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  • 古川健介『TOKYO INTERNET』第4回 なぜTwitterは日本における最強の投稿サービスなのかを考察してみる【毎月第2水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.753 ☆

    2016-12-14 07:00  

    古川健介『TOKYO INTERNET』第4回なぜTwitterは日本における最強の投稿サービスなのかを考察してみる【毎月第2水曜配信】 
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.12.14 vol.753
    http://wakusei2nd.com



    今朝のメルマガは古川健介さんの連載『TOKYO INTERNET』の第4回をお届けします。
    今やTwitterは日本でのみユーザー数が伸びているSNSとなっていますが、その理由を「日本における投稿サービスのアーキテクチャの変遷」から考えます。

    ▼プロフィール

    古川健介(ふるかわ・けんすけ)
    1981年6月2日生まれ。2000年に学生コミュニティであるミルクカフェを立ち上げ、月間1000万pvの大手サイトに成長させる。2004年、レンタル掲示板を運営する株式会社メディアクリップの代表取締役社長に就任。翌年、株式会社ライブドアにしたらばJBBSを事業譲渡後、同社にてCGM事業の立ち上げを担当。2006年、株式会社リクルートに入社、事業開発室にて新規事業立ち上げを担当。2009年6月リクルートを退職し、Howtoサイト「nanapi」を運営する株式会社nanapi代表取締役に就任。
    『TOKYO INTERNET』これまでの連載はこちらのリンクから。
    前回:古川健介『TOKYO INTERNET』/第3回 テキストサイト文化が生み出した「真面目にふざける」ビジネスモデル

    (イラスト:たかくらかずき)
    今日のTOKYO INTERNETでは、日本における投稿サービスのアーキテクチャの変遷について話したいと思います。
    2ちゃんねるのような匿名掲示板からmixiのようなSNS、そしてTwitterにいたるまでの歴史と、その背景にはユーザーが何を求めていたのか、また運営者は何をさせようとアーキテクチャを設計したのか、という点を整理していきます。
    結論としては「Twitterは日本における最強の投稿サービスとなった」ということです。
    ■なぜ人はインターネットに投稿するのか
    まず、インターネットに投稿をする、ということの意味を考えてみたいと思います。インターネットに投稿する、というのは変な言い方ですが、ここでは「ネットサービスなどを使ってネット上に自分の書いたものをおいておく」という意味です。
    なぜ人はネットに投稿するのか、というのは極端にいえば誰かにコミュニケーションをするためです。一切の反応もなくていいから文章をおいておく、というのもゼロではないのでしょうが、大なり小なり誰かとのコミュニケーションを求めているといってよいでしょう。
    そして、そのコミュニケーションの目的も2つあります。僕の整理ではそれぞれの目的のコミュニケーションについて、「情報共有型」と「感情共感型」と呼んでいたりいます。
    情報共有型コミュニケーションとは、「コミュニケーションの目的が情報である」ことであり、感情共感型コミュニケーションとは、猿が毛づくろいをするように「コミュニケーションの目的が、お互いに敵意がないことを確認するための馴れ合い」です。
    簡単にいうと、コミュニケーションの目的は、仕事でのやり取りのような、情報の交換が目的のものか、ただコミュニケーションして楽しむおしゃべりのようなものか、という区分けです。
    ■インターネットへの投稿の歴史
    そんな前提を踏まえて、まず、日本のインターネットにおける投稿への歴史を遡ってみたいと思います。と言っても、詳しく書くと本一冊くらいになってしまうので、簡単に……。
    ※ちなみに「インターネットにおける」と大きく括っていますが、これは「世界における」といっているような世界の大きさのことを一般化して書いているので、あくまで僕が見てきて僕が感じたインターネットの歴史だということをご了承ください。
    まず、日本のインターネット投稿の歴史は、パソコン通信でのコミュニケーションがスタートにあります。ここでは言葉遣いなどが荒かったとしても、ある程度の知識層による投稿が多くありました。ここでやり取りされていたのは、どちらかというと情報共有型、つまり情報のやり取りがメインでした。そして、そこからNiftyフォーラムにたどり着きます。
    ここまでは、ハンドルネーム性、つまりインターネット上のためのニックネームを名乗り、それで発言するのが普通でした。現実の自分と結びつくことはそんなになく、だからといってアイデンティティがないわけではない、という状態です。
    しかし、日本のインターネットが特異だったのは、その先、1996年ごろに、「あやしいわーるど」といったような、アングラサイトと呼ばれる匿名の掲示板が流行したことです。あやしいワールドは、最新のものが一番上に来る単独の掲示板ですが、参加者が多いため、すぐに過去の投稿が流れていってしまいます。そのことから、名前がほとんど重視されません。
    今にたとえると、タイムラインが一つの、名前もアカウント名もいらないTwitterのようなものです。
    ここでの投稿は、情報共有型も感情共感型も存在していましたが、パソコンなどに詳しい人が多かったためか、どちらかというと社会派なネタや、アニメ、漫画などのエンタメネタが多くありました。そして投稿者は「あやしいわーるど」的なキャラクターや投稿雰囲気を常にまとっているのが普通でした。

    あやしいわーるど@暫定(暫定退避)
    たとえば、顔文字でいうと「(;´Д`)」や「ヽ(´ー`)ノ」を使ったりします。逆にいうと、許される顔文字はこれらを中心とした数種類くらいしかありません。
    余談ですが、未だにあやしいわーるどを引き継ぐ掲示板はいくつかありますが、2ちゃんねるなどから発生した顔文字を使うと「壺くせえ(壺=2ちゃんねるの蔑称)」と叩かれたりすることがあるくらいです。ヽ(´ー`)ノはよくて、( ´∀`)が駄目っていう感じです。
    しかし、あやしいわーるどでは、議論がしづらいというのがあります。すぐに流れていってしまうからです。それを解決するために、スレッドフロート型掲示板を発明した「あめぞう」という掲示板が出現しました。
    あめぞうは、いってしまえば、2ちゃんねるの前身のようなものです。このスレッドフロート式掲示板は、あやしいわーるどにはないアーキテクチャ上のメリットがありました。
    それは、スレッドごとに議題が決まっており投稿ができることです。さらに投稿があったスレッドは一番上に移動する、という形態だったため、これであれば「議論を複数、平行に行う」「人気のあるスレッドにすぐにたどりつく」ことができました。
    これにより、98年〜99年はあめぞうの時代となります。
    そして、このあとに、「あめぞうウイルス」によって荒れてしまったあめぞうの避難先として出現した「2ちゃんねる」が99年にでき、今にいたるまで匿名掲示板の中心にいるようになりました。
    このように、黎明期の日本のインターネット投稿は、少しアンダーグラウンドな香りのする匿名掲示板が中心にあったといってよいでしょう。(※1)
    ■匿名掲示板の中心はあくまで情報
    さて、ここまであやしいわーるどから2ちゃんねるまで、匿名掲示板が日本のユーザー投稿の中心だという話をしました。
    これらのコミュニティサービスの特徴としては、あくまで情報共有型、つまり情報のやり取りを目的としたコミュニケーションが主にあったということです。
    あやしいわーるどから2ちゃんねるまで、基本的にこの時代のコミュニティは、情報の交換や議論をより効率的にするための進化をしていったといっていいでしょう。匿名性などについても創設者のひろゆき氏は以下のように発言しています。

    ひろゆき氏: 人間に興味があるんじゃなくて,どちらかというと知識に興味があるんですよね。「この話をしたい」とか「こういう情報を知りたい」とか,目的は人間じゃなくてあくまで情報なんです。情報のやりとりをする場として「2ちゃんねる」を作っているので。「いま発言しているこの人が,本業としては何をしているか」なんていう,「この人に関する情報」には興味がない。だから,それを削ぎ落とした形になってるんですよ。
    4Gamer: そういった意味で,「2ちゃんねる」は,純粋な情報交換ができる場として価値があると。
    ひろゆき氏: そしてその場合,肩書きは邪魔になります,例えば僕が言っちゃうと,もう正しいんだと思い込んじゃう人って,やっぱりいるんですよね。「私は大学教授です」って書いちゃえば,「大学教授が書いているんだから正しいだろ」って信じてしまう人がいるけれども,それと情報の信頼性は本来違うはずです。
     匿名でいながら説得力のある人って,結局情報ソースを持っていたりとか,合理的に結論を導いていたりとか,誰が見ても納得できる理由を持っているわけです。情報としてはそっちのほうが信頼性が高くなるんじゃないのかなと思っているんですけど。
    (4Gamer.net ― 「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」のひろゆき氏が語る,ゲーム・コミュニティ・文化より)

    あくまで、匿名性は、情報の交換をより効率的にするためのものだという考えのことがわかります。

    ひろゆき氏:ええ。僕は赤の他人とチャットしても,面白いとは思わないですからね。

    ともいっており、感情共感型のコミュニケーションはサービスポリシーとしては、あまり興味がないといっていいでしょう。
    ■SNSの出現
    そんな感じで、99年からの投稿サイトの中心は2ちゃんねるでした。しかし、2004年にソーシャル・ネットワーキング・サービス、通称SNSが出現します。
    まず、日本におけるSNSの歴史を簡単に振り返ってみたいと思います。
    日本でSNSというものが本格的に普及しはじめたのは、mixiとGREEという2つの国産SNSがスタートしたことがきっかけです。双方とも、2004年の2月にリリースされました。同じ時期にリリースされたのは、アメリカで急速に話題になっていた、Friendsterの存在があります。「海外でソーシャル・ネットワーキングというものが流行っている」というところから作られました。
    mixiとGREEの違いは、ざっくりいうと「友だちと交流することに重きをおいたmixi」と「実世界の人間関係を重視したGREE」という感じです。
    mixiは、日記を書いたり、知らない人ともやりとりできるコミュニティ機能だったり、コミュニケーションをすることに重きが置かれたサービスでした。一方でGREEは、今でいうFacebookに近いイメージでリアルでの人間関係を可視化することが重視されていました。ビジネス寄りの雰囲気が漂っていたといってもよいでしょう。
    そんな2つのサービスでしたが、SNSとしてはmixiに軍配が上がります。SNSとしての知名度が上がり、ユーザー数も一気に数百万人、数千万人を増えていきました。一方で、ユーザー数に差をつけられたGREEはKDDIと資本提携をし、EZ GREEをスタートするなどモバイルに舵を切っていきます。さらにその後、DeNA社のモバゲーに近いモバイルゲームに注力することで、爆発的に伸びました。モバイルゲーム化あたりから、いわゆるSNSとしての役割は小さくなっていきます。
    話は脱線しますが、mixiもGREEも東京から生まれたサービスであり、企業ですが、それぞれ独自の文化を築いたり、海外よりも先んじた事業を展開したりなど、ゼロ年代〜10年代を代表するネット企業の一つとなっています。どちらも、Yahoo!JAPANや楽天のようなビジネス中心でコングロマリット化していきがちな会社とは違い、独自のプロダクトを作り、それによって規模を拡大していった数少ない会社のうちの一つといえます。
    ■mixiの勝因である日記機能
    さて、そんな感じで国産SNS戦争に勝ったmixiですが、その理由の一つとして、日記機能があります。
    日記機能はその名の通り、友達に向けて日記を書く機能です。

    2004年リリース当時のmixi(出典:ソーシャルネット「mixi」、儲からなくても続ける理由 より)
    これがGREEとの勝敗を分けました。
    他の国の当時のSNS、たとえばFacebookやMySpaceではなかった、「日記を書いて発表する」ことを中心にしたことで、今までインターネットで投稿などしたことがなさそうな層まで、使い始めたのです。
    そんなmixi日記は、今までインターネットで文章を書いたことがないような層が、友達しか見ていないという安心感のもと、文章を発表するような場になったという点で、非常に画期的でした。今では想像できないですが、mixi以前のインターネットでは、友達とだけやり取りをする場というのは、かなり限定的だったのです。それこそメールやICQ、MSN メッセンジャーなどのメッセンジャーなどでしたが、そもそもインターネットをフル活用している人が少なかったので、一般的ではありませんでした。あえていうなら、i-modeを中心としたモバイルのメールでしょう。
    こういった性質は、2ちゃんねるなどの匿名掲示板とは真逆で、親しい友だちとやり取りをするためだけの日記により、まさに感情共感型のコミュニケーションを行う場ができたということです。これはSNSの出現とインターネットの普及のタイミングがうまく一致したことで、多くの人がインターネットを使いこなすようになったからといえるでしょう。mixiは数千万を超えるユーザーがいる一大サービスになりました。
    これは、情報の交換をしたいような層(言い換えると、インターネットを初期から使いこなす知識層)よりも、大多数が、友達との感情共感型コミュニケーション、つまり雑談やどうでもいいことの話をしたかったということの表れではないかと思います。
    あえて断言すると、日本のインターネットユーザーは「感情共感型コミュニケーションを求めている人が大半」といっていいと思います。
    ちなみに当時、大学4年生だった筆者は、バリバリのインターネットユーザーでして、「匿名でないところで日本人が投稿なんてするはずない」「アメリカみたいな個人がフィーチャーされる国であれば書くかもしれないが、名前を出して自分の意見を書く人なんているはずがない」と思い込んでいました。あくまで、全体の中の1%程度がインターネットに投稿し、99%は閲覧だけであるのが平均的なサービスだろうと思っていたのです。
    それが、mixiユーザーの大多数が日記を投稿するようになり、文章を発表するようになりました。インターネットに何かを投稿するのは一部のマニアのためのもの、というところから、誰でも投稿するツールになったのは、このあたりからだと記憶しています。今までももちろん、Yahoo!ニュースを見たり、Amazonや楽天で買い物をしたりすることは普通の人でも行っていましたが、投稿するというところに対してはハードルが高かったのです。それがmixi日記(と当時のブログブーム)が壊したといっても過言ではないでしょう。
    ■日記がポエム化していく
    そんな感じで、mixiを通じて、多くの人が日記を投稿するようになりましたが、そこでおもしろい現象が出現してきます。
    それは、mixi日記がポエム化していったということです。
    ポエムとは何でしょうか。元々の英語の意味では、Poemは詩の単数形ですが、日本だと詩とポエムは若干区別されており、

    詩・・・文学的でありリズムがあるもの
    ポエム・・・感傷的な文をただ書いただけのもの

    というイメージの違いがあります。
    mixi日記には(詩が投稿されたわけではなく)ポエムが投稿されていくようになりました。もしかしたら読者の方の中にmixi日記を書いていた方がいたら「あぁ〜」と思うかもしれません。

    (出典)
    mixi側もそれを理解しており、「mixi日記を「リライト」しよう!」というキャンペーンを2016年12月に行ったりしています。

    ASIAN KUNG-FU GENERATION × mixi
    このキャンペーンは「mixi日記って黒歴史だよね」という前提の元に作られています。これがTwitterの昔の投稿だったらここまでの話題にはならなかったのではないでしょうか。
    では、mixi日記がポエム化した、その理由は何でしょうか? 僕は、mixi日記でポエムが投稿されるようになった理由としては、友達全員に公開されるアーキテクチャにより、「出来事をぼかす」必要があったせいだと思っています。
    どういうことでしょうか。たとえば「今日、大学で嫌なことがあった。友達のAに傷つく言葉を言われた。なんとかこの気持ちを慰めたいが、日記に直接書くと角が立つ。だからぼかして書こう……」という内容の日記を書こうと思います。しかし、友だちの中には、A本人がいたり、共通の知人がいるかもしれなく、そのまま事実を書いては角が立ってしまします。
    しかし書きたい気持ちは止まらない。そんな時に書く日記は以下のようになります。

    自分が気にしているか気にしていないかに関わらず、人から自分の何かを指摘されるのはとても嫌な気持ちになる。たとえそれが仲のいい友達からだったとしてもだ。しかも、タチが悪いのが、その指摘が正しいことである。正しいと、より傷ついてしまう。
    自分は自分であり、他の誰でもないのだから、ありのままの自分を受け入れるしかないけど、今日だけはこのまま落ち込みたい。

    今、僕がノリで適当に書いた日記ですが、こういう形で、形や表現をぼかして愚痴を書こうとすると、ポエムぽくなるんですよね。
    たとえば、エッセイストの小田嶋隆氏は『ポエムに万歳!』という著書の中で、

    「書き手がなにかをごまかそうとするとき、文体はポエムに近似する」

    と述べています。
    特定せずにごまかしつつ書きたい、という気持ちと、日本における「察し」の文化の強さが混じり合い、ポエム化していったのではないか、と考えています。
    結論としては、最初は感情共感的に友達と雑談や他愛のない話をして、コミュニケーションそのものを楽しんでいたけれども、多くの人が参入することで、人間関係的にも複雑な形になっていったため、ごまかす必要が出てきてポエム化していったのではないか……と考えています。
    そもそも日本人は詩や歌が好きという説もあります。高階秀爾の『日本人にとって美しさとは何か』という本の中に「日本人は誰でも歌を詠む、というのが海外の人にとっては珍しい」といった趣旨のことが書いてあります。
    この本によると、古今和歌集の最初のところに

    「花になくうぐひす、水にすむかはづのこゑをきけば、いきとしいけるもの、いづれかうたをよまざりける」

    現代語に訳すと、「花に鳴くうぐいすとか、水に住んでいるカエルとかの声を聞くと、日本人なら誰でもつい歌を詠んじゃいますよねぇ……」ということをいっています(※2)。
    今でも日本の新聞には、詩の投稿欄があったり、サラリーマン川柳があったりするのは特徴的です。だからというわけではないのですが、日本におけるインターネット投稿において、感情を表現するときには、詩やポエムがやりやすいのかもしれません。
    ■そして今はTwitter
    ここで整理しておきます。日本のインターネット投稿は、
    匿名掲示板による情報共有型

    SNSの出現により感情共感型に移行
    という流れで来たのではないかという仮説です。
    そして、今はどのような状況なのでしょうか?まず、ネットの中心はどこかというと、mixiからTwitterにうつりかわっていきました。2004年からしばらくはmixiの天下が続き、2009年くらいからTwtiterが台頭してきます。そして、ニールセンの調査では2010年の時点でmixiのユーザー数を抜いています。
    (参考:mixi, Twitter, Facebook 2010年12月最新ニールセン調査 〜 Facebook堅調に300万人超、ページビューも大幅増)
    その後、Facebookなども急激にユーザー数を伸ばしますが、2016年現在、日本における中心はどこかというと、Twitterといってよいと思っています。
    そんなTwitterですが、世界ではMAU(月間アクティブユーザー数)が横ばいで、買収のオファーやCOOの退職、買収の噂など、とにかく苦戦が報じられています。完全に落ち目のサービスとして取り上げられることが増えてしまっています。しかし日本に関してのみいえば、かなり好調といえる状態なのです。

    Twitter Japanは11月2日、日本の月間アクティブユーザー数(MAU)が9月に4000万人を超えたと発表した。昨年12月時点から500万人増えた。
    日本のユーザーは9カ月で約13%増と堅調に伸びているが、米Twitterが10月27日に発表した全世界のMAUは前期比ほぼ横ばいと伸び悩んでおり、経営面でも赤字が続いている。
    (Twitter、日本の月間利用者が4000万人超え 9カ月で500万人増 - ITmedia ニュース より)

    なぜTwitterがここまで日本で好調なのでしょうか。

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  • イケダハヤト×石川涼×馬場正尊×宇野常寛×吉田尚記 東京再発見――いま、いちばんおもしろい街決定戦(前編) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.752 ☆

    2016-12-13 18:10  
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    イケダハヤト×石川涼×馬場正尊×宇野常寛×吉田尚記東京再発見――いま、いちばんおもしろい街決定戦(前編)
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    2016.12.13 vol.752
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    今朝のメルマガは、2016年7月1日に渋谷ヒカリエで行われたイベント「東京再発見ーーいま、いちばんおもしろい街決定戦」(Hikarie +PLANETS 渋谷セカンドステージ vol.12)の内容を再構成してお届けします。2020年のオリンピックを控えた「東京」という街に、私たちは何を期待すべきなのかーー。ゲストに「VANQUISH」石川涼さん、不動産サイト「東京R不動産」を運営する馬場正尊さん、「まだ東京で消耗してるの?」でお馴染み、ブロガーのイケダハヤトさん、司会はニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんという豪華メンバーでお届けします。
    ▼プロフィール

    イケダハヤト(いけだ・はやと) 
    1986年神奈川県生まれ。2009年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、半導体メーカー大手に就職。11ヶ月でベンチャー企業に転職し、ソーシャルメディア活用のコンサルタントとして大企業のウェブマーケティングのサポートを手掛ける。2011年からフリーランスとして独立。現在はプロブロガーとして活動している。2014年6月から高知県に移住。著書に「年収150万円でぼくらは自由に生きていく(星海社)」「武器としての書く技術(中経出版)」「新世代努力論(朝日新聞出版)」などがある。

    石川涼(いしかわ・りょう)
    1975年神奈川生まれ。静岡育ち。
    2004年よりVANQUISHをスタート。
    a Piece of cake!!!
    http://vanquish.jp/
    http://instagram.com/vanquishceo

    馬場正尊(ばば・まさたか)
    1968年佐賀県生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂で博覧会やショールームの企画などに従事。その後、早稲田大学博士課程に復学。雑誌『A』の編集長を経て、2003年OpenA Ltd.を設立。建築設計、都市計画、執筆などを行う。同時期に「東京R不動産」を始める。2008年より東北芸術工科大学准教授、2016年より同大学教授。建築の近作として「観月橋団地(2012)、「道頓堀角座」(2013)、「佐賀県柳町歴史地区再生」(2015)など。近著は『PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた』(学芸出版,2015)、『エリアリノベーション 変化の構造とローカライズ』(学芸出版,2016)。

    【司会】吉田尚記(よしだ・ひさのり)
    1975年12月12日東京・銀座生まれ。ニッポン放送アナウンサー。2012年、『ミュ~コミ+プラス』(毎週月~木曜24時00分~24時58分)のパーソナリティとして、第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。「マンガ大賞」発起人。著書『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)が累計13万部を超えるベストセラーに。マンガ、アニメ、アイドル、落語やSNSに関してのオーソリティとして各方面で幅広く活動し、年間100本近くのアニメイベントの司会を担当している。自身がアイコンとなったカルチャー情報サイト「yoppy」も展開中。
    ◎構成:高橋ミレイ
    イベントの動画はこちら。

    ■「東京」という都市にいかにして関わってきたか
    吉田 今日は司会進行をさせていただきます。ニッポン放送の吉田と申します。よろしくお願いします。では、今日の主催者たる宇野常寛さんにまずお話をしていただいてから、各登壇者の方の言葉をいただきたいと思います。
    宇野 皆さんこんばんは。評論家の宇野です。今日は東京についてもう1回考えてみたいと思ってこの集まりを開催しました。2020年の東京オリンピックが4年後に迫っているんですけど、はっきり言って嫌な予感しかしないわけですよね。例えば新国立競技場の問題もみっともないし、エンブレムのパクり問題もあった。こんなに予算かけてやる価値あるのかという話ばっかりじゃないですか。その上、誘致のときの賄賂疑惑まで出てきて、あわや返上かって話になっている。
    でも、よほどのことがない限り2020年ってやってきますよね。東京に住んでいる僕らは4年後のオリンピックに向けて街がガラッと変わる直撃を受けるわけですよ。そのなかで、この街に住んで暮らしている僕らが東京という街をどう再発見していったらいいのか。どう面白く楽しく、そして快適にクリエイティブに暮らしていったらいいのかっていうビジョンを持つタイミングなのかなと思っています。よろしくお願いします。
    吉田 次はお兄系ファッションをリードし続けているブランドVANQUISHの代表、石川涼さんです。よろしくお願いいたします。
    石川 よろしくお願いしまーす。
    吉田 VANQUISHについて少し説明していただけますか?
    石川 VANQUISHは2004年から始めたブランドです。今年109 MEN’Sが10周年を迎えましたが、そこをふくめて全国に10店舗くらいと海外にも店舗があります。僕は今年で41歳になりますが、20歳のときに上京してから20年ぐらい東京で暮らしています。
    吉田 東京に来るまでは、どんな住み替えをなさっていらしたんでしょうか?
    石川 神奈川で生まれたんですけども、幼稚園のときに引越しをして富士山の麓で20歳まで過ごしました。
    吉田 ありがとうございます。続きまして、不動産メディア、東京R不動産を運営するオープン・エーの代表馬場正尊さんです。
    馬場 こんにちはー。よろしくお願いします。俺だけ圧倒的に年上でアウェイな感じが……。47歳なんですけど。
    吉田 これまで、どんな住所遍歴をたどってきましたか?
    馬場 僕は九州の佐賀の伊万里市の商店街の煙草屋で生まれて、小さい頃はそこで育ちました。父親の都合で西九州、佐世保や福岡久留米とかをうろうろしていたので、九州から出たことがなかったんです。大学で初めて東京に出てきましたね。
    吉田 そこから20年前後ずっと東京にお住まいになっていらっしゃると。最初から不動産サービスをやってらっしゃったのですか?
    馬場 いや、僕の専門は建築の設計なんですよ。今でも収入のほとんどはオープン・エーっていう設計事務所の収入ですね。13年前にふとした理由があって、改造できそうな味があるボロ物件を自分で借りようと思ったら、探すすべがなくて探せない。だから自分で調べて、自由に改装できる古い物件ばかりを集めたブログを書き始めたんです。すると、「それを借りられないか?」ってメールがくるようになったので、東京R不動産っていう不動産仲介サイトを気まぐれに作ったら、どんどん皆が使ってくれて今に至ります。

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  • 京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第14回 ラブコメと架空年代記のはざまで――完全自殺マニュアルと地下鉄サリン事件【金曜日配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.751 ☆

    2016-12-09 07:00  
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    今朝のメルマガは宇野常寛の〈サブカルチャー論〉講義録をお届けします。今回は、80年代の消費社会下で出現した「終わりなき日常」とその反作用としての「世界の終わり」というモチーフが、どのようにして90年代の文化へと接続されていったのかを論じます。(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年6月10日の講義を再構成したものです)
    毎週金曜配信中! 「京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。

    前回:京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第13回 教室に「転生戦士」たちがいた頃――「オカルト」ブームとオタク的想像力

    ■80年代ラブコメの空気と『きまぐれオレンジ☆ロード』『超時空要塞マクロス』
    ここまでは80年代の消費社会を「モノがあっても物語のない」時代と受け止めたサブカルチャーについて考えてきました。「ここではない、どこか」への脱出願望としてのファンタジーの機能がピックアップされ、当時のマンガやアニメが描いた冷戦期の最終戦争のビジョンはそのはけ口として受容されていったわけです。
    しかしその一方で、この「モノはあっても物語はない」「いま、ここ」の「終わりなき日常」を肯定しよう、という思想もサブカルチャーは内包していくことになります。その舞台となったのは、以前取り上げた高橋留美子『うる星やつら』が代表するラブコメの系譜です。
    70年代の少年誌が「スポ根」の時代なら、80年代の少年誌は「ラブコメ」の時代でした。もちろん、絶対的な連載本数においてラブコメがスポ根マンガやバトルマンガを圧倒したわけではありません。しかし、青年誌や少女誌に較べて決して親和性が高いわけではないラブコメという新興のジャンルがこの時期に拡大していったという意味において、80年代の少年誌はラブコメの時代でした。
    そしてあの〈ジャンプ〉にすら、ラブコメは登場します。

    ▲きまぐれオレンジ☆ロード  1巻(Kindle版)まつもと 泉  (著)
    これは、〈ジャンプ〉で連載された『きまぐれオレンジ☆ロード』という作品です。
    (『きまぐれオレンジ☆ロード』オープニング映像上映開始)
    この作品は見てわかるとおり、主人公の春日恭介(かすが きょうすけ)がロングヘアーの同級生・鮎川まどか(あゆかわ まどか)とショートカットの後輩・檜山ひかる(ひやま ひかる)のどっちと付き合うかという、ただそれだけのラブコメです。主人公の声はアムロの古谷徹が演じていますね。当時は男子中高生のあいだで、まどか派かひかる派かでの論争が起こっていたようです(笑)。
    そして恐るべきことに主人公の恭介くんは超能力者なんです。キービジュアルを見ただけではまったくわからないと思いますけどね。しかも物語の進行に、主人公が超能力者であるという要素はほとんど関係していない。当時は超能力設定が流行っていたから「とりあえず入れとく?」って感じで無駄に超能力要素が入っているんです。いまだに、『きまぐれオレンジ☆ロード』で主人公が超能力者であることの意味はよくわからないですね。
    まあ、この時代にはそれぐらい超能力が流行っていたっていうことです。これまで話してきたように、超能力要素には「ここではない、どこか」への願望が込められていたわけです。そこに「いま、ここ」を目一杯楽しむというラブコメの思想が歪(いびつ)に合体しているのがこの『きまぐれオレンジ☆ロード』という作品なんですね。
    同じような動きがロボットアニメにも現れます。以前扱った『超時空要塞マクロス』です。
    (『超時空要塞マクロス』映像上映開始)
    この『マクロス』という作品では、ゼントラーディっていう宇宙人軍団と地球人が戦争して、総力戦の中で人類の命運を賭けた大戦争をしているわけですけど、その大戦争があくまでも背景でしかない。メインは主人公の少年パイロットが美人上司とアイドルデビューした同級生のどっちと付き合うかっていう、非常にどうでもいいストーリーです。で、結局美人上司の方とくっつく。アイドルってやっぱり恋愛禁止だからというのもあって、フラれたアイドルのほうは本当に「みんなの恋人」として歌を届け、戦場のヒロインになっていく。当時80年代のアイドルブームの影響を受けているわけです。
    これが80年代半ばの大きな二つの流れなんですね。ひとつは「ここではない、どこか」を求め、現実の世界から失われたドラマチックな世界観をファンタジーの中で取り戻そうというオカルトや架空年代記への欲望。そしてもうひとつが「いま、ここ」を目一杯楽しもうと言うラブ&コメディーへの欲望です。そしてこのふたつがいびつに結びついているのが、『きまぐれオレンジ☆ロード』であり、『超時空要塞マクロス』だったんです。
    ■80年代末の宮崎勤事件と過去最大のオタクバッシング
    ここまで80年代のオタク文化を見てきたわけですが、さきほどの転生戦士たちの自殺未遂事件と同時期の1988〜89年に、オタク文化の盛り上がりに水をさす事件が起こります。
    宮崎勤という当時20代半ばの青年が、近所の女の子を次々と誘拐して殺し、しかもそのうちの何人かの肉を食べたという「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」です。みなさんはこの事件のことを知っていますか? 知っている人は挙手してください。
    ……なるほど、かなり少ないですね。これは当時マスコミでもかなり騒がれた事件なんです。この宮崎勤という人物は、今で言う「非コミュ」で当時の学校社会や企業社会には馴染めずに親の印刷工場を手伝っていたんですが、アニメ・特撮オタクでもありました。実家の離れのような場所で暮らしていて、そこに録画したVHSの山があったことがマスコミで大きく報道されました。
    この当時は「オタク」という言葉が生まれて5、6年経っていた頃ですね。評論家の中森明夫さんが「漫画ブリッコ」という成人向けマンガ雑誌でコラムを連載するなかで、二次元の世界に逃避する若者たち、どちらかといえばコミュ障の人たちのことを指すのに使った言葉が「オタク」だったんです。

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  • 加藤るみの映画館(シアター)の女神 2nd Stage ☆ 第7回『ブルース・ブラザース』『ファンタスティックビーストと魔法使いの旅』【毎月第2木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.750 ☆

    2016-12-08 07:00  
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    加藤るみの映画館(シアター)の女神 2nd Stage第7回『ブルース・ブラザース』『ファンタスティックビーストと魔法使いの旅』【毎月第2木曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.12.8 vol.750
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは、加藤るみさんの連載『加藤るみの映画館(シアター)の女神 2nd Stage』をお届けします。今回取り上げるのは、伝説的ミュージシャンが多数出演する音楽映画の名作『ブルース・ブラザース』と、るみさんをメロメロにする中性的な魅力の持ち主、エズラ・ミラーが出演する『ファンタスティックビーストと魔法使いの旅』です。
    ▼執筆者プロフィール
    加藤るみ(かとう・るみ)
    1995年3月9日生まれ。岐阜県出身。サンミュージックプロダクション所属のタレント。映画鑑賞をはじめ、釣り、世界遺産、料理、カメラ、アニメと多趣味を活かしてマルチに活躍中。インターネットラジオK'z Station『おしゃべりやってま~すRevolution』にレギュラー出演中。雑誌『つり情報』でコラムを連載中。
    本メルマガで連載中の『加藤るみの映画館(シアター)の女神』、過去記事一覧はこちらのリンクから。

    前回:加藤るみの映画館(シアター)の女神 2nd Stage ☆ 第6回『ローラーガールズ・ダイアリー』『PK』【毎月第2木曜配信】 



    どうも!加藤るみです。
    最近は政治についてちゃんと勉強しようという意欲に溢れています。
    夏に行われた東京都知事選以降、
    なんとなく日本の政治の仕組みについてニュースを真剣に見るようになり、
    ついこの間のアメリカ大統領選では
    誰が選ばれたらどういうメリットとデメリットがあるのかを調べたり、
    ネットで情報を集めて自分なりに分析をしたりしていました。
    まだまだ分からないこともたくさんあるのですが、
    これから先、明るい未来になるように自分自身がちゃんと理解をして、
    政治に参加していかなきゃいけないと強く思っています。
    政治について知ることは、映画の時代背景と照らし合わせて、
    より作品を楽しめるようになるポイントのひとつになると思っていて、
    それが改めて政治を学びたくなった大きなキッカケかもしれません。
    さて、今回紹介するのは、つい最近、
    立川シネマシティの極上爆音上映で鑑賞した
    1980年代音楽映画の決定版『ブルース・ブラザース』と、
    ハリーポッターでおなじみJ・K・ローリングの新シリーズ
    『ファンタスティックビーストと魔法使いの旅』です。
    不朽の名作と話題の最新作の2本立て、お楽しみください。

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  • 猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第15回「アートの力で、歴史に人間をつなげたい!」【毎月第1水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.749 ☆

    2016-12-07 07:00  
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    猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第15回「アートの力で、歴史に人間をつなげたい!」【毎月第1水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.12.7 vol.749
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは、チームラボ代表・猪子寿之さんによる連載『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』の第15回です。今回は、猪子さんが地元・徳島市で、自然や街をそのままアートにしたという「デジタイズド・ネイチャー」シリーズの新作と、シンガポール国立博物館で展示される「デジタルな自然」を作り上げた新作について語っていただきました。都市の自然や歴史と人前の関係に、アートはどのようにアプローチできるのか? 「ブラタモリ」や『Pokemon GO』と比較しながら考えました。最後に、大阪で開催する新しいミュージックフェスについての情報も!
    ▼プロフィール
    猪子寿之(いのこ・としゆき)

    1977年生まれ。2001年東京大学計数工学科卒業時にチームラボ設立。チームラボは、様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート、サイエンス、テクノロジー、クリエイティビティの境界を越えて、集団的創造をコンセプトに活動している。
    47万人が訪れた「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」などアート展を国内外で開催。他、「ミラノ万博2015」の日本館、ロンドン「Saatchi Gallery」、パリ「Maison & Objet」、5時間待ち以上となった「DMM.プラネッツ Art by teamLab」など。2月からシリコンバレー、イスタンブールでの個展を開催中。また3月からシンガポール、8月から韓国で巨大な常設展開催中。今後、ロンドンや北京、台湾などで開催予定。

    http://www.team-lab.net
    ◎構成:稲葉ほたて
    本メルマガで連載中の『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』配信記事一覧はこちらのリンクから。

    前回:猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉 第14回「アートの力で、人間が気づけない自然の美しさを可視化したい!」

    ■地元・徳島での『徳島ライトシティアートナイト - チームラボ 光る川と光る森』
    猪子 前回の連載で、「とりつかれたようにデジタイズド・ネイチャーの作品をつくっている」という話をしたけれど、今回はその延長で、街をまるごとデジタル化するアート作品を、地元・徳島でつくったんだよね。
    3年に1回のペースで「徳島LEDアートフェスティバル」というアートの祭典をやっているんだけど、その3回目にあたる今回はチームラボがメインで関わることになったんだよね。
    宇野 徳島における猪子さんの権力を感じるね(笑)。
    猪子 いやいや(笑)。徳島には青色LEDでノーベル物理学賞をとった中村修二さんが在籍していた日亜化学っていう世界的にLEDを製造している会社もある関係で、地元を盛り上げる意味も込めて、LEDを使って街を光のアートに包み込む作品をつくったんだよ。

    ▲『徳島ライトシティアートナイト チームラボ☆光る川と光る森』
    2016年12月16日から12月25日にかけて、徳島市中心部にて開催。
    宇野 徳島かあ。学生の頃旅行で行ったっきりだなあ。あんまり印象なかったけど……。
    猪子 いやいや! 実は徳島って、市内に138つも川がある、めちゃくちゃ川が多い「水都」なんだよ。昔はしょっちゅう洪水が起きていたらしくて、僕のおばあちゃんとかは、家中が水浸しになった話とか、隣の文具屋の紙がダメになったみたいな話を、超嬉しそうに話したりするんだよね(笑)。
    そんな洪水にもめげず、地元市民は川をものすごく愛しているの。昔、那賀川というところにダムを作ろうという計画があったんだけど、30年以上地元市民が反対し続けて、全国的にも有名な、建設事業を中止した例になったりしたんだよね。
    今回作品をつくったのは、徳島駅のある中心市街地なんだけど、ここにはそんな川がまさに交差しまくっていて、「ひょうたん島」と呼ばれる巨大な中州になってるんだよ。

    ▲「ひょうたん島」の景色(出典)
    宇野 完全に川に囲まれているんだ。
    猪子 その真ん中には徳島中央公園があって、さらにその真ん中には、室町時代から明治がはじまるまで城があった城山があって、その城跡の山が全国でも超珍しい、市街地にある原生林なんだよね。原生林自体がすごく珍しいのに市街地にある原生林ってのはほぼないと思うんだ。野鳥が80種類いたり、樹齢600年の、「竜王さんのクス」というRPGに出てきそうな名前のクスノキとかがある。ちなみに、ここのふもとには僕の通っていた小学校があって、月に1回は、この山の上の城跡で朝会をしていたんだよ(笑)。

    ▲「竜王さんのクス」と呼ばれる古木。推定樹齢600年。(出典)
    猪子 今回、これらの川と森につくった作品は、フェス全体の「シンボルアート作品」という位置づけになってる。川に浮かんだ球体や森の木が、近くを通った人の存在や動きに反応してインタラクティブに光って、まわりに連続的に呼応して広がっていくようになってるんだよね。

    ▲『呼応する球体のゆらめく川』(新町川水際公園にて)

    ▲『城跡の山の呼応する森』(徳島中央公園にて)

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  • 愛すべき(?)ヤマ師の世界――V系シーンを育てたマネジメント(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第7回)【不定期連載】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.748 ☆

    2016-12-06 07:00  
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      愛すべき(?)ヤマ師の世界――V系シーンを育てたマネジメント(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第7回)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.12.6 vol.748
    http://wakusei2nd.com



    今朝のメルマガは、市川哲史さんと藤谷千明さんによる対談連載『すべての道はV系に通ず』をお届けします。今回は、バンドマン、レコード会社に続く第三者「マネジメント」がいかにしてV系バブルを盛り上げていったかに迫ります。

    【お知らせ】市川哲史さんの〈V系〉論、最新刊が発売中です!(藤谷千明さんとの録り下ろし対談も収録!)

    『逆襲の<ヴィジュアル系>―ヤンキーからオタクに受け継がれたもの―』(垣内出版)
    ▼内容紹介(Amazonより)
    ゴールデンボンバーは〈V系〉の最終進化系だったーー?
    80年代半ばの黎明期から約30年、日本特有の音楽カルチャー〈V系〉とともに歩んできた音楽評論家・市川哲史の集大成がここに完成。X JAPAN、LUNA SEA、ラルクアンシエル、GLAY、PIERROT、Acid Black Cherry……世界に誇る一大文化を築いてきた彼らの肉声を振り返りながら、ヤンキーからオタクへと受け継がれた“過剰なる美意識"の正体に迫る。
    ゴールデンボンバー・鬼龍院翔の録り下ろしロング・インタビューほか、狂乱のルナフェス・レポ、YOSHIKI伝説、次世代V系ライターとのネオV系考察、エッセイ漫画『バンギャルちゃんの日常』で知られる漫画家・蟹めんまとの対談、そして天国のhideに捧ぐ著者入魂のエッセイまで、〈V系〉悲喜交々の歴史を愛と笑いで書き飛ばした怒涛の584頁!

    ▼対談者プロフィール
    市川哲史(いちかわ・てつし)
    
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント!」などで歯に衣着せぬ個性的な文筆活動を展開。最新刊は『逆襲の<ヴィジュアル系>―ヤンキーからオタクに受け継がれたもの―』(垣内出版刊)。
    藤谷千明(ふじたに・ちあき)
    1981年山口生まれ。思春期にヴィジュアル系の洗礼を浴びて現在は若手ヴィジュアル系バンドを中心にインタビューを手がけるフリーライター。執筆媒体は「サイゾー」「Real sound」「ウレぴあ総研」ほか。
    ◎構成:藤谷千明
    『すべての道はV系に通ず』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。

    前回:プロデューサーの役割は〈こども電話相談室のおじさん〉である――90年代V系全盛期を支えた裏方たち(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第6回)

    ■愛すべき(?)ヤマ師たちの登場
    藤谷 前回、〈音楽的にV系を支えてきた人たち〉として、佐久間正英さんや岡野ハジメさんといった、名プロデューサーの話をしましたが、80年代後半から90年代にかけて〈V系〉シーンができあがるのに欠かせない人たちがいたと思うんです。
    市川 というと?
    藤谷 マネジメントです。ミュージシャンでありながら、自分でレーベル・事務所を立ち上げたYOSHIKIのエクスタシーレコードや、ダイナマイト・トミー【1】のフリーウィル、44MAGNUMやREACTION【2】といったジャパメタから始まり、L'Arc~en~CielやMUCCを擁するDANGER CRUEだったり、LUNA SEAを手がけて、SHAZNAが派手にブレイクした一方でLa’cryma ChristiやPlastic Treeといった音楽性の高いバンドも見出したSweet Child/Sweet Heart、PENICILLINなどが所属していたティアーズ音楽事務所などなど……例をあげたらキリがないほど「マネジメント」がシーンに影響を与えたのではないかと。ですので、今回は「V系とマネジメント」についてお話ししたいんです。

    【1】ダイナマイト・トミー:V系黎明期に人気を博したCOLORのVo。86年にフィリーウィルを設立。余談だがフリーウィル内に過去に存在したNEW HORIZONレーベルではマキシマムザホルモンの1stシングルと2ndアルバムをリリースしていた(本当に余談)。
    【2】REACTION:83年結成、ジャパメタブームの立役者のひとつ。1stアルバム「INSANE」はデンジャークルーから、メジャーデビュー以降はビクターからリリース。

    市川 ヤマ師だよヤマ師(激失笑)。そもそもなぜロックバンドにマネジメントの存在が必要だったかというと、端的に言えば〈レコード会社〉・〈マネジメント〉・〈アーティスト〉の三者契約がそもそも基本なわけ。歌謡曲の昔からずっとそうなの。まずプロダクションと歌手が契約をして、それからレコード会社を巻き添えにして「よろしくね」ってのが、日本の芸能ビジネスの伝統。タレントは事務所に所属するわけだから給料制だし、印税とか各種ギャラはバシバシ搾取されるシステムですね。で歌謡曲全盛時代はいわゆる〈大手芸能プロダクション〉の天下だったけども、フォークが流行ればヤマハがマネジメントを始めたり、バンドブームになればソニーみたくレコード会社がマネジメント業務にも乗り出すよねぇ。
    藤谷 なるほど。で、ヤマ師っていうのは一体。
    市川 V系に話を戻すと――そもそも勃興当時、V系が売れるなんて誰も思っていなかった。その前にジャパメタ・ブームもひっそりあった(らしい)けど、結局どこのレコード会社も本気で関わってない。無論、芸能事務所もロックなんかに力を入れるはずもない。だからロックバンドの地元のライヴハウスが面倒を見たり、地味に事務所もどきを作ったりしてた程度ですよ。
    で昔のV系バンドには諍い事がもれなくついてきたから、特にYOSHIKIとかライヴハウスから出禁食らってたわけで、いよいよ自分で事務所もレーベルも作るしかなかったんじゃないかと。いま思えば(失笑)。
    わかりやすい例を挙げれば、BUCK-TICKのパターンかしら。現在の《バンカー》は90年代半ばに独立して設立したセルフ・マネジメントだけども、そもそも彼らを発掘して時代の寵児にまでビルドアップさせたのは、《シェイクハンド》。そこの社長とチーフ・マネージャーの経歴は、たしかプリズムとかフュージョン・バンドのマネジメントなんだよね。つまり〈歌謡曲でもニューミュージックでもない音楽〉。
    藤谷 「既存の芸能界」の匂いがしない音楽?
    市川 日陰の音楽、つまりロックですけど(笑)。ヤマ師呼ばわりしたけども、所詮マイナーな存在だった80年代後半からV系に限らず国産ロックを生業にしてた者は皆、「歌謡曲でもニューミュージックでもないロックを、日本に根づかせてやるぜ!」的な理想と使命感をたぎらせてたんだよ、最初は。前回話したようなプロデューサーやレコード会社のディレクターも含め、我々のような活字メディアやラジオ・TVの映像メディアの人間も含め、皆が盛り上げる気満々だった。私利私欲というよりも、「自分が好きなロックが市民権を獲得すれば、自分も趣味を仕事として食っていける」といった、モラトリアム的幸福感の追求だったのかもしれない(苦笑)。
    藤谷 美しい話ですねー。
    市川 あくまでも途中までだけどね。わはは。でもたしかに美しかったよ、大の大人たちが雁首揃えて理想を語り動いてたんだから。まさに〈愛すべきヤマ師たち〉。
    たとえばアマチュア時代のBUCK-TICKは例の爆発アタマにど派手メイクなわけで、既存のメジャー・レーベルやマネジメントは当然相手にしない。そりゃそうだよね、唄も楽器も下手くそだったし。だけど彼らは《バクチク現象》と大書した謎のステッカーを自分たちで作り、渋谷中にゲリラ的に貼りまくったことで噂の存在になった。すると「こんなヤツら見たことない」とばかりに、固定観念を持たない好奇心旺盛で勇敢なシェイクハンドやビクターの連中が集まり、一丸となってBTを唯一無二のカリスマにした。だからV系がとても集金力が高い音楽ビジネスモデルとして認知された90年代突入以降は、巨大マネーが動きまくったから誤解されがちなんだけど、出発点は純粋で理想は高かったんだよ。ふ。
    ■億単位の契約金競争の時代へ
    藤谷 そこを強調しなくてもわかってますよ。やはりBUCK-TICKがスタートだったんでしょうか。
    市川 厳密に言えばV系バンドじゃないし、V系誕生以前に既に活躍してたけども、BUCK-TICKが売れたのは大きかったんじゃないかなあ。『B-PASS』や『PATi・PATi』のような総合音楽誌でも一般少女に人気を博したり、CDラジカセのテレビCMに出演したのも功績だよね。
    藤谷 ビクターの《CDian(シーディアン)》ですね。〈重低音がバクチクする〉というキャッチコピーで有名な。
    市川 お茶の間を初めて直撃したヴィジュアル・ショックですわ。

    ▲BUCK-TICKが出演したビクターのCDラジカセ「CDian」のCM。
    https://www.youtube.com/watch?v=JT2HHrEAc6o

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  • HANGOUT PLUS 宇野常寛ソロトークSPECIAL(11月28日放送分書き起こし)【毎週月曜日配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.747 ☆

    2016-12-05 07:00  
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    HANGOUT PLUS 宇野常寛ソロトークSPECIAL
    (11月28日放送分書き起こし)
    【毎週月曜日配信】

    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.12.5 vol.747
    http://wakusei2nd.com



    毎週月曜日夜にニコ生で放送中の宇野常寛がナビゲーターを 務める「HANGOUT PLUS」、2016年11月28日に放送された、ソロトーク回の一部書き起こしをお届けします。今回は、番組のリスナーの皆さんから寄せられたメールを取り上げます。宇野流の情報収集のコツ、宮藤官九郎脚本の2019年大河ドラマについてなど、さまざまな質問に宇野常寛が答えていきます。


    ▲先週の放送はこちらからご覧いただけます
    PLANETSチャンネルで、J-WAVE 「THE HANGOUT」月曜日の後継となる宇野常寛のニコ生番組を放送中!
    〈HANGOUT PLUS〉番組に関する情報はこちら
    ◎構成:坂井史
    「HANGOUT PLUS書き起こし」これまでの記事はこちらのリンクから。

    前回:福原伸治×宇野常寛 テレビはこのまま終わるのか(HANGOUT PLUS 11月21日放送分書き起こし)【毎週月曜日配信】

    ※このテキストは2016年11月28日放送の「HANGOUT PLUS」の内容の一部を書き起こしたものです。※今週は、宇野常寛〈HANGOUT PLUS〉の放送はお休みとなります。次回、12/12(月)放送、「乙武洋匡×宇野常寛「もう一度この国が変わると思えるために」――〈HANGOUT PLUS〉vol.010」をお楽しみに!
    ◼︎ 情報収集のコツはトピックだけを抽出すべし

    突然ですが、情報の知り方についてお聞きしたいです。今日宇野さんに語ってもらいたいニュースがあるかな、と考えてふと気付きました。ここ1週間、新聞も読まず、テレビのニュースも目にしないで、好きなコンテンツだけ貪るという世間から背を向けた生活を送っていました。Twitterのニュースはかろうじて見ていますが、新聞各社の速報的な短文記事しか目にしておらず、ニュースリンクを煽り文とともに引用RTしている文を見て、嫌な気分になり閉じてしまうパターンがとてもい多いです。
    以前は情報の正確性という点で、新聞やNHKニュースが一番だと勝手に信じて見るようにしていたんですが、気がつくと見ないことが多く、今では情報収集源をネットに依存しています。とはいえ、Twitterは趣味の情報ばかり目がいってしまうので、時事ニュースが頭に入ってきません。まとめニュースアプリなど、たくさんのツールを積極的に活用すべきでしょうか?
    宇野さんはどのようなツールでどのように情報を得ていますか?(ミカエルさん 22歳 女性)

    宇野 この執拗な描写、しかも整理された文章から、本当に嫌なんだなってことが伝わってきましたね(笑)。こういうことを言うとがっかりするかもしれないけれど、僕は基本的にテレビのニュースはほぼ見ないかな。ただ、ウェブでNHKとか朝日新聞のニュースをたまに目にすることはある。でも、自分から見に行くことはほとんどないですね。Facebookで気になるニュースが流れてきたときにクリックして、ついでにヘッドラインもチェックする感じです。TwitterやFacebookで、とにかく時事トピックにコメントするのが好きな人で、比較的信頼できてタイプの違う人を積極的にフォローして、その人たちの書き込みから芋づる式にたどることが多いですね。
    NHKのニュースはダメだよ。あれは「海外と科学のニュースが極端に弱い」とずっと言われているんだよね。一番有名な話だと、「アラブの春」が起こったときに、エジプトの政権転覆をNHKはまったく放送しなかった。日本時間で昼間に起こったのに、夜9時のニュースで放送しなかったわけ。それぐらいNHKは、自分たちが半世紀以上かけて育てたテレビピープルの、お茶の間的な世界観をマストだと考えていて、そこから外れるものは、たとえエジプトの政権転覆であっても放送しないという価値観でやっているわけね。だからすごくドメスティックに閉じた世界なんですよ。
    今回のアメリカの次期大統領選挙についても、なぜ日本人はヒラリーが勝つと思い込んでいたのかといえば、実は僕もそうだったんだけど、やはりメディアの影響が大きいんだよね。朝日新聞をはじめとする日本のリベラル系のメディアは、アメリカのリベラル系メディアや民主党系メディアと提携していて、その情報を流しているだけなんだよ。だから「ヒラリーが勝つ」というポジショントーク的な報道を、恐るべきことに何の批判も検証もしないまま垂れ流しているわけ。一方、読売新聞や産経新聞といった保守系メディアはドメスティックだから、そもそも提携をしていない。そういう理由で共和党側のポジショントークは流されずに、中和がされなかった。このリベラル系と保守系のメディアの機能不全については、今いろんな人が指摘しているけど、結構な問題だよね。
    大学生で「俺はマスコミに就職するぜ」とか言ってるやつってパーで薄っぺらいでしょ。すべてのテレビマンが「鈍感なふりをすることが大人になることだ」と勘違いした可哀想な大人だとは、僕は思わないけれど、そんな人たちが選んでいるニュースには、当然、彼らの鈍感さが発揮されているわけです。だから、情報収集のコツとしては、中距離にいる人から情報を得ることかな。あんまり自分に近いと、人となりみたいなものを脳で加味しちゃって、あんまりそのニュースを正確に受け止められないと思うんだよね。ほどほどの距離感にいる人で、かつ情報をクリップするのが好きな暇な人。それを複数人用意しておいて、彼らのコメントは読まずに取り上げるニュースだけをチェックする。こういうことを言っちゃなんだけど、特に今の日本においてネットで時事ニュースにコメントしたがるなんてロクなやつじゃない。だからその人が取り上げているトピックだけをチェックするというのが正解だね。「NewsPicks」は経済に寄り過ぎていて、あまりにも文化的な感度が低いから、僕はそこまで好きじゃないけれど、「スマートニュース」とか、そういったまとめニュースアプリで扱われているトピックだけをチェックして、コメントは読まないというのがコツかな。

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  • 京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第13回 教室に「転生戦士」たちがいた頃――「オカルト」ブームとオタク的想像力【金曜日配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.746 ☆

    2016-12-02 07:00  
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    京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録第13回 教室に「転生戦士」たちがいた頃――「オカルト」ブームとオタク的想像力【金曜日配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.12.2 vol.746
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは「京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録」をお届けします。今回は80年代のオカルトブームを取り上げます。70年代に始まったオカルトの流行は、『ぼくの地球を守って』など、「前世」や「転生」をモチーフにした一連の作品を生み出しますが、その影響を受けて、現実でも「前世の仲間」を探そうとする若者が大量に現れます(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年6月10日の講義を再構成したものです)。
    毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。

    前回:第12回 「世界の終わり」はいかに消費されたか――〈宇宙戦艦ヤマト〉とオカルト・ブーム【金曜日配信】

    ■つのだじろうとサブカルチャーとしての「心霊」
     「オカルト」というかつて存在したジャンルと、その隣接領域としてのマンガ・アニメについてもう少し考えてみましょう。
     つのだじろうの『恐怖新聞』という作品があります。このつのださんは、ミュージシャンのつのだ☆ひろさんのお兄さんですね。彼は藤子不二雄コンビや石森章太郎と同じトキワ荘グループのマンガ家で、初期はギャグマンガやスポーツマンガで知られていました。この時期の代表作『空手バカ一代』はアニメにもなったヒット作です。
     
     しかし70年代半ばからはオカルトブームを背景に、すっかり「心霊マンガ家」になってしまいます。この時期つのださんは『うしろの百太郎』『恐怖新聞』で大ヒットを飛ばすわけですがブームに乗っかったのではなくて、プライベートでも心霊研究をかなり本格的にやっていたので、いわゆる「ガチ勢」ですね。
     
     では『恐怖新聞』を少し読んでみましょう。
     平凡な中学生の鬼形礼(きがた れい)という主人公はある日、霊に取り憑かれ呪われてしまい、「恐怖新聞」という、読むと必ず寿命が100日縮まる新聞が毎晩配達されるようになります。この恐怖新聞には「明日誰々が死ぬ」という不吉なことが書かれている。未来を知ることができるから、鬼形礼は不幸なことが起こるのを阻止すべく奮闘して、失敗したり成功したりするんですね。で、読むたびに寿命は縮まっていくので、最後には死んでしまいます。
     『恐怖新聞』は心霊マンガなんですが、だんだんストーリーが進むにつれて今読みかえすとおかしな方向にも向かっていきます。たとえば「円盤に乗った少女」という回がありますが、なぜかUFOネタが入ってくるんですよ(笑)。心霊とUFOは全然関係ないですよね。
     あるいはこの鬼形くん。物語の後半でなぜか埋蔵金を探しています。埋蔵金っていうのは豊臣秀吉や徳川家康が子孫のためにどこどこの山中に大量の金銀を埋めておいた云々という、例のアレですね。もはやここまで来ると心霊マンガでもなんでもないんですが、当時としてはそれほど不思議なことでもないんです。
     当時の、いや、今もいくつか残っているオカルト雑誌を読むとよく分かるんですが、「超能力」も「心霊」も「UFO」も「埋蔵金」もジャンルとしては同じ「オカルト」なんです。当時の「オカルト」は陰謀論や疑似科学によって当時日本社会を覆っていた終わりなき消費社会の日常から逃避させてくる装置だったわけで、その逃避機能を保証する非科学性というところでジャンルの統一性を保っていたんですね。
    ■80年代オカルトブーム絶頂期と『ぼくの地球を守って』
     さて、「オカルト」ブームとマンガ・アニメの関係を語る上で外せない作品があります。
     1986年から1994年まで少女マンガ誌「花とゆめ」に連載された日渡早紀『ぼくの地球を守って』です。のちにビデオアニメにもなっています。
    (『ぼくの地球を守って』映像再生開始)
     超古代に、高度な文明で栄えた異星人たちが月に基地を作って、そこで科学者たち男女7人が働いているんですが、恋愛関係のもつれと基地内での伝染病の蔓延によって全員死んでしまいます。その7人が何千年か後に現代日本人に転生してもういちど恋愛をする。当時流行っていた『男女7人夏物語』のようなトレンディドラマに、転生要素を加えたストーリーですね。
     これはマンガでもヒットしましたが、オカルト界では大ヒットしました。前世ではヒロインと相手役の男は同じぐらいの年齢なんですが、前世で死亡したタイミングがずれたせいで転生後の再開時にはお姉さんと少年になるわけです。いやあ、いろんな欲望を同時に満たしすぎですよね(笑)。前世ではオラオラ系のイケメン、現世ではインテリ系の美少年をゲット、的な。
     彼らは前世で超能力を持っていたのですが、現代日本に転生した主人公たちはだんだん前世の記憶とその能力を取り戻していき、現代日本で起きる事件に立ち向かっていきます。

    ▲日渡早紀『ぼくの地球を守って(1)』白泉社文庫
     実はこの時期、この国では「前世は超古代文明(ムー大陸とかアトランティスとか)の人間で、超能力を持っている」という自称転生戦士たちが現実世界に溢れかえったんです(笑)。この現象についてはインターネット上のサイトにまとまっていますので、それを見ていきましょう。
    (参考)
    『ムー』読者ページの“前世少女”年表 - ちゆ12歳
     80年代当時はインターネットがなかったので、オカルト雑誌の「ムー」の投稿欄で「ペンパル」といって要は文通相手を募集したんです。そこに自称転生戦士が「こういう記憶を持っている人、お友達になりませんか?」という募集を出すわけです。というよりも、『ぼく僕の地球を守って』はそのオカルト雑誌の読者投稿欄に着想を得て作られているんです。
    実際『ぼく僕の地球を守って』の序盤は「前世にこういう記憶を持っている人いませんか?」とペンフレンド募集をして生まれ変わった仲間が再会するというストーリーです。『幻魔大戦』が代表する転生戦士というサブカルチャーのトレンド、物語フォーマットが流行してオカルトブームにも影響を与え、「ムー」の投稿欄も先鋭化して、さらにそこから『ぼく僕の地球を守って』が生まれ大ヒットしたことで、自称転生戦士がまた増えるというサイクルだったんですね。
     この当時、転生戦士はたくさんいました。さきほどのサイトを見てみましょう。

    「戦士、巫女、天使、妖精、金星人、竜族の民の方、ぜひお手紙ください」
    「前生アトランティスの戦士だった方、石の塔の戦いを覚えている方、最終戦士の方、エリア・ジェイ・マイナ・ライジャ・カルラの名を知っている方などと」

     こういった手紙がたくさん「ムー」には掲載されていたわけです。すごいですね。

    1979年     『ムー』創刊。創刊号から「自分が地球以外の宇宙人だと思う人と文通がしたいので~す」という14歳の女の子はいますが、まだ前世少女からの投稿はありません。
    1980年      まだ前世少女はいません。
    「あたし‥‥実は異星人なんだ‥‥」「異星人の仲間どこかにいない‥‥?」(3月号)という15歳の女の子はいますが、本気度は不明。

     イラストがいいですね。当時のアニメブームのテイストの絵になっています。

    1981年 この時期、「超人ロックが好きで、ロックのようなESPERになりたいとがんばっています」(5月号)という14歳の女の子など、エスパー志望者がやや目立ちます。
    1982年      「転生、超能力、SFに興味がある女子」との文通を希望する18歳(4月号)や、「転生について異常なほど興味があり、明るすぎるほどのぼくにお手紙ください」という16歳(10月号)など、転生に関する投稿は少し増えました。
    1983年      この頃、「人類救済を目的とするサークル」のメンバー募集(5月号)など、終末を意識した投稿が増加します(たぶん、3月公開の『幻魔大戦』劇場版の影響が大きかったと思われます)。

     『幻魔大戦』の映画版がこの年に公開されています。

    9月号では、「自分が宇宙とかかわる“光の戦士”か“救世主”だと思う方、連絡してください」という中3の女の子が登場。
    10月号には、「前世の記憶がもどり、超常現象の体験がありま~す」という中3の女の子。

     ここから、こういう手紙がだんだん増えてきますね。

    1984年     「不思議な夢をよく見ます。私には何かの使命があるような…」という高2の少女(3月号)。
    「この風景に見覚えのある方おまちしてます」と、イラストを投稿する18歳の女の子(7月号)。

     ……見覚えがあったら衝撃的ですね。

    「古代ギリシアの地中海にいたころの過去世の記憶がある方で、自分の魂、もしくは守護神がギリシア神話に出てくる神々である方と。私の守護神はアポロンですが、同じ系列の仲間を捜しています」という23歳の男性(12月号)。

     これもなかなかいい感じですね。当時23歳だと、現在は還暦に近いですよね。1985年だから、これは僕が小学校1年生の頃です。

    1985年     「前世の記憶が“平家一門”だったのではと思われる方…そして“葵”という名の源氏方の若い武将にお心当たりの方」からの連絡を待つ17歳の女性(3月号)。
    「あたしは幽体離脱、幽体分裂、時間をもどしたり、遅くすすめたり、タイムリープができます。100年に1度の天使のハネを持つ妖霊です」という18歳の女の子が、「マヤ出身の人(白い魂の子)」との文通を希望(3月号)。
    ※「弥生時代か飛鳥時代に生きた記憶のある方、ご連絡ください」という高校3年生や、「毛利元就の2男・吉川氏の家系の前生をもたれる方、おききしたい事があります」という17歳(5月号)など、この頃までは、前世が異星や異次元なのは少数派でした。
    7月号では、「自分がミヤリア一族だと思われる方、または、ソディラ、セカ、スィール、ミヤ、セヤ、ジィン、マラ、リヤ、トルファン、オルキムの名に心あたりがあるか、自分の魂の名がこのいずれかの方」を探す15歳の女の子が登場。これ以降、カッコイイ名前の尋ね人が増えます。

     魂の名とはいったいなんでしょう。当時の文通覧は、住所も公開しているんですよね。これ、なかには実際に「俺が前世の恋人だ」とか言って押しかけてくるケースもあったと思うんですよね。そこでイケメンが来ればいいけれど、そうじゃなかったらどうしたんでしょうね……。

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  • 落合陽一 「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」第4回 オープンソースの倫理と資本主義の精神(前編)【毎月第1木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.745 ☆

    2016-12-01 07:00  
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    落合陽一 「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」第4回 オープンソースの倫理と資本主義の精神(前編)【毎月第1木曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.12.1 vol.745
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは、落合陽一さんの『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』の第4回の前編をお届けします。「資本主義の精神」に駆動されているように見える現代のインターネット社会ですが、その根底ではまったく別の原理による思想が、着実にその影響力を強めています。マルクスの『資本論』とウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を援用しながら、現代を規定する新しい上部・下部構造について論じます。

    【発売中!】落合陽一著『魔法の世紀』(PLANETS)
    ☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。
    (紙)/(電子)
    取り扱い書店リストはこちらから。
    ▼プロフィール
    落合陽一(おちあい・よういち)
    1987年東京生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程を飛び級で修了し、2015年より筑波大学に着任。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ、新しい作品を次々と生み出し「現代の魔法使い」と称される。研究室ではデジタルとアナログ、リアルとバーチャルの区別を越えた新たな人間と計算機の関係性である「デジタルネイチャー」を目指し研究に従事している。
    音響浮揚の計算機制御によるグラフィクス形成技術「ピクシーダスト」が経済産業省「Innovative Technologies賞」受賞,その他国内外で受賞多数。
    ◎構成:長谷川リョー
    『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』これまでの連載はこちらのリンクから。

    前回:落合陽一「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」第3回 デジタルネイチャー以後のサイバネティクス(後編)
    ▼ニコ生放送時の動画はこちらから!
    http://www.nicovideo.jp/watch/1473245015
    放送日:2016年8月30日



    ◼︎マルクスとウェーバーからデジタルネイチャーの社会構造を考える
    「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」も4回目となります。今回はインターネット上における「資本主義の精神」と、オープンソースのコミュニティを成立させている倫理観について考えてみます。この議論を進めていく上で避けられないのが、カール・マルクスとマックス・ウェーバーです。
    我々は、民主主義の社会制度と、資本主義の経済圏の中で生きています。1989年の東西冷戦の集結によって、共産主義は力を失い、資本主義が世界のスタンダードになりました。現在のインターネットのシステムであるWWW(World Wide Web)が動き始めたのは、その翌々年の1991年のことです。
    近年登場した、共産主義とよく似た概念としてはベーシックインカムやオープンソースなどがありますが、たとえば「Kickstarter」をはじめとするクラウドファンディングサービスを考えてみましょう。これは共産主義的であると同時に、極めて資本主義的でもあります。クラウドファンディングには二つの側面があります。一つはソーシャル的なアプローチで社会問題の解決を目指す共産主義的な側面。もう一つは実際にプロダクトをリリースしていく資本主義的な側面です。こういったインターネットの登場以降に現れたカルチャーを、新しい経済活動として捉え直し、その根底に流れている思想を読み解いていくのが今回のテーマです。
    カール・マルクスは『資本論』で、封建領主と農奴の関係、生産様式や搾取、余剰価値や過剰生産などの分析によって、社会の発展過程と資本主義経済の成り立ちを読み解きました。唯物史観と呼ばれる彼の思想においては、二項対立が止揚されることで社会が新しい段階へと進む弁証法的展開が、決定論的に起こっていくと説かれます。そして、政治的な上部構造は、経済的な下部構造によって規定されると主張しました。
    これに対し、マックス・ウェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の中で、ヨーロッパでの最初の資本主義の形成の過程で、プロテスタンティズムが果たした役割について論じています。ウェーバーの議論で重要なのは、マルクスのいう下部構造としての経済(資本主義)の始原において、宗教的倫理が重要な役目を果たしていたという指摘、つまり「経済の根底には文化がある」という意味での唯物論の否定にあります。この論文では、ルターからカルヴァンへの流れを辿りながら、労働で得られた対価を蓄積することなく、資本として新事業に再投下することを善とするプロテスタンティズムの禁欲的な行動様式が、資本主義の誕生に繋がったことが説明されています。
    ただしこの論においてウェーバーは、マルクスとは違って運命論的な決定史観を持っておらず、プロテスタンティズムも資本主義を成り立たせる複雑な要因の一つとしてみなしており、プロテスタンティズムだけが決定的な要因であったとは考えていなかったようです。僕も、現代の資本主義社会には、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』に定式されるわけではないと考えていますが、そこについて考えて行くことにデジタル文化としての価値を感じています。
    これから我々の資本主義はどのような方向に向かうのか。マルクスの決定論的な唯物史観で考えていく方法と、文化論的で、そこに多様性や多数のオルタナティヴを認めるウェーバーの方法の、二つの捉え方があり得ると考えられます。いずれにせよ、どのようなバックグラウンドから今の世界を見ていくのかが、そこでは重要になってくると思います。

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