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【新連載】犬飼博士 スポーツタイムマシン
第1回 私はスポーツタイムマシンです
【不定期連載】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.11.8 vol.728
今朝のメルマガは、犬飼博士さんによる新連載「スポーツタイムマシン」です。2013年夏、山口県山口市の商店街に突如現れた「スポーツタイムマシン」は、ゲームとスポーツが融合した、全く新しいeスポーツのための装置です。国内外の賞を受賞したメディアアートでもあるこの作品は、どのような経緯で生まれたのでしょうか。知られざる誕生秘話をお届けします。
▼プロフィール
犬飼博士(いぬかい・ひろし)
1970年、愛知県生まれ、eスポーツプロデューサー、ゲーム監督。つながりと笑顔を生むツールとして、ゲームとスポーツに着目。スポーツとITを融合した作品発表、大会運営等を手がける。 現代的なスポーツマンシップとしてスペースマンシップを提唱。 人工知能やシンギュラリティを巻き込んだ次世代の「遊び」を研究開発中。
「私はスポーツタイムマシンです。2013年夏 山口につくられた、世界で最初のスポーツのタイムマシンです。」
▲スポーツタイムマシンが最初に置かれた山口県山口市の中心商店街
これはスポーツタイムマシン自身が、繰り返しみなさんに語りかけるメッセージの一部です。スポーツタイムマシンはその名の通り、「スポーツ」の「タイムマシン」です。人々が楽しく遊んでいる姿を記録し、未来に再生して遊ぶためのマシンです。
まずは、このスポーツタイムマシンの体験とはどんなものかを説明しようと思います。
商店街の中を歩いていると、どこからともなく楽しい音楽が聞こえてきます。
その音の出処をさがすと、大きなキリンの人形や、太鼓、跳び箱、黒板、万国旗など、まるで運動会のようなカラフルな装飾の入り口。
ガラスドアを開けて一歩中に踏み込むと、25メートルの長いスクリーンと、そのスクリーンの前に敷かれた25メートルのレーンが現れます。
スクリーンの反対側には、無数のカラフルなカードが壁一面に貼られていて、さまざまな手書きのメッセージが書かれています。
このカードは、過去に体験した人たちの記録であり感想です。
▲壁一面に貼られたカラフルなカード
▲ カードにはQRコードとメッセージが書かれています
この中から一枚のカードを選び、スタート地点のお姉さんに渡すと、お姉さんはカードに記載されたQRコードをノートパソコンに読み込みます。
「出走準備ができました」とスポーツタイムマシンの声が部屋に響き、スタートラインに立ちます。
「位置について」
スクリーンが暗くなり、音楽が鳴り止みます。静まり返る場内。
「よーい」
「……ドン!」
合図と同時にスクリーンが明るくなり、勢いのある音楽が流れ始めます。
▲スクリーンの前のレーンを疾走する女の子
スクリーンには、女の子と同じ大きさの影が投影され、女の子と一緒に走り始めます。隣を走る影に負けないように、女の子は全力で走ります。
お母さんや友達が「がんばれー」と手を叩いて応援をします。
▲25メートルのレーンの端まで走ったら折り返して戻って来ます
「折り返し地点です」
25メートルを走り切って、壁付近で折り返して戻ってくる女の子。その後をスクリーンの影も追いかけます。終着地点は最初のスタートラインです。女の子がラインを通過すると同時に「ゴールです」とスポーツタイムマシンの声が鳴り響きます。
「勝ったー!」
女の子と見ていた友達は大喜び。拍手をして健闘をたたえます。
▲ ゴールの後はみんなでリプレイを見ます
スクリーンでは、すぐさまリプレイが始まります。
小さな2つの影が、25メートルのスクリーンを端まで走って、ふたたび戻ってきます。先ほどの女の子が走ったときの様子が影として記録され、スクリーンに投映されているのです。
このようにスポーツタイムマシンでは、スタートからゴールまでの間、レーンの中で起きた出来事を記録して、再生できるマシンです。女の子は、自分自身のカードを壁の中から選び、そこに記録された過去の自分とかけっこしていたのです。
走り終えた女の子は、息を切らせたまま、お姉さんから新しいカードを受け取り、日付や名前、感想やイラストを書いて壁に貼ります。こうして、また新しい対戦相手のデータが一つ増えていくのです。
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