな納得するのではないでしょうか。

     

    抽象的なものの数値化と聞いて思い出したのが新海誠監督の『君の名は。』の感情グラフです。『君の名は。』は私もとても面白く見ました。しかし、制作時に既に私たち観客の感情が操作されていたことにびっくりしました。

    感性だけで作られる名作ももちろん存在するのでしょう。しかし誰もが天才ではない以上、綿密な設計図を基に作られる作品も大事であるように思えます。この点ではある点では渡辺さん自身が仰っていた『十三機兵防衛圏』の再生産方法と似通っているように思えました。

     

    KOBO CAFEにまつわるエトセトラをまとめた単行本企画が当時噂されていたように記憶しています。流石に2020年現在にKOBO CAFEの単行本を出しても仕方ないと思いますが、渡辺さんによる喫茶店本はあったら今でも面白く読めるのではないかなと思います。出してもらえないかしら。


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